名港議会 一般質問① 日中領土問題と名古屋港(2012年11月14日)

日中関係の悪化の影響はどうか、問題解決に向けた国への働きかけを
【山口議員】日中関係の悪化が名古屋港に与える影響について管理者の認識をうかがいます。
 名古屋港にとって中国は主要な貿易相手国のひとつです。昨年(2011年)の名古屋港での外貿貨物の国別取扱量をみると、輸出では、中国が自動車部品、産業機械等の増加等で690万トン、前年比10.2%増と5年連続して第一位です。輸入ではオーストラリアが第一位で、中国は第二位、1166万トン、主な輸入品は、衣服・身廻品・はきもの等で、前年比12.4%増、年々比重が高まっています。昨年11月には、上海港とのパートナーシップ協定も結ばれました。ところが現在、尖閣諸島の領有権をめぐる日中間の対立が激しくなり、外交面だけでなく経済や文化交流の面でも様々な支障が生じる残念な事態となっています。
 この日中関係の悪化から名古屋港が受ける影響はどうでしょうか。名古屋港管理組合は、名古屋港と中国との友好及び貿易の利用促進をはかるため、1985年(昭和60年)から毎年、中国交通部(現在は中国交通運輸部)を通じて中国の各港湾から毎年4名の研修生を受け入れてきました。
 今年も9月に4名が来日し12日間の研修を終えました。開始以来計27回、106名の研研修生を受け入れています。また1997年(平成9年)からは管理組合の職員を中国に派遣し、相互に研修しあう関係へと発展させてきました。
 ところが今年度は、管理組合の自主的判断として、中国への研修生の派遣を見合わせる、という残念な事態となっています。一方で、貨物の行き来にはいまのところ大きな影響はないようです。先日、第三バースがオープンした鍋田ふ頭コンテナターミナルを見てきましたが、対中国向けのコンテナが山のように並び、活況を呈していました。日本と中国の間には、いまさら関係を断ち切れない強い経済的な結びつきが生まれていることを実感しました。しかし、今後については不透明な部分が多いのも事実です。
 さて、尖閣諸島をめぐる領土問題についてですが、この島々が歴史的に見ても国際法上でも我が国固有の領土であることは明白です。問題は、歴代の日本政府が「領土問題は存在しない」という立場に固執するだけで、中国側の主張に対し、外交の舞台で有効な反論や主張を全く展開してこなかったことにあります。領土問題の存在を認めたうえで、冷静な外交交渉を通じて、堂々と我が国の主張を展開すべきだと考えます。
 同時に、物理的な対応を強化し、緊張を激化させるような動きは双方とも自制すべきです。日本共産党はこの立場から、中国大使館を訪れ、直接、大使に向かって、中国国内での日系企業などに対する暴力行為や破壊活動について強く抗議し、在留邦人と企業の安全確保に万全を期すよう申し入れも行いました。
 領土問題は外交交渉で解決する、経済活動の障害になるような対応は慎む、という姿勢が必要です。領土問題など外交上の問題があっても交易を盛んにすること、また交易を伸ばしていくことで平和的な国際関係の確立に寄与することが、各国の港湾関係者には求められています。
 そこでうかがいます。港湾管理者として、日本と中国との関係悪化が本港に与える影響(現状と今後)をどう認識しているのか。活発な交易のためにも管理者として、領土問題の存在を認めて冷静な外交交渉で問題解決にあたるよう、国にも働きかけるべきではありませんか。

大変憂慮し動向を注視していく。関係正常化と日中友好の促進への取り組みを望む(大村知事)
【管理者(大村知事)】名古屋港の平成23年の総取扱貨物量は中国が最大の貿易相手国です。日本政府による尖閤諸島国有化に端を発した激しい反日デモは、現在鎮静化していますが、日本製品の不買の動きにより、中国国内での生産や販売の減少等が見られることから、中部地域の産業経済や本港への影響について大変憂慮しています。
 本港では、中国への派遣交流事業の延期はあったが、直近の統計データでは、本年9月の中国とのコンテナ取扱個数は、対中関係悪化による大きな影響はない。引き続き情報収集に努めながら、動向を注視していく必要がある。
 中部地域のものづくり産業が、引き続き我が国経済の発展を牽引し、名古屋港がこれを物流面で強力に支えていくためにも、日中両国政府においては、速やかに事態の沈静化と収拾を図り、日中関係の基本である戦略的互恵関係を改めて確認した上で、関係正常化と日中友好の促進に取り組まれるよう望んでいます。

領土問題や侵略戦争と植民地支配は事実を認めて問題解決を(要望)
【山口議員】日中関係の悪化は名古屋港の発展にとってマイナスにしかなりません。中国との間に、領土問題が存在していることを率直に認めたうえで、冷静な外交交渉で、堂々と我が国の主張をアピールしながら問題解決をめざすことが現実的な関係改善への近道です。また中国や韓国との領土問題の解決には、日本の過去の侵略戦争と植民地支配をしっかり清算することも欠かせません。
 管理者に要望です。ぜひ、鍋田ふ頭にも出かけていただき、日中交易の最前線の雰囲気をじかに感じていただきたい。港区には留学生会館もありたくさんの中国人留学生が学び暮らしています。今回の領土問題で何か影響が出ていますか、と聞きましたが、特段の変化はないそうです。むしろ原発事故直後の時のほうが、中国から「大丈夫か?帰ってこい」との連絡がたくさんあったそうです。
港からこそ、交易を通じて平和を!とのメッセージを日中両政府に向けて発信していただきたい。研修生の交流事業も継続していただくよう要望しておきます。

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