さはしあこ議員の個人質問 災害時の妊産婦への支援(2016年11月25日)
災害時に妊産婦・乳幼児のいのちを守るため、
専用の福祉避難所の指定など、支援の拡充を
さはしあこ 議員
熊本地震などの教訓を踏まえた妊産婦・乳幼児への支援の仕組み作りは急務
【さはし議員】東日本大震災では、多くの方が命を失いました。その中には、妊産婦・乳幼児もいました。熊本地震においても、赤ちゃんの夜泣きなどで、避難所に避難してこられた方々に申し訳ないと、車中で過ごしたり、自宅に残った妊産婦・乳幼児がいたことも報告されています。
妊産婦・乳幼児の対策は早急に取り組む課題のひとつです。妊産婦は、平常時に健康であったとしても、ちょっとした環境の変化によって、流産や早産など、異常分娩の可能性が高まります。災害によって環境が激変すれば、精神的にも身体的にもショックを受けて、ハイリスクの状態となる妊産婦を、災害弱者として明確に位置づけ、支援の対象にすべきではないでしょうか。
妊産婦・乳幼児を最初から配慮の対象とする自治体も出てきています。そこで、東日本大震災や熊本地震など教訓を踏まえ、妊産婦・乳幼児へのさらなる支援の仕組みづくりが必要と考えますが、本市における妊産婦・乳幼児に対する現状の取り組みと認識について、お答えください。
必要な情報を盛り込んだチラシの作成、避難所への間仕切り設置などの確保等、必要な対策を進める(防災局長)
【防災危機管理局長】妊産婦の方等に着目した家庭内備蓄など防災に関する情報をお伝えするほか、区によっては、こうした方々に必要な情報を盛り込んだチラシを作成するなど、普及啓発に努め、東日本大震災を教訓に、避難所である市立小中学校等へテント型の間仕切りを配備するとともに、「避難所運営マニュアル」の中に妊産婦の方等への配慮事項や避難スペースの確保等について記載し周知している。
平常時からの備えについて理解し、準備していただくことが特に重要であると認識し、一層の働きかけを行うとともに、現在進めている熊本地震の課題検証を踏まえ、関係局と連携し、必要な対策を進めます。
妊産婦 ・乳幼児専用の福祉避難所の指定がなぜできないのか。看護学校や福祉学科のある大学などとの連携を
【さはし議員】国は、昨年3月「少子化社会対策大綱」を策定しました。その中では、災害時の乳幼児等の支援として「地方自治体において、乳幼児、妊産婦等の要配慮者に十分配慮した防災知識の普及、訓練の実施、物資の備蓄等を行うとともに指定避難所における施設・設備の整備に努め、災害から子供を守るための関係機関の連携の強化を図ることを促進する」としています。今年3月には、愛知県が「妊産婦・乳幼児を守る災害時ガイドライン」を取りまとめました。
30年以内に南海トラフ大地震を起きることを想定した災害対策は急務であり、本市も防災・減災に取り組んでいます。避難所での配慮や備蓄・防災についての講習、保健師に向けたマニュアル作成など、妊産婦・乳幼児への一定の対応はされています。
これらをさらに進めるためにも、本市は、妊産婦・乳幼児を守る取り組みを具体化する必要があると考えます。
そこで、妊産婦・乳幼児専用の福祉避難所の指定についておたずねします。
私は、2011年9月定例会で、スピードをもって福祉避難所を増やす取り組みや希少難病患者など行政が情報を持っていない方々を含めた災害時要援護者に対しても、市が責任を持って支援するよう求めました。
名古屋市地域防災計画で指定されている福祉避難所は、2016年4月現在で、103か所となり、この5年間で71か所増えました。また、障がい者、高齢者の方々などにおいては、平常時に地域への名簿の開示なども進められてきました。
要援護者である妊産婦・乳幼児専用の避難所設置も取り組むべきではないでしょうか。
本市の妊婦は、昨年度妊娠届出数で21,698人です。そして、昨年一年間で19,605人の赤ちゃんが誕生しています。
災害が起きた場合、まずは、妊産婦・乳幼児も一時避難所となっている小中学校等の最寄りの避難所に避難します。避難所では、妊産婦・乳幼児への一定の配慮として授乳室やおむつ替えの場所は確保されています。その後、保健師による問診・診察によって、必要であれば医療体制の整った産婦人科などへ移ります。
熊本地震でボランティアとして被災地支援に行かれ、現地の避難所運営に携わった方からお話をうかがったところ「外見で妊婦とわからない妊娠初期では、特に流産する可能性が高くなることからもケアが必要にもかかわらず、避難所では、自分よりも辛い思いをされている避難者の方々がいるので、妊娠していると言いだせなかった妊婦さんがいた」「体育館に避難したものの、毛布があるとはいえ、身体を冷やしたり、硬いところで横になるのは、お母さんにもお腹の赤ちゃんにも負担がかかってしまう。特に周産期ともなればなおさら。多くの避難者方が身を寄せている避難所では、我慢してしまう妊婦さんもみえた」とのことです。
そこで、新たに芽生えた大切な命を守るために、少しでも安定した状態で出産を迎えることができ、また、妊産婦・乳幼児が安心して過ごすことができるように、具体的な提案をしたいと思います。
内閣府の防災担当による「福祉避難所の確保・運営ガイドライン」では、福祉避難所の指定基準の一つとして「主として高齢者、障害者、乳幼児、その他の特に配慮を要するもの、いわゆる要配慮者を滞在させる」と規定されています。「その他特に配慮を要するもの」の中には、妊産婦も想定されています。これらの人々に対しては、「一般的な避難所では生活に支障が想定されるため、福祉避難所を設置し、受け入れ、何らかの特別な配慮をする必要がある」と明記されています。
ところが、現在、本市が指定している福祉避難所の多くは、高齢者施設、障がい者施設であり、妊産婦・乳幼児を対象とした施設ではありません。いくつかの自治体では、東日本大震災の教訓を踏まえ、要配慮者として妊産婦・乳幼児など対象別に、きめ細やかに福祉避難所を指定する取り組みを始めています。都市、神戸市、東京都文京区などです。京都市は、政令市で初めて、つわり・うつなどのハイリスクの妊産婦やその家族に対して一定の支援をするために、2次的機能を持たせた避難所として、京都看護大学はじめ市内の大学や専門学校など、8法人と協定を結び、災害時の福祉避難所として指定をしました。学生をはじめ、保健師、フリーの助産師などマンパワーを結集させた取り組みです。
災害発生時における妊産婦・乳幼児を対象とした福祉避難所の設置に向けて、横になれるベッドや沐浴などの設備が整っていて、災害看護教育も組み込まれている看護学校や、妊産婦・乳幼児について学び、人的体制も確保しやすい保育士をめざす学生が学ぶ大学などに協力を求め、受け入れを働きかけてはいかがでしょうか、健康福祉局長に答弁を求めます。
通常の避難所の避難スペースを想定。必要なら医療機関に搬送(健康福祉局長)
【健康福祉局長】福祉避難所は28年4月1 日時点で103か所を指定しています。国のガイドラインでは、身体等の状況から介護保険施設や病院等へ入所・入院するに至らない程度であって、避難所での生活において特別な配慮を必要とする方を福祉避難所の対象者として想定し、妊産婦や乳幼児の方は、通常の避難所の中に設置される福祉避難スペースで、巡回による保健所保健師のケアを受けながら避難生活を送っていただくことを想定、国のガイドラインに沿った対応を取ることとしている。何らかの医療的な対応が必要となった場合には、直ちに福祉避難スペースから医療機関へ搬送し、医師の治療等を受けていただく。こうした取り組みをまずはしっかりと進めていくことが大切であると考える。
しかしながら、熊本地震をはじめ被災地での教訓を受けて、妊産婦や乳幼児の方などに一定の配慮が必要と考えられることから、今後どういったことができるかについて、関係局とともに検討してまいります。
常日頃からの防災の備えに母子健康手帳・子育て支援アプリの活用を
【さはし議員】災害はいつ起こるかわかりません。妊娠してから出産までの間に、発災することを想定しておくことは、平時から大切です。
本市としても防災セミナーなどで啓発を行ってはいると思いますが、実際、出産されたお母さん方はどのように思っているのでしょうか。出産されたお母さんたちの声を紹介したいと思います。
「避難所で子どもが泣いたりしたらどうしよう」「ミルクをつくるお湯はあるのかな」「ほ乳瓶はきれいな水で洗えるかな」「情報があまりなくてわからない」お母さん方からお聞きした率直な思いです。
災害が起きた時、どうしたらよいかは、日頃から自ら情報を集めたり、防災訓練に参加するなど自助に加え、自治体などからの情報提供も大切です。そこで、災害時において、お母さんの不安を和らげるために、2つ提案したいと思います。
ひとつめは、妊娠したお母さんが受け取る母子健康手帳の活用です。母子健康手帳は、各市町村の判断で、独自の制度など具体的な記載内容を作成することが可能なので、日頃から災害の備えについての情報が記載されていれば、お母さんたちにとっては大変心強いと思います。
母子の健康状態に関する重要な記録が一冊に集約されており、災害時はもちろん、平常時でも大切に保持する母子健康手帳に、本市独自の防災・減災に係る知識、たとえば妊産婦や乳幼児にとって、特に避難袋に用意しておいた方がよいグッズなどを記載するなどしてはどうでしょうか。
あわせて、子ども青少年局が10月から子育て中のお父さんお母さん向けに開始した子育て支援アプリ「なごや子育てアプリ・なごみー」の活用です。
さっそくアプリの中にも防災の情報を取り込んでいただいています。さらに充実させることで、多くのお母さんにも常日頃からの防災の備えについてお知らせすることができると思いますがいかがでしょうか、お答えください。
広報用チラシを作成するなどさまざまな媒体を活用して広めたい(子ども青少年局長)
【子ども青少年局長】母子健康手帳には、妊娠期から産後まで、新生児期から乳幼児期までの母と子の健康の記録、そして妊娠中の感染症予防や薬の服用、妊娠中と産後の食事、子どもの病気やけが、事故予防、予防接種に関する情報、相談窓口など、妊産婦・乳幼児の日常生活上の注意点や参考となる情報を掲載している(のでこれ以上の掲載はできない)。
スマートフォンでは本年10月24日から配信を開始した「なごや子育てアプリ なごみー」で、子どもの事故予防など、出産や子育てに役立つ情報発信の充実に努めている。
災害時に対する普段からの心構えとして、本市では、災害時要援護者が避難する場合に備えておきたいことなど記載した広報用チラシ「もしも…の時のために」を作成し、妊産婦の方や乳幼児を子育て中の方に対する非常時持ち出し品などを紹介している。子育てサロンや子育て教室等において活用し、「なごや子育てアプリ なごみー」や「子ども・子育て支援センターホームページ」に掲載して啓発に努めている。
日常の子育てに関する情報以外にも非常時の備えに役立つ情報を、さまざまな媒体を活用して引き続き広報に努めたい。
災害時にリスクが大きくなる妊婦への配慮が必要。きちんと対策を(再質問)
【さはし議員】健康福祉局長から「妊産婦や乳幼児の方など一定の配慮が必要」とのお答えをいただきました。現状の福祉避難スペースでは十分でないと、問題意識は持っていただいているようです。今定例会開会中の22日に福島県沖で震度5弱の地震が起きました。東日本大震災では、妊娠8ヵ月以上の妊婦の方は、ほとんどが切迫早産となり、未熟児を産んだと、被災地支援に行った保健師の方からお聞きしました。助産師の方からは、外見上わからない2~3ヵ月の妊婦の方は、流産のリスクがもっとも高いと、おうかがいしました。日常は健康であっても災害時にはリスクが大きくなるのが妊婦です。だからこそ、前もっての配慮が必要です。事前の対策を講じ、災害によって引き起こされるストレスやショックを和らげるためにも独立したスペースが必要です。
そこで、おたずねします。現状の対応では、まだ不十分で、一定の配慮が必要との認識を示していただきましたが、妊産婦・乳幼児専用の福祉避難所を含め、検討されるという理解でいいですね。
今後どういったことができるかについて、関係局とともに検討したい(局長)
【健康福祉局長】妊産婦・乳幼児専用の福祉避難所の設置の必要性も含めて、今後どういったことができるかについて、関係局とともに検討してまいります。
防災危機管理局がリーダーシップを発揮して前進を(意見)
【さはし議員】健康福祉局長から、妊産婦・乳幼児の方などに対して、妊産婦・乳幼児専用の福祉避難所設置の必要性も含めて、各局とともに検討していただけるとお答えいただきました。
京都市は、妊産婦・乳幼児専用の福祉避難所の指定をするにあたって検討会を立ち上げてから、協定を結ぶまでに、3年ほどかかったそうです。すぐにでも取り掛かっていただきたい。
災害時、妊産婦・乳幼児の命を守るためにも、防災危機管理局には、ぜひ、リーダーシップを発揮していただき、健康福祉局、子ども青少年局と連携し、前に進めていっていただきたいと思います。このことを要望させていただき、質問を終わります。
キーワード:環境と防災、まちづくり、さはしあこ