江上博之議員の個人質問 天守閣木造復元はあわてずに、市民の意見をよく聞いて(2016年6月17日)
名古屋城天守閣は市民の思いに寄り添って
・・・木造復元は市民の声をよく聞いてすすめよ
市長提案が否決された2万人アンケート
【江上議員】2万人アンケートの結果が出ました。その結果について、河村市長は、「約60%を超える市民のみなさんが木造復元を望まれる結果となり」ました、と提案説明で述べられました。
名古屋市としてアンケート結果を明らかにした6月1日には、「誰がどう考えたって東京五輪に間に合えば世界中の人が来る」「全力で努力すればいいが、諸事業で若干遅れるのは市の公共事業でいくらでもある。そんなものまでいかんと言ってない。まずスタートしないといけない」さらに、「市民の名古屋城への愛着を強く感じた。コンクリ補強は明確に否決されましたね」(2016.6.2中日)とまで発言しています。
アンケート結果で、「2020年7月までに優秀提案による木造復元」21.5%、「2020年7月にとらわれず木造復元」40.6%、「現天守閣の耐震改修工事(概ね40年の寿命という注釈つき)」26.3%、と言う結果が出ても、市長は、2020年7月までの木造化を前提とした優秀提案によることが「最速かつ最善な方策だ」と、議案を提案しました。 名古屋市がアンケート回答者に送った「お願い」の中では、「2020年7月までに天守閣を木造復元する提案を募集」し、「優秀提案の内容や収支計画などの情報をお知らせし、皆様のご意見をお伺いするもの」と記述しています。2020年7月の木造復元について賛否を聞くものであり、市長提案は、3択のうち最下位であったことが示されたということではありませんか。市長提案に賛成が21.5%対し、期限をつけず木造復元と現天守耐震化は、合わせて66.9%と市長提案に反対の声が3倍を超えています。
市長は、議員報酬引き上げに対し、「市民の声を聞け」と叫びました。あれほど「市民の声を聞け」と言った市長が、天守閣のことになると市民の声を聞かない。
そこで質問します。市長提案が市民から明確に否定された事実をなぜ認めないのですか。民意、民意というなら認めるのが当たり前ではありませんか。答弁を求めます。
民意を踏まえた提案だ(市長)
【市長】報告会に出席の意向があった市民と、木造復元の課題や竹中案に理解した市民に着目しますと、80%の方が木造だと言っとりまして、竹中案とオリンピックにこだわらないというのが、ほぼ同数、とまではいいませんが、すごく高いですから。そちらの方が民意であって、アンケートはアンケートだ。
建物の耐震力がまったく不足し、それは私の責任でもあるし市役所の責任だと思います。もっと早く気付いて行動すべきだと思います。しかし現実としてIS値0.14、熊本城は0.37。大変危険な建物であると理解して「○」をつけるかつけないかで全然違うわけです。一方、現天守の耐震改修は26%にすぎない。
名古屋の皆さんの名古屋城、名古屋市に対する大変深い郷土愛があるとホントに思います。今回の補正予算案は民意を踏まえた提案です。
耐震対策に対する市長の認識は
【江上議員】市長は、提案理由説明で、「名古屋城天守閣は、Is値0.14と、方針が立っていない市有建築物の中で最も耐震性能が低く、驚くべき状況がございます」「専門家から入場制限の検討も含めて、一刻も早く対策が必要であり、安全の確保に向けて早急に対処すべきであるなどとご意見を頂戴しているところでございます」と発言されました。
これを聞いた私は飛び上るほど驚きました。耐震指標Is値0.14は、5年前の2011年2月28日付で報告された市の「耐震診断書」にある、天守閣の最上階の数値です。市長は、2009年市長に就任され、木造復元の考えを示されたことから、市長最初の予算編成である2010年度予算で、名古屋城整備課題調査として、木造復元のための法令調査(建築基準法、消防法など)とともに天守閣の耐震対策調査として800万円計上され、その結果作成されたのが、この耐震診断書です。その書類には、診断結果について「平成9年度に実施した診断結果と類似した結果となっている」とあります。平成9年度といえば1997年度ですから、名古屋市は20年近く前から天守閣の耐震性の不足を承知していたわけです。
また、この文書には補強計画があり、補強すれば、「Is値は各階とも0.60を上回り、十分な耐震性能を確保することができる。」と記述されています。市は、この書類が提出されたのち、2012年12月、「特別史跡名古屋城跡全体整備計画増補版」で「天守の耐震改修整備」を再確認しています。Is値0.14がでても、補強対策を5年以上行ってこなかったのは、ほかならぬ市長自身ではありませんか。専門家に聞く前に、自ら胸に手を当てて自戒すべきではありませんか。
そこでお聞きします。市長として、耐震対策を5年以上放置しつづけた責任をどう取るのか。はっきりさせてください。
謝るしかないと思う(市長)
【市長】耐震診断のIs値0.14とその後については謝るよりしょうがないと思います。もっと早くすべきだったということで。
僕もⅡの2というのは知っとりまして、熊本のテレビをみながら、どうなっとるかなと再度調べてみてIs値が0.14と。遅かったかもしれませんが自分で何べんも専門家に電話した。調べた限り、五大都市において、対応がしていない公共建築物のなかでは最低の数値です。横浜は0.26のあるセンターを、協議をしてから1年半後に閉鎖しとります。横田局長(防災危機管理局)、渡辺局長(観光文化交流局)、黒田さん(住宅都市局)に大至急対応を検討するように指示したところです。名古屋城における市民の安全も非常に重要ですけど、お客さんの安全を守るのは私の決定的な責任ですのでしっかり対応していきたい。
50年間360万人の入場がかなわず税金投入となった場合の責任は
【江上議員】市長は、税金投入しない、入場料収入で特別会計をつくり行う、と提案しています。昨年度の入場者は174万人です。そのため、完成の2020年から、約50年後の2069年まで、毎年360万人から400万人を超える入場者が見込まれています。今回の提案は、優秀提案の建設費505億円に維持管理費等を含めたものの収支計画です。
以前あった400億円の建設費の計画では、入場料500円、年400万人で20億円、30年で600億円であるから、税金投入はしないというものでした。今回は、20年間延びて、約50年360万人から400万人入場するというのです。建物は変わらないのに、建設費などの変更で、入場者見積もりも計画年数も変わってきています。建設費高騰の可能性は熊本地震以後さらに増しています。
また、建物の構造から見ても、こんなにたくさんの入場者が入場することは不可能ではないでしょうか。建築基準法、消防法が適用外ということで建設することはできます。しかし利用としては、より一層慎重なことが求められる。安全性は不安だということであります。姫路城は、1日15000人の入場制限を行っています。入場制限を行えば当然入場者は限度があります。
そこで、質問します。計画入場者に達せず、税金投入となったらだれが責任を取るのでしょうか。また、約50年後に収支を合わせるだけのことですから、経過的に税金投入することに変わりありません。福祉予算の削減につながることを市民が承知するわけがありません。市長は、「稼げる街」を目指し、福祉にもお金が回ると言いますが、税金投入となった場合どう責任をとるのか市長、お答えください。文化財のあるところに事務所が出来る。みんなで頭を下げればお客さんは増える(市長)
【市長】熱田神宮が670万人です。初詣220万人を引くと400万人。USJは1350万人。名古屋城、寸分たがわぬ復興ができた巨大構造物、世界三大復興の一つといわれると思いますよ。ポーランドのワルシャワ旧市街、ドイツのドレスデン聖母教会の復興。世界遺産になっとる。名古屋はこれで世界に発信して、ようけ人が来てくれる。商売やる人もそんな素晴らしい文化財があるとこなら事務所をつくるということになります。そうやって力をつけて福祉にもたくさんお金がいくように、そんなまちづくりがしたいということです。
大阪は、もともと天守閣は運営は指定管理者だったが、ちょっと大きい仕組みにしたら、観客が1.5倍になってます。そういう手法になって、現にやる人たちがいらっしゃいませと、みんなで頭を下げる体制になればお客さんはすごい勢いで増えていきます。
それよりもしなかったときに名古屋の魅力が落ちたときに、名古屋の経済力が落ちていく、そちらの危険性をよう考えたらどうですか。そのときに責任とってくれるんですか。そちらの方が大きいですよ。
先の見通しもないまま現天守閣を解体するな
【江上議員】今回の議案は、2020年7月までの木造化のために、10月文化庁に許可を申請するため、現天守閣解体の設計や、木造復元の基本設計費が含まれています。木造復元の基本設計を3か月で行い、その後実施設計を来年10月までに行う予定となっています。
ところが来年6月には解体計画に入る。今年11月には、現天守閣への入場をストップする。来年6月に壊すというのです。木造復元の詳細な設計もできていないのに、先に現天守閣を壊すというのです。
現天守閣は、71年前の戦争で焼失し、戦後復興、平和の象徴、もう2度と燃えないと言う市民の思い、総事業費6億円のうち当初1億円の寄付の目標が2億円も集まった、小学生の時お年玉を寄付した覚えがあるという市民もいる、市民の思いがこもった建物です。それを、次の計画もはっきりしない前に壊してしまう。ましてや、熊本地震でお城も大きな被害を受けたとき、名古屋城天守閣をわざわざ人の力で壊してしまう。こんな市民の思いを無視したやり方があるでしょうか。
そこで質問します。私は、現天守耐震化を求めていますが、木造復元を望んでいる人であっても、少なくとも、木造復元の実施設計を行ってから現天守閣を解体するのが順序と思われるでしょう。市民が納得する前に解体することはあってはなりません。民意、民意と言われる市長の対応をお聞きします。
耐震性能ある建造物に早くしなきゃいかん(市長)
【市長】そのままにしておくことはあり得ない。専門家の方々から聞いとります。市営住宅なんかも対策を早くするよう勧めています。名古屋城だけ、ほかっといていいという論理はありえない。入場制限は結果のことですけど、耐震対策は耐震性能を完備した建造物に早くしなきゃいかんという状況でございます。そのためには竹中による提案によることが一番いいと思っとります。
市長提案は否定されたと認めるべき(再質問)
【江上議員】質問にまともに答えていません。質問者に失礼であるとともに、市民の疑問に答えない、市民にまったく失礼じゃありませんか。
そのうえで申し上げます。市民はどう言っているのか。「6割が木造化に賛成なんて屁理屈だ」「耐震改修こそ待ったなし」。こういう声も聞いております。いろいろ声がありますから、また後ほどお届けしますけれども、私はまず、アンケート表記の問題をお聞きします。
アンケートでは、「現行天守閣を耐震改修した場合でもコンクリートが概ね40年の寿命という調査結果が出ています。」と、こう記述しています。こんな記述があったら、40年しか持たないなら初めから木造化でいいのでは、と思うのが普通です。しかし、それでも、26.3%が耐震化に「○」を打たれました。問題は、この言い方です。
耐震化については5年前調査をしたことは先ほど触れました。震度6強に補強するには、約29億円かかることも明記しています。しかし、それだけでは天守閣を長寿命化できません。コンクリート劣化の問題があります。これも耐震調査と同時期に行っていました。耐震化とコンクリート劣化は別物です。「構造体劣化調査」として2010年9月に報告されています。この調査で、コンクリートの傷み具合と中の鉄筋のさび具合などから、名古屋市として、「名古屋市構造体劣化調査作業要領」によって、2010年9月段階で、「残存耐用年数」は、40年程度という結果を出しました。結果が出たわけですから、どんな改修方法で、そのための改修費がいくらかかるか、調査をして長寿命化するのが順序です。
ところが、「木造化」の話が出てきた。これ市長が出したのです。それ以上の調査はしていません。ですから何もしなければ「40年」という数字だけ出しました。市民にアンケートを行うなら、「このような方法で行えばこれぐらいの費用で、このぐらいの年数が持ちます。」という表記をするのが当たり前じゃありませんか。例えば、名古屋市役所の本庁舎。1933年、今から80年以上前に竣工しました。耐震化とコンクリート劣化の調査の上で、46億円かけて改修し、今や、重要文化財として名古屋の自慢となっています。だれが、あと何年しか持たない、と言うでしょうか。
そこで質問します。そのような不適切な40年という注釈をつけても耐震改修のほうが、2020年7月までの木造復元より賛成が多かったのです。市長の提案は、完全に否定されたと認めるべきではありませんか。一言でお答えください。
否定されていない(市長)
【市長】否定されておりません。
5年前に「耐震診断書」が出たのではないか
【江上議員】次にIs値0.14の問題についてお聞きします。
市長は、耐震診断のⅡの2は知っていたが、耐震指標Is値0.14は知らなかったと言うのですか。調査した経過を見ると、2010年度になって、市長が最初の当初予算を作った時です。木造復元のための調査と、耐震のための調査を行ったわけですから、木造化を進めようとする市長としては、その結果は重大なものです。結果がどうであったかつぶさに見るのは当然でしょう。
ところが今の発言から、木造化は考えても、耐震化については調査結果も見ていない、ということが明らかになったと思います。そして、見ていなかったことを反省するどころか、「だから、木造化を急げ」というのは、あまりに身勝手です。
そこで質問します。市長は5年前に、Is値0.14と書かれた「耐震診断書」を読んでいなかったのですか。これも端的にお答えください。
見たが記憶していなかった(市長)
【市長】Ⅱの2のことは知っとりましたけど、0.14というのは、見たことは見たと思いますが、数字はキチッと記憶しとらんということです。
市民の思いがこもった現天守閣を勝手に壊すのか
【江上議員】0.14という数字、今になると見たかもしれないな、と。こんな、いい加減なことでいいんですかね。Ⅱの2のことばっかり強調されて、自分には木造復元しかないもんだから、耐震化に関係する書類は見なかった。こういうことが実態じゃないでしょうか。
私は名古屋生まれ、名古屋育ちです。名古屋城天守閣は遠くから見てあればいいと思ってきました。外観は、木造化になってもほとんど変わりません。それほど、現天守の建築技術は素晴らしいものです。郷土愛があるからこそ、たくさんの寄付で建設されたのです。その市民の思いのこもった建物をあわててこわす計画とは何事ですか。
そこでお聞きします。文化庁の意向ではなく、名古屋市民の思いに沿って行動することが市長の仕事ではありませんか。解体について、あなたは、文化庁の意向では実施設計はやらなくていい、と言っているから解体を先に進めるんだ、というようなことを言われたと思います。市長の仕事として、市民の思いに沿って行動することが一番だと私は考えますが、市長として答弁を求めます。
私の知るところでは木造天守を望む人が圧倒的に多い(市長)
【市長】僕の知っとるところでは、はよう木造天守やってちょという人が圧倒的に多い。現天守をコンクリートで補強してくれという人はいないとは言いませんが、ほとんどありません。
天守閣木造化より名古屋城全体の整備を先に(意見)
【江上議員】私は「魅力ある名古屋城」と言うなら、名古屋城全体をもっと整備することだと思っています。北東隅櫓の再現、多門櫓の復元、市長の言う「伝統工法の職人技術の継承」も十分可能です。あわてて建てたところで、市民の声を無視した建物は、愛着がわきません。市民の思いは、じっくり議論して決めることではないでしょうか。市長はこの点をふまえて行動する必要があります。
最後に、あわてて木造化するのではなく、まず現天守閣の耐震化とコンクリートの劣化補強を行い、石垣の整備、庭園の整備、櫓整備を含め、名古屋城全体の整備を進めるべきです。市長の提案は、市民に明確に否定されました。であるなら、今回の議案は撤回しかありません。議案の撤回を求めて質問を終わります。
キーワード:大型開発・ムダ遣い見直し、江上ひろゆき