名港議会 一般質問① 港の運営を株式会社に任せるのか(2013年3月27日)

港湾運営に利益目的の株式会社でいいのか
【山口議員】名古屋港は国が進める港湾の「選択と集中」政策の中で、国際コンテナ戦略港湾に選ばれませんでした。国は、戦略港湾に選定した東西の二大港湾を念頭に、コンテナ港湾の国際競争力強化を進めようとし、そのなかで港湾運営の民営化が推進されようとしています。
 現時点での民営化とは何を指すのでしょうか。先日の国際競争力特別委員会に提出された資料を見る限り、港湾運営を一元的に管理する特例港湾運営会社をつくり、民の視点でコンテナターミナルの運営を行うことを港湾民営化と称しているようです。そこで先の委員会での報告について、いくつか質問します。
 港湾運営を一元的に管理することが業務とされる特例港湾運営会社には「公共性・公平性の確保」ができ「利益を追及するのではなく、利用者に還元できる主体である必要がある」と説明がありました。だとすれば、この組織には利潤追求が目的の株式会社はふさわしくないのではありませんか。
 利益を追求せずに公共性や公平性を確保するのはまさしく公が担うべき役割ではないのでしょうか。どうしてこれが民営化の中心課題とされるのか理解に苦しみます。お答えください。

一層の効率化へ民の視点を導入し株式会社で
【企画調整室長】利用者ニーズに対応した低廉で質の高い港湾サービスの提供を目指し、港湾運営の一層の効率化を図るため、民の視点を導入して株式会社によって行う。

コンテナターミナルの一元的管理の効果は
【山口議員】コンテナターミナルの一元的管理によってどんな効果が生み出されるのか。

無利子資金の貸付等とスケールメリット
【企画調整室長】業務を一元的に担う主体に対し、無利子資金の貸付等の支援を行うことで競争力強化を図る。公共性や公平性の確保も必要なので、指定後も国及び港湾管理者が監督を行っていく。一元的管理で、ガントリークレーンを始めとした上物施設の管理面でのスケールメリットによる効果等が得られる。

導入しなかった場合に不利益があるのか
【山口議員】名古屋港には既に複数のターミナル運営を担っている会社がありますが、各社の利害調整を担うのも一元的な管理業務だと考えますが、その業務を特定の民間会社に委ねるのが、複数の管理主体が存在する名古屋港にふさわしいやり方なのでしょうか。港湾運営会社制度を導入しなかった場合にはどんな不利益があるのか。

無利子貸付等の支援が受けられなくなる
【企画調整室長】導入しなかった場合、上物整備に係る無利子貸付等の支援が受けられなくなる。

港湾運営会社制度の導入は地方分権に逆行
【山口議員】自治体港湾の運営を国が無理やり方向づけるのは、地方分権化の流れに逆行するのではありませんか。
 むしろ国策としての港湾の「選択と集中」政策に素直に従えば、名古屋港も東西両港の集荷に協力すべきだ、ということになるのではありませんか。

ものづくり産業を物流面で支えたい
【企画調整室長】港湾運営会社は国が指定するが、港湾管理者の同意が必要で、事業内容は港湾管理者が策定する港湾計画に適合することとされております。
 京浜港は東日本から、阪神港は西日本からの集荷を目標にとり組む。国が定めた基本方針では、「中部地域での国際海上コンテナの取扱いは、主に伊勢湾のコンテナターミナル群が連携して担う」とされ、名古屋港の取組の方向性と国の政策は合致している。中部地域のものづくり産業を物流面でしっかりと支えてまいります。

名古屋港独自の整備運営スタイルを国に認めさせることが必要だ
【山口議員】東西両港を念頭に置いてつくられた港湾運営モデルに、無理やり名古屋港の運営を合わせるのではなく、名古屋港独自の整備運営スタイルを国に認めさせることこそ必要ではありませんか。わかりやすく答弁してください。

民間ターミナルの先駆的な手法を維持・発展させ、全てのターミナルで制度の恩恵を享受できるよう、国と調整を進めたい
【企画調整室長】これまで民間活力を積極的に導入し、各時代に最適なコンテナターミナル整備手法で施設整備・管理運営を行ってきたため、複数の管理運営主体が存在しています。そのため、新たな制度には、関係者による協議会を設置して協議を進めて、先般、特例港湾運営会社の候補となる主体を名古屋港埠頭株式会社と想定して検討していくことが合意されたので、具体的なメリットを整理・検証していく。
 これまでの民間のターミナル借受者による先駆的な手法を維持・発展させ、全てのターミナルで制度の恩恵を享受できるよう、国とも必要な調整を進めながら検討していく。

株式会社しかできない港湾サービス、運営の効率化とはなにか(再質問)
【山口議員】特例港湾運営会社は自ら積極的に利益を出すものではないが、利用者ニーズに対応した低廉で質の高い港湾サービスの提供をめざして、株式会社によって民の視点を導入して、港湾運営の効率化を図る。やっぱりよくわかりません。民の視点で言いながら、その株式会社は公が管理・監督する、設立にも港湾管理者の同意がいる、こんな民間会社があるのですか。再度、数点うかがいます。
 特例港湾運営会社が、公共性・公平性、各社(者)の調整機能を重視するなら、名古屋港管理組合が担えばいいじゃないですか。一元的管理によるスケールメリットは株式会社化とは関係ありません。
 株式会社でなければできない港湾サービス、運営の効率化とは何をさすのですか。

スケールメリットを活かし、ニーズに対応したサービスが提供できる
【企画調整室長】株式会社化で事業執行などに関しても経営の自由度が高まり、迅速な経営判断が可能になり、一元的管理によるスケールメリットを活かしながら、利用者ニーズに対応した港湾サービスが提供できるのではないか。

特例港湾運営会社は国の支援の受け皿か
【山口議員】導入しないとどんな不利益があるか、国からガントリークレーンなどの上物整備にかかる無利子貸し付け等の支援が受けられなくなる、としか回答がありませんでした。特例港湾運営会社は、国の支援の受け皿としてしか存在価値がないということですか。

低コストで高質なサービスを提供する主体に
【企画調整室長】港湾運営会社は、支援の受け皿としての役割だけではなく、埠頭群の運営の効率化に資するため、効率的なターミナルの一体運営の促進など、民の視点による低コストで高質なサービスを提供する主体であることが求められております。

利益を目的にしない会社へ出資する会社とは
【山口議員】利益を出すのが目的ではない会社に出資する会社があるのですか。また出資バランスがくずれると公正・公平な調整機能を損なうのではありませんか。

出資は今後の課題。公共性・公平性は国及び港湾管理者がチェック・監督する
【企画調整室長】港湾運営会社の目的を理解いただきながら出資をお願いすることは、今後の課題の一つ。港湾運営会社の公共性・公平性は、国及び港湾管理者が運営計画等をチェック、監督することで確保していく。

屋上屋を架して、効率化を阻害しないか
【山口議員】そんなところまで管理監督される会社が民の視点で運営されると言えるのでしょうか。港湾運営の民営化のイメージがまったく見えてきません。ターミナル運営を担う会社が既に存在し、国から直に貸付を受けているのに、わざわざ間に新たな会社を挟む、屋上屋を架して、効率化を阻害するとしか思えません。いったいどんなメリットがあるのか、もういちど答えてください。

無利子貸付金や国有岸壁の低廉な貸付など、コスト低減や高質なサービスの提供が可能に
【企画調整室長】港湾運営会社に対して行われるガントリークレーン等の上物施設の整備への最大8割の無利子貸付金や国有岸壁の低廉な貸付などにより、施設提供コストの低減や民の視点による利用者ニーズに対応した、高質なサービスの提供が可能になるのではないか。
 今後、港湾運営会社制度の導入判断に向けてメリット・デメリットを検証し、関係者の意見を幅広く聞きながら対応したい。

名古屋港の独自性こそ国にアピールを(意見)
【山口議員】新しい会社をつくるのは、コンテナターミナル・港湾の管理運営の仕事をより複雑にし、効率化に逆行するとしか思えません。
 またメリット・デメリットの検証と言われましたが、制度導入に伴うデメリットもあるということなのであわせてよく検討してください。
 国の基本方針では、名古屋港は中部地域のものづくりを支える港だと位置づけられていると、答弁されました。その通りです。東西両港とはちがうのです。例えば国の基本方針では、近畿について、中国・四国・九州地域の広域から貨物を集約する、と書いてある。中部はどうですか。中部のなかでも東部は京浜港と連携せよ、とあります。北陸は、東アジアやロシアとの航路誘致を行うとあり、伊勢湾に貨物を集約するとはなっていません。
 東西両港と規模も役割や機能もちがうのに、同じ港湾運営の仕組みが必要ですか。名古屋港の独自性こそ国に強くアピールすべきです。
 この民営化議論は今後も続けたいと思いますが、今日はこのくらいにしておきます。

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