高橋ゆうすけ議員の議案外質問② 味鋺保育園の民営化(2016年9月15日)
応募者がいない公立保育園まで民営化することはやめ、保育の質を守れ
味鋺保育園の民間移管は行うべきではない
【高橋議員】保育施策や地域の子育て支援の充実を図り、公立保育所の建物の老朽化等の課題に対応するためとして、現在111ある公立保育所を78か園に集約し、エリア支援保育所として位置づけるという2009(平成21)年9月制定の「公立保育所整備計画」に基づき、公立保育所の統廃合・民間移管が進められています。
本年度は二ツ橋、味鋺(あじま)、梅森坂、島田第二の4つの公立保育所について、公募が行われましたが、このうち味鋺保育園については応募した社会福祉法人が一つもありませんでした。
このような状況を受け9月3日、味鋺保育園において保護者への説明会が行われました。その中で市は、今後の対応として、複数の法人に応募してもらえるように要件を一部見直しし、再公募を行うとしました。
では、その要件とはどのようなものでしょうか。当初の応募資格は、「応募時点において、名古屋市内で通算して5年以上」の経験が必要とされていました。それが説明会では法人の意向を受けて「応募資格(市内で5年以上の運営実績)を緩和し、市内で3年以上の運営実績」にすることを検討するとのことでした。
9月3日の保護者説明会に参加した保護者からは、保育の質の低下への不安から「民間移管には反対」「公募要件を変える必要はない」などの声も上がりました。また、北区保育団体連絡会のみなさんが味鋺保育園の前で、対話アンケートを行ったところ、「応募がなかったのならこのまま公立で残してほしい」「応募条件が引き下げられるのはとても心配」「今はベテランの保育士さんがいてくれるのでとても安心」「民間に移管はしてほしくない」といった声が多数寄せられました。
このような声がある中、応募条件を緩和してまで、味鋺保育園の民間移管をこのまま進めていくことは、保育園に子どもを預けている親たちの思いを踏みにじることになるのではないでしょうか。
保護者からも公立のままで残してほしいとの声が多く上がっている味鋺保育園の民間移管については、再公募すれば必ず条件を下げることになります。その時点ですでに同時に移管する4つの保育所で差ができることになります。差ができるような移管は行うべきではありません。子ども青少年局長の見解をお聞かせください。
味鋺保育園の応募資格を一部見直し再公募予定
【子ども青少年局長】2018年4月に移管予定の味鋺保育園はじめ4園は、今年7月に移管先の社会福祉法人の公募を行いましたが、味鋺保育園のみ応募がありませんでした。公募前の味鋺保育園保護者説明会で、応募がなかった場合の質問に対し、その時は応募資格等を見直した上、再公募する旨の説明を行っている。
味鋺保育園は、9月3日の保護者説明会、6日の名古屋市立公立保育所を引き継ぐ社会福祉法人の選定に係る懇談会での意見を踏まえ、保育の質を担保した上で、近日中に、応募資格を一部見直し、再公募を行う予定です。
公立保育所の廃止・民営化では保育の質が担保できなくなる
【高橋議員】「名古屋市公立保育所整備計画」では2025年をめどに、公立保育所を現在の111か所から78か所に集約することが計画されています。この計画が作られたころと今の状況はどうなっているでしょうか。整備計画の基となった「名古屋市保育施策のありかた指針」(2007年策定)によると、本年2016年度の要保育児童数の見込みは約33,000人。しかし、実際に本年入所の申し込みのあった児童数は43,245人と、当初予想していた人数よりも10,000人を超えるような要保育児童数となっています。また一方では、保育所に入所できなかった保留児童、いわゆる隠れ待機児童が585人。当初の計画に比べ予測が追いついていないのが現状ではないでしょうか。
育児休業から復帰するため、保育所の見学に来られたあるお母さんは、名古屋市は待機児童ゼロだと思って安心していたら、希望する保育園に入ることができない可能性もあると聞き、泣きそうな顔をして帰られたそうです。またある方は、保育所が足りないのに公立保育所が毎年減らされていくことに、安心して子どもを産もうと思えないとお話をされました。
これまで公立保育所は、民間保育所と一緒に、車の両輪として保育の質を高めてきたのではないでしょうか。全園で障害児を受け入れ、要支援児童や保護者への支援も行い、若い保育士育成にも力を尽くしてきた、公立保育所の存続は保護者の願うところです。そして年々増える保育需要からも、現在ある公立保育所を民間に移管するのではなく、公立保育所は公立のまま残し、就学前まで入所できる認可保育所の整備を進めていく必要があるのではないでしょうか。
今の計画をこのまま進め、公立保育所の廃止・民営化を進めていけば、いずれ味鋺保育園で進められようとしている公募要件を引き下げての移管が進められ、保育の質が担保できなくなってしまいます。保育需要が増加していることも踏まえて、「公立保育所整備計画」は一度立ち止まって見直すべき時期です。子ども青少年局長の見解をお聞かせください。
厳しい財政状況なので民間移管を遅延なく進める
【子ども青少年局長】公立保育所は、社会福祉法人への移管または統廃合を進め、78か所まで集約化し、「エリア支援保育所」として機能強化を図ることで、保育の質の向上と、地域の子育て家庭への支援に取り組んでいくことにしている。
社会福祉法人への移管は、一定の財源や人員を確保し、入所児童数の増や多様な保育需要への対応を要するために行っているので、今後も遅延なく進める必要がある。
応募資格を変えてしまえば保育の質が下がる(再質問)
【高橋議員】市が作ってきた応募資格は、保育の質を担保するために作られてきたものではないのですか。これまでの応募資格を変えてしまうということは、保育の質を明らかに下げるものです。これでどうやって保育の質を担保できると考えているのでしょうか。
職員体制や応募法人の評価基準などは変更しない
【子ども青少年局長】再公募について、引き継ぎ共同保育や職員の体制など、保育の質にかかわる内容を変更する考えはない。また、応募法人を評価する基準も変更することはないので、保育の質は担保できるものと考えている。
保護者の願いは公立保育所の維持(意見)
【高橋議員】応募資格を変えること自体、これが保育の質を下げること、そのものです。自らが決めた基準を引き下げるということ自体が大きな問題ではないですか。
今日もお子さんやお孫さんを公立保育所に預けたいと思っていらっしゃる方も来ています。みなさんの願いは、公立保育所の廃止でも民間移管でもありません。公立は公立のまま残してほしいんです。
則武保育園の民間移管の条件、市内3年の実践でしたけれど、「保育園を守れ」の保護者の強い要求があり、高い保育の質を守るために、市内5年以上の経験という条件にしたんじゃないですか。乳児が育ち、卒園するまで見守る。それは保護者だけでなく、保育士にとっても大事なことです。だからこそ市も5年の経験を求めてきたはずです。
応募がなければ自分たちが作ってきた条件を引き下げる、これで保育の質を担保することができるとは到底思えません。本当の保護者の願いはどこにあるのか、それをしっかりと受け止めるべきです。保育需要が高まっている今、味鋺保育園の再公募、そして公立保育所の廃止・民営化を進める「公立保育所整備計画」は今すぐに立ち止まるべきです。