2013年6月定例会
山口きよあき議員の議案質疑・職員の給与削減条例 (2013年6月14日)
「市長等及び職員の給与の特例に関する条例の一部改正について」
《参考》市長提案理由:ラスパイレス指数の状況などを勘案し、給料を臨時的に削減するための改正を行う。具体的には、給料引下げ等で、現行水準からさらに平均1.1 %引き下げる。遅くとも7月から実施するよう、国から強く求められている。求められているからやるものではないが、要請があることも事実。ラスパイレス指数の再調査が7月1日を基準日に行われると聞いており、せっかく一肌脱ぐなら、7月から実施したい。
条例内容・一般職等の給料を3%削減。 ・管理者、教育長、局長級、部長級は現行特例△2%→△5% ・固定資産評価委員、課長級は △1%→△4% ・係長級、係員は 新たに △3%。 ・地域手当を2%加え、差し引き1%の減額。平均年収618万円→615万円 ・期間は7月1日~来年3月31日 |
《 山口議員の質問》
国の要請に対する市長の認識を問う
【山口議員】この条例は、職員等の給与を今年7月から来年3月まで臨時的に削減するものです。給料月額と地域手当をあわせた削減率は、役職に応じて給料の3%、2%、1%です。その結果、既にこの5年間で約90万円も減らされてきた職員の平均年収がさらに約3万円減らされます。削減率が大きい管理職のみなさんも大変です。
まず問題なのは、この条例の背景にある国の地方自治体に対する姿勢です。国家公務員の給与を平均で7.8%削減することを定めた「国家公務員の給与の改定及び臨時措置法」では、わざわざ附則第12条で「地方公務員の給与については、地方公務員法及びこの法律の趣旨を踏まえ、地方公共団体において自主的かつ適切に対応されるもの」として、国に従って自治体も給与を削減しろと強要しています。
さらに今年、7月からの給与引き下げを前提とした地方交付税法の改正で、地方固有の財源である地方交付税を給与削減推進の道具として使いました。この国の姿勢について、地方六団体は相当厳しい批判的見解を何度も出し、先日は愛知県知事が「国が求める給与削減には応じない」と態度表明しました。さて、市長はどうでしょうか。「国から強く求められているから」と提案理由を説明しましたね。条例のもとになった、国からの乱暴な地方公務員給与引き下げ要請、しかも地方交付税を人質にしての強権的な介入は、地方自治の根幹を否定するものであり断固拒否すべき、と考えますが、市長の認識はどうですか。国からの強制を甘んじて受け入れるつもりですか、まずうかがいます。
ラスパイレス指数をもとにした給与改定でいいのか
第二に、削減率が国の要請した数字とちがうからといって、名古屋市独自の自主的な給与削減といえるのか、という点です。
市当局がいちばん気にしているのはラスパイレス指数です。この指数が全国一高いと言われるのはかなわん。この機会に下げてしまえ、というのが給与削減の最大かつ唯一の理由のようです。そのラスパイレス指数について、三宅前総務局長は2月定例会で「職員の平均年収は全政令市中16番目の水準、ラス指数は、国の職員構成を基準として、一般行政職の給料のみを比較する手法であり、給料の引き下げのみが反映され、1位と公表される結果となった。職員の実感とは大きなかい離がある」と答弁しています。地方六団体の今年一月の共同声明には「ラスパイレス指数のあり方を含め給与と手当の総合的な比較を行」い改善することを国に求めています。つまり、ラスパイレス指数は給与削減の根拠にすべきでない、とみなさんも考えていたはずです。
市長、ラスパイレス指数をもとに給与を削減するのは問題とは思いませんか。あなたがやるべき仕事は、この指数の問題点を市民の前に明らかにし、市民と力をあわせて、国に改善を迫ることではないのですか。
ラスパイレス指数からの給与削減は、情勢適応の原則から逸脱ではないか
総務局長にもうかがいます。職員給与は地方公務員法第14条「情勢適応の原則」に従い、人事委員会の勧告にのみ従って決めるのではないのですか。ラスパイレス指数を給与改定の理由にする法的な根拠はありますか。答えてください。
ラス指数1位は人聞きが悪い。国から言われたからと屁理屈を言うより、公務員の方が高いから下げる
【市長】国から言われたからということでは全然ありません。某テレビ局に出た時「ラスが1番じゃないか」と言われ、他の自治体の部長さんからもそういう電話いただいたこともある。私が市長になった時、平均給与が689万で今618万まで下がっており、20位中16位と大都市では最低だと言ってもなかなか分かってもらえない。はっきり言って人聞きが悪い。理屈を言ってもなかなか分かってもらえませんので、ラスはラス、必要な引き下げを行う。民間の給与から考えると、明らかに公務員の方がいい。こういう時期に、国が言ったから下げんと屁理屈をいうよりも、やっぱり下げる分は下げる。議会も役人もパブリックサーバントとして、納税者にとにかく奉仕するというのがわたしの基本ですので、これでもまだ私は十分だと思っておりません。
ラスパイレス指数は一面的な指標。名古屋市職員の年収は16位と低いが、ラス1位と公表されたことで誤解を受けないようさらに年収を下げる
【総務局長】ラスパイレス指数は、国の職員構成を基準として、一般行政職の給料のみを比較する指標であり、給与水準の指標としては一面的なものである。職員の給与水準の指標としては年収が適切であると考え、機会を捉え国にも伝えおります。本市は、情勢適応の原則に即して、毎年の人事委員会勧告を踏まえ、適正な給与水準となるよう給与改定を実施してきており、この姿勢は今後も堅持したい。本市のラスパイレス指数が政令指定都市中1位と公表されたことは、職員の年収の実態とかい離しており、市民の誤解を招くので、その是正が喫緊の課題と認識し、今回、臨時的な措置としての給料カットを実施する。
ラスパイレス指数を根拠削減するのは、情勢適応の原則からの逸脱だ(再質問)
【山口議員】ラスパイレス指数は一面的な指標、市長も総務局長も批判された。それなのに、削減の根拠はその一面的で実態とかい離しているこの指数を根拠に給与を削減する。市民の誤解を招くと言いますが、誤解のもとは職員給与ではなく、ラスパイレス指数の方です。職員の平均年収は16位なのに、ラスパイレス指数1位を理由にして職員給与をさらに削れば市民はどう思いますか。やっぱり職員の年収はまだ高かったんだと、市民の誤解をかえって広げるじゃありませんか。あまりに道理がない提案です。ちなみにラスパイレス指数第2位の川崎市は、今回、国の削減要請を拒否しています。
さて、総務局長は、情勢適応の原則に即して、人事委員会勧告を踏まえて適正な給与水準とする姿勢を堅持する、と答弁されたが、それならなぜ一面的で年収の実態を反映していないラスパイレス指数を根拠に給与を削減するのですか。職員の給与水準の指標は年収が適切だと答弁しましたね。言ってることとやってることが矛盾しているじゃないですか。ラス指数の改善だけを根拠にした給与削減は情勢適応の原則からも逸脱していませんか。再度答弁を求めます。
人事委員会勧告を踏まえ、適正な給与水準としたい
【総務局長】年収ベースにというのは何度となく国に要請している。社会一般の情勢には国や他の自治体の動向も含まれているものと認識している。今後とも従来どおり、情勢適応の原則に即して、毎年の人事委員会勧告を踏まえ、適正な給与水準となるよう給与改定を実施したい。
働く人々の懐を温めるために力を尽くせ
【山口議員】結局、ラスパイレス指数を使って給料を削る、国と同じじゃないですか。さらに言えば、公務員給与の引下げは景気回復にも逆行します。いまや安倍首相でさえ財界に報酬引き上げを要請する時代です。景気の回復には、企業収益の改善だけではなく、中小企業の設備投資や家計所得の改善が不可欠です。働く人々の懐を温めるために力を尽くす時です。
キーワード:税、地方自治体と住民参加、山口清明