名港議会 一般質問①ガントリークレーンの修理と港湾民営化の課題(2012年3月26日)
長期の稼働停止は経営的にどんな影響なのか
【山口議員】港湾運営の民営化について、飛島ふ頭のガントリークレーンの修理問題から考えたいと思います。
港湾運営の民営化とは何を指すのか。港湾法改正に伴い、国際競争力の強化のためとして、港湾の管理と運営を分離し、港湾運営に民の視点を導入して経営の自由度を持った主体による一元的な港湾運営をめざす「港湾運営会社制度」が導入できるようになりました。
コンテナ国際戦略港湾の選定からもれた名古屋港・伊勢湾でも東西二港と同様に国から様々な支援を受けたかったら、「特例港湾運営会社」をつくりなさい、支援の受け皿となる特例港湾運営会社を設立したら、東西二港と同様の支援をしてやってもいいかな、と国から政策誘導されています。
しかし名古屋港では、主要なターミナルの運営主体は既に民間となっており、港で一つの特例港湾運営会社が必要なのか、必要とすれば既存のターミナル運営会社との関係はどうなるのか、など再来年(2014年=平成26年)3月頃とされる指定申請期限に向けて、慎重な検討が必要とされています。
私は、わざわざ国からの支援の受け皿をつくるためだけに新たな会社をつくることがどうして国際競争力の強化になるのか、理解できません。名古屋港にむりやり東西二港と同じスキームを当てはめようとする国のやり方に、港湾管理者として、もっときっぱり異議を唱えても良いのではないか、と考えます。
さて、今日うかがいたいのは、コンテナターミナルの管理と運営に関わる問題です。
昨年、公共ふ頭である飛島ふ頭南において3号起重機(ガントリークレーン)の起伏ブーム部分に腐食と亀裂が発見されました。現在も使用停止状態が続いており、今年度2億5千万円もの改修費用が予算計上され、工期も9カ月を要すとされています。つまり1年以上、使用不可能な状態が続くことになります。
停止中の3号起重機をふくむ荷役機械10基をもつ施設運営事業会計では稼働停止による損失に加えて多額の修理費用が発生しますが、経営的にはどんな影響があるのか、まずうかがいます。
停止による影響は少ない
【港営部長】施設運営事業会計で、施設の老朽化対策として改修費用を見込み、飛島ふ頭南3号起重機も一定の改修費用を計上。同起重機の停止で、従来の3基を2基で対応するが、取扱貨物に大きな影響はない。今回のガントリークレーン停止が施設運営事業会計の経営に与える影響は少ない。
民間会社でのクレーンの修理はどこの責任か
【山口議員】ガントリークレーンはいわゆる上物とよばれています。岸壁などと違い、ターミナル運営会社がそれぞれ設置し運営するのが原則だと思いますが、公共ふ頭などでは国からの支援も受けて整備されてきた経緯もあります。
今回はたまたま公共ふ頭のクレーンでしたが、民間会社が運営するターミナルで、同様の修理が必要になったときは、当然、その会社の責任と負担で修理すると考えてよろしいのでしょうか。現状で、ガントリークレーンは誰のものなのか、管理組合が設置し、貸し出しているのか、ターミナル運営会社の所有物なのか、あわせて確認したいと思います。
所有者の責任と負担で実施
【港営部長】公共夕一ミナル以外は、民間または名古屋港埠頭公社が所有し、飛島ふ頭商3号起重機と同様な大規模な修理は、所有者の責任と負担で実施される。公共ターミナル以外のガントリークレンの健全度調査は、公共と同様に設置からの経過年数、利用状況等から既に実施されているガントリークレーンもあり、今後も計画的に行われる予定と聞く。
公共ターミナルは、法定検査に加え日常的な点検をこれまで以上に強化するなど引き続き点検体制に万全を期すとともに、広く民間ターミナルにも安全管理に係る情報提供をして事故の未然防止に努める。
民営化した場合、ガントリークレーン等設備の安全管理はどこがやるのか
【山口議員】今回、腐食と亀裂が発見されたのは、法定の定期点検ではありませんでした。平成4年度に設置し、もう20年目に入るけど大丈夫かな、と行った任意の調査の結果、発見されました。もし法定点検だけで済まして、ポキッとクレーンが折れたら、と考えるとぞっとします。
港湾運営が民営化され、とにかく稼働率優先ということになれば、このような荷役機械の運用も、最小限の点検で良しとされかねない、と危惧を覚えます。今回、問題を発見した健全度調査は、公共岸壁だから行われたものなのですか、民間ターミナルでも会社の費用で任意の安全検査は行われるのでしょうか。
安全管理上の責任は所有者である港湾運営会社
【企画調整室長】港湾運営会社が、埠頭群と呼ばれる公共コンテナターミナル等を国または港湾管理者から借り受けて運営、ガントリークレーン等の整備には、国及び港湾管理者から最大8割の無利子貸付金を受けることができる。安全管理上の責任は所有者である同会社となる。
点検体制を見直す必要はないのか
【山口議員】港湾の民営化で、港湾の管理と運営を分離し、ふ頭の建設は国や管理組合が行い、できた施設を一元的に運営する民間会社をつくる、と言います。ガントリークレーンは一機で約10億円もします。自力で設置するにはあまりに巨額なので公的な支援も行われてきました。導入時だけ公的支援に頼り、運用による利益は全て会社のものというのでは困ります。
安全管理上の責任はどこが負うのか、港湾民営化の検討では、この観点が抜けてはいないでしょうか。
今度の問題を受けて、公共ふ頭に限らず、すべてのコンテナターミナルのガントリークレーンについて点検体制を見直す必要はありませんか。また管理組合として、どこまで民間ターミナルの設備に責任を持つのか、新しい港湾運営会社では、この安全管理上の責任をどのように負うことになると検討されているのか、あわせてお答え下さい。
役割分担を整理していく
【企画調整室長】本組合のガントリークレーンを港湾運営会社が借り受けて運営する場合の責任分担は、同会社のあり方を検討するなかで、双方の役割分担を具体的に整理していくことになる。
影響がないなら過剰な設備だ(意見)
【山口議員】クレーンの停止による大きな影響はない、と言うのなら、一定の余裕は必要だとは思いますが、過剰な設備、3機もいらないんじゃないか、といいたくなります。答弁を聞いていると、港湾民営化でかえってクレーンなどの所有や貸し借りの関係が複雑になって、効率的な運営とは呼べなくなりはしないかと感じました。港湾運営会社と港湾民営化については、またあらためてうかがいます。
キーワード:環境と防災、まちづくり、山口清明