2014年2月議会
山口清明議員の個人質問①防災対策(2014年3月6日)
南海トラフ巨大地震の新たな被害想定をふまえた防災対策について
防波堤や水門など防災施設に名管への県市負担金を活用すべき
【山口議員】南海トラフ巨大地震の新たな被害想定を踏まえた防災対策について、ハードとソフトの両面からうかがいます。2月に発表された、市独自の新たな被害想定では、市内の約四分の一が浸水します。これだけ浸水範囲が広がる前提には、「堤防が地震発生と同時に75%沈下し、越流によって破壊される」「水門や護岸などのコンクリート構造物も倒壊する」ことがあります。
逆に言えば、海岸や河川など水際の防災施設が一定の強度を保ち、防災機能を十分に発揮すれば、浸水を減らせる可能性も大きいのです。
ところで市内にある水際の防災施設は名古屋市が整備強化するのでしょうか。庄内川は国、新川や天白川は県、海岸線と中川運河、堀川のかなりの部分は名古屋港管理組合の管轄です。名古屋市が直接、整備するところは限られています。ですから例えば、市民が港区役所に防波堤や水門は大丈夫ですか、とたずねても、名古屋港管理組合に確かめないとわかりません、という返事になってしまいます。独自に被害想定を出したのなら、それに見合った対策も必要です。水際の防災施設についても積極的に関わるべきではありませんか。
名古屋港管理組合(名管)が行う防災事業のうち、国庫補助事業や高潮防波堤など国直轄事業については県市負担金が充当されていますが、名管の単独事業として行われている堀川や中川運河の水門補強など、重要だが緊急の防災事業には県市負担金は充てられていません。名管の財政事情でその進捗が左右され、市民の安全が脅かされては困ります。
名古屋港管理組合への負担金の使途について、補助事業や直轄事業以外でも、市民を守るために必要ならば、水門の補強などにも充当できるよう柔軟に活用すべきではありませんか。住宅都市局長に答弁を求めます。
必要な場合は、市負担金を充当した国庫補助事業を活用したい
【住宅都市局長】高潮防波堤や防潮壁は、国の直轄事業及び名古屋港管理組合の国庫補助事業として嵩上げや液状化対策等を県市の負担金も充当しつつ推進している。 堀川及び中川運河の水門は、平成23年度調査で、大規模地震の津波による門扉の変形の可能性が指摘され、名古屋港管理組合が単独に工事を進めているが、水門の改良が必要となる場合は、市負担金を充当した国庫補助事業の活用を図っていきたい。
名港管理組合への名古屋市負担金のうち、防災事業にはいくらか(再質問)
【山口議員】防災で名管への県市負担金の話が出てますが、名古屋港に出してる市の負担金のうちで、どれだけ防災事業につかわれているか市長ご存知ですか。
9000万円か6000万円?(市長)
【市長】たしか、毎年だと9000万円とか6000万円とか、そんなもんだと思います。
市負担金49億円のうち防災には5千万円。必要な防災費の確保を
【山口議員】平成25年度で名古屋港への市の負担金は49億円、県市合計で98億円です。そのうちの9割は公債費、過去の借金の支払いです。名古屋港管理組合の防災対策予算は平成24年度で24億円。県市の負担金が充てられているのはそのうちたった1億円。市の負担でいえば5000万円です。これが実態です。だから県市負担金の話を減らせと、先ほども出されました(公明党の質問)が、無駄な大型開発への反省を抜きにその削減だけ言っても始まらない。しかも、名管がやっている防災策は全部港区、名古屋市域の防波堤や防潮堤、護岸なんですね。貿易が落ち込み名管の収入が減ったからと言って、整備を遅らせるわけにはいかないと思います。この点はどうか。必要な防災費用を是非確保していただきたい。
津波避難ビルの固定資産税減免を
【山口議員】被害想定では、浸水範囲が広がったことに加えて、この地域の特徴として、一旦浸水すると水が引きにくいことが指摘されました。津波の高さの想定は従前より少し低くなりましたがそれでも3.6mです。さらに堤防等の状況、地殻変動(つまり地盤沈下)、堤防等が壊れていると干満により浸水範囲がさらに広がることも考える必要がある、としています。
現実的な想定では、地震で防波堤や堤防が壊れた後、施設の復旧前に、台風などの高潮や集中豪雨に襲われることが考えられます。一定の高さをもつ避難先の確保はゼロメートル地帯に住む住民にとって切実です。そこで三点、消防長に質問します。
一つは、津波避難ビルに対する固定資産税の減免です。津波避難施設について5年間、固定資産税を半減する特例制度ができていますが、いまだに一件も適用されていません。なぜか、県知事が津波災害警戒区域を指定しなければ特例の対象とならないのです。
市の被害想定だけではだめなのか、県の区域指定をいつまで待てばいいのか。固定資産税の半減は民間の津波避難ビルを増やす有効な手段です。減税や県市連携が売りの河村市長の下では真っ先に実施すべきじゃありませんか。
県の「津波災害警戒区域」指定がないとできない
【消防長】固定資産税の課税標準特例は、「津波災害警戒区域内」の「管理協定」を締結した津波避難施設が対象で、「津波災害警戒区域」は県知事が指定するが、愛知県はまだ指定されていない。
津波避難ビルは市独自の制度。「津波災害警戒区域」内の津波避難施設は、管理協定を締結して避難用途部分が市の管理下におかれ所有者等に一定の制約を発生させるなど、市の津波避難ビルとは性格が異なる。そのため、津波避難ビルは、固定資産税の特例が適用されない。
ゼロメートル地帯の高層建築物に、津波避難ビルの要請を
【山口議員】二つめ、ゼロメートル地帯の建築物には、伊勢湾台風後につくられた臨海部防災区域建築条例で一定の規制があります。安全確保のために一階の床の高さや建物の構造に制限を課しています。
この条例の精神を活かして、ゼロメートル地帯にマンション等の高層建築物を建設する際には、津波避難ビルの指定を受けること、を事業者に強力に要請できませんか。
自発的なご協力をいただくしかない
【消防長】津波避難ビル指定等推進事業は、市施設、県や国の施設のほか、民間施設も津波避難ビルとしてご協力いただいている。地域の方の協力で民間施設の所有者へ協力要請を積極的に行っていただいている。所有者の方々に説明を尽くし、自発的なご協力をいただくという手順ですすめたい。
津波避難施設「命山」にならった施設を
【山口議員】三つめ、津波避難のための丘をつくる。港区では住民と区職員が奮闘し避難先の確保に努めてきました。
津波避難ビルにどれだけの住民を収容できるのか、学区ごとの収容率も明らかにしています。しかしいまだ港区では津波避難ビルの収容率は65%です。なかでも四方を海岸と運河や河川に囲まれた大手学区はわずか9%です。新しい被害想定で避難ビルが増えても、港区で75%、大手学区では21%にしかならないと試算されています。
そこで静岡県袋井市がつくった命山です。(パネル掲示)2.5mの地盤に7.5mの山をつくる、海抜10mの山頂部分は広さ1340㎡、1340人が収容可能 液状化対策も行っています。
お隣の蟹江町は希望の丘としてつくる構想を発表しました。浚渫土砂を液状化しないように固めて古墳のような山・丘をつくり、普段は公園として地元のみなさんに親しみ管理してもらい、いざという時は津波避難場所となる高台です。
そこでまず大手学区の荒子川公園、いろは町の水道局敷地の2か所を候補地として、津波避難ビルと同じ高さの丘をつくることを提案します。南陽地域でも、避難場所として整備する計画の都市計画公園・船頭場公園などが候補地と考えられます。いかがでしょうか。
津波避難ビルの指定事業を一層促進し、人口高台は検討したい
【消防長】今年2月に公表した市独自の被害想定の結果、津波による想定浸水深は最大でも3mとなったが、津波避難場所を確保することは重要な課題。既存の津波避難ビルの3階部分の活用や、新たに津波避難ビルとすることが可能となった既存の3階建の建物も有効活用して津波避難ビルの指定事業を一層促進したい。
いわゆる「命山」など人工的に造成した高台は、津波避難ビルの指定状況や収容率を踏まえた上で、今後、関係局とともに研究したい。
1000mタワーより、まず4~5mの丘を(再質問)
【山口議員】避難ビルを増やさないといけないんです。新らたな被害想定をつくったけれど、4階建てが3階でもよくなった、だから安心しろ、市から新たに出てきたのは、これだけなんです。固定資産の減免の特例は受けられない、建築条例の規制もなかなか直せずお願いするだけ。じゃあ名古屋市何ができるか、丘をつくることなんです。
市長、1000メートルのタワーに夢中になるよりも、まず4メートル5メートルの丘をつくっていただきたい。最後に答弁を求めます。
なるべく近くの家。3階建てに逃げるよう(市長)
【市長】防災は防災でしっかりやらなかんけど、やっぱり産業というか、都市の魅力をつくって、まず稼ぐこと、これも非常に重要なんで。
最初は、とにかくあわてて外に出たらかんと、みんな結構言いますよ。それで、なるべく近くの3階建てなら3階建てで近くのところにきちっと逃げれるように。
まず、これはやらさしていただいて、その後、命山か名前はわかりませんけど、それはそれで、しっかり研究したいと思います。
ゼロメートル地帯の防災対策に万全を(意見)
【山口議員】いいかげんな答弁、ほんとにやめていただきたい。
被害想定を生かし切る防災対策、特にゼロメートル地帯の防災対策に万全を期すよう強く要望しておきます。
防災の担い手づくりとして「防災学校」づくりなどを
【山口議員】自助・共助、市民への啓発を強調するだけでなく、自主的な防災活動の担い手を名古屋市として系統的に増やし育ててこそ、地域の防災力が高まります。
名古屋市では、防災安心まちづくり運動、自主防災会の二つをメインに、最近では、助け合いの仕組みづくり、地域ぐるみ耐震化促進支援事業など、まちぐるみの防災活動が増えています。NPOやボランティア、防災リーダー講習も行われています。港区では津波避難行動計画づくり、地域防災コミュニティ講座もあります。新年度予算案では避難所運営訓練等の実施が盛り込まれました。メニューが有り過ぎて、整理しきれないぐらいです。
それぞれ懸命に努力を重ねられていますが、三つ課題があると思います。
第一に、学区や町内の役員が防災活動の先頭に立っていますが、二重三重に役職を兼務し、忙しい人がより忙しくなっている。防災活動に専任できる人がいそうでいない。消防団は別格ですが、保健委員や民生委員のような独自に組織された防災に特化した地域活動の担い手が必要ではないか。
第二に、取り組みが単発的なイベント型になりがちで、系統的な活動になりにくい。地域にどんな力がついてきたのか評価する仕組みが必要ではないか。
第三に、地域ごとの取り組みを交流する機会が少ない。隣の学区へ避難する想定をしても、隣の学区の防災マップは見たこともない、現状があります。
国分寺の地域防災から学ぶ
先日、地域防災の先進事例として東京都国分寺市の取組みを調査しました。二つ紹介します。
防災まちづくりを支える人づくりとして、「市民防災まちづくり学校」が33年間にわたり開かれています。これまで1200人が修了し「市民防災推進委員」に認定されました。人口11万の都市で百人に一人が防災推進委員になり、卒業生が、市民防災推進委員会を組織し、自主的な活動を地域で継続しています。
もう一つが「防災まちづくり推進地区」です。市と地区が対等な立場で協定を締結します。締結した地区には3年間、市からコンサルが派遣され、じっくりと地区防災計画をつくります。
一年目は、地区内のまちあるきや防災アンケートを行い、防災診断地図を作成します。二年目にも防災アンケートを実施し・地区の活動体制などを検討します。三年目にそれらをまとめた地区の防災計画を策定します。その段階で市から100万円の補助が出て、必要な防災機材の購入やニュースの発行、研修費用などに充てるのです。
3年かけて系統的に、自主的な防災活動ができる地域を育てる、そんな地域を計画的に広げています。現在12地区、面積でも人口でも市域の3割が推進地区となっていました。
こうした防災まちづくりは、消防という範疇を超えた仕事です。ここでは三つの提案をしますが、名古屋市では消防長に答弁を求めるしかありません。
一つ、防災まちづくりの担い手となる市民を系統的に育成する「防災学校」を組織してはどうでしょうか。防災センターをフルに活用しましょう。 二つ、防災まちづくりアドバイザー又は防災担当職員などの専門家を3~5年間長期に派遣するなどして、防災地域づくりを計画的にすすめましょう。自主的な防災活動ができる地域を意識的・系統的に増やしていきませんか。
「防災・減災カレッジ」事業を活用して、自主的な防災活動ができる担い手づくりに
【消防長】市においては、継続的な防災の担い手の育成のため、平成24年6月に愛知県、名古屋大学、中部経済連合会などと「地域協働による防災・減災のための人材育成に関する協定」を結び、体系化された専門的な学びの場となる「防災・減災カレッジ」に参画しており、この事業を活用して、自主的な防災活動ができる担い手づくりを進めていきたい。
防災マップコンクールを
【山口議員】三つ、配られたハザードマップを眺めるだけでなく、自分たちで地域の防災マップをつくり活用することが重要です。
防災まちづくりに取り組む市民が交流し学びあう場として、防災マップコンクールを行ってはどうでしょうか。これもぜひ防災センターを会場に。以上、消防長に答弁を求めます。
検討したい
【消防長】地域の皆さんに避難所や地域の防災の情報把握を促すために「防災安心マップ」の作成をお願いしている。「防災マップコンクール」は、作成手法の共有や地域ごとのマップ作成の促進につながるなどのメリットも考えられ、個人情報の取扱いなど解決する課題もありますが、今後、検討したい。
キーワード:環境と防災、まちづくり、山口清明