田口かずと議員の代表質問① 「稼げるまち」を目指す市長の行政運営(2016年3月4日)
田口議員の代表質問の項目
1 「稼げるまち」を目指す市長の行政運営について
(1)名古屋城天守閣の木造復元
(2)リニア開業を前提にした名古屋駅とその周辺開発
2 貧困と格差をただし、市民の暮らしを応援する取り組みについて
(1)第3子からの小学校給食費助成制度の創設
(2)保育料の無料化の拡大
(3)奨学金返還支援制度及び私立高校給付型奨学金の創設
(4)住宅リフォーム助成制度の創設
3 地球温暖化対策とエネルギービジョンの策定について
4 弥富相生山線の廃止に向けた手続について
5 安全保障関連法に対する市長の所見について
河村市長の「稼げるまち」論は大企業応援
市民の暮らしを最優先で応援する市政に
名古屋城天守閣の木造復元
福祉などに回せるお金をいくら稼げるか
【田口議員】「『稼げるまち』をめざし、そこから福祉の充実へつなげていく」という河村市長の行政運営について質問します。
市長のいう「稼げるまち」づくりの一つが、名古屋城天守閣の木造復元であります。天守閣整備のタウンミーティングでは、参加した市民の方から、「暮らしが大変なときに、天守閣に何百億円もの税金を使うのはおかしい」「木造復元の事業費は400億円というが、財政が厳しい中では福祉や防災対策を優先してほしい」などの意見が出されていました。 これにたいして市長は、「木造復元して稼げるまちにする。それが福祉の充実につながる」と繰り返していました。それでは、天守閣の木造復元によって、いくら稼げるのか。木造復元による経済波及効果は、市の試算では年間約100億円です。この試算は、木造復元後に入場者数が倍増することが前提とされていますが、入場者数倍増というのは、本丸御殿に関するアンケート結果から類推に類推を重ねたものであり、根拠は薄弱です。
そこでお尋ねしますが、市長は、名古屋城天守閣の木造復元によって、福祉などに回せるお金をいったい、いくら稼げると考えておられるのか、お答えください。
100億円で5億円。納税額で(市長)
【市長】一応、経済効果でいいますと、名古屋でいうと今11兆円のGRPといいますが、それでだいたい5000億円、市民税・固定資産税合わせてですね。だいたい5%ぐらいはあるだろうと。そうなりますと100億円あると5億円ですか、それだけだとね。ということはあるのではないですか。納税額のほうですが。
入場者が20年間500万人にも増加する根拠は何か
【田口議員】市長は、「税金は使いません。市債を発行して、入場料収入で賄います」とおっしゃいました。そして、利率1.527%の30年公募債を400億円発行することを前提にした試算を示しておられます。この試算では、利払い額が183億円となり、元金と合わせて583億円。これを500円の入場料収入で償還するために、2025年度から2047年度までの20余年間は、年間442万人の入場者数を見込むというものです。 名古屋城の入場料は、中学生以下は無料であり、障害者も免除されています。65歳以上の市内高齢者は100円です。ですから、500円の有料入場者数が442万人ということは、無料や100円の入場者を含めると、500万人程度を見込まなければならないでしょう。ちなみに現在は165万人程度です。
市長、木造復元によって名古屋城の入場者数が500万人に増加し、それが20年間余りも継続するのですか。その根拠を示していただきたい。熱田神宮は人々の信仰の対象であり、入場料は無料ですから、熱田神宮を引き合いに出すのはお門違いです。
魅力があればくる。熱田神宮や東山動物園にきてそのまま来ればたくさん来る。努力しないと(市長)
【市長】熱田神宮はり魅力があるからです。名古屋城だって負けず劣らずもっと魅力ある可能性がありますよ。熱田神宮を参拝されてそのままお見えになるかわからないし、名古屋城でも初詣をやろうじゃないですか。楽しいですよ、カウントダウンやったり。そのままお見えになれば670万人、初詣を引きますと450万人ということになる。東山動物園に来る人も350万人が目標ですが、300万人とかあるでしょう。そういうのが来てもらえば十分にある。江戸城は500万人を目標にしている。姫路城が220万人、熊本城が150万人くらい。地の利が全然違う。京都に行くとき、二条城と一緒に、家康が同時期に作った城ですので一緒に行きましょう、名古屋によって行きましょうとか、十分可能だ。誇りをもってみんなで盛り上げないかんです。
天守閣木造復元後の入場者数の予測はしているのか
【田口議員】市民経済局長にお尋ねしますが、そもそも名古屋市は、木造復元後の入場者数の予測を立てているのですか。
倍増すると想定(局長)
【市民経済局長】天守閣を木造復元した場合の入場者数は、本丸御殿復元による年間入場者数がほぼ倍増すると想定されていることを参考に、同等の集客効果があると考え、試算した。熊本城の場合、入場者数が、整備直後には整備前の約3倍となり、その後も約2倍程度という実績があり、天守閣を含めた名古屋城全体の整備を進め、名古屋城の魅力向上を図ることで、さらなる集客が期待できる。
市債の発行は、結局税金で返済することになるのではないか
【田口議員】名古屋城の維持管理のためには、職員の人件費と管理運営費だけでも年間6億円余りが支出されています。市長は、名古屋城の「民営化」を口にされていますが、仮に大阪城公園のように指定管理者制度を導入したとしても、入場料収入は人件費や管理運営費などに優先的に充てることになりますので、黒字が出ても市債の償還に回せるのは限られます。
市債を発行しても、結局、税金で返していくことになるのではありませんか。市長の答弁を求めます。
入場料で返す。全体に経済効果(市長)
【市長】税金で返すんでない。入場料で返しますから。入場料はごくわずかです。それプラス、名古屋城できしめん食って帰る人や観光土産を買っていく人、そんなかのいくらかと、それと全体の経済効果とか。税金は使いません。稼ぐところです。
リニア開業を前提にした 名古屋駅とその周辺開発
名古屋駅ターミナル機能強化の整備にはいくらかかるのか、JR東海などに応分の負担を求めるのか
【田口議員】市長のいう「稼げるまち」づくりのもう一つが、リニア開業を前提にした名古屋駅とその周辺開発であります。
来年度予算案には、名古屋駅周辺の市街地整備計画、および名古屋駅ターミナル機能強化に向けた整備計画の策定経費が計上されています。
名古屋駅ターミナル機能強化については、(仮称)ターミナルスクエアの整備、東西の駅前広場の再整備、JR広小路口とJR太閤通南口を貫く東西通路の整備などが検討されています。名古屋駅での乗り換えをわかりやすくし、バリアフリーのためのエレベーターやエスカレーターの設置などは必要だと思いますが、問題は、事業費の規模、およびJR東海、名鉄などとの費用負担割合です。「(JR東海と名鉄の)両社は名古屋市が中心となって建設コストを負担すべきという姿勢を崩しておらず」という新聞報道もあります。JR東海などの「稼ぐ力」の引き上げのために、本市が莫大な負担を強いられかねません。
そこで市長にお尋ねします。名古屋駅ターミナル機能強化の整備に係る費用はいかほどになりますか。また、その整備費用は、名古屋市など行政が主に負担するのですか。それともJR東海など関係事業者に応分の負担を求めるお考えですか。
全体事業費をまとめるには至っていない。市がリーダーシップをとり、関係事業者と協議・調整する(市長)
【市長】全体事業費をまとめるには至っていない、ということです。今後、整備に係る費用については、事業者負担も含め、関係事業者と協議・調整していきたい、ということです。
リニア中央新幹線の用地買収では、住民への丁寧な説明と対応をJR東海に強く求めよ
【田口議員】リニア新幹線の名古屋駅工事のための用地買収が始まっています。私は先日、駅西地区で立ち退きを迫られている人たちの話を聞いてきました。
車いす生活の夫と暮らす八十代の女性は、「転居したら夫が通っているデイケアや病院も変わらなければいけなくなる。動きたくない。用地買収の話はなしのつぶてで、毎日がゆううつです」と話していました。80歳近いお母さんが立ち退きを拒否しているという女性は、「弟が戻ってきて一緒に住んでくれる予定だったが、それもかなわなくなる。母は、移転で環境が変わったら呆けてしまうのではないか。リニア工事で移転せよというのは、年寄りには死ねというようなものだ」と憤っていました。
名駅前に次々と立つ超高層ビルの足元で、立ち退きによって人生設計が狂わされようとしている人たちがいるのです。それにもかかわらず、JR東海からは丁寧な説明がなされていない。こんな工事の進め方でよいのでしょうか。
住宅都市局長、「稼げるまち」づくりのしわ寄せを受けようとしている立ち退きを迫られる住民の不安の声をどう受け止めますか。JR東海にたいして住民への丁寧な説明と対応を行うよう、強く求めるべきではありませんか。
用地の買収交渉を行っているのは本市のまちづくり公社ですが、JR東海のいわば下請け仕事を唯々諾々とこなすのではなく、市民生活を守る立場から、はっきりと要求するべきです。答弁を求めます。
丁寧な説明と対応に努めるよう、市としても申し入れている(局長)
【住宅都市局長】リニア中央新幹線の用地取得は、まちづくり公社がJR東海から事務を受託しており、現在、構造物の設計や用地測量の進捗状況を踏まえながら、補償の考え方などについて権利者の方々に説明をしている。用地取得にあたっては、権利者の理解と協力を得ることが重要と認識しており、JR東海に対しても事業主体として丁寧な説明と対応に努めるよう申し入れている。
「稼げるまちをめざす」という論は、「アベノミクス」と同様の「トリクルダウン」の考え方に立っているのではないか(再質問)
【田口議員】あまり細かいことは今回は言わないが、私の質問と市長の答弁を聞いていた人が、財源問題できちんとした判断ができる正確な情報を、河村市長は議場で提示されたという理解はとてもしないと思う。財源問題で、入場料ですべてを返すためには、400万人、500万人という入場者数が必要だ。それについて聞いても、アイも変わらず熱田神宮と江戸城を出してくる、江戸城なんかは、まだ都庁でも議会でも全く話題になっていない、そういうものなんです。そんな例しか持ち出すことしかできない。こんな議論をやっているところに、正確な情報を市民に伝えて、理解してもらうのでなくて、市民を惑わすようなことを、失礼だが、市長は言っているのではないかといわざるを得ない。(市長がぶつぶつ)
その上で、市長に2点、再質問します。
1点目は、「稼げるまち」を目指す市長の行政運営についてです。
市長は、天守閣整備のタウンミーティングで、「天守閣の木造復元は儲かる。税金を使う方ではなくて、税金を稼ぐ、福祉のための財源をつくれる」とか、「福祉に400億円使ったら終わりですよ。いっぺんで。城なら投資して市民生活も大いに潤う」などと発言されていました。たしかに、天守閣の木造復元で、ゼネコンは潤うでしょう。リニア関連の名駅開発で、大企業は儲かるでしょう。しかし、その儲けが、やがては市民の暮らしに回ってくるのでしょうか。
市長にお尋ねします。市長の「稼げるまちをめざす」という論は、「大企業が儲かれば、やがてその恩恵が庶民の暮らしに回る」という、「アベノミクス」と同様の「トリクルダウン」の考えに立っているのではありませんか。
経済波及効果をいうなら、敬老パスは316億円です。約100億円という天守閣木造復元の3倍もあります。福祉にお金を使ったら、それで終わりではなくて、経済効果も大きいのです。
大きい建築だから大企業に頼むだけ。ラーメン屋や居酒屋にも人が行く(市長)
【市長】福祉にお金を使ってしまうということですが、お金そのものはそれで投資というふうにはならない、ということで、訂正していますが、人間を育てることですので、それはそれで福祉にお金を使うことは意味のあることではある。
大企業ばかりでなく、名古屋城に来た人はラーメン食っていきますよ。タクシーに乗る人もいる、サウナに泊まる人もいる、居酒屋・八犬伝に行く人もおるかもしれん、ようけ行きますよ。あれだけの建築物はそれだけの信用力があるところでないと頼めません。それが大企業であるということだけで、大企業だけもうけさせようと思っていない。そういうものをやっていけば、商売人がどれだけ喜ぶか、ほんとに。
概要は市政ニュース85号を、動画は名古屋市会HPをご覧ください。
キーワード:大型開発・ムダ遣い見直し、田口かずと