名港議会 一般質問⑤ 港湾運営の民営化(2014年11月7日)

ゲートオープン時間拡大の継続に伴う特例港湾運営会社の関与は
【山口議員】特例港湾運営会社の基本的性格と業務内容についてです。
 大手船社の元会長を社長に迎えた名古屋港埠頭株式会社は9月9日、国に対して特例港湾運営会社の指定申請を行ないました。港湾民営化と称して、名古屋港埠頭株式会社がいよいよ特例港湾運営会社としての業務に乗り出すことになるわけですが、今日はこの会社の基本的性格と業務内容について、三つの角度から質問したいと思います。
 まず、この会社の基本的業務についての確認です。6月議会では港湾労働者への影響はないのかとの私の質問に、企画調整室長は「名古屋港埠頭株式会社は、ガントリークレーンなどの整備費の縮減、コンテナターミナルの一体運営によるスケールメリットを活かした維持管理費等の削減などにより、利用者に対する施設使用料の低減を実現していくもので、港湾で働く人たちへの労働条件には影響しないと考える」と明言されました。
 ところが先の特別委員会では、いま名古屋港で実施しているコンテナのゲートオープン時間を16時30分から20時まで拡大している事業を、特例港湾運営会社として継続するとの説明がありました。
 ゲートオープン時間の変更は労働条件に大きな影響を与えます。ゲートオープン時間に関してこの会社はどのように関与するのか。労働条件に影響することを会社の一存で継続すると言い切るおつもりですか。お答えください。名港ふ頭港湾労使で合意の上、荷主のニーズを踏まえ、関係者の協力のもと、名古屋港のすべてのコンテナターミナルで利用時間を拡大
【企画調整室長】コンテナターミナルのゲートのオープン時間は、港湾労使で合意の上、荷主のニーズを踏まえ、関係者の協力のもと、名古屋港のすべてのコンテナターミナルで利用時間の拡大が行われている。特例港湾運営会社は、コンテナターミナルの利便性向上に資するため、ゲートオープン時間拡大の継続に向けて、これまでと同様、施設を提供していく。

料金体系や料金単価の見直しは港湾管理者料金だけか。民間料金は見直さないのか
【山口議員】この会社はポートセールスも業務の柱だと説明がありました。名古屋港は安いよ、と売りこむことになるわけです。
 ところで現在、公共のコンテナターミナルを利用するときのコストは入港料や税が約3%、港湾管理者料金とよばれる岸壁使用料、荷捌き地使用料、荷役機械使用料が約17%、残りの80%が荷役料や引き船使用料など民間料金です。民営化により管理組合から特例港湾運営会社に料金の決定権が移行するのはこのうち港湾管理者料金の17%だけということです。
 つまりゼロにしても港湾の利用コストは2割も下がらない。それどころかこの収入は特例港湾運営会社にとって基幹的な収入であり大幅な引き下げはなかなか難しい、よくて数%くらいではないでしょうか。そうなると港湾コストの8割を占める民間料金を無理やり引き下げる動きが出てくることが心配されます。そこであらためて確認させていただきます。
 特例港湾運営会社が行おうとする料金体系や料金単価の見直しとは、港湾管理者料金だけとのことですね?荷役料など民間料金には一切タッチしないと理解してよろしいですね、はっきり答えてください。

岸壁や荷さばき地、荷役機械等の使用料が対象。荷役料等の民間料金は対象外
【企画調整室長】港湾料金には、港湾管理者料金の他、とん税等の税金及び荷役料等の民間料金がある。このうち、特例港湾運営会社で料金体系や料金単価を見直す対象としているものは、港湾管理者が取り扱っていた岸壁、荷さばき地及び荷役機械等の使用料です。港湾運送事業者の料金である荷役料等の民間料金は対象としておりません。

特例港湾運営会社の収入はいくらか。現行料金から、いくら引下げるのか
【山口議員】コスト低減といいますが、コストがほとんど数値化されていない、現状も目標も不明なままであるという問題です。民営化することで料金がいくら下げられるのか、民営化の最大のメリットだというのなら数値ではっきり示してみてください。
 いま年間に約26億円の収入が管理組合に入っている埠頭群を11億円でこの会社に管理組合が貸し付けるわけですが、11億円で借りた埠頭群でこの会社はいくらの収入を見込むのか、現行料金よりいくら引き下げるのですか。

従前に比べて低廉な使用料となるよう調整を図っている
【企画調整室長】特例港湾運営会社は、本組合が所有する岸壁、荷さばき地及び荷役機械等を約11億円で本組合から借り受け、これに維持管理の経費及び将来の設備投資に要する費用などを踏まえ、施設提供するが、従前に比べて低廉な使用料となるよう、現在、利用者と調整を図っている。

運営会社制度のメリットである国有岸壁の低廉な貸付や無利子貸付金を活用した上物施設整備の具体的な計画はあるのか
【山口議員】メリットとして何度も強調される国有岸壁の低廉な貸付、上物整備の無利子貸付ですが、このメリットを利用できる具体的な計画が今後5年以内に名古屋港にあるのですか。

特例期間中に鍋田ふ頭の荷役機械1基の改良及び飛島ふ頭南の荷役機械1基の増設を予定
【企画調整室長】国有岸壁は、鍋田ふ頭コンテナターミナルで平成27年2月から、飛島ふ頭南コンテナナターミナルで平成27年4月から、それぞれ会社へ貸付けられる予定です。無利子貸付金制度を活用した上物施設整備は、平成29年9月までの特例期間中に、鍋田ふ頭の荷役機械1基の改良及び飛島ふ頭南の荷役機械1基の増設を予定している。

特例港湾運営会社は施設を持つことが目標なのか。また、コンテナターミナルの施設整備は特例港湾運営会社が行うのか
【山口議員】会社の性格について、公共性の高い会社を民の視点を取りこんで経営するということですが、株式会社としての経営の自立性について数点うかがいます。
 コンテナターミナルの建設及び管理運営をする会社と定款にはありますが、貸し付けを受ける埠頭群を自前で持つことが会社の目標になるのですか。逆に言えば、管理組合はコンテナターミナルの施設整備からも手を引き、すべて会社に任せることになるのですか。

特例港湾運営会社は無利子貸付金制度を活用して整備した上物施設を所有。岸壁や土地等の下物は国及び本組合が整備する
【企画調整室長】コンテナターミナルは、荷役機械や荷さばき地等の上物と、岸壁や土地といった下物で構成されており、特例港湾運営会社は、これらすべてを所有するものではなく、無利子貸付金制度を活用して整備した上物施設を所有する。
 岸壁や土地等の下物は、これまでどおり、国及び本組合が整備していく。

特例港湾運営会社の経営の考え方はどうか
【山口議員】自立した経営をめざすとは思いますが、利用者に安く使ってもらいながら施設の維持や整備のための自己資金を確保していくのは容易ではありません。どのくらいの利益(利益率)を見込んでいるのでしょうか。
 とくに心配なのはリスク管理の点です。リーマンショック時など取扱貨物量が激減しましたが、その場合でも自立的な経営が維持できますか。困った時は管理組合から支援を受けることが前提となっているでありませんか。

一定の利益を確保することは会社の経営上必要。入港料減免のインセンティブやポートセールス及び企業誘致等でサポートする
【企画調整室長】特例港湾運営会社が運営するうえでは、利用者へ公平かつ低廉に施設を提供していく必要がある。一方、自立的な会社経営には集荷のための費用や、貨物量の変動などのリスクに備え、一定の利益を確保することが、会社の経営上必要と考える。
 本組合は、集荷及び創荷に向けた入港料減免のインセンティブやポートセールス及び企業誘致等により、サポートしていく。

外郭団体の改革及び名古屋港埠頭株式会社の役員構成について
【山口議員】名古屋港管理組合の外郭団体の改革方針では、人的関与の度合いを毎年度公表する、としており、外郭団体への管理組合からの理事就任を3分の1以下にするという原則を定めたはずです。
 ところが外郭団体の「あり方検討会」では名古屋港埠頭株式会社はこの原則の対象外とされています。
 公的性格を堅持しながら民の力を発揮するというのはかっこよく聞こえますが、現実の役員構成をみると新たに巨大な天下り先をつくるだけになるのではありませんか。公表された役員構成をベストと考えているのか。率直なところおおいに疑問です。管理組合の見解をただして、第一回目の質問を終わります。

経歴実績等を勘案のうえ、適切な人員配置を行った
【総務部長】外郭団体のあり方」で外郭団体の本組合職員の役員就任割合は、公益社団法人、公益財団法人、一般社団法人及び一般財団法人は、公益法人認定法に基づき、3分の1以下、株式会社は「就任することの必要性を厳格に確認」することとしている。
 名古屋港埠頭株式会社の役員構成は、特例港湾運営会社としての役割をしっかりと果たすために適切なもので、組合の役員も、特例港湾運営会社の指定申請等、国、本組合等との調整が多いことから、経歴実績等を勘案のうえ、適切な人員配置を行った。
 なお、名古屋港埠頭株式会社は、今後、埠頭群の運営開始、名古屋コンテナ埠頭株式会社(NCB)との合併及び四日市港の特例港湾運営会社との経営統合も控えていることから、民の視点を取り込み港湾運営の一層の効率化を図るという社会的役割をしっかりと果たしていくために、民間出身の社長の元で適切な組織体制が作られるものと認識しているが、本組合としても中長期的な視点に立った組織・体制が作られるよう関与していきたい。

ポートセールスの売りになるほど利用料金が下がるのか(再質問)
【山口議員】港湾運営会社は、民間の荷役料金は業務の対象としない、ゲートオープン時間については労使の合意が前提、との答弁でした。答弁をしっかり守ってください。事業者と港湾労働者が築いてきた港のルールを尊重し、信頼関係を維持していただきたい。
 しかし、だとすると、新しく港湾運営会社が徴収することになる港湾管理者利用料金だけがポイントです。入港料の減免などで管理組合もサポートすると言いますが港湾コストの中で入港料のしみる比重は1~2%ですよ。
 ポートセールスの目玉とよべるような、名古屋港の魅力といえるようなところまで現行の利用料金は引き下げられるのですか。利用者と調整中とのことでしたが、従前に比べて低廉な使用料というだけでは答えになっていません。いちばんのメリットなのでしょ。ここが。もう少し具体的に答えてください。

コスト低減はコンテナターミナル施設を一体として低廉に貸付けることや、無利子資金の貸付制度の活用及び、一元的な管理運営によるスケールメリット等、全体として総合的に取り組むもの
【企画調整室長】コスト低減だけではなく、リードタイムの短縮や利用者ニーズに合わせた柔軟な対応等、顧客サービスの向上に努めていくことが必要です。コスト低減は、個々の施設と言うことではなく、本組合のコンテナターミナル施設を一体として低廉に貸付けることや、無利子資金の貸付制度の活用及び、一元的な管理運営によるスケールメリット等、全体として総合的に取り組むものです。
 運営開始当初から大幅な値下げは難しいと考えるが、経営努力により、従前に比べて、より低廉な料金で、利用者に施設提供を行う。

特例港湾運営会社の経営が悪化した時の対応は(再質問)
【山口議員】いま国有岸壁は名管が国から無料で借り受け、管理していますが、こんどは国から運営会社には、有料で貸し付けるという答弁でした。
 いくら低廉な貸付と言っても、無料よりコストがかかるのではないですか。
 経営悪化した時の対応についてお聞きしましたが、会社としてリスクに備えて一定の利益を確保していくとの答弁でした。しかし、これでは利用者への低廉な施設提供と矛盾しませんか。結局は公的な支援をあてにしているのではありませんか。

会社の経営に多大な影響を及ぼすような際は公共的な施設を管理している状況をふまえ判断したい
【企画調整室長】特例港湾運営会社は一定の利益確保を図り、自立した経営に努めていく。世界経済の激変等、会社の経営に多大な影響を及ぼすような際は、公共的な施設を管理している状況をふまえ、本組合として判断していきたい。

管理組合がターミナルを一体的に管理運営する方が合理的(再々質問)
【山口議員】港湾運営会社について、総括的に副管理者にたずねます。
 一元的一体的な管理運営によるスケールメリットでコスト削減だというのなら、名古屋港全体をきちんと管理組合が責任もって一体的に管理する方がはるかに合理的ではありませんか。会社の役員構成はどこからみても公営企業ですよ。
 コンテナターミナル運営会社が複数存在する名古屋港で、スケールメリットによる管理運営コストの削減といっても限界があります。なぜ株式会社でなければいけないのか。国から言われたからつくらざるを得ないとしか思えません。 
 名古屋港では、この特例港湾運営会社は、民の力を活かすという面でも、公的な責任を負うという面でも、きわめて中途半端な存在ではありませんか。
 この点についても専任副管理者の総括的な答弁を求めて質問を終わります。

コンテナは名古屋港埠頭株式会社を中心に、コスト縮減やサービスの向上を図り、本組合もしっかりとサポートする(福管理者)
【専任副管理者】コンテナターミナルの一体的な運営による更なる効率化の実現等を図るため、関係者の意見も踏まえ、公共性を確保しつつ、民の取組を最大限に活かしながら、無利子資金貸付を利用できる港湾運営会社制度の導入が必要であると判断した。
 名古屋港埠頭株式会社は、本年9月9日付で国土交通大臣に対し、特例港湾運営会社の指定申請を行い、近いうちに指定される見込み。
 名古屋港は、コンテナ・バルク・自動車を総合的に扱う国際産業ハブ港を目指しており、コンテナについては、特例港湾運営会社の指定を受けた名古屋港埠頭株式会社を中心に、コスト縮減やサービスの向上を図っていく。本組合としても、名古屋港埠頭株式会社を、しっかりとサポートするとともに、中部のモノづくりを支える港として、国際競争力の強化を図っていく。

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