2015年11月定例会

さはし議員が給食調理業務と公害歴史について議案外質問

IMG_3702 さはしあこ議員が本会議にて11月26日、学校給食調理業務の民間委託について、名古屋市の公害の歴史を伝える取り組みについて議案外質問を行いました。動画は名古屋市会HPを、質疑応答の全文意訳は下記をご覧ください。

2015年11月26日 さはしあこ

11月定例会 議案外質問と答弁

学校給食調理業務の民間委託について

なぜ民間委託しなければいけないのか。3校の選択基準はなにか

【さはし議員】先日、保護者の方たちの間で、小学校の給食調理員の募集が中止になっているけど、どうしてだろうと心配の声があがっているという話をうかがいました。

 そのようなところに、突然、来年度の4月から、小学校給食の調理業務のみ切り取り、民間委託を開始する計画があることがわかりました。名東区の西山小学校、緑区の大清水小学校、中川区の荒子小学校の3校です。自治体が順次民間委託をすすめてきましたが、本市は、自校方式で直営を堅持してきました。

 そこで、おたずねします。今までがんばって直営を守ってきた本市の調理業務を民間委託へと踏み切ることにしたのは、なぜですか。また、262校ある小学校の中で、3校を対象とした理由をお聞かせください。

人員削減を進めたので給食の安定確保には委託が必要

【教育長】小学校給食は、学校教育の一環として教育委員会が責任もって献立作成・食材調達を行っており、委託後もこれが変わることはありません。

 給食調理員は、組織及び運営の合理化を進めるため、退職不補充としており、限られた人員を有効かつ効率的に活用し、今後も安定的に給食を提供していくためには、調理業務の委託を実施する必要がある。

 委託化する3校は、経費的なメリットが生み出せるよう、規模の大きい学校から選んだ。

きめ細やかなアレルギー対応ができるのか

【さはし議員】民間委託がされた場合のいくつか懸念される点について、おうかがいします。

 この間、学校給食の調理員さんから、直接お話しを聞く機会がありました。調理員さんは、みなさん口をそろえて「子どもたちの安心・安全・安定した給食を守りたい」と言われます。

 本市の場合は、食物アレルギーの子どもに対しては、アレルギー食材は使わない、いわゆる除去食で対応しています。アレルギー対応給食を作って出すだけならば、民間委託であっても問題はない。ところが、アレルギー給食を取りにこなかったり、忘れてしまっている子どもたちもいるため、急いで、インターホンで呼んだり、教室まで持っていったりすることも毎日のようにあるそうです。作ることよりも、そのあと、子どもたちの手元に安全な給食を届けるまでが、調理員としての大切な役割だそうです。先生も本当に多忙で、アレルギーの子どもの対応を調理員さんも一緒になって行っているのです。学校現場は、毎日何が起こるかわかりません。一人ひとりの子どもに安全な給食を届けることができる、これは長い年数かけて、さまざまな場面を乗り越えてきた経験と知識があるからこそできると話されました。

 最近は、食物アレルギーを持つ子どもが増えてきています。給食を食べた後、児童がアナフィラキシーショックで亡くなった悲しい出来事もありました。命にかかわることです。

 アレルギーを持つ子どもたちに安心・安全な給食を提供できるとお考えですか、お聞かせください。

委託しても「食物アレルギー対応の手引き」に沿った給食を提供する

【教育長】市では「食物アレルギー対応の手引き」を作成しており、児童一人ひとりについて適切な対応を取ることとしている。委託校でも、食物アレルギーのある個々の児童に対して、「手引き」に沿った安心安全な給食を提供する。

経験が生かされない、子どもたちとの交流が阻害される、などの不安がある

【さはし議員】今回の委託は、調理業務のみ、つまり、作り手のみが市職員から民間へと置き換わります。対象となった3校には、それぞれ栄養教諭等を配置するとしています。現在、小学校262校に対し、栄養教諭113人が配置されています。栄養教諭は1校に1名の配置もできていないのが実情です。民間委託を実施する学校においては、安心・安全な給食を担保するために一人を配置するとしています。言いかえれば、対象校には、一人必ず栄養教諭を配置しなければ安心・安全が担保出来ないのではありませんか?

 また、委託となると、学校配置の栄養教諭は、委託先の責任者の調理員にしか指揮命令が出来ないため、現場の調理員に対しては、直接指導することができなくなります。調理員さんから、毎朝作成する食材ひとつひとつの詳細な動きが書き込まれた作業動線図、調理員ごとにその日の業務が記された作業行程表を見せていただきましたが、本当に細かくて、ひとつ作業が狂えば、すべてやり直しとなります。食材の不足や急に給食時間が変更となるなど、緊急・突発的なことが起こった場合の対応も、現場のコミュニケーションが大切になってきます。調理業務が民間委託することになれば、4年ごとの入札によって業者が決められ、調理員も入れ替わることになると思いますが、長年培った経験があるベテラン調理員の存在や、そのノウハウを後輩に継承していくことで、経験も蓄積され、適切に対処もできるのではないでしょうか。また、短期間で調理スタッフが入れ替わるようになれば、先生や子どもたちとの信頼関係も薄くなっていくのではありませんか。お答えください。

国や市の衛生管理基準等に基づいて調理する。引継ぎは十分に行う

【教育長】委託業者においても、これまでと同様に、国や本市の衛生管理基準等に基づいて実施する。また、委託業者の入れ替えの際には十分な引継ぎを行い、業者や調理スタッフが入れ替わっても、安心安全な給食を安定的に実施できる。

子どもを見守る学校の一員である調理員を民間スタッフに置き換えるのか

【さはし議員】調理員は、市の職員として、小学校の行事や職員会議への参加など、子どもの教育にも深く関わり、教育機能の中で働いているといえます。

 常日頃から、食を通じて子どもたちに声をかけたり、接することができる調理員は、子どもたちにとっても学校側にとっても大きな存在だと思います。

 学校自体も複雑・多様化してきている中、さまざまな方面から大人が子どもたちに目を向け、救い上げるための体制づくりが必要です。いま、本市でも学校職員を含め、あらゆる力を結集しなければならないときです。調理員は、給食をつくるだけが仕事ではありません。子どもを見守る学校の一員で、市職員である調理員だからこそ、民間スタッフへ置き換えることはできないと考えますが、認識をおうかがいします。

委託業者にも学校行事に協力するよう指導する

【教育長】調理スタッフが、普段から子どもたちに声掛け・コミュニケーションを取ることは、大切な事だと考えており、委託業者にも、学校給食が教育の一環であることを十分認識させ、食育等の教育活動や学校行事に協力するよう指導します。

教育委員会が責任を持っているというなら直営を堅持すべきだ(再質問)

【さはし議員】教育長は、「小学校給食は、教育の一環であり、教育委員会が責任を持っている」と答弁されました。その通りです。だから、いままで直営を守ってきたのではありませんか。突発的なことが起きた場合の対応などは、経験があり、継続的な調理員によって、子どもの命や食を守れるのではないですか。今いただいた答弁ですと、「組織及び運営の合理化」と言われますが、自ら定数を削減したから、限られた人員になったのではありませんか。定数削減したこと自体問題ではありませんか。教育長の見解をお聞きします。

定数削減が厳しく求められている

【教育長】定数削減は教育委員会にも等しく求められている。小学校給食は、委託後も、教育委員会として責任もって実施します。

お金より子どものことを第1に(意見)

【さはし議員】今回の民間委託は、結局は、定数削減、経費的メリット、子どもたちの命を守ることよりもお金なんですね。子どもが一番です。民間委託はすべきではないと申し上げて終わります。

公害の歴史を伝えるための取り組みについて

公害の歴史に対する環境局長の認識を問う

【さはし議員】「ここ名古屋で公害裁判なんてあったの?」最近の大学生の言葉だそうです。四大公害病は、学校の授業で学びますが、名古屋については、公害があったこと、公害裁判があったことなどをまったく知らないといった若ものも少なくありません。

 戦後の高度成長にともなう経済発展において、環境より産業を重視した結果、さまざまな公害が発生しました。全国各地で住民が健康被害に苦しみました。水俣病、新潟水俣病、イタイイタイ病、四日市ぜんそくは、四大公害病として社会的にも問題となりました。

 さて、公害とは何でしょう。知らず知らずのうちに、自分で作ったお米を食べて病気になってしまった、自分が釣った魚を食べたために病気なってしまった、ただ息をしているのに息苦しい、公害によって苦しんできた公害患者のみなさんの悲しく辛い思いです。

 みなさんもご承知のとおり、四日市市は、コンビナートの煙による大気汚染によって四日市公害が発生し、多くの住民がぜんそくで苦しみました。そのような中、患者らは、立ち上がり、四日市公害裁判を起こし、弁護団や支援者による住民運動の支えもあり、画期的な勝訴となりました。これを契機に、全国の公害問題も改善へ進み始めました。そして、市民・行政・市議会・企業が一体となって、環境改善に取り組み、公害を克服してきました。

 「公害のまち四日市」のイメージを払しょくするため、施設名にあえて「公害」をつけ、負の遺産に真正面から向き合ってつくられたのが、今年4月に開館した「四日市公害と環境未来館」です。私も訪問させていただきましたが、この施設では、公害患者ご自身が裁判での証言を語った映像や貴重なさまざまな資料を保管し次世代に継承するため、そして、未来の環境に取り組んでいくうえでも大変重要な拠点になっていると思います。

 それでは、名古屋市はどうでしょう。

 昭和40年代から、南区や港区の周辺住民は、工場の煙による大気汚染やトラックなどから出される排気ガスによって、子どもから大人までぜんそくなどを患い、何十年も苦しんできたそうです。四日市公害裁判の勝訴を受け、ここ名古屋でも患者会がつくられ、名古屋南部大気汚染公害訴訟、青い空をとり戻すいわゆる青空裁判で国や企業に対して、公害患者の救済や公害対策の強化を訴え続け、平成13年、ついに「和解」となりました。きれいな青い空であってほしい、子や孫たちに空気がきれいな街をつなげたいというのが、公害患者のみなさんの思いです。

 本市としても、このような産業によって引き起こされた公害に対応するために当時「公害防止条例」を制定し、工場・事業場等に対する公害防止のための規制措置や、事業者への自主的な取り組みへの推進などをすすめてきました。それらの取り組みによって、大気汚染や騒音など減ってはきましたが、四日市市のように公害歴史の原点から、学ぶことが必要と考えます。

 そこで、おたずねいたします。名古屋市の公害を踏まえた環境行政について、環境局長の認識をおうかがいします。

公害問題の経験を教訓として、環境への配慮を重視した社会に

【環境局長】昭和30年代後半から40年代を中心に、大気汚染などの激甚な公害の発生によって、気管支ぜん息などの健康被害が発生するなどの深刻な状況に直面しておりました。こうした状況に対して、法や条例の整備による環境監視や規制や指導を充実するとともに、市民・事業者がともに努力を重ねた結果、かつての危機的な状況を脱することができました。

 このような公害問題の経験を教訓として、現在のように環境への配慮を重視した社会につなげることができたと考えております。

環境学習センターにおける公害の歴史に関する環境学習の実施を

【さはし議員】名古屋でも、公害患者の方々は高齢化が進み、病気も重症化しており、その当時のことを知っている患者会や関係者のみなさんも数少なくなってきています。だからこそ、名古屋の公害がどのようなもので、どのように乗り越えてきたのかを風化させないためにも、経験してこられた方々からの貴重な証言や資料を通して、子どもたちに語り伝える取り組みが必要だと考えます。名古屋の公害に関する裁判記録や患者会の証言など貴重な資料を収集・保管し、展示などによって、名古屋市民はじめ多くの方に知っていただくことができる名古屋市公害資料館(仮称)をつくっていただきたいと思います。

 そこで、提案です。本市には、「環境」について、体験を通して学ぶことができる環境学習センターエコパルなごやがあります。ここでは、子どもたちが公害について学習を深めていることからも、名古屋の公害の歴史もしっかり学ぶ場として適しているのではないでしょうか。私も、今回、名古屋市の公害の歴史について、患者会や関係者のみなさんからお話を聞かせていただきました。公害について、経験された方々に直接語ってもらうなど、市民の力も借りながら、まずは、子どもたちに名古屋における公害の歴史を学んでもらう取り組みとして、環境学習センターエコパルなごやを活用することからスタートしませんか。

 以上で、第1回目の質問を終わります。

環境学習センターの活用を検討したい

【環境局長】平成7年に整備した環境学習センターでは、これまで大気汚染や水質汚濁など生活環境問題から地球環境問題まで、展示や映像などを使って、環境学習を行ってきた。展示スペースをどう確保していくかなどの課題はあるが、公害の歴史を学び、後世に伝えていくことは、意義があるものと認識しており、今後、環境学習センターの活用を検討していきたい。

公害患者や関係者のみなさんとも連携した取り組みを(意見)

【さはし議員】公害の歴史を学び、後世に伝えていくことは、有意義であるとして、環境学習センターの活用を検討していただけるとの答弁でした。公害患者や関係者のみなさんも「ボランティアとして、公害の歴史について語らせていただく」とおっしゃられています。ぜひ、そういった方々とも連携して、本市の公害の歴史を学ぶ取り組みを始めていただきたいと思います。

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