2016年2月定例会
高橋議員の議案質疑 図書館の指定管理(2016年2月25日)
図書館条例の改正について
責任者が次々交代した人員配置でいいのか、児童サービスなどに職員の知識経験の蓄積が望めない
【高橋議員】今回の条例改正案は図書館への指定管理者制度の試行的導入をこれまでの志段味図書館1館から新たに中村・富田・緑・徳重の4つの図書館へと拡大するというものです。 公立図書館は社会教育法・図書館法に基づき設置されています。社会教育法では「すべての国民があらゆる機会、あらゆる場所を利用して、自ら実際生活に即する文化的教養を高め得るような環境を醸成する」ことが自治体の任務とされており、図書館法では、「入場料その他図書館資料の利用に対するいかなる対価をも徴収してはならない」とされているように、図書館は住民の社会教育の場であり、憲法の定める国民の学ぶ権利、知る権利を保障するための公共性の高い施設です。
ですから、志段味図書館へ指定管理者制度の試行的導入を行う際にも、「十分な検証期間を設けるとともに、検証にあたっては、導入の拡大ありきではなく、客観的、実証的な評価に努め」ることなどが議会の要望として出されました。そのことを受け、昨年平成25・26年度の志段味図書館の運営状況に基づき、検証を行った結果がまとめられました。
今回の条例案では、指定管理者制度の試行的導入を広げるとしていますが、図書館への指定管理者制度の導入が妥当なのか、指定管理者制度を導入した志段味図書館の検証結果を基に判断していく必要があります。そこで4点おたずねします。
1点目は職員体制についてです。指定管理導入の1年目、志段味図書館では総括責任者、副総括責任者、窓口責任者が相次いで辞職、交代するという事態がありました。責任者が3人そろって交代する、これは非常に由々しき事態です。
なぜ責任者が次々と交代するといった事態が発生してしまったのでしょうか。人員配置に対する市の指導責任とは何でしょうか。お答えください。
2点目は指定管理者制度導入の目的であるサービスの向上についてです。検証結果では、「基本的な部分のノウハウは直営館と変わら」ないとしつつも、「児童サービスにおいては、直営館レベルの配置は望めないのではないか」として、次のような指摘がされています。
「「小中学校の読書活動支援」について選定時の評価が高く、さまざまな事業を提案していたにもかかわらず、児童サービスに精通した司書が運営開始当初に不在であったことは、指定管理者の姿勢に疑問を感じる」「トワイライトスクールでの出張読み聞かせは調整段階にとどまり、実施にはいたらなかった」「学校図書館用検索データベース「Tool-i」を提供したが、別のデータベースをすでに導入していることから利用を拡大できなかった」。
このような指摘がなされるということは、サービス向上について、指定管理者に期待していた事業が計画通りに実施されなかったということではないのですか。お答えください。
市の指導助言等により必要な水準に達している(教育長)
【教育長】指定管理者の職員配置や児童サービス等は、市の指導助言等で、改善すべきところは改善され、職員の知識経験を含め、着実に実績を積み重ねており、指定管理者として必要な水準に達している。
引き続き鶴舞中央図書館が主催する実務研修への指定管理者の参加や市の司書による指導・助言などを通じ、指定管理者が適切なサービス提供を行えるよう努める。
試行拡大の前に結論を出すべきではないか
【高橋議員】3点目は、指定管理に期限があることです。検証結果では「指定管理の初年度はまず運営の安定に注力する必要があることから、初年度における独自事業の展開の難しさ」があると指摘しています。そして、「少しずつ変化すること(改善)を期待」するという指摘がありますが、制度上短い期限の中では職員の知識・経験を積む年月に限りがあるとも指摘されています。つまり、長期的な運営の安定性は望めないということではありませんか。
図書館運営について、期間に限りがある指定管理者制度では知識・経験が蓄積できないという問題をどのように考えているのですか。認識をお示しください。
4点目は指定管理者制度の導入の是非についてです。志段味図書館における指定管理者制度における検証結果はどんな判断をくだしているのでしょうか?概括において、「1館、1事業者、1期の試行では判断できない」このように述べられています。つまり志段味図書館での試行からは、指定管理者制度を全市に広げるべきとの確信が得られなかったのではありませんか。答弁を求めます。
志段味図書館の指定管理は適切。複数館での運営など新たな視点で拡大する(教育長)
【教育長】検証で、図書館一館での指定管理による管理運営は、適切であったと考える。
検証委員会の意見を踏まえ、複数館での運営や事業の継続性という新たな視点を加えで試行の拡大を行う。
運営当初問題があったのに、なぜ新たに4館か(再質問)
【高橋議員】市の指導助言により改善してきたため、指定管理者制度でも問題ないとのご答弁がありました。運営当初問題があったとお認めになられたということですよね。指定管理者は短い期間の中で事業者が交代することもあり、長期的な展望を望めないため、鶴舞中央図書館主催の研修への参加、市の司書による指導・助言をしていかなければならない、それは本市の職員がこれまで蓄積してきた知識・経験が重要だということの現れです。
また、志段味図書館一館での指定管理による管理運営は適切であったと考えているとのことですが、ではなぜ正式に導入するとならず、試行を延ばすことになったのか、疑問を感じざるをえません。
2012年2月定例会での我が会派の岡田議員の質問に対して、教育長は志段味図書館は「小規模の図書館であり、サービス向上が反映されやすい」と答弁されました。しかしながら、そのように考えて実施した志段味図書館における検証でも、サービス向上したと判断できずさらに5年試行を延ばす、それだけではなく、新たに4館へ試行を拡大する。小規模だけではわからないから大規模で、1館だけではわからないから区分館と支所館の組み合わせでなど、色々なパターンをすべて試したうえでないと導入の是非、結論は出せないということになってしまわないでしょうか。これではこのままずるずると結論を先延ばしにし、なし崩し的に試行を拡大していくことになるのではないかと危惧します。
そこで再度教育長にお聞きします。ここまで検証で意見がまとまっていない中で、この4館を選んだ理由は何でしょうか。また、いつまで試行・検証を行えば結論が出せるのですか。検証によっては直営に戻すという判断も当然あると考えてよいのですね。
経費節減し、新たなサービスをより効果的・効率的に展開したい
【教育長】試行拡大の4館は、地域性、利用率の現状、新たなサービス展開等の観点から選定している。
今後は、早急に検証を進めるとともに、次の指定管理期間の中で適切に対処したい。
いずれにしても、経費節減により財源を確保しながら、新たな図書館サービスをより効果的・効率的に展開したい。
経費節減以外、目的がはっきりしない回答だ(意見)
【高橋議員】経費節減以外、目的がはっきりしない回答でとても納得のいくものではありませんでした。この問題については、引き続き、委員会で審議をしていきたいと思います。
最後に、先日、教育委員会主催のシンポジウム「これからの図書館をみつめて」にパネラーとして参加された岐阜市立中央図書館の吉成信夫館長にお話を伺いに行きました。吉成館長は民間でできることが公立でできないわけがないし、図書館の運営は直営でなければ職員は育たない、今、図書館は人と情報だけでなく人と人とを結ぶこと、また様々な相談に応じることなど、多岐にわたる力が求められており、こうしたものは経験によって培われ、その経験を継承していくことがとても大事と語っておられました。指定管理者制度では大丈夫なのか、そのことも考えていきたいと思います。
以上で私の質問を終わります。