さいとう愛子議員の議案外質問 小学校給食調理業務の民間委託(2016年9月16日)
異物混入続出で保護者の不安も増大
・・・全国に誇れる、名古屋の直営自公方式の学校給食を守れ
異物混入続発など、一歩間違えば事故になりそうな深刻な事態だ
【さいとう議員】名古屋市の小学校では、長年にわたって、直営自校式の給食が実施をされていましたが、今年4月1日から、名東区西山小学校、緑区大清水小学校、中川区荒子小学校の3校の給食調理業務が民間委託となってしまいました。当該校の保護者へ説明は不十分であり、子どもたちの給食を、経費節減を目的に委託し、しかも、業者にとって経費的なメリットがあるようにと、1000食以上の大規模校を対象にしたという経過も理由も納得できるものではありません。
名東区の私の事務所には、匿名の母から、「普段から、子どもの口に入るものは気を使ってるんです。そんな簡単に、ほいほいと勝手に決めるなんて。私たち保護者の意見も聞かないなんてありえない話」と怒りいっぱいのFAXが届きました。今回の小学校給食の突然の民間委託に対し、多くの保護者が名古屋市の行政への不安を募らせました。短期間にもかかわらず、市民の29,000筆以上の署名が積み上げられたのは、非常に重いものがあります。
4月からの給食開始前には、各小学校で、ためし調理と試食会が行われました。その作業を見た、ある自治体のベテラン調理員の方、たまたま委託3校の保護者の一人ですが、「一歩間違えば事故になりそう」と非常に心配していました。調理業務にあたるパートさんには、集団給食の調理業務に従事した経験を求めていないので、日ごろ、厳しい基準の安全管理を身をもって実践しているベテランの調理員さんならではの感想です。
5月下旬に市の調理員による委託校の現場確認が実施され、その状況がHPで公開されています。調査当日の給食メニューは「ビビンバとワンタンとニラのスープ」。「ビビンバ」は子どもたちの大好きなメニューの一つですが、ゆでた具を冷ますことがとても重要で、注意して調理しなければなりません。当日、現場では、肉を炒めた釜を使って、ビビンバの具をあえており、釜が冷めていたかどうか不明という状態があり、温度差により食材が傷みやすいので、十分釜を冷ましてから使うようにと指摘がありました。また、別の現場では、調理場のルールとして、使用後の肉の容器などの汚れたものが、置くべき場所に置かれていなかったという状況も、改善の指摘がなされています。
4月半ばから1か月以上たった5月下旬に行われた、この1日の調理業務だけでも、事故になりかねないような状況がみてとれます。
また、委託3校では、「栄養教諭が増えるので食育指導が充実する」といわれていましたが、実際はそれどころではなく、毎日栄養教諭が調理場で指導していたと教育委員会も認めています。栄養教諭は、業務責任者とのやり取りなどに追われ、1学期は肝心の食育指導ができませんでした。
また、1学期間に4回の異物混入などの事故が起きてしまいました。8月26日に行われた請願審査でも、「委託校3校で1学期に4件。直営校のこれまでの件数より多い」と答弁されています。
そこで、教育長にお尋ねします。4月から小学校3校の給食調理業務が民間委託となり、1学期間業務が行われましたが、毎日のこの深刻な事態をどう受け止めておられますか。
3校とも多くの人員を配置し調理や洗浄などが行われた。異物混入はお詫びする(教育長)
【教育長】調理業務委託は、献立、食材、調理場所はこれまでと変わりがなく、学校給食の実績のある民間業者に調理業務のみ委託しており、衛生管理も国や本市の基準に基づいて実施し、委託業者の業務は、学校の栄養教諭が日常的に衛生管理等を確認しながら進めている。
1学期は、3校とも、多くの人員を配置し、調理、洗浄作業が行われており、調理員が、配膳時や食器返却時に児童に声掛けをしながら給食を提供していた。
なお、調理過程において食材の包装片等の異物混入があったことについてはお詫びします。
調理場からアレルギー除去食を勝手に持って行った事例もある
【さいとう議員】学校における食に関する指導はどのように位置づけられているのでしょうか。中央教育審議会の報告書でも明記され、小中学校の学習指導要領の改訂においても、総則に「学校における食育の推進」が盛り込まれました。2009年施行の改正学校給食法には、「第1条 法律の目的」のところで「学校における食育の推進」を位置づけ、栄養教諭が学校給食を活用し、食に関する指導を充実させることについて明記されています。
学校給食は、単なる栄養補給というだけでなく、学校教育の一環であり、現在、子どもたちをめぐって、「子どもの貧困」「孤食」と危惧されている中、特に小学校の給食は子どもたちの育ちにとって重要な意味を持っています。
名古屋の小学校では、昼間近になると調理室から給食のいい匂いがして、子どもたちが調理員さんに声をかけられながら、給食の準備をするという全国に誇れる行政の一つです。
調理業務の民間委託化は、「給食の作り手が変わるだけ」と保護者に説明されましたが、「学校給食をよくする」という立場からのスタートではありません。唯一最大の理由は「退職者不補充」、人員削減と経費節減のためです。子どもたちの成長にとって重要であり、学校教育の一環となる「食育」を担っている小学校の給食という業務を、経費節減の対象としてよいでしょうか。学校という教育現場に持ち込んではならないのです。
調理員の仕事は、単に「給食の作り手」というだけではありません。栄養教諭が配置されていない学校もあるので、協力して、子どもたちへの「食育」を実践します。給食が大好きな子どもたちに、食材の切り方を工夫したり、可能な限り声掛けを行っています。直営の調理員は、学校職員として行事に参加することや栄養教諭と共に「食育」の授業に出ることもあります。
また、年々増加するアレルギー対応食には失敗が許されません。調理員は、アレルギー食が、調理場から、確実に、児童の口に入るよう、とても気を遣うそうです。複数の目を介して間違いがないように、当日の朝、カードを使ったり、声を掛け合ったり、担任の机の上に表示版を置いたり、と様々な知恵や工夫をしています。年度始めなどに学校内で実施する「アレルギー対応委員会」に出席するなど、学校との連携は欠かせません。
そこで、教育長にお尋ねします。5月下旬に行われた「市職員の現場確認」の報告書に、「給食開始前に、調理場から除去食を勝手に持って行った児童がいた。」と、あります。一歩まちがえば大問題になりかねません。「勝手に」ということは、調理場では知らなかった、という事になりますが、 いったい、どのような状況だったのでしょうか。
児童が自分用のものをとっていった。担任の確認の下で安全に食べた
【教育長】「アレルギー除去食を持って行った児童」については、民間委託の問題ではなく、通常の給食の時間より前に児童が自分用に調理された給食を取りに来て、担任の確認の下で安全に食べたものであり、食物アレルギーへの対応については学校と連携して取り組んでいます。
技能や経験が継承されず、献立と調理が切り離されてしまう
【さいとう議員】調理業務を委託する今回の民間委託には、継続性という面からみて2つの問題があります。1つは、契約期間が終了したら、体制が変わり、技能や経験が継承されない恐れがあるという問題と、2つには、献立と調理が切り離されるという、2つの問題です。
調理員は、回転釜の特性をつかむのに、数年かかるといわれますが、調理器具を使いこなせるようになったら、4年4カ月の契約期間がおわるということにもなりかねません。
また、民間委託というしくみから、栄養教諭は直接、調理員には指示できません。献立をつくる栄養教諭と実際調理する調理員とが密接なコミニュケーションをとることができないというのは、民間委託の大きな矛盾です。緊急を要する場合など、どうするのでしょうか。すべての指示は、栄養教諭が業務責任者を通して現場で行うので、栄養教諭には、大きな負担がかかります。
そこで、教育長にお尋ねします。長年の技能と経験が継承されず、献立と調理が切り離されてしまう、民間委託は見直すべきだと思いますが、いかがですか。
安心安全で安定的に提供していくため、引き続き、責任を持っていく(教育長)
【教育長】これまで児童や教職員が行っていた食器運搬や返却時の補助を委託業者が行うなど、児童らの負担が軽減される成果も現れている。
学校給食は、直営校、委託校にかかわらず、安心安全で安定的に提供していくことが必要と考えており、引き続き、責任を持って提供していきます。
アレルギー対応など、基本的なことの指摘が改善されていない(再質問)
【さいとう議員】委員会での懸念や指摘された様々なことが実際に起こっている、このことに対する認識を示していただいてません。2点について、再度お尋ねします。
3つの委託校に対しておこなった市のベテランの調理員による現場確認の報告が「市職員の現場確認」です。5月下旬に、1か月以上たっても、汚れたものの置く場所についてなど、基本的なことがらについての指摘がなされています。これは、お答えいただいた、「1学期は、3校とも、多くの人員を配置し、丁寧な調理、洗浄作業が行われておりました。」とはいえない状態なのではないでしょうか。
また、アレルギー対応について、「担任の確認の下で安全に食べた。」というお答えをいただきました。子どもさんに何事もなかったので、ほんとうによかったと思いますが、その結果をもって、よしとするわけにはいきません。「調理場から除去食を勝手に持って行った」ということは、「食物アレルギーへの対応についても学校と連携して取り組んでおります」と言われましたが、それがこの日、この委託校の現場ではできていなかったのではないでしょうか。
市職員であるベテラン調理員による指摘なので万全を尽くす(教育長)
【教育長】指摘されたことは、市職員であるベテラン調理員によるものですので、その点も踏まえて、引き続き、安心安全な給食の提供に万全を尽くしていきます。
きちんと質問に答えなさい(再々質問)
【さいとう議員】教育長のお答えは、正面から、答えていただいておりません。ベテラン調理員の指摘だから、と言われますが、どういう認識か、お示しください。
保護者懇談会や学校給食運営委員会等に報告、委託業者に対して改善指導をしてきた(教育長)
【教育長】委託校における状況は保護者懇談会や学校給食運営委員会等に報告し、委託業者に対して改善指導をしてきた。引き続き安心で安全な学校給食を提供できるよう万全を期していく。
質の高い安心安全な給食を提供してきた直営自校式の伝統を守れ(意見)
【さいとう議員】今回の民間委託に対して安心して保護者が任せられるという根拠を示していません。それだけ、名古屋市の直営自校式の小学校給食は、質の高い安心安全な給食を提供してきたということではないですか。なぜ、この伝統をこわすのでしょうか。
「行革」を推進するために、「退職者不補充」だからしかたないとの立場ではなく、子どもたちにとって必要な、技能や業務の継続を行う人員は確保し、若い世代に技能と経験を引き継ぐべきです。今ならまだ間に合います。
名古屋の学校給食を、他の政令市にはない、直営自校式の伝統を守る方向へと切り替えることを強く申し上げて、質問を終わります。