2016年2月定例会
2016年度予算に対する岡田ゆき子議員の反対討論(2016年3月18日)
岡田ゆき子議員は、一般会計予算案に反対の立場で討論をおこないました。減税も自・民・公も討論を行わず黙って賛成。自・民・公が私学助成や天守閣で附帯決議をつけただけでした。
市民を惑わす情報で天守閣木造復元を強行、学校給食や図書館、保育園などの民営化推進、安倍政権いいなりの市民いじめの予算だ
私は、日本共産党名古屋市会議員団を代表して、平成28年度一般会計予算にたいし、反対の立場から討論をおこないます。
不要・不急の大型事業を推進
反対する理由は3つ。
第1の理由は、「稼げるまち」と謳いながら、今すぐ必要でない大型事業、大型開発を進める予算となっているからです。
2020東京五輪までに天守閣木造を実現するため新方式まで
その一つは、名古屋城天守閣の木造復元です。河村市長は、天守閣の木造復元を、2020年7月の東京オリンピックに合わせて、なんとしても進めようと、技術提案交渉方式による事業者選定作業を進め、さらに市民の意見を聞くとして、16行政区でタウンミーティングを行いました。
建設費400億円に税金を使わないための説明が二転三転
そこでは、市長は「天守閣で稼げるまちにすれば、福祉に回すお金をつくることができる」、また、「入場者数400万人で、入場料は500円。30年で返せば、総額600億円かけても税金は一切使わない」・・・こういう発言を繰り返しておられました。
しかし、委員会での予算審議の場になって、市民経済局の説明は二転三転。当局が示した木造復元後の入場者数の予測は、現在の2倍の330万人。市長の公言した400万人と大きく違います。
さらに、質疑の中で、木造復元に必要な建設費用は、建設費400億円に償還利率分を加えると総額485億円がかかるとしています。しかし、倍増する予測の入場者数で、得られる入場料見込み額は、247億5000万円。必要な費用の半分にしかならないことが判明しました。
入場料値上まで想定
差引237億円余を、何で穴埋めするか、市民経済局は、国・県の補助金、寄付金を確保すると説明しましたが、これは、今後あるのかどうか、あってもいくらもらえるのかも不確定なものです。さらに、市長は「入場料500円で」と公言していましたが、市民経済局は、これまで明言してこなかった「入場料の値上げまで想定している」という考えも明らかにしました。
これらの市長の発言と当局の説明が大きく違うことについて、市民経済局は「市長自身の持つ情報網の中で発言したもの」だと言わざるを得なくなりました。
市長の間違った情報が市民を惑わす
市長がタウンミーティングで、また報道機関に対しても言い切っていた「税金は一切使いません」この発言についても、市民経済局は「計画通りにいかない場合は、税金を投入しないというわけではない」答弁いたしました。
河村市長、まちがった情報に基づくあなたの発言が、市民を惑わすものであるということがはっきりしたのではありませんか。市民に正しい情報を提供しないまま、2万人対象の市民アンケート実施へと進めるわけにはいきません。
科学的な見地で耐震化や長寿命化を
2014年に名古屋市が実施したネットモニターアンケートでは、71%の方が「現在の天守閣を壊すことなく、耐震改修」を希望されました。また、タウンミーティングでは、「コンクリートで再建した当時の『二度と火災で焼失することがないように』という市民の思いを引き継いで欲しい」という切実な声もありました。わが党は、将来的な木造復元を否定するものではありませんが、まずは科学的な見地で耐震改修や修繕をしっかり施し、現在の天守閣の長寿命化を図ることが必要だと考えます。
安倍政権いいなりに、リニア開業ありきの駅前再開発
大型開発のもう一つは、リニア開業ありきの駅前大開発です。安倍政権が国家的プロジェクトとして位置付けるリニア開業を前提にした駅前大開発は、少なくない地元住民の立ち退きを迫っています。住民に対し十分な説明がされず、住民の不安を抱えるばかりです。このような態度を続けるJR東海に対して、名古屋市はモノ申すべきです。何よりも、リニアの必要性や環境破壊、防災対策など数多くの問題も解決していません。リニア計画は中止すべきです。
民間企業のために巨額な整備費をつぎ込む金城ふ頭開発
さらに、金城ふ頭開発の推進では、テーマパークを核とする民間企業のために、多額の費用を必要とする巨大立体駐車場の整備計画を進めています。しかし、整備計画が具体化するたびに建設費が増大するなど、市民の理解は得られません。
福祉や教育分野で民間委託・民営化推進で公的責任を放棄
予算に反対する第2の理由は、教育・福祉の分野まで民間委託・民営化を進め、名古屋市の公的責任を後退させる予算であるからです。
市民税減税による116億円の 歳入減が市民サービスの低下に
市民税5%減税には、2つの問題があります。一つは大企業と高額所得者に減税の恩恵が大きい仕組みは変わらないことです。喜ばれるどころか、さらに格差を広げるものです。もう一つは、市民税減税による116億円もの歳入の抑制が、市民に必要な職員の定数削減をさらに進め、民営化や民間委託を拡大させ、市民サービスの低下を進めるテコになっていることです。行革という名のもとに、保育園の民営化や図書館の指定管理者導入を進めてきました。
保護者に説明ないままに学校給食民間委託の推進
今回、新たに民間委託をしようとするのが、学校給食調理業務です。名東区の西山小学校、緑区の大清水小学校、中川区の荒子小学校の3校で給食調理業務の民間委託が、保護者などに知らされることなく進められていました。保護者からの再三の説明を求める声に、教育委員会が全保護者対象の説明会を開催したのは、今年の1月下旬になってからです。
保護者説明会では、「きちんと引き継ぎができるのか」「母親として、食べるところにコスト削減をしないで」「委託ありきの説明会だ」という、保護者から多くの質問や意見出されましたが、教育委員会は民間委託の公募内容も明らかせず、保護者の不安は膨らむばかりでした。保護者中心に民間委託の中止を求め要望が広がり、議会が開会した2月19日には、市長に直接申し入れをされています。要望署名は24,000筆以上積み上がっています。
委託契約前に「経験不問・最低賃金のパート」で職員募集したり、 食中毒事件を起こしたり 委託を進める過程で、ある業者が、教育委員会との委託契約を締結する前の段階で、調理職員募集の広告をすでに出していたという事実が発覚しました。パート募集の中身は、「調理の経験を問わない」「時間給は最低賃金」となっており、保護者の不安はさらに大きくなりました。また別の落札業者は、わずか1年半前に他の施設で食中毒事件を起こし入札の指名停止を受けていたことが判明しました。
給食調理業務は、子ども達の育ちを見守るチーム学校の一つの部署としての役割を果たしてきています。行革の名による職員の定数削減と経費削減によって、これまでの組織としての位置付けや、業務の継続性が分断、中断され、子どもたちを見守る役割を後退させることになります。委託は4年4か月という期限のため、事業が継続できなければ、働く労働者は職を失うことになります。毎回入札によって価格競争を強いられる民間事業者にとっては、利益を得るために、低賃金では労働者を雇用することになってしまいます。給食調理業務の委託化は、学校という教育現場に持ち込んではならないのです。
図書館の民営化試行や公立保育園の民間移管を拡大
学校給食だけでなく、志段味図書館の指定管理者の試行的導入の継続とさらに緑図書館、徳重図書館、中村図書館、富田図書館の4館に指定管理者制度を導入させ、公立保育所の民間移管のために予算を執行する対象保育園は、なんと10カ所にも上ります。
民営化、民間委託の最大の目的は何か、職員を削減し歳出を削減することです。さらに市民税減税による歳入抑制はこれに拍車をかけています。
民間委託しないと交付税を減らす仕組みが、不安な事業者選定をまねく
そしてこれらの民営化、民間委託の方針は、安倍政権が来年度から鳴り物入りで導入する「トップランナー方式」つまり、民営化などでコストカットした自治体をモデルとし、地方交付税の算定に反映させ、民間委託をすすめなければ、交付税の対象を減らすという新たな仕組みのレールの上にあるものです。
教育委員会が進めている給食業務委託化は、その事業が始まる前の段階で、問題のある業者を選定してしまうという事態を引き起こしました。保護者を不安にさせ、教育委員会への不信を抱くこととなっている。学校給食調理の民間委託を中止することを強く求めます。そして名古屋市として、民営化、民間委託方針は、いったん立ち止まり、名古屋市民に対し責任ある市政をすすめために、公的責任を拡充していくこと、を強く求めるものです。
安倍政権の社会保障改悪を そのまま市民に押し付け
予算に反対する第3の理由は、安倍政権の社会保障などの改悪をそのまま市民に押し付け、悪政に対して、防波堤としての役割を果たしていないことです。
後期高齢者医療保険料を値上げ、介護保険制度改悪を改悪
社会保障の改悪や、増税などの押し付けは、名古屋市民の生活に大きな影響を及ぼしています。
後期高齢者医療保険料は年平均1891円引き上げられ、高齢者の負担はさらに重くなりました。
介護保険制度改悪で事業所が受け取る報酬が削減され、介護保険事業所の経営は、特に小規模事業所を中心に悪化が広がっています。27年度には641事業所が指定を受けましたが、一方でその6割に当たる379事業所が事業廃止する大変な事態となっています。事業廃止の一番の理由は「人手不足」です。介護の職場の離職率が下がりません。名古屋市独自の介護職員の処遇改善策こそ求められています。
危険なマイナンバーをすすめるな
マイナンバー制度は、国が税と社会保障などに関わる特定個人情報を一元管理するものであり、漏えいや成りすまし等の危険性は今なおぬぐえていません。
昨年11月から始まった通知カードは未交付率が4.6%、いまだ50,549枚が手元にさえ届いていない状態です。区役所では個人番号を付記した書類を誤交付するという問題も起きました。さらに、1月からは頻繁に起きるシステムエラーによって区役所の通常窓口サービスにも大きな影響が起きています。
個人番号カードの申請や、マイナンバーの使用を、市が積極的に進める立場に立つべきではありません。
年金は減り続け、消費税は増税、医療や介護の負担増で高齢者は大変
高齢者の年金は減り続け、労働者の実質賃金は4年連続マイナスです。子どもの貧困率はOECDの中でも上位というこうした現実に背を向けながら、消費税を10%に引き上げ、医療、介護の給付削減と負担増を押し付け、一方、大企業の法人税の引き下げなど進める安倍政権に対し、市民の暮らしを守る防波堤としての市政が求められているのです。
市民のフトコロを温め、地域経済を活性化する予算の組替えを提案
わが党が提案いたしました、予算組替え案は、市民税減税を中止し、ムダな大型事業や開発につながる予算をなくし、教育負担の軽減、私学助成の拡充、国保・介護保険料の引き下げなど直接家計を応援すること、中小企業の営業を支え仕事を作り出す確かな施策展開は、経済の好循環をもたらすものです。
わが党が提案した方向にこそ市民のくらし守り、住民福祉の増進という地方自治の本来の役割を発揮することができると確信するものです。以上で日本共産党の討論を終わります。
キーワード:福祉・介護・医療、子どもと教育、大型開発・ムダ遣い見直し、平和と人権、市民生活、税、地方自治体と住民参加、岡田ゆき子