名港議会 一般質問② 名古屋港の防災(2012年11月14日)
災害予測と海岸防災施設の補強対策の現況は
【山口議員】10月29日に開かれた、国の第4回防波堤耐津波性能評価委員会において、名古屋港高潮防波堤の嵩上げと抜本的補強工事に今年度中に着工することが確認され、公表されました。
港区では、東日本大震災を踏まえて、10万2537名分(これは区人口14万6千人の7割に相当します)の署名を集め、国への要望活動を行ってきました。2009年に高潮防波堤の沈下対策・抜本的な補強が必要だとこの議会でとりあげてから3年、ようやくここまできたか、という思いです。
始まる高潮防波堤の補強工事は、巨大地震により防波堤が沈下しても、機能を維持できる高さ(NP5.4m)を確保するために防波堤を1.5mから3.0m嵩上げし、NP8mの高さにする。同時に、津波にも倒れることのないよう、ケーソンの補強並びに基礎捨石の洗堀防止対策も行うというものです。
これは、8月29日に公表された内閣府の「南海トラフの巨大地震による津波高・浸水域等(第二次報告)及び被害想定(第一次報告)」を踏まえて必要な対策がとられたものと理解しています。しかし、8月の被害想定はマクロ的な推計とされており、各地方自治体の対策には地域の状況を踏まえたより詳細な検討を行う必要があるとされました。港区では震度7、津波高も最大5mとされましたが、正確な数値や地点、地盤沈降量などの詳細はいまだ明示されていません。
この段階で、国は高潮防波堤の補強対策方針を定め着工します。堀川口防潮水門通行水門の補強工事も補正予算案に盛り込まれました。一方で、堀川口の排水水門と中川口通船門は県の調査を踏まえながら補強対策の検討を行うということです。
詳細なデータの全面的な公表がないまま、一方では国が高潮防波堤の補強対策を決定、他方、管理組合がとる対策は基本的には愛知県の検討待ちで、堀川口の排水水門の工事だけを先行させるのです。そこでうかがいます。詳細な推計値がなくとも防波堤の補強対策は決められるのでしょうか。
国と自治体という管理者のちがいで、検討するデータや防災対策にズレが生じることはないのでしょうか。中電の浜岡原発の防波堤のように、後で想定がちがっていたというようななことでは困ります。高潮防波堤と水門や防潮壁の補強対策は、共通の詳細なデータにもとづき整合性を持って設計されるべきではないのでしょうか。きめ細かい正確な数値はいつ、どんな形で公表されるのか。
各対策は内閣府のマクロデータをもとに詳細な検討を進めている。詳細データは来年6月改訂予定の『愛知県地域防災計画』に合わせて公表
【企画調整室長】名古屋港の防災施設の補強対策は、本年8月に内閣府が公表した南海トラフの巨大地震による地震動・津波高・浸水域等の推計と、より詳細な地形データなどに基いて、国・地方自治体においてそれぞれ、高潮防波堤や海岸保全施設の検討が進められている。
高潮防波堤は、詳細な検討結果が公表されたところ。本組合が管理する防潮壁を始めとする海岸保全施設は、平成25年6月に改訂予定の『愛知県地域防災計画』や愛知県が設置した『愛知県沿岸部における津波・高潮検討会』で検討されている整備方針を踏まえ、必要な対策について検討を進める予定。 いずれも、内閣府のマクロデータをもとに詳細な検討を進めていることから、それぞれで実施する推計結果に大きな違いが生じるとは考えておりません。
なお、堀川口防潮水門の排水水門は、昨年度の門扉強度の検証結果から、現行の地域防災計画の想定津波に対する強度が不足しているので、愛知県等の津波シミュレーションの情報を収集しながら、早急な対策を実施していく。詳細なデータは、津波・高潮の浸水予測図において、平成25年6月改訂予定の『愛知県地域防災計画』に合わせて公表される。
民間も含めた地震・津波発生時の避難施設の整備の進捗は
【山口議員】港湾区域で働く労働者が、津波からどこへどう避難すればよいのか、議会でも何度か質問してきました。
今年8月、鍋田ふ頭コンテナターミナル内に、運営会社であるNUCTが津波避難タワーをつくりました。鉄骨づくりで、避難スペースは2層あり、1層目は高さ10m、2層目は高さ13m、避難時用トイレや備蓄倉庫も備えており計200人の避難が可能としています。タワーの根本にはNP9mの表示があります。液状化の恐れもあるので基礎のくいは47mの深さまで打ったそうです。総工費4700万円とうかがいました。津波避難タワーの完成で鍋田ふ頭(NUCT)ではターミナルの管理棟とあわせて約500人を津波の際に一時避難させるスペースを確保し、岸壁だけでなく船舶の作業員やトレーラーの運転手も含めてこのエリアで働いている人のほぼ全員を収容可能な体制を整えたとのことでした。事業者のこの努力にまず心から敬意を表します。
そこでうかがいます。鍋田ふ頭以外の名古屋港の各ふ頭では、津波避難施設の整備はどうなっているのでしょうか。津波防災施設に対する固定資産税などの減免措置が国の制度として設けられると聞いていますが、鍋田のタワーには適用されるのでしょうか。民間企業での防災施設の整備促進を今後どう進めるのか。お答え下さい。
名古屋港運協会ターミナル部会と協議し、各コンテナターミナルの管理棟を一時避難場所として検討
【防災・危機管理担当部長】飛島村は、臨港地区内に津波避難タワーを2箇所計画することを検討している。本組合もコンテナターミナルにおける津波避難対策について、名古屋港運協会ターミナル部会と協議を行っており、各コンテナターミナルの管理棟を津波の一時避難場所として活用可能かなどの検討を行っている。
また、本組合が事務局となり、名古屋港所在市村および愛知県で構成する「名古屋港所在市村防災連携会議」において、堤外地における津波避難対策を今年度の主な議題として取り組んでおり、各市村においては、堤外地に立地する企業の防災に関わる実情の把握などに努めております。
民間企業が整備する津波避難タワーにかかわる固定資産税につきましては、愛知県の設定する「津波浸水想定」を踏まえて、今後、各市村において作成される「推進計画」に反映されれば減免されるものと聞いております。
運転手も参加する避難訓練を
【山口議員】NUCTでは、11月14日に津波避難タワーも使った避難訓練を行う予定とお聞きしました。ふ頭で働く人だけでなくトレーラー運転手も参加する訓練にしたいとのことでしたが、トレーラーの運転手が車を離れるのは心理的にもかなり抵抗があり、そこが大きな課題だというお話しでした。施設の整備にとどまらず、運転手も参加する避難訓練をさらに重ねていくことが必要だと考えます。避難訓練についてはトラック協会等とも検討すると答弁をいただきましたが、その後の具体化はどこまで進んでいるのか。あわせて答弁を求めます。
就労者数の確認を完了した。避灘訓陳などの実施方法を検討したい
【防災・危機管理担当部長】名古屋港運協会ターミナル部会との協議の中で、各コンテナターミナルにおいては、津波による浸水があることを前提として、避難誘導などについて検討を行っています。現在までに、トラック運転手も含めたコンテナターミナルの就労者数の確認を完了しており、今後は避灘訓陳などをどのように実施していくかについて、名古屋港運協会ターミナル部会と協議しながら検討を進めてまいりたいと考えております。
キーワード:環境と防災、まちづくり、山口清明