名港議会 山口議員の反対討論 2014決算(2016年3月28日)
破たんした国際バルク戦略港湾の計画からの撤退を決断する時だ
名港議会2016年3月議会 山口清明議員
2014年度決算に反対
ただいま議題となっております、2014年(平成26年)度の名古屋港管理組合一般会計歳入歳出決算、名古屋港管理組合施設運営事業会計決算及び名古屋港管理組合埋立事業会計決算について、認定に反対の立場から討論します。
消費税増税をおしつけ
認定に反対する理由は、二つあります。
一つは、消費税の5%から8%への増税に伴い港湾施設使用料などの値上げを行い、港湾利用者の負担を増やしたことです。
減免制度等での集荷努力に水を差す
名古屋港への集荷戦略として、料金の減免など名古屋港独自で努力されているのですから、自治体の判断で転嫁しないと判断し、名古屋港の優位性を際立たせるのも選択肢の一つです。そういう決断をしていただきたかったと思います。
破たんしたバルク戦略港湾に多額な税金投入
もう一つは、破たんが明らかになりつつある国際バルク戦略港湾に関して多額の調査費の支出を続けてきたことです。
昨年度の国際バルク戦略港湾に関する調査費は一般会計で1億3392万800円、その89.3%、1億1972万5195円を埋立事業会計が負担しています。
調査の内容は、北浜ふ頭地先埋立てに伴う環境影響評価調査として大気質や水質等の現況調査、護岸基本設計では埋立計画地の土質調査の結果を踏まえた護岸構造の検討、さらに北浜ふ頭地先の地盤状況を把握するための土質調査も引き続き行われました。
護岸整備費が当初計画の3倍、約600億円に増える試算
さて、名古屋港が穀物を扱う港湾として国際バルク戦略港湾に選定されたのが2011年(平成23年)です。そして、北浜ふ頭地先約67haを埋立て、新食糧コンビナートを形成するとして埋立地の整備を進めるための各種調査が2012年度から2014年度まで行われました。
その調査の結果、軟弱な地盤が広い範囲に存在していることが判明し、護岸整備費が当初計画の200億円の3倍、約600億円にも増えるとの試算が示されました。
当初の国際バルク戦略港湾育成プログラムでは埋立事業会計で184億円の費用負担を見込み、その費用は埋立地の約90%を売却して賄う、としていました。
費用が3倍になっても売る土地の広さは一緒。3倍高く売りつけるか、公費を投入するかしないと採算はとれません。あまりにずさんな計画だとの指摘もありましたが、事業の採算性を考えても、バルク計画からは撤退すべきです。
選定されただけで梯子を外された
国際バルク戦略港湾には、全国で穀物5港、鉄鉱石3港、石炭3港、計11港湾が選定されました(水島港は穀物と鉄鉱石に重複して選定)。2013年には港湾法が改正され、国際バルク戦略港湾は特定貨物輸入拠点港湾として位置づけられました。
しかしながら現時点でこの特定貨物輸入拠点港湾に指定されたのは北海道の釧路港(穀物)と福島県の小名浜港(石炭)の二港だけです。あとの港はどうなっているでしょうか。
穀物で選ばれた港のうち、日本最大の酪農地帯を背後に背負う釧路港だけは水深14m岸壁の整備が進んでいます。しかし、茨城県の鹿島港、鹿児島県の志布志港はいまだ検討中のまま、岡山県の水島港とわが名古屋港は港湾計画を変更(水深14mのドルフィン)しただけです。
鉄鉱石では、木更津港は検討中、水島港&福山港は港湾計画を変更しただけ。
石炭では、徳山下松港&宇部港も港湾計画を変更しただけ、小名浜港だけが整備が進められていますが、東日本大震災からの復興事業としての要素が強いものです。
国からの支援策もほとんど具体化されず、まったく戦略的な動きになっていません。選定はされたが梯子を外された形です。
しかも穀物に関してはTPPの影響が大きく、企業の進出についてもしばらくは様子見というのが現状です。
やはりバルクからは撤退するしかありません。
調査したが計画中止した例もある
名古屋港では、埋め立てに向けた調査はしたものの、結果的に埋立を中止した実例が存在します。南5区の第2期計画です。
1998年から埋立申請に必要な土地利用計画素案の作成や基礎調査や測量などが実施され約4億2千万円が支出されました。
しかし土地需要の具体的な見通しが不透明で、事業の採算性が確保できず、関係者の調整も困難と判明して、調査開始から4年後の2002年、事業化の見合わせを判断したそうです。以来、14年間、事業化は止まったままです。
国際バルク戦略港湾に選定されて 既に4億円も使ったが見通しなし
国際バルク戦略港湾では、2011年に国際バルク戦略港湾に選定されてから、これまでで既に約3億9445万円が支出されました。もう十分です。今年度も来年度もバルク関連の調査費は一円も計上されていません。
国際バルク戦略港湾の事業化はまったく見通しが立たないのではないか、と私は何度もこの議場で警告を発してきました。
この計画からは潔く撤退を
国際バルク戦略港湾として北浜ふ頭地先を埋め立てる事業計画はいま、土地需要の見通しが不透明で、事業の採算性も確保できなくなり、関係者の調整も困難となっています。調査の結果、あきらかになった現実を率直に受け止めて、この計画からは潔く撤退すべきです。
見通しのない国際バルク戦略港湾に関連し、多額の調査費を執行した決算を認定するわけにはいかない、と申し上げ、討論を終わります。
キーワード:山口清明