2015年9月定例会
江上議員が名駅周辺開発計画について議案外質問
江上博之議員が本会議にて9月17日、リニアを起爆剤とする名古屋駅周辺開発計画について議案外質問を行いました。市民の声、防災危機管理、地球温暖化対策などの観点から、リニア建設の中止や高層ビル建設の制限を求めました。動画は名古屋市会HPを、質疑応答の全文意訳は下記をご覧ください。
2015年9月17日 江上博之
9月定例会 議案外質問と答弁
リニアを起爆剤とする名駅周辺開発計画について
名古屋駅周辺再生に対する市長の認識を問う
リニア建設を中止に、市民の声を踏まえた「構想」にすべき
【江上議員】名古屋の玄関名古屋駅周辺の再生に対する市長の認識をお聞きします。
「東京品川までなぜ、40分で行かなければならないんだ」「名古屋の玄関を市民の声も聞かずに変えていいのか」「暮らしが厳しいとき、リニアでなく市民生活に税金を回せ」この声にこたえる名古屋市政が求められています。
ところが、市長は、開会日の議案提案説明で、リニア開業を控え、「世界三大都市の一つとして世界中から注目を集める魅力ある都市への変貌を遂げるまたとない転換期」というばかりで、市民の声にこたえる姿勢を示していません。市民にとって魅力ある名古屋とは何かを考えていきます。
市長は、リニアが来たらみんな東京へいってしまう。東京へのストロー現象で名古屋が衰退する。だから、魅力あるまちづくりだ、といって、名古屋市は、「名古屋駅周辺まちづくり構想」を昨年9月発表しました。確かに、名古屋駅について、「乗り換え経路が分かりにくいし段差が大変」「バリアフリーを充実してほしい」など市民の声はあります。しかし、そのことだけを理由にしているわけではない開発となっています。超高層ビルが駅前、特に駅東側に林立しています。JRセントラルタワーズ245mに続き、ミッドランドスクエア247mをはじめ、現在工事中や計画中を含めると高さ100m以上の超高層ビルだけでも8棟になります。高さだけでなく、延べ床面積も大変な面積です。このような超高層ビルが建設可能になったのは、2002年に国が制定した法律に基づき、「都市再生緊急整備地域」「特定都市再生緊急整備地域」が指定され、名古屋市が「都市再生特別地区」を決定すれば、「用途制限、容積率の最高限度・建築物の高さ制限等を緩和」することができるからです。民間事業者は、さらに、国によって、金融・税制の支援も受けることができます。超高層ビル建設だけでなく、笹島から南への地下通路の建設もすすめられようとしています。
東京へのストロー現象に対して、一方、名古屋市内や、愛知県下、東海地域などからみると名古屋駅への一極集中、名古屋駅のストロー現象の心配もあります。名古屋駅は、名古屋の玄関であるとともに、この地域の交通拠点であり、乗り換え駅でもあります。その駅に集中して他の市内、市外地域が衰退し、暮らしにくくなるようでは困ります。
ところが、名古屋市の構想は、駅東側だけでなく、駅西側も、「大規模な再開発がなされておらず、高度利用が十分に進んでいない状況」として、高層化が構想されています。
さらに今年7月、都市再生緊急整備地域を拡大して推進姿勢を強めました。この構想が、21世紀、人口減少社会、超高齢化社会、そして、少子化社会にふさわしいのか、地球温暖化、南海トラフ巨大地震に備えた名古屋のまちづくりと言えるでしょうか。
そこで市長にお聞きます。まず、リニア建設の中止を求め、じっくりと市民の声を聞き、21世紀にふさわしい、名古屋駅がこの地域で果たす役割を考えた「名古屋の構想」にするべきと考えますが、市長の認識をお聞きします。
名古屋を「世界三大都市」に引き上げたい。経済を引き上げて福祉をやる(河村市長)
【市長】今はおかげさんで名古屋は日本一だと思うんですけど、当たり前で都市の力があるわけではないんです。いつまでも続くわけでじゃないんです。だから不断にやっぱり努力して、都市の経済力をつけるように、不断に努力せないかん。
リニアは、課題はありますよ。地震が起きたらどうなるとか、電力をようけ使うがどうかとかですね、そういうのは克服しとってもらわなければいかん。
今、この名古屋の地位を世界の三大都市と言われるぐらいまで引き上げることが、まわりの方、ひいては日本中の経済力を上げることになります。それと同時に、福祉もどこにも負けんような福祉をやっていこうということでして、経済の力を落とした場合に福祉がどれだけ苦しむことになるのか、ということをようお考えいただけないかなあと思いました。
駅整備・まちづくりについて聞いている。ちゃんと答えなさい(意見)
【江上議員】私は、未来社会は別といたしまして、今現時点において、多様な視点から名古屋駅なり、名古屋のまちづくりを考える必要があると、そういう視点で質問しておりますので、そういう姿勢でお答え願いたいと思います。
名古屋駅周辺開発計画の問題点と対案について
地球規模での温暖化対策
温暖化対策の観点から「構想」にモノを言うべき
【江上議員】次に、開発計画の問題点と対案について質問します。
1点めは、地球規模での温暖化対策に対応しているかどうかについてです。
名古屋市は1990年比で2020年までに25%のCO₂削減に取り組んでいますが、CO₂排出量の実際の地域の状況を示す数値では、2012年時点で、10.2%の削減でしかありません。削減どころか増加しているのが、「オフィス・店舗部門」の部分で、1990年度比37.4%もの増加です。経済活動を活性化することは必要ですが、地球全体のとりくみを無視した活動はあってはなりません。
そこで環境局長に質問します。
「オフィス・店舗部門」の排出量を目標実現するためには、超高層ビル建設など現在の名古屋駅周辺の構想について、モノを言う必要があります。地域冷暖房を普及しても、超高層ビルの建設ラッシュで、ヒートアイランド現象、床面積の増加で、CO₂排出量全体は増加するばかりです。名古屋市の構想に対して今まで、この視点から問題提起してきたのか、これからどのような対応を行っていくのかお答えください。
環境への配慮を働きかけたい(環境局長)
【環境局長】本市のオフィス・店舗部門における温室効果ガス排出量は、基準年の1990年と比べて増加している。リニア中央新幹線の開業を見据えた名古屋駅周辺のまちづくりにおいても、経済活動の活性化に伴い、温室効果ガスや人工排熱の増加が想定される。
環境局としては、「名古屋駅周辺まちづくり構想」の策定にあたり、本市の「リニア中央新幹線関連まちづくり推進本部」において、持続可能な都市にふさわしい環境負荷の低いまちが形成されるような観点から意見を述べてきた。構想では、「環境負荷への低減」として環境性能の高い建築物の整備やエネルギーの面的利用の推進など、ヒートアイランドの緩和にも資する取り組みが掲げられており、この方針に基づき進められると考える。今後も、環境への配慮がなされるよう働きかけたい。
高層ビル建設にモノを言わなければ、CO₂削減目標は実現できない
【江上議員】2020年の目標である25%削減の実現を求めます。そのためには、今増加しております、「オフィス・店舗部門」の削減に取り組まないわけにはまいりません。超高層ビルを含む高層ビル建設にモノを言わないと実現責任が持てないのではないかと思います。ご決意をお聞きします。
現行制度の運用を通じて削減をすすめる(局長)
【環境局長】エネルギー使用量の多い大規模事業者に対し、地球温暖化対策計画書の届出などを義務付けることで、温室効果ガスの削減に取り組んでいる。新たに名古屋駅周辺に建設される大規模建築物もこの計画書の対象になると想定され、制度の運用を通じ温室効果ガスの排出削減を促進したい。
なお、「低炭素都市なごや戦略実行計画」策定時から、国の取り組み状況にさまざまな変化が生じており、本市の目標自体の検証も課題と認識している。
目標実現に全力を
【江上議員】名古屋市としての目標、その実現に全力を尽くしてください。
南海トラフ巨大地震など災害に備えた対応とまちづくり
高層ビル建設は帰宅困難者をさらに増やし、長周期震動ももたらす
【江上議員】2点目は、南海トラフ巨大地震など災害に備えた対応についてです。
名古屋駅周辺地区において、南海トラフ巨大地震を想定した帰宅困難者が、3万4千人で、今のところ4千人分の施設対応しかできていないということです。これから、駅東側だけでなく、駅西側も高層ビル化を計画すれば、オフィスが増え、帰宅困難者はさらに増え、対応が求められます。帰宅困難者全員の確保ができる施設をつくってこそ新たなオフィスビルの建設があると考えます。
また、超高層ビルは、長周期地震動と言われる周期の長いゆっくりとした大きな揺れに共振してより大きな揺れが長時間続くことが心配されます。建物は維持できても、その中にいる人間や設備が、1mとも2mとも飛ばされるような建物は建設すべきでしょうか。超高層ビルを含む高層ビル建設について、この点から見直しが必要と考えます。
名古屋駅周辺まちづくりのあり方について、もっと人命を守る観点から意見を述べ、安全確保をすべきと考えます。
そこで、防災危機管理局長に質問します。
名古屋駅周辺地区における高層ビルの建設は、南海トラフ巨大地震がおきた場合、防災の観点から、様々な問題があると考えますが、これについてどのようにとらえているのか。また、どのように対応していくつもりかお聞きします。
(現行の)「構想」に基づき、防災対策を推進する(局長)
【防災危機管理局長】「リニア中央新幹線関連まちづくり推進本部」に本市の防災部局として参加し、防災の観点からも検討してきた。
防災危機管理局としては、事業継続を可能とする高い防災性能を備えた建築物の整備、帰宅困難者が一時期間留まることのできる施設の確保や、防災性向上のための地下街の改善など、南海トラフ巨大地震などの災害に備えた防災対策を関係局・関係機関と十分に連携し、推進を図っていきたい。
地震などの専門家の声を「構想」に反映させるべき
【江上議員】まちの活性化といっても、地球温暖化対策、地震対策をはじめ災害に対応し安全なまちづくりが必要です。ところが、「名古屋駅周辺まちづくり構想」を策定するにあたっての懇談会には、有識者として、地震などの専門家が入っていません。なぜ、いないのか、これからの事業でこの分野の声をどうするおつもりか、お聞きします。
専門家の意見を聞いて進めたい(局長)
【住宅都市局長】都市防災の有識者のご意見をお聞きしつつ進めているところで、大規模地震発生時の帰宅困難者対策をはじめとする防災性の向上に向けた取り組みの推進にあたっても、専門家のご意見を踏まえながら進めている。
今後とも、専門家の意見を聞きしながら、ビジネス拠点・交流拠点にふさわしい防災性の高いまちづくりを進める。
公共交通を生かしたにぎわいづくり
自動車流入を止め、人や自転車が憩える空間づくりこそ必要
【江上議員】3点目に、公共交通を生かしたにぎわいづくりについてです。
人がにぎわう姿は、ビルの中や、地下街であっても実感がわきません。地上で人がいることが大切ではないでしょうか。公共交通を充実し、自動車でなく、地球環境にやさしい自転車や人が憩える地上の場所づくりが大切です。特に、駅東側でも、地下空間でなく地上でどう人が憩えるのか。その観点から、自動車流入を止め、車道を削減し、人や自転車が憩える空間づくりこそ必要と考えます。
そこで、住宅都市局長にお聞きします。市として「なごや交通まちづくりプラン」をお持ちですが、以上のような要素も含めた推進が必要と考えますが、お考えをお聞きします。
歩行者・自転車に使いやすい道路空間を実現したい(局長)
【住宅都市局長】名古屋にリニアが開業する時代は、高齢化が進展する一方、内外から多くの来訪者がリニアに乗って訪問することになります。このような時代の自動車に頼りすぎない都心づくり、歩いて楽しい空間形成を目指して、百メートル道路に代表される名古屋の広い道路空間を再編し、まちの活性化やにぎわい創出につながる質の高い道路空間の形成を図っていくため、「なごや交通まちづくりプラン」を昨年9月に策定しました。
その具体化にあたっては、必要となる交通処理機能を確保しつつ、歩行者・自転車にとって使いやすい道路空間が実現するよう施策を推進してまいります。
高速道路と駅のアクセス検討は中止すべき
【江上議員】「交通まちづくりプラン」の回答では、「自動車に頼りすぎない都心づくり、歩いて楽しい空間形成を目指す」としております。一方、「名古屋駅周辺まちづくり構想」においては、「広域道路ネットワークへのアクセス改善を推進する」として、名古屋高速道路の三方面から名古屋駅へのアクセスを検討していると議会でも回答されております。
矛盾している回答でありますし、私は、自動車流入を止めることこそ21世紀の駅前まちづくりであり、都市高速道路からのアクセスは検討を中止すべきと考えます。住宅都市局長の考えをお聞きします。
利便性を確保する(局長)
【住宅都市局長】名古屋駅と名古屋高速道路とのアクセス性の向上とは、名古屋駅周辺の交通の迂回・分散を図りながら、平面道路の混雑を緩和し、駅への送迎など、必要な車の利便性を確保するものでございます。「交通まちづくりプラン」がめざす、道・まちづくりを実現するための都心部幹線道路の機能の整理につながるものであり、矛盾するものではないと考えております。
21世紀を見据えたまちづくりを
【江上議員】21世紀を見据えたまちづくりが必要だと改めて申し上げておきます。
名古屋駅のあり方、駅西側再生のあり方について
市民・利用者の視点で事業の見直しを
【江上議員】4点目に、名古屋駅のあり方、駅西側再生のあり方についてです。
名古屋駅は、何より、沿線居住者や沿線への通勤通学をはじめとする当該地域の人々の日常的な利用がしやすいようにする。ビジネス客、観光客第一ではないはずです。
駅西側の商店街は、大型店舗規制をなくしたことによる大型ショッピングセンターの建設や自家用車依存の高まり、そして、駅東側の駅ビル群や駅ナカの店舗に客を奪われて、人通りが少なくなっているのではないでしょうか。駅西地域は、現在の計画は、高度化の計画による再開発で、オフィス・店舗等を増やす計画になっています。そうではなく、昔ながらの居住地であり、これからも都心に住み続けられる条件をいかにつくるかが問われています。
そこで、住宅都市局長に質問します。駅のあり方、駅西側の再生にあたっては、このような点を踏まえ、市民、利用者の声を聞きながら、じっくり駅のあり方、駅周辺のあり方を考えることが、名古屋市民の誇り、名古屋駅完成後の市民の愛着を高めることから見ても必要と考えます。その視点からの事業の見直しが必要とお感じになりませんか。お聞きします。
「構想」は市民・利用者の声を聞いて策定した(局長)
【住宅都市局長】「名古屋駅周辺まちづくり構想」の策定にあたっては、名古屋駅周辺を利用する来街者・事業者・居住者を対象にしたアンケート調査やパブリックコメントを実施するなど、市民や利用者の声をお聞きしながら進めてまいりました。
引き続き、皆様のご意見も伺いながら、駅周辺にある多彩な地域資源を活かした地域まちづくりの推進などの構想の実現に向けて取り組んでまいります。
計画公表前のアンケートでは、市民の意見を聞いたことにはならない
【江上議員】まちづくり構想の冊子には、市民アンケートを行ったと書かれています。その時期は、駅利用者(2012年10月から11月)、事業者(2013年1月から2月)、居住者(2013年2月)は、これは2年前の2013年2月ごろまでであります。ところが、JR東海が、名古屋駅の位置を示したのはそのあとの、2013年9月の環境影響評価準備書の説明会。都市計画図に駅平面図を示したのが、昨年10月の事業説明会ではないでしょうか。
駅の計画図もわからないままにアンケートをしても、市民の声「お聞きしながら進めてきた」と言えるでしょうか。声を聞く以上、駅に関連する情報をきちっと市民の皆さんにお伝えする、説明会を開く、疑問に答える、こういう場こそ必要です。こうやってこそ「市民の声」を聞いた、と言えるのではないですか。
(事業説明会が行われた)昨年10月以降、一部地域だけでなく全市的な名古屋駅の問題です―、駅周辺の方々について、パブリックコメントでなく、アンケートで聞いたことあるのでしょうか。また、今後の計画はいかがでしょうか。住宅都市局長にお聞きします。
今後広く意見を聞いて詰める(局長)
【住宅都市局長】昨年9月に「名古屋駅周辺まちづくり構想」が策定されましたが、その策定にあたり、アンケートやパブリックコメントなど、市民の皆様のご意見を頂戴しております。それ以降現在は各プロジェクトの調整会議を行っておりますが、今後、「まちづくり構想」の実現にあたり、広く市民の皆様のご意見を伺いながら、詰めてまいりたいと考えております。
市民の不安を解消することこそ必要
【江上議員】市民の声を聞くということに十分気を付けていただきたいと思います。
リニアにかかわる市民の不安、リニアが地下を通る方、名古屋駅建設の不安について、JR東海や国に内容を伝え、問題を質すのが名古屋市の第一の仕事と考えます。工事のために必要な大深度地下法に基づく国の認可は、まだ、JR東海に出されておりません。市民の不安を解消することが今こそ必要です。また、名古屋駅、およびその周辺開発についての不安を受け止める姿勢が名古屋市に必要です。
市民は、JR東海の説明に不満を持っております。市民の納得、理解を得て、市民全体が住み続けられるこれからの名古屋にふさわしい名古屋駅周辺まちづくりになることを引き続き求めていくことを述べ、質問を終わります。
キーワード:江上ひろゆき