2014年2月議会
田口一登議員の2014年度予算と修正案に反対の討論(2014年3月19日)
田口一登議員は、一般会計予算案及び修正案に反対の立場で討論をおこないました。自公民新を代表して民主党の服部議員が修正案、原案に賛成の討論を行いました。減税は討論もせず、予算修正にも賛成しました。
超高層ビルが林立する一方、買い物困難地域が広がり、市営住宅修繕もすすない、いびつな名古屋のまちづくりからの転換を
私は、日本共産党名古屋市会議員団を代表して、一般会計予算に対し、原案及び修正案に反対する立場から討論を行います。
リニア開通を起爆剤にした、新たな大型開発事業に前のめりの予算
原案に反対する理由の第1は、リニア中央新幹線の開通を起爆剤とする名古屋駅周辺の大改造など、新たな大型開発事業に前のめりの予算となっているからであります。
市長すら多くの懸念を示したリニア計画
リニア中央新幹線計画については、河村市長が愛知県知事に提出した環境影響評価準備書にたいする意見でも、「走行に伴う消費電力が多く大量の温室効果ガスが排出される」「全線の86%がトンネル構造であり、工事に伴う大量の発生土等」課題が多い、「ターミナル駅の工事は、名古屋駅の東西エリアにおいて開削工法で行うことが計画されており、長期にわたる非常に大規模な工事の実施により、健康で快適な環境が損なわれる」など、多くの懸念が表明されています。
財界要望に応えた名古屋駅周辺大改造計画
こうした厳しい市長意見は、リニア計画への市民の不安や疑問を反映したものです。それにもかかわらず、リニア開通を規定事実として、「名古屋駅周辺まちづくり構想」を策定する経費が計上されていますが、この構想骨子案は、中部経済連合会や名古屋商工会議所の役員が呼びかけて結成された「名古屋の街づくりを考える会」が発表した「『(仮称)ナゴヤ・グランドビジョン』策定の提言」が、下書きになっていると思われます。名古屋駅への高速道路の乗り入れ、すなわち「名古屋駅インター」の整備を提案しているのも、名古屋商工会議所であります。まさに、財界の要望に応えて、名古屋駅周辺の大改造が計画されようとしているのです。
これまで生え抜きの市職員で行政課題に対応してきた本市が、その伝統を破って中央官僚を局長級ポストに招くのも、これまで議会が反対してきた特別職秘書をわざわざ設置するのも、リニアを国家的プロジェクトと位置づける安倍政権および自民党との太いパイプを築き、それをバネに大型開発を進める陣立てといわなければなりません。
わが党は、国民的な要求もないまま始まったリニア計画の中止を求めます。名古屋駅周辺には超高層ビルが林立する一方で、高齢者が買い物もできない買い物困難地域が広がり、老朽化した市営住宅の修繕もままならないというような、いびつな名古屋のまちづくりからの転換を求めるものであります。
天守閣木造再建の調査費は不要
名古屋城整備検討調査については、天守閣を木造で復元するのか、それとも耐震改修を行うのか、どちらにするのかを決める前提となる調査ということですが、本市が策定した「特別史跡名古屋城跡全体整備計画」では、耐震改修という整備方針が明確に示されています。この整備計画には木造復元という言葉は一言もありません。ですから、どちらにするのか決めるための調査は、河村市長が木造復元を言い出さなければ、実施する必要のない調査であります。現在の天守閣は、耐用年数が今後50年ほどあるといわれていますので、耐震改修こそ急ぐべきであり、木造復元の検討は、数十年先の市長と市民に委ねるべきであります。
巨大な駐車場や地下通路、第二滑走路 などのムダな大型事業は中止を
この他、レゴランドなどのために巨大な市営立体駐車場を建設する「金城ふ頭開発」、笹島交差点からささしまライブ24地区方面に至る巨大地下通路を建設する「名古屋駅周辺地下公共空間整備」、SL走行にこだわる「鉄道を活用した都市魅力向上策の推進」、航空需要がないにもかかわらず中部国際空港二本目滑走路の建設を促進する期成同盟会への負担金支出などの大型事業のムダを削ることを求めます。
減税のために、「行革」で市民負担増と福祉の民営化を進めている
反対する理由の第2は、市民税5%減税を継続し、その財源づくりのために、「行革」の名で市民負担増と福祉の民営化を進めているからであります。
河村市長の「減税」は、大企業・富裕層に手厚い減税であり、マスメディアも「恩恵、庶民に届かず」と指摘しました。
公立保育園を次々と民営化
河村「減税」はまた、減税による税収減少を口実に、「行革」と称して公的福祉の縮小・解体、行政サービスの民間任せを推進するものにほかなりません。来年度予算案でも、公立保育園の廃止・民営化が、新甫、御田、南・氷室、にじが丘、東栄の各保育園で新たに着手され、児童養護施設「若松寮」の民間への移管が進められますが、名古屋市が福祉の現場から手を引くことは、福祉にたいする行政責任の大きな後退であります。
事業仕分けを口実に市民負担増
「減税」の財源づくりのためのテコにされてきたのが「事業仕分け」です。「事業仕分け」は廃止されますが、その被害は続いています。「廃止」と判定された高年大学鯱城学園は、関係者のみなさんの大きな運動で存続となりましたが、授業料などが大幅に値上げされます。同じく「見直し」と判定された市営住宅の駐車場使用料は値上げされ、3年後には、平均で年間1万4400円、最大で4万2000円もの負担増が、低所得の市営住宅居住者にのしかかります。
敬老パス制度の趣旨を踏みにじる 強引な見直し
今議会で大問題となったのは、「事業仕分け」で「見直し」と判定された敬老パスです。現行制度の継続を求める市民の運動が広がり、来年度からの一部負担金の引き上げは断念させました。しかし、健康福祉局は、社会福祉審議会の意見具申を踏まえて、一部負担金の引き上げの検討をあきらめておりません。
一方、河村市長は、敬老パス予算を5億円減額して計上するというイレギュラーな手段に打って出ました。その狙いはどこにあるのか。乗車人員かける単価という敬老パス予算の積算方法を変更して、交通局への補助金化することによって、社会福祉施策である敬老パス制度の趣旨そのものを見直すところにあるのではないでしょうか。乗車人員かける単価という積算方法は、「高齢者の社会参加を支援し、もって高齢者の福祉の増進を図る」と、条例で明記されている敬老パス制度の目的を踏まえたものです。ところが、一般会計から交通局への補助金になれば、高齢者がどれだけ敬老パスを利用したのか把握する必要がなくなり、高齢者の社会参加状況もわからなくなります。これでは、「高齢者の社会参加の支援」という制度の根本が変質してしまうではありませんか。
敬老パス負担金減額で行革推進が狙い
河村市長は、委員会質疑の中で、「高齢者が乗ったら乗っただけ交通局にお金が入ってくると、交通局は経営努力をしない」と答え、敬老パス予算に上限を設ける考えを明らかにしました。しかし、敬老パス予算、すなわち「敬老パスを利用した高齢者の運賃分」に上限を設けると、交通局の運賃収入に穴が開きます。その穴埋めのために、交通局は、市バス路線の廃止や本数削減などの「経営努力」を強いられ、市民サービスが低下するでしょう。税収を減らせば「行革」が進むという河村「減税」と同じ論理で、名古屋が誇る福祉の予算をもてあそんではならない、ということを市長に申し上げておきたいと思います。
敬老パスの予算は、現行のルールにのっとり、5億円全額を増額すべきです。市民税減税をやめれば、約117億円の大幅な歳入増となりますので、見直しをしなくても、将来にわたって持続可能な運営は十分に可能です。敬老パスは、現行制度のまま継続することを強く求めます。
自公民新の修正案は市長の狙いを変えない
自民・公明・民主・新政の4会派から提出された敬老パス予算にかかる修正案についてでありますが、これは減額された5億円のうち、消費税増税の転嫁分、約3億円を増額するものであり、河村市長が予算減額に込めた狙いを修正するものではありません。
安倍政権の悪政をそのまま市民に押し付け
反対する理由の第3は、安倍政権の消費税増税や社会保障改悪などの悪政をそのまま市民に押し付けているからであります。
水道や市バス地下鉄で消費税値上げ、ついでに上納義務のないメーグルも値上げ
消費税の8%への増税実施が迫り、市民の怒りや不安が広がっています。本市も市バス・地下鉄料金、水道・下水道料金などに消費税増税分を転嫁し、市民の負担が増やされます。なごや観光ルートバス、メーグルの乗車料も、市バス料金改定に合わせて値上げされますが、メーグルの乗車料にかかる消費税は、市バス料金の消費税と異なり、国に納税する義務はありません。にもかかわらず値上げをするのは、消費税増税の便乗値上げと言われてもしかたがありません。年金削減される高齢者へ負担増が次々
安倍政権は、社会保障制度改革プログラム法に書いたスケジュールにそって、医療・介護・年金・保育など、社会保障の全分野での改悪を具体化しようとしています。ところが、予算案には、河村市長が公約した、70歳から74歳までの医療費窓口負担の倍増を抑える助成制度の創設は盛り込まれておりません。後期高齢者医療保険料は、年間一人当たり2622円の値上げとなり、年金が減らされる一方の高齢者に、負担増が押し付けられます。
高校授業料無償制度に所得制限
高等教育は無償という世界の流れに逆らう公立高校授業料無料制度への所得制限の導入によって、本市では来年度の新1年生の28%が、全日制で年間11万8800円の負担増を強いられます。
情報漏えいが危惧されるマイナンバーも導入
いわゆる「マイナンバー法」にもとづいて、社会保障・税番号制度の導入に向けたシステム開発・改修に多額の経費が盛り込まれていますが、マイナンバー制度は、税と社会保障の個人情報を一括管理し、徴税強化・給付抑制をねらうとともに、プライバシーの漏えいなどが危惧され、導入する必要性のないものであり、認めることはできません。
市民のフトコロを温め、地域経済を活性化する予算の組替えを提案
先ほどわが党が提案した予算組み替え案は、市民税減税を中止し、ムダな大型開発につながる予算を削り、市民の暮らし・福祉・保育・教育・環境などを拡充しようというものです。市民のフトコロを温め、地域経済を活性化することが、名古屋の財政も豊かにし、好循環をもたらします。
組替え案の方向こそ自治体本来の姿
わが党が提案した方向こそ、本市が、国の悪政から市民の暮らしを守る防波堤となり、「住民福祉の増進」という地方自治体の本来の役割を発揮することができると確信するものであります。
以上で、討論を終わります。