名港議会 一般質問② 震災の災害廃棄物の広域処理について(2012年6月11日)

被災地の復興支援を連携して行うことは重要。国と東電の責任は重い。安全基準や地元同意は不可欠
【山口議員】次に、南五区が予定候補地の一つとされている震災廃棄物(いわゆる震災ガレキ)の広域処理について何点かうかがいます。

 東日本大震災の被災地の復旧・復興のために自治体間の連携を強めて対応していくことは当然です。同時に、震災ガレキの放射線などへの強い不安が住民の間に存在しています。原発の事故さえなかったら、ガレキの広域処理がこんなに問題になることはなかったと思います。その点で、国と東京電力の責任は極めて重く、そのことを忘れたような顔をして、ガレキ処理の責任を自治体に転嫁するような姿勢がいちばんの問題だ、とまずは指摘させていただきます。
 さて管理者は、県知事として広域処理について、国に対し当然の疑問を質問や要請という形で何度もぶつけてきました。ところが、国から十分納得できる回答がないまま、と今年3月末になって突然、受け入れを表明されました。
 現在は、県が国に発した疑問・質問を今度は名古屋港管理組合をふくむ各自治体が、知事に対して同様の疑問を投げかけ、明快な回答を求めている状態ではないでしょうか。
 震災ガレキの広域処理の受け入れについては、独自の安全基準と地元同意の二つが必要なのは言うまでもありません。しかしいまだに県からは独自の安全基準も示されず、地元住民への説明会すら開かれないまま、各自治体も6月議会を迎えます。
 名古屋港管理組合は南五区の地権者であり、当然、県から必要な説明を受けて、主体的に受け入れを判断する立場にありますが、我々にもいまだ十分な説明はありません。そういう段階であることを念頭に置きながら、以下、いくつか質問します。

受け入れはどのような判断基準で、誰が判断するのか
【山口議員】第一に、受け入れの判断は誰がするのか。という問題です。
 南五区の地権者である名古屋港管理組合は、受け入れの可否を自主的・主体的に判断する立場にあると思いますが、どんな判断基準を持つのでしょうか。
 その判断は執行部が、管理者だけで行うのでしょうか。また議会には同意を求めるのでしょうか。お答え下さい。

 復興支援が判断の基準。議会の同意や議決は不要。議会には説明している
【建設部長】東日本大震災への復興支援が判断の基準となります。このことにつきましては、地方自治法上も、議会の同意や議決をいただく案件ではございません。 3月定例議会での管理者の提案説明におきまして、災害廃棄物の受入れについて表明し、5月の議員総会でもご説明させていただいております。
 今後も引き続き、議員の皆様方のご理解とご支援をお願いいたします。

受け入れる震災ガレキ、不燃物ガレキの定義は。可燃物の受け入れを前提とした調査か、アスベストの飛散に関する認識は
【山口議員】第二に、何を受け入れるのか、です。被災地では震災ガレキの様相が変わってきています。処理を必要とするガレキの量も増えたり減ったりしています。できるだけ地元で処理したいという思いは、宮城でも岩手でも変わりませんが、広域処理の必要性は地域によってかなり差があると感じています。
 そこでいま広域処理が必要とされる震災ガレキについて、管理組合はどう認識しているのか。とくに増えたとされる不燃物とはどんなものなのか。広域処理を依頼されているのは可燃物及び木くずのみと認識していますが、それでよろしいですか。南五区では可燃物の受け入れのみを前提にした調査が行われていると理解していてよいのですね。確認したい。
 また震災ガレキの安全性に関しては、放射線だけでなくアスベストの飛散も問題とされていますが、どう認識しているのか。あわせてうかがいます。

推定総量は1,680万トン、広域処置必要量は247万トン。ガレキは県が調査検討を行う
【建設部長】環境省が公表しておりますデータによると、岩手・宮城県での本年5月21日現在での推定総量は1,680万トン、広域処置必要量は247万トンとなっています。
 広域処理の対象となる災害廃棄物は、倒壊した家屋等から出た柱材や角材等を中心とする木くず、可燃物、不燃物です。
 このうち、コンクリート殻等の不燃性廃棄物やアスベスト等について、幅広く愛知県が調査検討を行っていると聞いてます。

被災地港湾でのガレキの現状はどうか
【山口議員】第三に、被災地のとくに港湾施設でのガレキについてです。
 被災地では、多くの港湾施設が津波堆積物をはじめとする震災ガレキ置き場となっています。ところによっては埠頭など港湾施設の利用への障害になっていたり、水産加工施設の営業にも支障になったりしているとも聞きます。
 港湾管理を担う自治体として、他人ごとではありません。なんとか支援したい。すでに名古屋港管理組合からも被災地港湾に職員を派遣すると聞いていますが、被災地港湾のガレキについての現状認識をお聞かせ下さい。

災害廃棄物の二次仮置場などになっている
【建設部長】国土交通省東北地方整備局を事務局としてまとめた「東北港湾の復旧・復興基本方針」によると、石巻港では、災害廃棄物の二次仮置場となっていますが、津波堆積物やコンクリート殻等の災害廃棄物の一部を埋立処分するため、護岸の整備を行う方針がたてられています。
 その他の港湾(大船渡港、八戸港など)での市街地の円滑な復興を支援する一次・二次仮置場として利用されていますが、最終処分場や広域処理のための積み出し基地としての利用が検討されています。

県漁連の厳しい意見をどう受け止めるか
【山口議員】第四に、南五区は受入れ候補地としてふさわしいのか いくつか質して置きたいと思います。
 一つ。南五区もふくめ臨海部への廃棄物の受け入れは、海洋汚染への不安がついてまわります。とくに愛知県漁連からは厳しい意見が出ています。名古屋港は、臨海部の埋め立てで、漁業権を放棄する苦渋の選択を漁民に強いてきたという歴史もあります。県漁連の厳しい意見をどう受け止めていますか。

地元関係者に説明し、理解を得ることが必要
【建設部長】県漁連が今回の災害廃棄物の受入れに対して、厳しい判断をされていることは聞いています。しかし、県が、市街地から離れた場所に広大な用地がある等の理由から災害廃棄物受入れの候補地として選定したことを含め、県漁連を始め地元関係者に説明し、理解を得ていく必要があると考えます。

周辺住民の声をどう受け止めたのか、地元住民の同意が必要だ
【山口議員】二つ。南五区は、市街地から離れた広大な用地とされています。しかし新舞子の住宅街との距離は数百mです。2000年の東海豪雨の際に、南五区は災害ゴミの仮置き場になりました。新舞子の住民からは、当時の悪臭などの苦い記憶がよみがえるという声が出ています。
地権者として同意する前提条件は、新舞子など地元住民の同意だと考えますが、周辺住民の声をどう受けとめ、地元の同意についてどう考えているのですか。

県が地元や関係者にしっかりと説明を行い、理解と協力を得て進める
【建設部長】東海豪雨の災害廃棄物受入れの際に、地元において、悪臭、ハエの発生、自然発火があったことは聞いてます。事業主体である愛知県が、地元や関係者にしっかりと説明を行い、理解と協力を得て事業を進めていくものと考えております。

焼却施設の建設は必要なのか
【山口議員】三つ。南五区の二工区に隣接して東邦ガスの巨大なLNGタンクがあり、しかも現在さらにタンクを増設中です。少なくても焼却施設の建設には向いてないのではありませんか。
 なお県の質問に対する国の回答では、焼却について、通常廃棄物と混ぜて燃やすことを当然の前提にした表現がほとんどで、ガレキのみを新たに焼却する施設は想定されていないように読めます。可燃物の量と既存施設での受け入れが進み、いまから新たな焼却施設が必要なのか?との声も少なくありません。

十分な安全を保った施設の配置計画が策定される
【建設部長】南5区Ⅱ工区の近隣の状況、消防法等の規程については、愛知県も把握しており、十分な安全を保った施設の配置計画が策定されるものと考えております。

遮水シートなどの構造からみても、不適切なのではないか
【山口議員】四つ。南五区の二工区・三工区は、まだ愛知臨海環境整備センター(アセック)の産廃処分場です。二工区は1992年から廃棄物の埋立が始まり1999年に埋め立てが終了しました。しかし10年以上たってもいまだに処分場として廃止されていません。埋め立てた廃棄物からの浸出水のろ過処理が続いている、地下水の水質管理中だからです。
廃水処理した水は西側護岸からいまも一日約600㎥放流されています。
 管理型処分場ですが、護岸や底面には厚さ3ミリの遮水シートが一枚、損傷防止用の保護シート(厚さ4ミリ)が一枚敷かれているだけです。環境省の「最終処分場に関わる技術上の基準」は1998年に改定され、遮水シートは二重とされました。衣浦の最終処分場などは二重になっていると思います。
 ここは相当の重量となる焼却施設を建てるのに適した土地なのでしょうか。
 また新たな廃棄物を受け入れる、放射線量の数値は問いませんがゼロではない震災廃棄物を受け入れるとしたら、セシウムは水に溶けやすいと言われています。水質管理上の不安が消えません。少なくとも新しい基準を満たす二重の遮水シートで覆うことが必要ではないでしょうか。
 そのためにはすべてを掘り返さなければなりませんが、そんなことはできません。だったら、いまの処分場の構造のままでは受け入れは難しいのではありませんか。

管理型の最終処分場として建設され、適切に管理されている
【建設部長】南5区廃棄物最終処分場は、管理型の最終処分場として適合するよう建設され、適切に管理されています。
 新たに廃棄物を受け入れる場合は、県において、新たに受け入れる災害廃棄物に対応した最終処分場の施設計画の検討調査にあたって、安全面での対策をしっかり進めていくと聞いています。

当初の土地売却計画はできるのか、土地が売れなくなるのではないか
【山口議員】五つ。管理組合が地権者だと指摘しましたが、南五区は産廃処分場の廃止手続きが完了すれば、もともと売却すべき土地のはずです。当初の計画ではいつごろ、いくらで、どこへ売却する計画だったのですか?あてもなく埋め立て事業を進めてきたわけではないですよね。
 県は国に対して、最終処分場の跡地利用とそれを利用する県民の安全性の視点からの基準、を質問していますが、国の回答では、50㎝の覆土を保った利用であれば特段の問題はない、としていますが、不安は払しょくされたのでしょうか。
 ここでも国は、わざわざ、放射線物資の飛散がほとんどない地域においては、通常の一般廃棄物と混焼されることで更に(セシウム濃度が)低い値になる、と言っています。そうした焼却方法はいまのところ県の想定にはありません。
南五区は予定通り売却できる見通しがあるのですか。お答え下さい。

計画では最終処分場の手続きが完了次第、土地の評価額を基準として、売却価格の設定を行い公募で売却する
【建設部長】当初計画では、土地の売却は最終処分場の手続きが完了次第、土地の評価額を基準として、売却価格の設定を行い公募により売却を進めることを基本としている。

議会には説明するだけか、不燃物の受け入れが前提の調査をしているのか、地元自治体や住民や魚業関係団体の同意についての管理者の認識は〈再質問〉
【山口議員】震災廃棄物=ガレキの広域処理について、管理者に三点再質問します。
 いまの答弁では、(南五区でのガレキ処理の受け入れについて)議会の同意は必要ない、との答弁でしたがそれでいいのでしょうか。名古屋港管理組合としては、一切の予算措置も考えていないし、議会は理解と支援をお願いするだけの対象、議会は説明を受けるだけの存在、執行部だけで判断して進めますよ、とそういうことなんでしょうか?この点はもういちど確認しておきたい。これが第一点。
 二点目。広域処理の対象となる災害廃棄物は、いまの答弁では、木くず、可燃物だけでなく、不燃物も含まれる、との答弁でした。これまで一般的に言われてきた説明と話がちがうのではありませんか?南五区の最終処分場には不燃物も受け入れる前提で調査が行われているのですか、管理者の立場で答弁をいただきたい。
 5月の(広域処理)想定量の見直し後、広域処理の必要量は247万トン、そのうち不燃物は岩手県で7万トンから83万トンに増えました。なんで急にこんなに増えるんだろう。ところがこの不燃物について岩手県は、不燃物については県内処理、復興資材等としての再生利用の活路を見いだすことに努める」(環境省Hpより)と、広域処理でなくできるだけ地元で頑張ります、こういうふうに表明しています。新たに増えたとされる不燃物の大半は土砂であり、塩水をかぶった田畑の土だったりして、広域処理に適しているとは私には思えないのです。宮城県では逆に広域処理を要する不燃物は139万トンから39万トンへ100万トンも見直されているのです。このような不燃物を広域処理の対象として考えているのか、この受け入れを前提にした調査が南五区で行われているのか、港湾管理者としての答弁をいただきたい。
 三つ目。答弁からは、南五区という臨海部での震災廃棄物の受け入れに対する地元住民や漁業関係者からの強い懸念や不安について、知ってる、というだけです。これでは管理組合としての認識が甘い、と言わざるを得ません。とくに漁業関係者と良好な信頼関係を維持することは、名古屋港の今後にとっても欠かせません。愛知県まかせにはできない問題です。
 管理組合が地権者として南五区の使用を許可するためには、少なくとも知多市など地元自治体と地元住民の理解と同意が、及び漁業関係者をはじめとした関係団体の理解と同意があることが、その前提になると理解してよろしいですか?地元自治体の理解と同意なしには管理組合は地権者としてゴーサインは出せないと私は考えますが、大村管理者の認識をうかがいます。

受入れ基準を策定し、地元説明会を開催し、理解と協力を得て進めていく
【管理者(愛知県知事)】第一点の議会の同意は部長が答弁したとおりですが、いずれにしても今後とも議員はじめ県民・市民のみなさまに随時、説明し、理解と支援をお願いしたい。
 二点目の不燃物を含めた調査も、建設部長の答弁のとおりです。
 三点目、関係自治体、地元住民及び地元関係団体の理解、同意などについて、災害廃棄物の受け入れに際しては、愛知県が責任を持ち主体となって取り組んでいます。そのために、受入れ基準を策定し、地元説明会を開催するなど、地元や関係者等に丁寧に説明し、理解と協力を得て進めていくこととなっております。
 なお震災ガレキの広域処理につきましては、国からの要請はもとより岩手・宮城両県及び両県の市町村からも強い要請が寄せられています。5月16日には岩手県議会の議長を先頭に、民主・自民・共産の超党派の県議のみなさんが協力の要請においでになりました。愛知の共産党のみなさんも東日本大震災の復興支援に後ろ向きということではなくて、ぜひ前向きにご協力をいただきたいと思っておりますので、よろしくお願い申し上げます。

被災地支援の思いは共有している、状況の変化を踏まえ冷静な判断が必要だ。上から押しつける態度だけはとらぬよう、十分な理解と同意を(意見)
【山口議員】広域処理へのニーズもいま変化してきています。岩手県のお話しをされたが、広域処理をお願いするのはあくまで可燃物が中心で、広域処理は既存の焼却施設に余裕があればお願いしたい、わざわざ焼却炉までつくってくれとは言っていない、こういう話も聞いています。いまから焼却施設をつくるのが妥当かどうか、これはいまいちど冷静に判断する必要があります。
 南五区の産廃最終処分場としての性能についても不安が残ります。
 不燃物については広域処理には適さないと現時点では言わざるを得ないのではないかと私は思います。詳しい調査はこれからだと思いますが、たとえば石巻港では、震災ガレキを護岸の埋立整備に活用する計画もあると先ほどの答弁でも紹介されました。宮城県や岩手県大槌町などでは、ガレキも活用した「森の防波堤・防潮堤」をつくる、こういう計画も動き出しています。
 防災と港湾機能の復旧・復興のために、震災ガレキを活用する。この可能性に、港湾行政に関わるものとしてもっと関心を寄せるべきです。何が何でも広域処理先にありき、ここで思考停止になってはいけません。
 同時に管理者もおっしゃいましたが、私たちも十分に承知しています。被災地からの要請は切実です。そして県や自治体によっても要請内容は微妙に異なっています。私もとくに岩手県からの支援依頼、議長さんからの要請文を読ませていただきましたが本当に切実です。これは重く受け止めたいと思います。全国の港湾で働く労働者の組合などでも、安全性の確認を前提にして、船を使ってガレキを運搬しようというときは積極的に応えていこうと方針を立てていると聞きました。ところが漁業関係者をはじめ、海を使って運ぶなんてとんでもない、という声も出ているのです。
 そういうなかで被災地の支援に何がふさわしいのか、しっかり考えなければいけないと思います。
 広域処理を受け入れる時でも、知多市のみなさんはじめ、漁業関係者のみなさんなどに安全・安心に関わる正確な情報提供を行ったうえで、十分な理解と同意を得ることが絶対条件です。管理者は説明すると繰り返しましたが、同意を得ていくことが大事なのです。その同意を見極めなければ、地権者としての判断はできません。
管 理者にはくれぐれも、私が決断したのだからあとは言うことを聞きなさい、と頭ごなしに上から結論を押しつける態度だけはとらぬよう、念押しさせていただきます。

河村市長のスタンスと同じか〈再々質問〉
【山口議員】最後に、ひとつだけうかがって終わりたい。名古屋市長も南五区での震災ガレキの受け入れについて、管理者と同じ見解、同じスタンスだと理解しておいてよろしいですね、このことだけ確認をして、私の質問を終わります。

現地の状況変化は承知している、安全・安心の基準をつくり地元の理解をえてガレキを処理していきたい。市長にも理解を得ている
【管理者(愛知県知事)】この件については私から河村市長にお話しをして理解を得ております。そのことは申し上げておきます。
 岩手県の事情とかをお話しいただきました。そういう意味で、現地の状況が確かにいろいろ動いていることも承知しておりますが、それにしても数百万トンに及ぶガレキを一日も早く処理することが現地の復興の支援にどうしても不可欠だということは変わらない事実だと思います。安全・安心のことを、基準をしっかりつくりながら、地元の理解をいただきながらしっかりと進めていきたい、よろしくお願いいたします。

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