2013年2月定例会
田口かずと議員の議案質疑 児童虐待防止条例案(2013年3月11日)
児童福祉司と児童心理司の抜本的な増員が必要ではないか
【田口議員】私は、子どもの健やかな成長と発達、人格の形成に重大な影響を与える著しい人権侵害である虐待から、子どもを守る施策を推進するために、条例を制定することは、意義のあることだと考えるものです。そのうえで、提案されている条例案について、逐条的にお尋ねさせていただきます。
まず、第9条「人材の育成」についてです。
2011年10月に名東区で起きた中学2年生の児童が実母の交際男性による虐待によって死亡した事件を検証した『児童虐待事例検証報告書』では、児童福祉司および児童心理司の抜本的な増員が提言されています。児童福祉司については、現在の人口4万6千人あたりに1人の49人から、人口3万人に1人の76人へと増員する必要がある。児童心理司については、児童福祉司との割合を5対1から2対1にすることを緊急の目標とし、将来的は3対2をめざして段階的な増員を行うことが必要であるとされています。私は、この『報告書』で提言された目標の実現をめざして、児童福祉司と児童心理司の抜本的な増員が必要だと考えますが、提案者はどのようにお考えか、お尋ねします。
市の定員、財政状況を勘案しながら、必要に応じ検討すべきもの
【斉藤議員】児童虐待防止のためには、これに携わるものの体制と質を合わせて充実させることは当然必要である。従って、第9条において人材の育成、第19条で体制の整備について規定し条例成立後はそういうことを含め、市全体の定員、財政状況を勘案しながら、必要に応じ検討すべきと考えます。
「地域の相談支援拠点」とは
【田口議員】虐待の予防や早期発見などのための「地域の相談支援拠点」とは、どのようなものが想定されているのですか。河村市長が打ち上げている「学区の総合市民サービス窓口」なるものは、児童虐待の相談にも対応するものとして構想されているようですが、「地域の相談支援拠点」とは、そういうものなのか。あるいは、『児童虐待事例検証報告書』の中で提言されている「中学校区単位で児童虐待対応員を選任し、地域の関係機関の連携を日常的に行う」仕組みなのか。具体的に明らかにしていただきたい。
必要に応じ児童相談所、福祉事務所、保健所などにつなぐ役割を担う拠点が必要
【斉藤議員】児童虐待の予防や早期発見のためには、気軽に地域の相談を受けたり、気になる家庭児童の情報を察知し、必要に応じ児童相談所、福祉事務所、保健所などにつなぐ役割などを担う拠点が必要であると考え規定した。
一時保護での期間を活かして、関係機関を積極的に活用することはどうか
【田口議員】虐待を受けた児童にたいする一時保護について、『児童虐待事例検証報告書』では、「慎重に判断すべきものであるが、子どもの安全確保に資するものであれば躊躇すべきではない」とされています。この指摘は、第13条の中に盛り込まれています。同時に、同報告書では、「一時保護の意味は、単に『子どもの安全確保』それだけではなく」、「子どもや保護者に対するアセスメントや支援、関係機関との連携などを効果的・効率的にできる期間を積極的に活用しなければならない」とされています。本条例案では、この指摘に関しては明文化されていないようですが、この点についてはいかがお考えですか。
一時保護期間中の支援や関係機関との連携をうながすもの
【斉藤議員】児童の命を守り安全を確保するという観点から、第13条で一時保護の必要性の判断、関係機関などとの連携、一時保護解除にあたっての考え方について定めておりますが、これにより、一時保護期間中の支援や関係機関との連携をうながすものになるもので、検証報告書の趣旨に沿った条例である。
「児童の利益を侵害するおそれ」を口実に、再統合への援助、体制の強化が、なおざりにされないか
【田口議員】虐待を受けた「児童と保護者との再統合に向けた必要な指導及び支援」については、「保護者との再統合が当該児童の利益を侵害するおそれがあると認めるときは」、行わなくてもよいという但し書きが付されています。もちろん、子どもの最善の利益が、再統合にあたっての判断基準であり、子どもが再び虐待を受けるような再統合は避けなければなりません。同時に、虐待を受けた子どもと保護者を分離した場合、最終的な目標は、子どもが安心して家庭に戻れるようにすることにあり、そのために子どもと保護者にたいする指導・支援を強化することが必要です。ところが、この但し書きがあることによって、「児童の利益を侵害するおそれ」を口実に、再統合に向けた子どもや保護者への援助、およびそのための体制の強化が、なおざりにされるおそれはないのでしょうか。この点も含めて、この但し書きを付した理由をお聞かせください。
指導支援は、児童の安全が確保される場合でなければならない
【斉藤たかお議員】児童にとっての最善の利益を考えますと、児童と保護者との再統合をはかるため、指導支援はできるかぎり行うことが必要ですが、それは児童の安全が確保される場合でなければならず、かえって児童の利益が侵害されるような場合は再統合を避ける必要があり、あえてこうした考え方を規定したものです。
保育所入所や住まいの確保などの支援から教育支援を特化した理由は
【田口議員】虐待を受けた児童にたいする自立に向けた支援については、児童虐待防止法では、教育支援の他、乳幼児の保育所入所、住まいの確保、進学や就職の支援など、幅広く規定されています。大阪市の条例では、「虐待を受けた児童の保育所への入所」という条項を盛り込んでいます。それにもかかわらず、本条例案では、教育支援だけに特化されていますが、それはどうしてですか。
虐待を受けた児童が十分な教育を受けられることが重要
【斉藤たかお議員】児童に対する自立に向けた支援については、当然、本市においては、児童虐待防止法に沿った対応をしていく必要がございます。今回提案した条例では、特に力をいれるべき支援として、虐待を受けた児童が十分な教育を受けられるよう、必要な措置を講ずることが重要であると考え、第17条に教育支援を規定しものです。
虐待防止施策を飛躍的に前進させる契機にするところに、意義がある(意見)
【田口議員】時間の関係上、委員会での審議に委ねますが、今回の条例の制定は、それ自体が目的ではなく、深刻化する児童虐待に対応するために、本市における虐待防止施策を飛躍的に前進させる契機にするところに、意義があると思います。ですから、市民と議会の英知を結集して、よりよい条例へと練り上げることが大事だと考えます。提案者は、自信をもって本条例案を提案されたとは思いますが、必要があれば条文の修正にも応じるなど、よりよいものとするために、最後まで努力をされるようお願いして、質問を終わります。