2014年11月定例会
岡田ゆき子議員の議案外質問 ① ブラックバイトの根絶を(2014年11月28日)
高校生のブラックバイトについて
名古屋市会議員 岡田ゆき子
市内高校生のアルバイトの実態調査の実施を
【岡田議員】いま、若者の2人に1人は非正規雇用という中、若者を大量に採用し、過重労働・違法労働で次々と離職に追い込むブラック企業が問題となり、是正を求める世論が広がりました。厚生労働省はブラックと疑われる企業に対して、調査した結果、全体の82%で労働基準関係法令違反があることがわかり、今後、違法労働の根絶が進むことが期待されます。
しかし、このブラック企業のような違法・脱法を疑う働かせ方が、学生アルバイトに広がり、労働法などをよく知らず、労働法違反状態でも、疑問に思わず働いているという「ブラックバイト」が大学生を中心に新たな社会問題となっています。
ところが、私が地域で聞き取りなど調査していくと、高校生のアルバイトで違法・脱法と疑われる労働実態があり、大変深刻であることが分かりました。ブラックバイトから高校生を守るために、その実態と背景を明らかにし、解決のための提案をしたいと思います。
はじめにアルバイトの実態についてお聞きします。名古屋市立高校生のアルバイトは、家庭の経済的事情などにより許可する高校、アルバイトしているか確認のための届け出をする高校と様々です。現在、市立高校全校で、アルバイトをしている高校生はどれだけいるのでしょうか、教育長にお聞きします。
高校生のアルバイトについて、2010年に名古屋市内の公立高校、私立高校の高校生1757人にアンケートを実施した報告があります。詳細は、名古屋市立大学大学院人間文化研究科の研究論文から引用しています。
アルバイト経験者は、高校全体では48%で、全日制普通科が31%、全日制職業科が48%、定時制が65%という結果でした。驚いたことに高校生の半数がアルバイトを経験しているということでした。
アルバイトの特徴は、①長期休みや学期中に限らず働いている②経験者の約8割が曜日に関係なく数日働いている③週の労働時間は、経験者の4割が15時間以上④職種はファーストフードやファミレスなどの飲食店とコンビニエンスストアなどの小売店で8割を超えている⑤月の収入は4万円以上が58%で、平均4万8千円⑥バイト代の使い道は、高校生らしい生活に必要なものの購入と答えた生徒が約7割で、学習費の出費が2割、なんと、家計を助けるためと答えた生徒が2割近くいました。
学生からの聞き取りから、「賃金が約束通り払われていない」「高校生は、夜10時までしか働けないからと、10時以降の労働に対してバイト代が払われない」「土日に働いたらこれは『奉仕』だからといわれただ働きさせられた」「バイトに遅刻してしまったら、その日働いた分は『遅刻したからバイト代はなし』といわれた」また「売れ残った商品を買わされた」といった違法・脱法が疑われる事例が聞かれました。
また、高校生という弱い立場で、「上司に罵倒され怒鳴られ精神的に病んでしまう」「バイト先は人手がいつも足りないので、過密労働でも文句がいえない」「テスト期間中でもシフトが勝手に組まれる」「やめたくてもやめさせてもらえない」といった無理がまかり通っていることと、従順な高校生の姿がありました。
こうしたブラックバイトの背景を2点指摘したいと思います。
一つは、生徒たちの多くが、労働ルールについて知識がないということにあります。アルバイトは、法律上は「短時間労働者」です。契約期間や勤務条件、職責などが正社員より緩やかに定められていても、雇い主との法律上の関係は正社員と変わりありません。労働基準法や労働安全衛生法などはアルバイトでも適応されるという、大前提を全く知らない、知らされることなく働いているということが考えられます。
二つ目は、アルバイトで高校生活を成り立たせているという貧困の広がりが、ブラックでも働き続けなければならない状況を生み出しているのではないかということです。
ブラックバイト問題に取り組んでいる、中京大学の大内裕和教授は、「学生アルバイトは1990年代までの「自分で自由に使えるお金」を稼ぐためものだった時代から、親の所得の低下により、「学生生活を続けるために必要なお金」を稼ぐためのものに変化してきた」と分析しています。
そこで、4つの提案を行い、教育長の答弁を求めます。
1点目は、名古屋市立高校生のアルバイトの実態調査をするということです。先ほどの調査は、4年前で一部の生徒の調査でした。その後、東日本大震災が発生し、政権交代、アベノミクスの円安による物価上昇や消費税増税など、高校生と親を取り巻く環境は大きく変化しています。現状を改めてつかむために、実態調査を実施することについて、お考えをお聞かせください
正確な実態把握に努める(教育長)
【教育長】市立高校でアルバイトの届を出している生徒の割合は、全日制が475人で4%、定時制が379人で41%、合計854人で7%です。いわゆる「ブラックバイト」は、生徒の学業に支障が生じるという点で、深刻な問題であると考えている。今後は各高校で、生徒からの届け出を徹底し、アルバイトの正確な実態把握に努めたい。
働くルールを学ぶ機会をつくれ
【岡田議員】2番目に、大半の子どもたちが将来労働者になることを前提に、適切な時期に働くルールを学ぶ機会をつくるということです。
労働者の権利などは「政治・経済」の教科で、「労働基本権」「労働三法」を触れる程度学習するのですが、自分が経験する労働として、学ぶことはほとんどありません。
自分のバイトってどうなのかな?その疑問がすっきりわかる例として、これは、ブラックバイト対策弁護団あいちが作成した「あなたのバイト、ブラックバイトではありませんか」というパンフの中にある、ブラックバイト度チェック表です。「一つでもあてはまるなら、あなたのバイトはブラックの可能性大です!」と啓発しています。
高校生の半数近くがアルバイトを経験しているのであるなら、こんな講義を例えば高校2年生を対象に、体験や事例に触れて、労働ルールを学ぶ機会をつくることはできるのではないでしょうか。考えをお聞かせください。
労基署と連携し、学習の場を設ける(教育長)
【教育長】教科書で学ぶ以外に、労働基準監督所と連携し、生徒の実態に応じて、労働法に関する学習の場を設けたい。
身近な相談窓口をつくれ
【岡田議員】3番目に、違法・脱法行為と疑われる場合、誰に相談して解決するか、まずは身近な相談窓口をつくることです。労働相談は労働基準監督署となりますが、高校生の働き方の問題だけでなく、家庭の経済的な問題も高校生は自分の問題として悩んでいることもあります。社会背景も含め相談できる正規のスクール・ソーシャル・ワーカーを高等学校に配置することはできませんか?相談窓口の必要性についてお聞きします。
相談窓口の紹介を含め、個別指導する(教育長)
【教育長】違法な働かせ方があった場合の対処方法について、相談窓口の紹介を含めて、啓発パンフレットを使った個別指導を行いたい。
SSW(スクール・ソーシャル・ワーカー)の配置も必要(要望)
【岡田議員】教育委員会がつかんでいる高校生アルバイトは平均で7%、しかし、直接生徒にアンケートとったものでは平均48%と、対象が市立高校生だけではないとしても実態と教育委員会の現状把握とに大きな乖離があるこということを認められたということですね。
そのうえで、現状の把握に努めるというご答弁でしたので、まずしっかり実態をつかんでいただきたいと思います。
また労働基準監督署との連携は初めての取り組みだと思います。高校生への労働法に関する学習の場を早速すすめて頂きたいと思います。
生徒の相談については、相談窓口の紹介と個別に指導ということですので、まずはほんとに始めて頂きたいと思います。実態把握の中で、やはり経済的に深刻なケースがあるのであれば、スクール・ソーシャル・ワーカーの配置は高校でも絶対に必要だと指摘しておきたいと思います。
生徒自身が「おかしいのでは」と気づくことが必要です。本来学業に専念すべき高校生が、バイトで疲弊し、違法なバイトをさせられないように教育委員会としての取り組みを進めていただきたいし、私どもも応援もしていきたいと思います。
市独自の給付型奨学金制度をつくれ
【岡田議員】4番目に、経済的支援として給付型奨学金を創設することです。ブラックバイトであっても高校生活を維持するために、また家計を助けるために働く高校生が一定数いる実態は、少子化問題に取り組まなければならない名古屋市にとっても、解決すべき重要な問題です。
現在、名古屋市には高校入学時に貸与型の入学準備金制度があり、県の貸与型の奨学金を利用することもできますが、貸与である限り、将来にわたって若者が借金を背負うことには違いありません。必要なのは返済いらない給付型奨学金です。名古屋市独自の基準を設け、給付型奨学金制度をつくることについて考えを聞きします。
現行の入学準備金貸付制度や県の奨学給付金制度で対応(教育長)
【教育長】本市独自の「入学準備金貸付制度」を平成16年度に設けた。給付型奨学金は、国が「奨学のための給付金に係る補助制度」を創設したことを受け、愛知県で生活保護受給世帯、市町村民税所得割非課税世帯を対象とした「奨学給付金制度」が実施されている。これらの制度をあわせて、高校生への経済的支援を図る。
給付奨学金制度の検討を(再質問)
【岡田議員】市独自の給付型就学金制度の創設を提案しましたが、今ある市の入学準備金30万円貸与と県の給付型奨学金で支援していくとの答弁でした。これで、十分に支援ができているといえるのでしょうか。課税ぎりぎりの世帯の高校生は、バイト代を学習費や生活費に充てるために働いている実態は、問題ないでしょうか。
他都市の事例ですが、横浜市、川崎市は、市独自で基準を作り、市内の高校生、公立私立問わず、奨学金の支給をしています。
名古屋市も県の私学助成に漏れた高校生を、独自に基準を設けて救ってきているではないですか。教育長に再度給付奨学金制度、枠は大きくても小さくてもとにかく始めるということができないでしょうか。もう一度お聞きします。
現行制度で対応する(教育長)
【教育長】本市独自の入学準備金対応制度と合わせ、引き続き高校生への就学支援を行ってまいりますのでご理解賜りたいとおもいます。
実態に見合った、必要な手立てを(要望)
【岡田議員】生活費を稼ぐために他の生徒とそん色なく高校生活を送るためにバイトしなければいけないという実態がある、というふうに思うんです。それは今後、高校生に丁寧に、バイトの状況とか、何に使っているのか等、しっかり調べいただいて、市民税所得割非課税までが給付の対象ですけど、そのぎりぎり少し上の段階の子どもたちが一番苦しいんだと思うんですね。そのあたりの格差と貧困が広がっている実態は、教育委員会は大丈夫と思うのではなく、実態を見て必要な手立てをしていただきたいと思います。
ブラックバイトの背景にある高校生の貧困問題に向き合っていただきたい。18才までは子どもなのですから、なごや子ども条例を真ん中に、教育委員会だけでなく、子ども青少年局と一緒に対応されることを求めて、質問を終わります。