田口一登議員の議案外質問② 「東山公園」区域の見直し(2016年9月16日)
新たな緑地保全制度の創設による「東山公園」長期未整備地区の計画見直しについて
新たな緑地保全制度の検討状況はどうか
【田口議員】東山公園の都市計画区域の南端は八事天白渓線です。山手植田線と八事天白渓線にはさまれた地区は、天白渓と呼ばれている地区の一部です。資料に南方から天白渓地区を望んだ写真を付けておきました。写真の下から4分の1ぐらいのところ、この辺りを八事天白渓線が通ります。天白渓地区の東山公園計画区域は、樹林地に隣接して住宅が建っていることがおわかりいただけると思います。
この地区は、1947年に東山公園として都市計画決定されて以降、70年近くも未整備となっており、市の「長期未整備公園緑地の都市計画の見直しの方針と整備プログラム」の中では、第4期、すなわち2038年度以降に事業着手するとされています。しかし、この計画では、計画区域内の住民は立ち退きを余儀なくされますが、立ち退き時期は早くても20数年先なので、将来設計が立てにくい、また東山公園の南部は山手植田線で分断されており、住宅が立地している天白渓地区を東山公園として整備する必要性があるのか、などの問題があると考えます。 天白渓地区の3つの町内会は昨年、東山公園緑地計画についての住民アンケートを実施し、95%の世帯から回答を得ています。このアンケートでは、「時代や環境が大きく変わっているので、(計画を)見直すべきだ」との回答が74.8%、「立ち退きたくない」との回答が40.9%にのぼっています。公園計画を見直して、このまま住み続けたいというのが、多くの住民の意思であることが示されたと思います。
しかし、東山公園の都市計画決定区域から削除しますと、宅地開発が進み、樹林地が失われる恐れがあります。都市計画決定区域から削除したとしても、樹林地を残しながら、住民が住み続けられる方策はないのでしょうか。
考えられる方策の一つは、特別緑地保全地区の指定です。この制度は、建築行為や樹木の伐採などを制限することによって緑地を保全するものですが、ほぼ永久的に現状の凍結を求められるため、土地所有者の協力が得にくいという難点があります。
もう一つの方策は、昨年6月、名古屋市緑の審議会が答申した「新たな緑地保全施策の展開について」の中で提言されている民有緑地の新たな保全制度です。新たな緑地保全制度とは、おおむね1ヘクタール以上の豊かな林相を有する樹林地等を対象に、建築物の新設や増改築、宅地の造成などを届出制にし、市の指導により翻意を促す制度であり、土地所有者への税制の優遇措置や支援制度を設けるとされています。土地所有者の協力が比較的得られやすい制度設計となっています。
そこで、緑の審議会が答申したこの新たな緑地保全制度の創設に向けた検討状況について、緑政土木局長にお尋ねします。
《新たな緑地保全制度》 おおむね1ヘクタール以上の豊かな林相を有する樹林地等を対象に、建築物の新設や増改築、宅地の造成などを届出制にし、市の指導により翻意を促す制度。土地所有者への税制優遇措置や支援制度を設けることで土地所有者の協力が比較的得られやすい制度設計。 |
規制と優遇のバランスに留意した新規緑地保全制度を検討中(局長)
【緑政土木局長】市内の緑が大きく減少している状況を受け、平成25年12月、名古屋市緑の審議会に「新たな緑地保全制度の展開について」諮問を行い、平成27年6月に答申を受けた。答申で、基本的な考え方を「みどりの魅力を伝え、みんなで緑地を守り育てる」をとし、3つの基本方針を柱とする提言をいただいた。
その中の基本方針1「地域の状況に応じてきめ細かく対応できるよう緑地保全制度を充実する」において、土地所有者の協力が比較的得られやすい中間的な規制を有する新規制度が必要であるとの提言を受け、現在、規制と優遇のバランスに留意した新規緑地保全制度の検討を行っています。
新たな緑地保全制度の天白渓地区への適用の可能性はあるのか
【田口議員】新たな緑地保全制度が東山公園南部の長期未整備地区である天白渓地区に適用できるなら、この地区を都市計画決定区域から削除しても、樹林地を保全しながら、住民が住み続けることができるでしょう。
新たな緑地保全制度は、天白渓の山手植田線と八事天白渓線にはさまれた地区に適用できるのか。その可能性についても合わせて答弁を求めます。
まとまりのある民有樹林地がなく新規緑地保全制度は適用できない(局長)
【緑政土木局長】緑の審議会の答申では、新規緑地保全制度の対象を「おおむね1ha以上」の民有樹林地としています。答申を受け、まとまりのある緑の方が生物多様性の保全やクールスポット等、緑の持つ機能をより効果的に発揮することから、おおむね1ha以上の民有樹林地を新規緑地保全制度の対象と考えている。
都市計画東山公園の、山手植田線と八事天白渓線にはさまれた地区については、既存の樹林地の多くが公有地化されており、民有地については宅地が多く、小規模な樹林地が点在している状況となっている。従って、当該地区は、まとまりのある民有樹林地がないことから、現在検討している新規緑地保全制度を適用できないと考えています。
住民が住み続けることができるよう、都市計画の見直しを検討してはどうか(再質問)
【田口議員】新規緑地保全制度については、河村市長も残したかっていた「平針の里山」は、数年前に住宅地に変貌し、今ではその周辺の樹林地も宅地造成によってどんどん消滅していることからも、早急に創設されるよう要望させていただきます。
ただ、この制度を天白渓地区に適用することについては、「樹林地の多くが公有地化されている」ことからできないとの答弁がありました。公有地化されていれば、宅地開発などで樹林地が失われる心配はありません。しかし、この地区における公有地化は、東山公園として整備するためのものですから、都市計画を見直さない限り、住民は立ち退きを余儀なくされます。
天白渓地区全体で移転対象となる建物は約170棟にのぼるそうです。用地買収などに莫大な費用がかかるでしょう。
ですから、樹林地の保全と居住の継続を両立させる。そして、将来的な本市の財政負担も軽減する――こうした観点に立って、天白渓地区の公園計画を見直す必要があるのではないでしょうか。その方策としては、公有地と民有地を合わせて特別緑地保全地区に指定するとか、新規緑地保全制度の対象を民有樹林地だけでなく、公有地も含めた制度として設計することなどが考えられます。
そこで、新開副市長にお尋ねします。東山公園の天白渓地区については、各種の緑地保全制度も活用して、樹林地を保全しながら住民が住み続けることができるよう、都市計画の見直しを検討してはどうでしょうか。
良好な自然環境が残されてきた経緯や、土地利用の状況、樹林地保全の観点などを踏まえ、他の長期未整備公園緑地と同様に総合的に考えたい(副市長)
【新開副市長】長期未整備公園緑地は、平成20年3月の「長期未整備公園緑地の都市計画の見直し方針と整備プログラム」策定後の、社会情勢の変化や財政状況等を踏まえ、平成29年度末を目途に、全市的に検証を行っている。
都市計画東山公園の未整備地区は、都市計画公園の区域内のため良好な自然環境が残されてきた経緯や、土地利用の状況、樹林地保全の観点などを踏まえて、他の長期未整備公園緑地と同様に、総合的に考えていく。
検証の結果で、都市計画の見直しを検討することもあるか(再々質問)
【田口議員】都市計画東山公園の天白渓地区では、樹林地に隣接して住宅が立地するという土地利用になっています。こうした土地利用の状況や樹林地保全の観点、そして厳しい財政状況を踏まえて検証を進めれば、公園計画は見直さざるをえなくなるでしょう。
今、長期未整備公園緑地の都市計画の見直し方針と整備プログラム、10年後となる平成29年度末を目途に、全市的に検証を行っていると答弁があった。そこで伺いますが、検証を進めた結果、都市計画の見直しを検討することもありうるという考えでいいのかお答えください。
検討中なので今後総合的に考えたい(副市長)
【副市長】現在検証の途中でして、今後、総合的に考えたい。
公園計画の見直しに向け、地元住民の意見も踏まえながら鋭意検討を(意見)
【田口議員】未整備公園をめぐる状況を考えますと、都市計画の見直しまで検討しなければならないと考えます。
天白渓地区については、公園計画の見直しに向けて、地元住民の意見も踏まえながら、鋭意検討されんことを要望して、質問を終わります。
キーワード:環境と防災、まちづくり、田口かずと