名港議会 一般質問② 名古屋港でのコンテナ破裂事故について(2013年11月5日)

8月16日の名古屋港でのコンテナ破裂事故について

事故を議会に情報提供しなかった理由は演壇
【山口議員】8月16日午前3時49分頃、鍋田ふ頭コンテナターミナルで、20フィートのタンクコンテナが破裂する事故が発生しました。破裂というより爆発です。
 コンテナは吹っ飛び、周囲のコンテナ8本が破壊され、ターミナル管理棟の窓ガラスも割れ、約6000㎡にコンテナの破片やタンクに入っていた液体が飛び散りました。コンテナタンクには、中国・上海から輸入され、二日前に荷揚げされていた作物用肥料の原材料となるシアナミドが入っていました。シアナミドは刺激性があり皮膚に触れると炎症を起こす可能性がある物質です。港で取り扱う際には港長の許可が必要な、毒性がある液体の腐食性物質とされていますが、消防法による危険物には指定されておらず、事故があったタンクコンテナは一般のコンテナとして、危険物貯蔵ヤードではなく普通のコンテナヤードに置かれていました。
 爆発した時間が早朝だったこと、場所が市街地でなかったこと、コンテナの移動中でなかったことなど、いくつかの偶然が重なり、結果的にケガ人はなく、大きく報道されませんでしたが、一歩間違えたら取り返しのつかない大惨事となっていた重大事故です。この事故を受けて、全国の港でシアナミドの取扱いが中止され、輸入が全面的にストップするという事態になりました。
 ところがこの事故について、名古屋港管理組合からは私たち議員に対して、情報提供ひとつありませんでした。まさか鍋田ふ頭を運営しているNUCTの問題で、管理組合は関係ないという姿勢ではないですよね。これほどの重大事故なのに、なぜ議会に対し情報提供をしなかったのか。この事故についてどう認識しているのかうかがいます。

港の機能に影響が少なく、人的被害もなかった。早朝で作業員がいなかったことが幸い
【港営部長】コンテナ破裂事故の発生を受け、直ちに名古屋港埠頭(株)とターミナル借受者の名古屋ユナイテッドコンテナターミナル(株)(NUCT)から事故報告を受けた。ターミナル内における管理棟や荷役機械等のガラスや、周辺のコンテナ破損等の物的な被害があったものの、港の機能に大きな影響を与えるものではなく、人身に関わる被害もなかったため、議会への報告は行わなかった。
 発生時刻が早朝であり、コンテナターミナルの稼動前で作業員がいなかったことが幸いだったが、発生時刻によっては人的被害にも及ぼしかねない大きな事故やあったと認識している。

事故の経過、原因と対策はどうか
【山口議員】あわせて事故の経過、原因と対策について、把握している範囲で答えてください。

輸入した薬品の安定剤の品質が悪くガスが発生し爆発
【港営部長】事故の発生を受け、直ちに原因と対策が明確になるまで、港湾運送事業者においてはシアナミドの取扱いの自粛規制が執られている。現時点における荷主の調査によると、事故の原因は、今回、中国から輸入したシアナミドについて、安定剤として添加されているリン酸の量が通常レベルよりも高く、品質が悪かったため、シアナミドの化学反応が起こり、反応熱によりアンモニアガス等の発生で、コンテナの内圧が上がり破裂したものと聞いている。
 今後の対策として、荷主は、品質低下の原因と対応が確立するまで、中国製の輸入は行わず、信頼性が高いドイツ製の輸入のみとし、更に、安全性を確保するため、タンクコンテナは使用せず、リーファーコンテナを使用し、シアナミドの変化によるガス発生が起こらない5℃冷蔵下で輸送することを検討しているとのことです。

シアナミド(Cyanamide)とは
化学式 H2N-CN で表されるアミド化合物である。化成品原料や肥料として利用される物質であり、医薬品としても使用される。刺激性を持ち、皮膚に触れると炎症を引き起こす。日本では毒物及び劇物取締法で毒物に指定されている。
タンク・コンテナ(tank container)

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リーファー・コンテナ(Reefer container)
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油類、化成品、各種ガス、濃縮果汁、原酒、食品原料などの液体や気体を輸送するためのタンクを備えたコンテナ。洗浄技術の向上によりさまざまな用途に転用でき効率的な運用を図ることができることからISO規格長さ20ftのものの普及が急速に進んでいるが、特殊化成品や各種ガスの小ロット輸送用の長さ10ft型および、ヘリウムガスなどの各種軽量ガス輸送用の40ft型も存在し、日本国内でも部分的に運用されてきている。用途により様々なコンテナ外観・タンクの高さ・口径種類の他、積荷により加温・保温機能や荷役設備などの、各種装置を備えている。
生鮮食品や低温輸送が必要な化学製品、医薬品、電子部品、フィルム、美術品などの輸送のためのコンテナであり冷凍コンテナとも呼ばれる。コンテナ内部に外部電力給電式の冷却・保温ユニットを備え、+20℃から-25℃程度までの冷却と保温が可能。また、ディーゼルエンジン発電機搭載式と従来の外部給電式の併用タイプもある。日本国内での運用には、長さ20ft級コンテナでは大多数が高さ8ft6in型で、9ft6in背高タイプはごく稀である。しかし、長さ40ft級コンテナでは9ft6in背高タイプが近年の日本の道路交通法の緩和と、経済性から多用されている。

危険物扱いされない危険物がターミナルに蔵置
【山口議員】名古屋港の発展に伴い、取り扱う貨物の種類も増え、また飛島村に続き、弥富市域でのコンテナ取り扱いが急増しています。それに伴う安全管理上の問題は大きな課題です。ところが危険物についての扱いが、消防法と海上や港湾での船舶輸送に関する法律や規則によって大きな違いがあるのです。
 船舶航行上の危険防止に関する事項を定めた船舶安全法や、港への入港や貨物の積み下ろしに際して港長の許可や指揮が必要な危険物を定めた港則法では、危険物輸送に関する国連勧告に定められている危険物リストに基づき、危険物が指定されています。
 一方、消防法は船舶安全法や港則法とは異なる基準で危険物が指定されています。そのため、シアナミドのように船舶上では危険物であったものが陸揚げされたとたんに普通貨物になってしまうギャップが生じているのです。
 通常のコンテナヤードに、危険物扱いされない危険貨物が置かれている。この現状について管理組合はどういう認識をお持ちですか。安全管理対策としてこれまで何をしてきましたか。それは十分だったのでしょうか。今回の事故の教訓を踏まえての答弁を求めます。

取扱いマニュアルの改定に取組んでいる
【港営部長】危険物貨物は、海上では船舶安全法や港則法に、陸上のターミナル内の蔵置は消防法に定められ、当該貨物のおかれた状況に応じ、各々法令に基づき必要な対応が図られている。
 コンテナターミナル内は、危険物を蔵置するヤードとして所轄の消防署と協議の上、隔壁、消火設備等の防護設備を設置し、港湾運送事業者も、危険物コンテナは消防署の承認を得た上で危険物ヤードに蔵置しており、適切に対応している。
 今回の事故を受け、港湾労働災害の防止の観点から、港湾運送事業者を始めとする関係者により、危険物の輸出入に係る取扱いマニュアルの改定に向けた取組が進められている。

コンビナート防災に準じた防災体制の強化を求めよ
【山口議員】事故の対応にあたったのは弥富市や飛島村などを管轄する海部南部消防組合です。先日、直接お話を聞いてきました。
 事故後の対応について、流出した液体の回収方法として、おが屑に液体を吸収させてドラム缶43本に詰める処理をしたが、その数時間後に数本のドラム缶からアンモニアガスや炭酸ガスなどが漏れ出す事態となった。可燃物におが屑を混ぜる処理方法には検討の余地がある、とのことでした。
 破裂したタンク内の化学物質が何であるか、輸入業者に聞かないとわからない、現場で取り扱う業者も化学物質の名前は知らされていても化学反応で熱を帯びた時の消火方法はわからない、これが現状です。
 神戸や四日市の消防などからも事故についての問い合わせがあったというお話でしたが、港湾を所管する消防本部同士の情報交換はほとんどありません。飛島に出張所はありますが、鍋田へのターミナル拡張に伴う消防体制の拡充もとくにありません。大丈夫なのか。
 港湾において、コンビナート地帯には法律上も特別の防災体制が敷かれていますが、コンテナターミナルは普通の事業所扱いです。しかしそこで取り扱う貨物には多くの危険が潜んでいるのです。
 コンテナターミナル=輸出入貨物を扱うエリアの消防力について、コンビナート防災に準じて、防災体制の強化を愛知県や国に対して求める考えはないかか、答弁を求めます。

関係者との更なる協力・連携を図る
【港営部長】石油コンビナートなど大量の石油や高圧ガス等が取り扱われる区域は石油コンビナート等災害防止法により、特別防災区域として愛知県を始め、消防、特定事業者等により防災体制がとられている。
 コンテナターミナルとは取扱いが異なる。コンテナターミナル内における安全対策は、関係者との更なる協力・連携を図っていく。

新しいマニュアルで危険物チェックができるか(再質問)
【山口議員】もし市街地を輸送中にこの事故が起きたら、と考えるとほんとにぞっとします。現に コンテナ運送中の爆破事故も過去に発生しています。重大な事故との認識があるなら、少なくとも管理組合議会の議員には知らせてください。
 それぞれの法にもとづく対応はきちんとやっている、との答弁ですが、それでも事故が起きたのです。危険物ヤード以外に普通に置かれた貨物が問題なのです。
 さて、取扱いマニュアルをつくっているとの答弁もありました。海上コンテナの安全確保について法改正は見送られたが、積み荷に関する情報を運転手に詳しく伝えるなどのマニュアルがつくられたと聞いています。
 新しいマニュアルはどのようなものか。今回のシアナミドのような海上では危険物、陸上では普通貨物という製品のコンテナでの運搬については、新しいマニュアルでチェックできるのですか。コンテナゲートでは危険物の積載についてどうチェックするのか。答えてください。

危険物に関する貨物情報の伝達も含まれる
【港営部長】国が本年6月に策定した「国際海上コンテナの陸上における安全輸送マニュアル」は、過積載や偏荷重等の自動車運送する上での不適切な状態を改善するため、荷主、トラック事業者、運転者、船会社、ターミナル内の港湾運送事業者等の関係者が情報共有を図るための、具体的な取組内容が記載され、危険物に関する貨物情報の伝達も含まれている。

今後の安全確保対策は(再々質問)
【山口議員】この問題は港湾管理者だけの問題ではありません。警察や消防など愛知県をはじめ各自治体との連携が重要となります。
 自治体行政の現場で長年働いてこられた専任副管理者ですから、こちらの問題ではもう少し具体的にお願いします。今回の事故への認識と今後の安全確保対策についてどうお考えなのか、をうかがいます。

港湾関係者の協力関係を一層深める(副管理者)
【専任副管理者】今般のコンテナ破裂事故は、大きな事故でしたが、幸い港の機能に大きな影響を与えるものではなかった。しかし、本港の機能に支障がでると、ものづくり産業のみならず、日本経済に与える影響も大きく、港の安全確保は大変重要なことと認識している。
 本組合は、事故や災害に迅速かつ的確に対応するため、24時間365日対応の危機管理室を設置するなど、港湾管理者としての危機管理体制を強化しており、引き続き、名古屋港所在市村の防災部局や警察、消防、そして港湾を利用する関係者との協力関係を一層深めて、安全・安心な港づくりに鋭意取り組んでいく。

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