山口清明議員の議案外質問② 下請業者への代金未払いへの対応(2016年9月15日)
本市発注工事における下請業者への代金未払い問題について
発注者としての市の責任をどう認識しているのか
【山口議員】名古屋市発注の事業で、下請け業者への代金未払いが起きています。いま被害者同士が連絡を取り合い、泣き寝入りしてたまるか、とがんばっています。
問題になっているのは中区に本社があるK社。この会社が受注したのは、守山生涯学習センター外壁改修工事、守西ポンプ所建物整備工事、東山線ホーム可動柵関連工事など6件、受注総額は約7500万円です。
未払いになっている金額は、生涯学習センターやポンプ所工事でそれぞれ600万円をこえ、左官や塗装など少なくとも9業者、3760万円にのぼります。原材料の納入業者へも180万円未払いです。
被害者からは「私たちは無償で市の建物を造ったことになる」「市が発注した工事だからと信用して仕事を受けた。責任とってくれ」「材料費と人件費は既に払った。工事代金が入金されないと倒産しかねない」と、怒りと不安の声があがっています。
私には痛恨の思いがあります。2年前、名古屋城の緑地を管理する業務委託で同様の事態がありました。市から工事代金を受け取ったまま元請けが、485万円を下請業者に払わぬまま倒産。なんとか救えないか、と財政福祉委員会でもとりあげましたが、当局は「気の毒だが何もできない」というばかり。結局、泣き寝入りです。
ところが再び、同様の事態が起きました。もはや単なる業者間のトラブルではすみません。発注者としての名古屋市の責任が問われます。中小企業振興基本条例をもつ名古屋市ができることはないのか。以下、質問します。
第一に、市が発注した工事や委託事業で、下請けへの未払いが起き、業者が苦しんでいます。この事実関係を把握していますか。発注者としての責任を感じませんか。財政局長の認識をお聞きします。
争いがあったことは承知している(局長)
【財政局長】本市が発注した工事請負契約において、元請業者と下請業者との問で、請負代金の支払いについて、争いがあったことは承知している。
本市が発注した工事では、元請業者と下請業者との請負契約は、建設業法等関係法令に従って適切に行われるべきものです。下請代金未払いなど、元請業者と下請業者の間で契約上のトラブルが発生した場合は、市は契約上の当事者ではなく、またそれら業者を指導する権限もないことから、双方が話し合いにより解決する等、当事者間で解決していただくことが原則です。
市が発注した工事で元請業者から代金が支払われていないなど、下請業者からの相談があった場合には、関係局で情報共有を図るとともに、国が全都道府県に設置している、企業間取引や法律などに詳しい専門の相談員や弁護士にも無料で相談できる専用の相談窓口をご案内している。
問題のある会社の入札参加の制限などの対策を
【山口議員】第二に、どのような対策を立てるかです。
長崎県では5年前に、下請代金等の未払いを行った者の入札参加を規制する制度をつくりました。未払いの相談があれば、元請けが未払いの事実を否認しても、入札参加を規制できる仕組みを設けました。その気にならばやれることはいくつもある。四つ提案します。
一つ、元請けから下請けへの代金支払い状況をまず確認すること
二つ、下請代金の未払いを確認したら速やかに元請けに支払いを命ずること
三つ、それでも払われない場合、緊急措置として市として代金を立替え、その代金を市から元請けに請求すること
四つ、下請代金未払い企業に対して、入札参加をきびしく制限すること
以上、答弁を求めます。
入札参加資格制限を検討したい(局長)
【財政局長】元請から下請への代金支払い状況を確認したり、下請への代金の未払いを確認したら速やかに元請けに支払いを命じたり、あるいは市が代金を立て替えて支払うことなどは、困難と考える。下請代金未払い業者に対して、本市の入札参加資格を制限する方策は、下請業者の保護や公共工事の品質確保という観点から、他の自治体の状況を適宜把握しながら検討したい。
下請け業者も守る、新たな公契約仕組みを
【山口議員】最後に抜本的な予防策についてです。公共事業や業務委託などの公契約について、業務の質を確保し、公契約の社会的な価値を高めることが必要です。
今年に入り、愛知県や豊橋市であいつぎ公契約条例が制定されました。また豊田市では5年前に「豊田市公契約基本方針」を定めています。いずれも公共事業や業務委託で働く労働者に一定以上の賃金を支払うことなどを受注企業に求めています。豊田市は企業の姿勢を入札時の評価に反映させるとしています。
しかし各地の公契約条例では、労働者の保護はうたわれていますが、下請けの中小零細業者は保護の対象となっていません。本市では、この点も考慮にいれた公契約についての新たな仕組みが必要です。
名古屋市の仕事を受注するのなら、労働者はもちろん、下請け、孫請けまで大切にしていることをしっかり確認して契約する。受注企業の信用も、名古屋市への信頼も高まり、働く人も下請業者も安心してよい仕事ができる、一石三鳥の効果が期待できます。
名古屋市においても、公契約に関する新たな仕組みをつくりませんか。
適切な公契約のあり方を検討したい(局長)
【財政局長】これまでも最低制限価格制度等の導入によりダンピング受注の防止に努め、下請業者にしわ寄せがいかないような制度改善を行ってきたが、引き続き、適切な公契約のあり方は検討を行ってまいりたい。
現実的な救済策について、思い切った対応を(意見)
【山口議員】財政局長から、未払い業者への入札参加資格制限については検討していきたい、と若干、前向きな答弁がありました。公契約のあり方もふくめ、しっかり検討していただきたい。
入札の総合評価では「地域貢献」を皆さんも評価しますね。下請けへの未払いはとんでもないマイナス評価です。皆さん工事の出来上がりを検査するように、下請への支払いについても、チェックする、発注者としての責任と自覚を持って見届ける責任があります。
そのうえで、現実的な救済策について、無利子の緊急融資や次の受注機会の優先確保など、これは市民経済局とも一緒になって、下請け業者に寄り添って検討いただきたい。
この問題については、市長にも、答弁は求めませんが、よく調べていただき、代金立替など、思い切った救済策をとるように強く要望しておきます。
キーワード:雇用と地域経済・中小企業、山口清明