田口議員が市政の会で報告

 140415市政の会s15日に開かれた名古屋・革新市政の会団体・地域代表者会議で、田口一登議員は「河村市政のいま――自民党型政治と『オール与党』化が鮮明に」と題して市政報告しました。
 2期目の1年が経とうとする河村市政の特徴について田口議員は、①「リニア」起爆剤の名古屋駅周辺大改造など大型開発優先、②「減税」による税収減を口実にした福祉の縮小・解体、民営化、③安倍政権の悪政の追随者というところにある―と指摘。自民党主導の「オール与党」が河村市政を支えている議会の現状を厳しく批判しました。

河村名古屋市政のいま――自民党型政治と「オール与党」化が鮮明に

革新市政の会団体・地域代表者会議(2014年4月15日)

日本共産党名古屋市会議員 田口一登

  名古屋市会議員の田口一登です。河村名古屋市政は、2期目の1年が過ぎようとしています。河村市政はいま、どうなっているのか。一言でいえば、自民党型政治としての実態が鮮明になっています。しかも、「オール与党」体制が構築されつつあります。この点について、先の2月議会の論戦を振り返りながら報告させていただきます。

 1. 「リニア」起爆剤の名古屋駅周辺大改造など新たな大型開発

 河村市政の特徴の第一は、リニア新幹線の開通を起爆剤とする名古屋駅とその周辺地区の大改造など大型開発優先です。

 そもそもリニア建設は、国民の強い要望も必要性もないものです。現在、アセスメントが行われていますが、そこでもさまざまな問題点が指摘されています。河村市長が愛知県知事に環境影響評価準備書にたいする意見を提出しました。その中でも、リニア新幹線は「走行に伴う消費電力が多く大量の温室効果ガスが排出される」「全線の86%がトンネル構造であり、工事に伴う大量の発生土等」課題が多い、「ターミナル駅の工事は、名古屋駅の東西エリアにおいて開削工法で行うことが計画されており、長期にわたる非常に大規模な工事の実施により、健康で快適な環境が損なわれる」など、多くの懸念が指摘されています。

 それにもかかわらず、河村市長は、2月議会での所信表明の中で、「今後予定されている大規模再開発計画が、東京53件、大阪11件なのに名古屋は3件しかない」「リニア新幹線開業後、ストロー効果で名古屋は東京の衛星都市になってしまう」と危機感をあおり、「東西から人と経済活動を吸い取る『世界のナゴヤ』をめざす」と、大型開発に前のめりの姿勢を露わにしました。「名駅前に1000メートルタワーをつくる」とまで本会議で答弁しています。

 名駅周辺の大型開発の音頭をとっているのは中部財界です。名古屋市は現在、「名古屋駅周辺まちづくり構想」を策定中ですが、その下書きになっているのは、中部経済連合会や名古屋商工会議所の役員が呼びかけて結成された団体が昨年発表した「『(仮称)ナゴヤ・グランドビジョン』策定の提言」にほかなりません。名古屋商工会議所は、名古屋駅への高速道路の乗り入れ、「名古屋駅インター」の整備を提案していますが、これも「名古屋駅周辺まちづくり構想」の素案の中に、「駅と都市高速道路とのアクセス性の向上」という表現で検討課題として盛り込まれています。

 リニア新幹線建設は、安倍首相が今年の年頭記者会見で、「国家プロジェクトといってよい。政府として様々なバックアップをしていきたい」と述べたように、いつの間にか国家プロジェクトになっています。これまで生え抜きの市職員で行政課題に対応してきた名古屋市が、その伝統を破って国土交通省の官僚を住宅都市局長に招きましたが、これは、リニアを国家プロジェクトと位置づける安倍政権と太いパイプを築き、それをバネに大型開発を進める陣立てといわなければなりません。

 こうしたリニア関連開発に、いったいどれだけの税金が投入されるのか。現段階でははっきりしませんが、大村愛知県知事は、3月5日付の日経新聞のインタビューで、「公共的な部分だけを切り取っても相当な事業費だろう。県として応分のお金を出すし、バリバリ口も出していく」と語っていますので、県と市が巨額の税金を投入する事業になることは間違いありません。

 2月議会では、自民党が代表質問で「名古屋駅に高速道路を乗り入れるという経済界の提案の実現を」と迫りました。これにたいして私は予算の反対討論で、「名古屋駅周辺には超高層ビルが林立する一方で、高齢者が買い物もできない買い物困難地域が広がり、老朽化した市営住宅の修繕もままならないというまちづくりからの転換を」と求めました。まさに、名古屋市政も「自共対決」です。

 新たな大型開発事業はこの他に、名古屋城天守閣の木造復元(事業費推計400億円)、笹島交差点からささしまライブ24地区方面に至る巨大地下通路の建設(事業費134億円)、金城ふ頭に誘致するレゴランドなどのために5000台収容という巨大な市営立体駐車場の建設(188億円)、SL走行にこだわる「鉄道を活用した都市魅力向上策の推進」、中部国際空港の二本目滑走路の建設などがあります。

 大型開発優先という政治の中身では、以前の「オール与党」市政も、いまの河村市政もまったくかわりはありません。私たち共産党市議団は、大型開発優先から福祉・暮らし優先へ、市政の転換を求めてがんばります。

 2. 「減税」による税収減を口実にした福祉の縮小・解体、民営化

 河村市政の特徴の第二は、市民税減税による税収減を口実に、「行革」と称して福祉の縮小・解体、民営化をすすめていることです。

 河村市長の「減税」は、大企業・富裕層に手厚い減税であり、マスメディアも「恩恵、庶民に届かず」と指摘しました。

 河村市長は、「減税」すれば「行革」が進むと言いますが、「行革」の手法は、行政サービスの民間任せです。公立保育園の廃止・民営化が今年度、新甫、御田、南・氷室、にじが丘、東栄の各保育園で新たに着手されます。児童養護施設「若松寮」の民間への移管が進められます。名古屋市が福祉の現場から手を引くことは、福祉にたいする行政責任の大きな後退です。

 「減税」の財源づくりのためのテコにされてきたのが「事業仕分け」です。「事業仕分け」は、市民の評判が悪く、わが党以外の導入を進めた会派からも批判の声が上がるようになり、そしてこの制度の廃止を求める革新市政の会の運動によって今年度から中止。「事業仕分け」が仕分けされました。

 しかし、「事業仕分け」の被害は続いています。「廃止」と判定された高年大学鯱城学園は、関係者のみなさんの大きな運動で存続となりましたが、授業料などが大幅に値上げされます。同じく「見直し」と判定された市営住宅の駐車場使用料は値上げされ、3年後には平均で年間1万4400円、最大で4万2000円もの負担増が、低所得の市営住宅居住者にのしかかります。

 2月議会で大問題となったのは、「事業仕分け」で「見直し」と判定された敬老パスです。現行制度の継続を求める市民の運動が広がり、今年度からの一部負担金の引き上げは断念させました。しかし、「見直し」の火種が残りました。

 河村市長が、今年度の敬老パス予算を5億円減額して予算計上し、2月議会で大論議になりました。河村市長が敬老パス予算を削ったねらいはどこにあるのか。敬老パス予算の積算方法は、「乗車人員×単価」です。高齢者の方が敬老パスを使って市バス・地下鉄に乗った運賃分を税金で交通局に払っています。これは、「高齢者の社会参加を支援し、もって高齢者の福祉の増進を図る」という敬老パス条例でうたっている敬老パス制度の目的を踏まえたやり方です。

 ところが、河村市長は、この「乗車人員×単価」という積算方法を変更して、交通局への単なる補助金にしようとしているのです。しかし、交通局への補助金になれば、高齢者がどれだけ利用したかカウントする必要がなくなり、高齢者の社会参加が進んでいるかわからなくなります。交通局への補助金化は、「高齢者の社会参加の支援」という敬老パス制度の根本を変質させるものだと、私たちはズバリ指摘しました。

 しかも河村市長は、「高齢者が載ったら乗っただけ交通局にお金が入ってくると、交通局は経営努力をしない」といって、敬老パス予算に上限を設ける考えです。しかし、敬老パス予算に上限を設けると、交通局の運賃収入に穴が開きます。その穴埋めのために、交通局は市バス路線の廃止や本数の削減などを強いられるでしょう。市民サービスが低下し、敬老パスの利用が減ってしまう。あるいは市バス・地下鉄料金の値上げで、現役世代に負担が押し付けられかねません。

 日本共産党は、敬老パス予算の5億円減額にたいして、「現行ルールにのっとり、5億円全額を増額せよ。市民税減税をやめれば、約117億円の歳入が増えるから、見直さなくても持続可能な運営はできる」と主張しました。

 ところが、他会派は、こうした河村市長のねらいに切り込めず、市バス・地下鉄料金への消費税増税の転嫁分、約3億円だけ増額するという中途半端な予算修正でお茶をにごしてしまいました。

 それだけではありません。自民党の議員は健康福祉委員会で副市長に向かってこういいました。「やるやると言いながら、今日まで全然やれなかったじゃないですか、敬老パスの見直し。議会は何にも反対していませんよ。見直しは誰も反対していませんよ」。共産党は見直しに反対しているのですが。自分たちは「見直し」に反対していないという本音が、自民党の議員の口から出たわけですから、市長も議会も敬老パス見直しの火種を残しています。

 この火種を消し去り、敬老パスを現行制度のまま継続させ、さらに充実させるためには、引き続き私たちの運動が重要となっています。

3. 安倍政権の悪政の追随者

 河村市政の特徴の第三は、市民の暮らしを守る防波堤としての地方自治体の役割を投げ捨てて、安倍政権の悪政の追随者となっていることです。

 消費税の8%への増税が強行され、市民の怒りや不安が広がっています。名古屋市の市バス・地下鉄料金にも増税分が転嫁され、9月から値上げ。水道・下水道料金は6月分から増税分が転嫁され、市民の負担が増やされます。なごや観光ルートバス、メーグルの乗車料も、市バス料金改定に合わせて値上げされますが、メーグルの乗車料にかかる消費税は、市バス料金の消費税と異なり、国に納税する義務はありません。にもかかわらず値上げをするのは、「消費税増税の便乗値上げだ」と私たちは批判しました。

 安倍政権は、社会保障制度改革プログラム法に書いたスケジュールにそって、医療・介護・年金・保育など、社会保障の全分野での改悪を具体化しようとしています。ところが、今年度の予算には、河村市長が公約した、70歳から74歳までの医療費窓口負担の倍増を抑える助成制度の創設は盛り込まれておりません。後期高齢者医療保険料は、年間一人当たり2622円の値上げとなり、年金が減らされる一方の高齢者に、負担増が押し付けられます。

 高等教育は無償という世界の流れに逆らう公立高校授業料無料制度への所得制限の導入によって、名古屋市ではこの4月に入学した新1年生の28%が、全日制で年間11万8800円の負担増を強いられます。

 以上のように、2期目の河村市政は、大型開発優先、福祉切り捨て・市民負担増、さらに時間の関係上ふれることはできませんが、平和憲法否定・歴史逆行という点でも、自民党型政治であることがはっきりしてきました。

 これにたいして日本共産党市議団は、2月議会で予算の組み替え案を提案しました。

 その内容は、大企業・大金持ち優遇の市民税5%減税を中止して約117億円の歳入を増やし、大型開発事業などをやめることで合わせて約136億円の財源を確保する。その財源を使って、70歳から74歳までの医療費自己負担助成制度を創設する、国民健康保険料を一人8000円引き下げる、小学校給食を無料にする、住宅リフォーム助成制度を創設するなど、市民の暮らし・福祉・教育・環境などを拡充しようというものです。

 私たちの予算組み替え案は否決されましたが、この方向こそ、名古屋市が国の悪政から市民の暮らしを守る防波堤となり、「住民福祉の増進」という地方自治体の本来の役割を発揮することができると確信しています。

 4. 「オール与党」化が進む名古屋市議会

 次に、名古屋市議会の現状についてです。

 名古屋市議会は、河村市長与党の減税日本ナゴヤ市議団が、相次ぐ不祥事などによって28議席から15議席に減りました。現在の市議会の交渉会派は、議席の多い順から自民、減税、公明、民主、共産の5会派です。交渉会派以外に、減税から離脱した市会議員などによる諸派が11会派14人。名古屋市議会としては異例な状況です。

 先の2月議会では、河村市長が提案した「口利き防止条例案」と「特別職秘書の設置条例案」にたいして、当初は自民党などが反対するのではとささやかれていました。「口利き防止条例案」は、嘱託職員の不正採用をめぐる自民党市議の「口利き」疑惑を受けて、市職員への要望や働きかけはすべて記録するというものです。共産党は以前から「口利き防止条例」の制定を求めてきました。減税日本も市長に要望してきました。

 「特別職秘書の設置条例案」というのは、市長には市職員の秘書がついていますが、特別職の秘書というのは政治活動もできる秘書です。河村市長は、北角嘉幸氏という衆議院議員時代の自分の政策担当秘書だった人物を任命しようとしています。この条例案は過去3回、自民・公明・民主そして共産の反対で否決しています。

 ところがこの2つの条例案は、採決のときにおかしなことがおこりました。「特別職秘書の設置条例案」には、これまで反対してきた自民・公明・民主が態度を豹変させて賛成した。「口利き防止条例案」については、継続審査にせよという動議が出されて、共産党と公明党は採択を求めて継続審査に反対しましたが、条例をつくれといってきた減税日本までが、継続審査に賛成したのです。何があったのか。マスメディアは「一部市議と河村市長が水面下で調整を図ったとの見方も出ている」と報じました。

 「採決の直前に減税日本の団長と幹事長が河村市長に呼ばれて、口利き防止条例案の継続審査に賛成してくれと言われた」とか、「自民党や民主党のベテラン議員が動いた」とかいう話を他会派の市議から聞きました。「特別職秘書に賛成するから、口利き防止条例案は先送りにしてくれ」。こんな話がされたのでしょう。自民・公明・民主と減税、諸派による「オール与党」化が進んでいます。

 5. 市民の声で市政を動かす

 名古屋市政を動かすのは市民の声、市民の世論と運動です。敬老パスの一部負担金の引き上げをくい止めたのも、革新市政の会を先頭にした市民運動でした。保育料の値上げを河村市長は3度にわたって提案しましたが、これも保育園関係者などの運動によって中止させ、6年間据え置かせてきました。子どもの医療費無料化を中学校卒業まで拡大させたのも、新婦人の会のみなさんなどの粘り強い運動があったからです。中小企業・中小業者のみなさんの要望を受けて、中小企業基本条例が制定されました。憲法九条改憲派の河村市長に平和首長会議への加入を決断させたのも、平和団体のみなさんの働きかけがあったからです。

 私たち日本共産党市議団は、河村市政と正面から対決し、建設的な提案を行い、市民運動と共同する。「対決・対案・共同」の政治姿勢をつらぬいています。日本共産党市議団と市民のみなさんの共同が、市政を動かしていると思っています。

 来春の市議選に向けて、革新市政の会のみなさん、市民のみなさんと力を合わせて、さらなる市民要求の実現に奮闘する決意です。

 

 

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