名港議会 一般質問②国際バルク戦略港湾(2012年3月26日)
計画と国の推計が違ったらどうする
【山口議員】名古屋港は、穀物の国際バルク戦略港湾のひとつに選定されましたが、国の動きは依然として不透明と言わなければなりません。
新年度予算では、釧路港などから出されていた施設整備の予算は認められませんでした。東日本大震災を踏まえれば、まず鹿島港の機能復活が最優先と考えるのが普通です。
また新年度に、国が行う国際バルク戦略港湾について調査項目には、トウモロコシなどの輸入量の将来推計や、大型船の複数港寄り輸送の実現可能性の検討が並んでいます。普通は戦略港湾を選定する前にやっておくような調査ではないでしょうか。しかもこの調査の予算も未定となっています。
名古屋港でも、国際バルク戦略港湾の推進を前提に新たな食糧ターミナル建設のために埋立事業をすすめる予算が計上されていますが、先走りし過ぎて事業が空振りに終わり、民間企業を巻き込んでの先行投資がムダになりかねないとの危惧を覚えます。
そこで三点うかがいます。
第一に、トウモロコシの輸入量の推計をいまから国が行うということですが、TPPへの参加問題も含めて日本の産業構造がどう変化するのか、農業や食料分野はどうなるのか不透明です。あらためてどんな需要の伸びを予測してこの計画を立てたのか、国の推計が本港の目論見と違う結果になったらどうするのか、お聞きします。
育成プログラムを見直し、穀物ユーザーと協議して対応
【企画調整室長】昨年1月に計画書を提出し、我が国における将来のトウモロコシ需要は、現状程度と想定。大型船舶の最大活用や新食糧コンビナートへの移転集約を図ることにより、穀物関連企業の競争力を強化し、トウモロコシ輸入量の増加を目指す。
同計画書において、北浜ふ頭で取扱う将来の穀物輸入量235万トンのうち、トウモロコシ輸入量は、現状の168万トンに対し、200万トンの見込み。
情勢変化等諸事情により、計画や行程の変更の必要が生じた場合は、適宜、育成プログラムを見直すこととしており、国の推計と乗離した場合を含め、情勢変化が認められる場合は、穀物ユーザーと十分協議して、適切に対応したい。
連携港湾との大型船の複数港寄りは現実的か
【山口議員】第二に、大型船の複数港より輸送の実現可能性についても国が検討するとしている点です。名古屋港の目論見では、清水港、田子の浦港、衣浦港との港湾連携を想定していますが、大型船の2港よりの実現には、名古屋港に水深17mの大水深バースをつくるだけでは足りません。
連携する各港でもそれ相応の大きなバースを整備しなければなりません。その計画と必要な予算が、清水、田子の浦、衣浦の各港にあるのですか。あったらあったで全く「選択と集中」にはなりません。震災後の国の予算を考えると、「大型船の複数港寄り」という名古屋港の目論見は、現実的とは思えませんが、いかがでしょうか。
各港で岸壁を整備
【企画調整室長】計画書でも、国の政策の趣旨を踏まえ、本港に水深17mの公共桟橋を整備。パナマ運河の拡張で将来登場する10万トンクラスの大型船舶による連携を想定している清水港では現況水深12mから14mへの岸壁増深が必要であり、既に同港の港湾計画が変更されている。
現行最大の7万トンクラスの大型船舶による連携を想定している田子の浦港及び衣浦港は、既存岸壁で対応可能。
ばら積み貨物船(バルクキャリア、バルカー) は、梱包されていない穀物・鉱石・セメントなどのばら積み貨物を船倉に入れて輸送するために設計された貨物船。6つの大きさに分類され、小型、ハンディサイズ、ハンディマックス、パナマックス、ケープサイズ、超大型。
パナマックス (Panamax) とはパナマ運河を通過できる船の最大の大きさで、閘門の寸法、水深により制限されている。許可されている寸法は、全長:294.1m 全幅:32.3m 喫水:12m(熱帯淡水において) 最大高:57.91m。排水量65000トンが典型的な大きさ。
埋立事業に着手するのはリスクが大きい
【山口議員】第三に、高潮防波堤知多堤の北側を新たに埋め立てて、食糧ターミナルをつくる計画ですが、津波や高潮など災害リスクがあまりに高い場所ではないでしょうか。
沿岸部への企業進出意欲の減退が、イタリア村の件でも報告されていましたが、リスクが高い埋立地への進出には企業も二の足を踏むのではありませんか。埋立事業に着手する判断は早すぎるのではありませんか。お答え下さい。
企業が進出しやすい環境を整える
【企画調整室長】本年3月の港湾計画の一部変更で、良好な港湾環境の創出と、背後の物流施設を防護する効果を期待している。
国が、3連動及び最大クラスの5連動による地震・津波に対し、高潮防波堤の安定性の照査や対策工法などの検討を進めており、今後明らかになる防災施設に関する方針や基準に基づき、高潮防波堤の改良が実施される。
国の状況を踏まえつつ、企業が進出しやすい環境を整えるとともに、関係者と協議しながら、順次、埋立免許取得に向けた調査を進めてまいります。
国際戦略港湾政策に対する認識と名古屋港の役割について(再質問)
【山口議員】コンテナでもバルクでも、国の国際戦略港湾というのは、「選択と集中」と言いながら、結局、集中しきれないものになりそうです。
バルクでも商社の論理では、いくつも巨大な港湾をつくってくれ、その時々に自由に選択し、好きなように使わせてもらいたい、ということです。寄港頻度が低くても大規模な港湾施設をあちこちに整備しなければなりません。
名古屋港のバルク戦略でも、パナマックス級船舶に対応するための14mバースはまだ理解できますが、17mバースや新食料コンビナートのための埋立はほんとうに必要ですか。約2400億円の事業、うち管理組合は400億円もの事業になるのに、穀物輸入量の伸びは現状では見込めないとの答弁でした。TPPの問題を含めて先行きはまったく不透明。その中で名古屋港の扱いだけは増えますと、言われても信用できません。複数港寄りの戦略をとるならなおさらです。輸入量が増えず船舶が大型化すれば寄港回数が減ります。それでも大きな施設整備が必要なのです。名古屋港だけが先行し、埋立まで行うことは納得できません。
コンテナでも国は、日本海側にも拠点港湾を整備すると言い始め、コンテナ貨物を集約する話はどこかへいってしまったかのようです。国の動きに振り回されずに、名古屋港は名古屋港として独自の役割、戦略を描くべきだと痛感します。
管理者は、コンテナとバルクもふくめて、国のすすめる国際戦略港湾の政策について、どういう認識をお持ちか、その中で名古屋港の役割をどう考えているのか、答弁をお願いしたい。
国は日本全体の港湾戦略に関する将来像を明らかにすべきであり、我が国の経済と産業の成長を牽引する「国際産業ハブ港」の実現を目指す
【管理者(大村知事)】国は「選択と集中」による国際戦略港湾政策を推進しているが、産業政策や国士政策と整合を図り、地域特性や災害時におけるリダンダンシーにも配慮した日本全体の港湾戦略に関する将来像を明らかにすべきだと考えている。
自動車産業や航空宇宙産業を始めとした、この圏域の「ものづくり産業」を支える名古屋港を重点投資していくことは大変重要であり、管理者として、我が国の経済と産業の成長を牽引する「国際産業ハブ港」の実現を目指し、積極的に取り組んでいきたい。
国の戦略に沿って新たな埋め立てに足を踏み出すのは疑問だ(意見)
【山口議員】管理者も「日本全体の港湾戦略に関する将来像を明らかにすべき」と答弁されました。国際戦略港湾と産業ハブ港の関係はいまひとつわかりません。国際産業ハブ港と言いますが、バルクの目論見書には国内産業ハブ港とありました国際戦略港湾と国際産業ハブ港の関係もよくわからないが、問題は過剰な事業にならないか、という点です。
副管理者が昨年、新聞のインタビューで、バルクの整備で、パナマックス船の入港で、年間50億円のコストが削減の見通しだと、と答えています。しかし、そのために水深17mを掘り、70haを埋め立て、2400億円を注ぎ込むのです。割に合う投資かどうか、やっぱり疑問です。
国の戦略に沿って新たな埋め立てに足を踏み出す予算には素直には賛成しかねると申し上げておきます。
キーワード:環境と防災、まちづくり、山口清明