名港議会 一般質問③ 堀川口水門ポンプ所の24時間管理体制について(2012年11月14日)

業務委託契約者への指導はどうなっているか
【山口議員】今年度から東日本大震災の教訓を踏まえて、堀川口防潮水門は24時間閉鎖可能な体制に移行されました。防災対策として大きな前進です。
 さて防災施設の管理運営は、時として命がけの業務となります。多くの住民の生命と財産を守る重要な仕事であり、私は防災関連の施設は原則直営で支えるべきだと考えます。しかし24時間体制の移行にあたり、厳しい財政状況や人員削減の圧力もあり、業務委託が導入されました。
 いま、この業務委託をめぐって「こんなはずじゃなかった」といういくつかの問題が生じています。以下、問題点を指摘しながら質問します。
 問題の第一は、落札した事業者が、重要な防災施設の管理業務の委託だという契約の性格を十分に踏まえずに低価格で落札したのではないか?そのことが現在も業務の遂行に支障をきたしているのではないのか、という点です。
 管理組合は、業務委託の契約についても予算計上しています。堀川の水門とポンプの業務委託について、業者などから見積もりを提出してもらい予算の目安をたてました。その金額は二年契約で約1億2百万円です。ところが実際の入札ではどうだったか。入札参加10社中7社が1億1千万円以上です。一社だけが7千1百万円台の格安で落札しました。おかしいと思わなかったのでしょうか。
 実はその後、複数の証言で、業務委託というより管理組合の職員の補佐業務だと思って入札に参加したようなのです。社員募集でも電話番とか補助業務だよ、という説明を受けたという人もいました。最初からボタンを掛けえていたのではありませんか。 まちがえて入札したのなら、契約をキャンセルするか、損を覚悟で契約通りにきちんと仕事をして次のもうけにつなげるか、と考えるのが普通だと思うのですが、どうも落札業者には、企業としての責任感と対応能力が欠如しているとしか思えないのです。業務委託なのに、結果的に職員がつきっきりになるような不自然な状態が続いています。最初のひと月やふた月は試行期間だからということもできるでしょう。ところが契約通りに業務が遂行されない状態がなかなか改善されないまま、会社には委託料が全額支払われているのです。
契約先企業への指導はどうなっているのか。あわせてお答えください。

熟度の向上が見られず、厳しく指導監督する
【建設部長】応札者は、委託内容を十分理解した上で、入札に参加したと考えております。契約者には、契約当初に習熟期間を設け、現場責任者や従事者を対象に説明会や訓練を行い、防災施設の認識と操作の習得を図っております。
 一定の期間を経ても熟度の向上が見られなかったので、代表者に対して業務体制の見直しや現場教育マニュアルの作成などの改善を求め、発注者として厳しく指導監督しております。

業務委託ではない雇用形態・契約への変更を
【山口議員】防災施設という性格上、職員が責任をもって管理運営にあたるのが基本です。現在も当然、重要な判断と指示は管理組合の職員が行うことになっています。ところが業務委託という形態では、職場に二つの指示系統ができます。同じ使命感をもって一体的に業務遂行するのが難しいのではありませんか。
 現場でも様々な面で摩擦が起きています。とくに委託業者の職場管理業務が 機能していない、との指摘が相次いでいます。管理組合の職員は業務委託先の社員には直接指導できないのが原則です。ところが指示を現場に伝える体制が何か月たっても確立しない。そもそも水門やポンプについての技術的に十分理解できる管理職が事実上不在となっています。だから9月に台風が来たとき、当然、契約業者も責任者が現場にきて、業務がちゃんと遂行できているか、見守るのが、契約先との信頼関係をつくるうえでも当然と私は思うのですが、責任者は誰も現場に来ませんでした。
 いま現場サイドから、もう会社の管理職には頼れない、自分たちでしっかり仕事も覚えて良い仕事をしよう、とモチベーションを高め、管理組合との信頼を現場レベルで確立する努力も行われていますが、このままで大きな災害に対応できるか、非常に不安です。この際、たとえば現場で職員が直接指示し、一緒に働けるような雇用形態や 契約に変えるべきではありませんか。

現場賢任者と従事者の意思疎通がしっかりと図られれば十分対応可能
【建設部長】業務委託は、水門、ポンプの運転操作や一部の日常点検作業に限って委託する内容になっており、非常時、通常時に関わらず水門開閉時期やポンプの運転台数、運転時間等の判断や指示は現場責任者に対して職員が行うので、現場賢任者と従事者の意思疎通がしっかりと図られれば十分対応可能と考えております。

今後の業務委託の対応は
【山口議員】二年契約の半分が過ぎようとしています。契約の見直しも視野に入れた期限をきった対応が必要と考えます。管理組合としての今後の対応方針について明確な答弁を求めます。

改善の成果が見られない場合は、適切な対応を考える
【建設部長】契約者に対しては、引き続き適正な業務履行を強く求めてまいりますが、改善の成果が見られない場合には、防災業務に支障がないよう適切な対応を考えてまいります。

今後の業務委託の適切な対応は(再質問)
【山口質問】防災対策は、避難施設の整備や防災訓練についても、速度はともかく、着実に進みつつあることがだいたい確認できたと思います。気になるのは堀川口水門の24時間体制の問題です。副管理者に再質問します。
 堀川口水門の業務委託について、「改善の成果が見られない場合、適切な対応を考える」という答弁でした。入札経過や業務委託という判断には問題がなかったが、事業者には問題ありとの認識なのでしょうか。適切な対応とは何を指すのですか。2年契約の半分が近づいています。改善を指導するにも期限を切って迫る必要があると考えますが、いつ頃を目安にするおつもりですか。契約の見直しはあなたの視野に、選択肢に入っていますか。その場合でも現場でまじめに働いている労働者に犠牲を強いることがないように必要な手立てをとる必要があります。イタリア村の時のような解雇事件は二度とごめんです。
 港湾運営の民営化、が叫ばれていますが、この間、名古屋港ではどうでしょうか。イタリア村PFI事業の破綻と運営会社の倒産、大量の解雇、港内航路事業からの撤退、今度は事実上の夜逃げです。そして堀川口水門の業務委託問題です。航路休止についてはちょっと性格がちがいますが、あなた方と契約した事業者で問題がいくつも起きています。ちょっと立ち止まって考えてみてください。
 少なくとも防災業務については、公務と民間との業務のあり方を見直す必要があるとは思いませんか。今日の事態をどう総括しているのか?堀川口水門の事業委託の現状と見通しについて、あらためてあなたの認識をうかがいます。

契約者の業務体制に起因しているので、変更も視野に入れる
【副管理者】業務委託の形態ではなく、契約者の業務体制に起因していると認識している。契約者には、引き続き適正な業務履行を強く求め、改善の成果が見られない場合には、今年度未までには、契約者の変更なども視野に入れた検討を行い、防災業務に支障がないよう対応を図っていく。
 堀川口防潮水門ポンプ所の業務委託の導入は津波に対する対応を強化するため、行政と民間が担うべき業務範囲を明確化し、委託した。限られた人員の中で、速やかに効率的に24時間体制を実現するため、適切な対応だ。これからも安全・安心な港づくりに向け、職員や委託従事者が責任と自覚を持って安全に職責を果たせるよう、しっかりと取り組む。

名古屋港としての責任がきびしく問われている(意見)
【山口議員】今年度末までには、契約者の変更なども視野に入れた検討を行う、との答弁を聞きました。現場の努力をきちんと評価しつつ、防災施設の機能に支障がないようにしっかりやっていただきたい。業務委託の形態ではなく、契約者の業務体制が問題だ、業務委託は適切な対応だという見解でしたが、この点は素直に「はいそうですか」とは言えません。
 イタリア村のときでも会社が悪い、と言われましたが、名古屋港としての責任がきびしく問われたことを忘れないでください。なぜ管理組合との関係でこういうことが繰り返されるのか、契約の手法もふくめ、抜本的に業務のあり方を点検してください。とりわけ防災関係については契約した事業者が悪い、では済まされません。
 港湾の民営化をめぐる問題が今後、焦点になってきますが、いったん立ち止まって、自らの業務の足元を見つめ直す時です。そのことを強く要望しておきます。

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