名港議会 一般質問② 名古屋港の防災について(2013年6月11日)
防潮壁の海側の約1,100事業所、約3万5千人への必要な対策を
【山口議員】この間、南海トラフ巨大地震に関する報告があいつぎました。
5月24日、政府の地震調査委員会は南海トラフを震源とする巨大地震の発生確率について今後30年以内にM8以上の地震が起こる確率を60~70%と公表しました。M9レベルの発生確率は算出せずとしています。そのM9レベルの巨大地震について、5月28日には国の有識者による検討会が南海トラフ巨大地震対策についての最終報告書をまとめました。精度の高い地震予知は困難として、減災対策に重点をおくべきとされました。5月30日の愛知県防災会議では南海トラフ巨大地震の被害想定が市町村別に発表されました。多くが震度7と想定される名古屋港に関係する5市町の合計では死者数5,440人、建物の全壊・喪失は8万5,800棟です。名古屋市では想定死者数4600人のうち半数の2300人が浸水・津波によるとされました。被害想定の前提となる防波堤や防潮壁の河川堤防の被害いかんで、犠牲者数は大きく変わってきます。水際対策、港湾での防災・減災対策が多くの人命を左右するといっても過言ではありません。
さてそこで、提案と質問です。
名古屋港管理組合は、国、県、そして各市村それぞれの被害想定と地域防災計画の策定を受けて、そこから自らの防災計画をたてるスタンスを基本としていますが、そうした受け身の姿勢でいいのでしょうか。港湾の防災上必要な課題は名古屋港管理組合から県及び各自治体に提起すべきではありませんか。
具体的には、臨港地区内の労働者等の実態を正確に把握し、その人数に見合う津波避難施設の数を試算して、各自治体に示す必要があるのではないでしょうか。とくに物流・運送関係の労働者の把握はそれぞれの自治体レベルではなかなか難しいのが実態です。名古屋港では防潮壁の海側で約1,100の事業所があり、約3万5千人の港湾関係者が働いています。業界のみなさんの協力も得ながら、管理組合が率先してまず正確な実態を把握していただきたい。
県や関係市村に意見をいっている
【防災・危機管理担当部長】本組合は「愛知県東海地震・東南海地震・南海地震等被害予測調査」検討会に参画し、愛知県及び本港の所在市村に意見を述べています。
また、「名古屋港所在市村防災連携会議」は、津波避難対策について重点課題として取り組み、臨海部立地企業の防災対策の把握に向けたアンケートを実施しました。この中で、中小企業の避難対策の促進の必要性を所在市村と共有し、所在市村と連携しながら、津波避難施設の指定に向けた取組に努めていきます。
取組の一環として、飛島ふ頭北及び南コンテナターミナル管理棟は、平成25年5月17日に一時避難場所として協定を結んでいます。
民有港湾施設の維持管理状況の把握はどうか
【山口議員】先日成立した改正港湾法では、港湾の防災・減災に関してもいくつか新しい事項が盛り込まれました。大規模な地震等により東京湾・大阪湾・伊勢湾の三大湾において、大量の漂流物や護岸の被災等により船舶の入出港が困難となり、湾内の港湾機能が長期間麻痺する恐れがあるとし、必要な対策を国や港湾管理者等が行うようにされました。この改正にもとづく名古屋港及び伊勢湾の防災課題について質問します。
法改正では、港湾施設の適切な維持管理を推進するため、港湾管理者が港湾施設を管理する民間事業者に対し、その施設の維持管理状況について報告を求めるとともに、必要な勧告又は命令ができることとなりました。
そこでうかがいます。港湾管理者が新たに維持管理状況をチェックすべきとされた民有港湾施設とは名古屋港では具体的にはどこになるのか、港湾管理者として何をチェックするのでしょうか。
国会審議では、立ち入り調査ができる範囲が護岸だけでは不十分で、コンビナートなど背後地の例えば液状化対策まで点検できるようにすべきではないか、との質問に対し、国土交通大臣も前向きな答弁をしています。この点も踏まえて管理組合としてどんな問題意識をもっているのか、お答え下さい。
航路沿いの岸壁や護岸を想定
【防災・危機管理担当部長】民間事業者が管理する港湾施設とは、地震や津波に被災した場合の航路沿いの岸壁や護岸が想定されます。その対象となる港湾施設や点検方法は、現在、国において検討中です。
浮屋根式石油タンクに基準に不適合がある
【山口議員】具体的な問題として一つうかがいます。巨大地震により被害が予想されるものに浮屋根式の巨大石油タンクがあります。タンク容量1万キロリットル以上の巨大タンクで必要な改修が済んでおらず基準に適合していないものが港区内だけでもの空見地区と潮見地区にあわせてまだ3つ残っています。伊勢湾全体ではいくつ残っているのかはわかりませんが、港湾管理者としても危険物タンクの維持管理状況をチェックすべきではありませんか。
また国は、非常災害時に重要な航路においては所有者の承諾なしに漂流物の除去を行うとし、また船舶の退避場所として航路外に必要な泊地を整備できるとしました。しかし新たな浚渫が必要となればその費用や環境への影響も十分に考慮しなければなりません。
消防などと連携しながら対応する
【防災・危機管理担当部長】背後地や巨大石油タンクは、消防など関係部局と連携しながら対応する必要性があると考え、港湾施設の適切な維持管理に努めてまいりたい。
広域的な協議会の範囲などの構想は
【山口議員】さらに災害時の港湾機能維持のために広域的な協議会の設置が法改正で盛り込まれました。伊勢湾の安全を考えた時、四日市のコンビナート群の安全確保は他人ごとではありません。南海トラフの巨大地震と津波による港湾被害への対策は、伊勢湾・三河湾の全体で広域的に検討する必要があります。陸上の防災対策が国から県、県から市町村へと細かく具体化されていきますが、港湾の備えは逆に広域的に取り組むことが重要になってきます。
この広域的な協議会について、どんな課題を地域的にはどの範囲で設定し、設置する必要があるとお考えでしょうか。
国や関係機関と調整を図りながら連携したい
【防災・危機管理担当部長】大規模災害時における港湾相互の連携のあり方について検討することは、大変重要な課題です。港湾広域防災協議会が三大湾を対象に災害時における港湾機能の維持に関し湾内の港湾相互の連携について協議を行いますが、その連携内容や、連携する港湾の考え方をはじめ、設置に関しては国や関係機関と調整を図りながら連携したい。
名古屋港の防災危険度マップの作成を(再質問)
【山口議員】防災上必要な課題については愛知県及び本港の所在市村に意見を言い、連携して対策を進めているとの答弁でした。みなさんの努力には敬意を表します。でも、もう一歩すすめてほしい。
みなさんの努力、問題意識、努力と改善成果の「見える化」を進めましょう。
名古屋港及び伊勢湾の防災上の課題、対策が必要な港湾施設や危険はどこにあるのか、避難施設の配置状況などを地図におとして誰にでもわかるようにしませんか。港湾の防災上の課題について、関係自治体はじめ議会や県民市民の間でわかりやすく現状認識を共有するために、ハザードマップに準じた「名古屋港及び伊勢湾の防災危険度マップ」の作成を提案したい。
わかりやすい形での情報提供に努めたい
【防災・危機管理担当部長】被害想定は、有識者による「名古屋港管理組合防災計画検討会」において、港湾施設や貨物の取扱状況などを勘案して検討を進めている。
今後は、愛知県が公表予定の被害想定と整合を図りつつ、「名古屋港の防災危険度マップ」も含めて検討し、所在市村や港湾関係者などへ被害想定や今後の対策について、わかりやすい形での情報提供に努めます。
視覚に訴えるわかりやすい形での情報提供を(意見)
【山口議員】管理組合としても港のどこが危ないのか、どこに逃げればいいのか、県や市村の地域防災計画にとり入れてほしい課題は何か、など視覚に訴えるわかりやすい形での情報提供をよろしくお願します。
国の指示・指針待ちをあらためよ
【山口議員】民有港湾施設の維持管理は「国において検討中」との答弁でした。広域的な協議会についても「国や関係機関と調整を図りながら連携してまいりたい」との答弁です。この姿勢が問題です。
国からの指示や指針を待つ受け身の姿勢をあらためるべきです。実は昨日、国土交通省の担当者と交渉する機会があり、私は「航路閉塞を防ぐためには民有港湾施設の液状化対策やコンビナ―トの危険性についても、港湾管理者がチェックできるように国の指針に盛り込んでほしい」、「広域的な協議体については南海トラフ巨大地震を考えると伊勢湾だけでなく三河湾も一体で考える必要があるのではないか」と述べてきました。管理者からも国に対して指針が出る前に問題提起していただきたい。専任副管も地方分権の観点から新たに選任したこの機会に、国からの指示待ち、指針待ちの姿勢をあらためていただきたい。地方分権の観点から国にもっとモノを言うべきと考えますが管理者の認識をうかがいたい。
国との緊密な連携・協力は欠かせない(管理者)
【管理者】名古屋港は日本一の港であり、この地域がものづくり産業の中枢として引き続き強く発展するためには、地域の特性・実情にあわせて独自に発展できる仕組みへと港湾管理を変えていくことが不可欠と考えております。
一方で、本港は大規模港湾でもあり、南海トラフの地震対策、防災対策などには、国との緊密な連携・協力は欠かすことができません。
今後は、地方分権と国との連携、双方のバランスを上手く取りつつ、本港の国際競争力の強化はもとより、防災、物流、産業、都市機能の面でも、本港を核とした地域づくりを考えていくことが重要です。
自治体港湾としての自覚をもった取り組みを(意見)
【山口議員】国との連携・協力は否定しませんが、自治体港湾としての自覚をもって、しっかり取り組んでいただきたい。戦略港湾の問題でも防災対策の問題でも、先手、先手で国に働きかける姿勢を忘れずに港湾運営にあたることを強く要望します。
キーワード:環境と防災、まちづくり、山口清明