さはしあこ議員の個人質問② アジア大会招致について(2016年6月21日)
スポーツ振興とかけ離れたアジア大会誘致を勝手に進めるのか
招致表明にいたる手続きが唐突
【さはし議員】アジア競技大会の招致について新開副市長に数点おうかがいします。
愛知県と名古屋市は5月13日、2026年開催予定の第20回アジア競技大会の開催都市に立候補する意思表明書を日本オリンピック委員会(JOC)に提出し、5月30日にアジア競技大会開催構想を発表しました。開催都市は、早ければ今年9月25日に開催予定の第35回アジアオリンピック評議会(OCA)総会で決定されると聞いています。
私は、アジア競技大会そのものについては、スポーツを通じてアジアを含めた国際平和と友好を促進し、スポーツの振興やアスリートたちの願いに寄り添うという点では賛同できますが、このたびの招致にはいくつか問題があると考えます。
第1は、手続きについてです。
県・市共催によるアジア競技大会招致への立候補表明は、手を上げるまでの期間があまりにも短く、名古屋市民が置き去りにされているように思います。市をあげて取り組むものならば、当然市民の盛り上がりが必要です。
1994年に広島で開催された第12回アジア大会では、1970年後半から市民の間で国際的なスポーツイベントの開催を望む声が沸き上がり、1980年代から招致に乗り出しました。広島大会のように市民の機運が高まる中でなければ、招致に踏み切るべきではないと思います。
今回の招致表明は、市民の機運がない中で、あまりにも唐突だと思いますが、見解をお聞かせください。
3月8日に議会へ報告し3月29日にはJOCの公募に応じた
【副市長】議会には、平成28年3月8日の本会議に、県と協力してアジア競技大会の招致に取り組んでいく旨の市長答弁を行っています。
その後、3月29日に、JOCが、第20回アジア競技大会招致へ、平成28年のOCA総会で承認されるよう、立候補都市を公募し、これに応じて、名古屋市は愛知県と共同で立候補意思表明書の提出や開催構想の策定を行った。
招致目的はスポーツ大会より愛知・名古屋の売り込みにみえる
【さはし議員】第2は、アジア競技大会を愛知県及び名古屋市で開催する意義についてです。5月13日付けで提出された立候補意思表明書提出時の発表資料では、意義について「日本全体の成長に貢献する」「リニアを世界に発信し国際競争力を高める」「東京に対抗する」「アジアとの連携を構築する」とあります。スポーツ大会の意義というより、アジア大会を起爆剤にして、愛知・名古屋を世界に発信し、国際競争力を高めるなど、愛知・名古屋の売り込みに夢中になっているとしか思えません。
また、新聞報道では、アジア競技大会の誘致に成功すれば開催時期を2027年にずらし、開業したてのリニア中央新幹線を世界にアピールする狙いだとまで報じられています(中日スポーツ)。
その後、5月30日に発表された「第20回アジア競技大会開催構想」では、ようやくスポーツの振興や国際交流の促進、国際的な友情と平和の促進とオリンピック本来の意義が盛り込まれました。「アジア競技大会の意義」については、「第20回アジア競技大会開催構想」で掲げられたスポーツを通じてアジアを含めた国際平和と友好を促進する見地から、市民参加でさらに深めていくべきではありませんか。
リニア開業を活かし、スポーツの振興と地域経済の活性化につなげる
【副市長】国際的な尊敬、友情、親善、平和の促進に寄与するというOCAの崇高な理念に賛同していることは言うまでもありませんが、リニア開業前後という絶好のタイミングを活かして、スポーツの振興や地域経済の活性化など地域のメリットにつなげることは重要な視点と考えております。
大会の招致・開催を成功に導くためには、市民の皆様のご理解・ご賛同を得ることが不可欠です。今後、市民の皆様に開催の意義や効果を分かりやすく説明し、機運醸成を図りながら、市民の皆様とともに魅力的な大会としていけるよう努力したい。
本市の財政負担はどれだけか
【さはし議員】第3は、本市の財政負担についておたずねします。大会運営費については500億円という報道もあります。いくらぐらいが想定されていますか。名古屋市の負担割合はどのようになりますか。お示しください。
施設整備費については、メイン会場として構想されている瑞穂公園陸上競技場については、現在の定員2万7千人から4万人規模に改築するための調査費が、今年度の名古屋市予算に計上されています。改築には「400億円必要」(河村市長の発言:「朝日」記事)とも言われています。また、瑞穂公園体育館(仮称)の建設にむけた基本設計費も今年度予算で付きましたが、ここはセパタクローという球技の会場として構想されています。
こうした本市が整備しなければならない競技会場はどこで、その費用負担について、仮設整備も含めて明らかにしていただきたいと思います。答弁を求めます。
これから調整する
【副市長】大会運営経費は、過去大会の例も参考に積算を行っている。負担割合は、これまでの県・市共催事業等を参考に、愛知県と調整を行っていきたい。
競技会場は、今後JOC等との間で使用する会場や整備内容、改修費についての具体的な調整を行い、明らかにしていきたい。
アジア大会の本市の財政負担はいつまでに明らかにできるか(再質問)
【さはし議員】市民の皆様の理解・賛同を得ることは不可欠であり、今後、機運醸成を図っていきたいとの答弁でしたが、市民のみなさんに理解をしていただくためには、過大な財政規模とならないことも大切です。福岡県は、愛知・名古屋が立候補を表明したアジア競技大会の誘致を検討してきましたが、事業費の試算が約600億円に達し、財源確保は困難との理由から誘致を見送ったそうです。
私は、本市の財政負担が過大にならないかとても心配していますが、いかがお考えですか。また、大会運営費や施設整備費などの財政負担について、いつまでに明らかにするのですか、お答えください。
9月のOCA総会に提出する開催構想を策定する段階で検討する
【副市長】効率的な運営を心がけ、できるだけ既存の施設を活用することで、過大な経費をかけないようにしたい。大会運営費や施設整備費の概算は、9月のOCA総会に提出する開催構想を策定する段階で検討していきたい。
招致への市長の真意は(再々質問)
【さはし議員】最後に、河村市長に再質問します。5月13日、緑文化小劇場で行われた名古屋城天守閣整備の市民向け報告会に私も参加しました。そこで最後に河村市長がされた挨拶に唖然としました。
「今日、アジア大会について、東京で大村知事と記者会見してきました」「瑞穂グラウンド作るんですわ。400億です。今度、瑞穂グラウンドなぶるので」「名古屋城450億から500億ですから、どっちが値打ちあると思います、これ」「瑞穂グラウンドは、100年から150年たったら国宝になりますか」「世界の人が来ますか、瑞穂グラウンドに、わざわざ集まりに」と。
アジア競技大会開催するために施設整備が必要となってくる瑞穂グラウンドと名古屋城天守閣の木造復元を天秤にかけて、名古屋城天守閣木造復元の方が、当然値打ちがあるみたいなことを言っているのにびっくりしました。アジア競技大会を本気で招致しようとは到底思えない発言です。
河村市長、アジア競技大会の招致に対する市長の真意をお聞かせください。
100年しか持たない建物より 400年もつ天守閣を(市長)
【市長】どんだけ持ちますか、建物が、という意味です。ナゴヤドームや大名古屋ビルジング、レゴランド、500億円くらいです。100年たつと建替えないかん、という意味で申し上げまして、名古屋城の場合は修繕もいりますが、だいたい400年から法隆寺だと1300年持つわけで、そういう意味で申し上げた。
アジア大会についてこたえよ(再々再質問)
【さはし議員】アジア大会招致についての市長の真意を聞いたのであって、名古屋城木造復元について聞いたわけではありません。
いろんな施設ができて市民が使えるようになればええ(市長)
【市長】アジア大会は、その機会に瑞穂などいろんな体育施設ができて、市民の皆さんが使えるようになれば、市民にとってええということです。
財政負担などの詳細を早急に明らかにし、市民が議論する場を設けよ(意見)
【さはし議員】河村市長、私は、先ほど紹介した市長の言葉は、招致を決断したその日の言葉とは思えませんでした。提案説明でも天守閣木造復元は「命懸け・不退転」と言われていました。市長の頭の中には木造復元だけしかないのかなと思っていました。市長の姿勢が問題だと指摘します。
財政問題は、市民にとっても大きな問題です。福岡県は、財政負担を試算したうえで誘致を見送ると判断しています。本市は試算もしないで招致を決めてしまった、これは大問題です。市民、議会に対して、早急に明らかにし、慎重に議論する場を設けることを求め、終わります。
キーワード:大型開発・ムダ遣い見直し、さはしあこ