西山あさみ議員の個人質問②名古屋市の官製ワーキングプア(2016年11月25日)
時給千円以上で名古屋市版
「官製ワーキングプア」の解消を
西山あさみ 議員
名古屋市がつくり出すワーキングプア
【西山議員】今年の9月定例会で、議会は「最低賃金の時給1000円への引き上げに関する意見書」を全会一致で可決しました。この意見書は「最低賃金の引き上げは、所得の向上に直結し、内需の拡大に寄与することから、デフレからの脱却を図るとともに、経済の好循環を実現させていくためには必要不可欠である。よって、名古屋市会は、国会及び政府に対し、中小企業支援策と一体的に、最低賃金を早急に時給1000円に引き下げるための施策を講ずるよう強く要望する」と述べています。
1日8時間、週5日、52週にわたり休みなく働いて年収200万円以上に達するには、最低でも時給962円が必要ですが、そこに達していない人たちが一般的にワーキングプアと言われています。ワーキングプアとは、まともに働いているのに生活保護水準以下の収入しか得られないなど、貧困から抜け出せない人たちのことをいいます。その中でも国や自治体の仕事に携わっている人を「官製ワーキングプア」と言います。
本市がその官製ワーキングプアをつくりだしてしまっていないでしょうか。名古屋市の臨時的任用職員の時給は850円~885円、短期職員の准看護師、衛生検査技師、栄養士、歯科衛生士、無資格の保育士代替要員、無資格の児童福祉施設指導員などは1000円以下となっています。
2016年4月1日時点で本市が直接雇用する臨時的任用職員は940人、そのうち事務補助591人、労務雑役補助27人、技術補助等13人の計631人が1000円未満の賃金となっています。
時給850円は愛知県の最低賃金845円とほぼ同じ水準で、フルタイムで働いても年収は200万円以下のワーキングプアとなってしまいます。
総務局長にお聞きします。名古屋市がワーキングプアを生み出しているという認識はありますか。名古屋市として、市議会の意志を尊重し、少なくとも市が直接雇用している職員は、時給1000円以上に引き上げることを今すぐにでも行うべきだと思いますが、1000円に引き上げる考えはありますか。
臨時職員は賃金だけで生活していると考えていない(総務局長)
【総務局長】臨時的任用職員は任用期間が短期である等の職の性質上、その賃金によってのみ生活を維持する職とは考えていないことから、その雇用によってワーキングプアを生み出しているという認識はございません。
臨時的任用職員の時給単価は、正規職員の給与改定の状況、他都市及び最低賃金の動向等を総合的に勘案して決定し、これまでも着実に時給単価を引き上げてきており、今年4月からは、事務補助職員について30円引き上げるなど、全ての職種の引き上げを行った。直ちに時給単価を全て1000円以上とする考えには至っていない。
業務委託先の民間企業にも時給1000円以上の条件を
【西山議員】本市がワーキングプアを生み出していないかという点では、直接雇用だけの話でなく、本市が業務委託をしていたり、指定管理者に指定している民間企業等にも同じことが言えます。
たとえば、今年3校に民間委託をした学校給食調理員業務ですが、西山小学校の委託業務を請け負う大一食品の求人広告ではパートの時給は820~850円で募集していました。来年度から指定管理になる中村図書館と富田図書館の指定管理者に選定されたホーメックス株式会社は、現在南区図書館の業務もおこなっていますが、司書資格の有無に関わらずパートの時給は850円となっています。これではワーキングプアの拡大に繋がってしまいます。
そこで財政局長にお聞きします。名古屋市が契約を行う業務においては、被雇用者への賃金は時給1000円以上とすることを条件にすべきだと考えますが、見解をお聞かせ下さい。
委託先の賃金は労使間で定めるべき(財政局長)
【財政局長】本市が発注する業務委託には様々な内容のものがあり、それぞれ委託内容を考慮して、事業所管局において仕様等を定めて積算しています。個々の労働者の賃金は、最低賃金以上で事業者と労働者の間で定められることが基本であると考えていまして、一律に時給1000円以上と義務付けすべきとは考えていません。
高い専門性を持つ保育園臨時職員の賃金改善を
【西山議員】愛知県労働組合総連合が2015年秋におこなった、労働者が健康で文化的な生活をするために必要な賃金を試算した「最低生計費試算調査」では、男性も女性も自立して普通に生活するには、月額22万6千円、年収で270万円以上が必要であり、時間給にしたら1300円を超えることが明らかになりました。実際には時給を1000円にしたところで働く貧困と呼ばれるワーキングプアがなくなるということではありません。
「保育園落ちた」のブログをきっかけに、保育士の処遇改善にも注目が集まっていますが、保育園の臨時的任用職員は正規職員とともに担任を受け持ち、保護者対応もおこなっています。正規職員と同じように資格を持っているにも関わらず、臨時的任用職員の時給は実務経験年数にもよりますが1030円~1230円となっています。
共産党市議団が実施している市政アンケートでは、保育士の臨時職員として働いている方から、賃金が低いだけではなく、正規職員と保育所嘱託職員、いわゆるパート職員には支給されるエプロンやジャージ、上靴なども臨時的任用職員への支給はありません。という意見が寄せられました。
調べてみると、臨時的任用職員は時給制で、もちろん一時金の支給もなく、ゴールデンウイークなどの休業日で出勤がなければ単純にその分収入が減る不安定さもあります。
子ども青少年局長に伺います。子どもの命を預かり、高い専門性を持つ保育士という職業において、正規職員とほとんどおなじような勤務形態の職員が自立して普通に生活することができない賃金であるということについて、どのように認識していますか。
臨時職員の処遇改善は今後の検討課題(子ども青少年局長)
【子ども青少年局長】公立保育所における臨時的任用職員は正規職員が出産休暇、育児休業等を取得した場合の代替等として配置している。本市の公立保育所の臨時的任用職員の賃金単価は、他都市と比較して低くない状況にありますが、近年、全国的な保育士の人材不足があることから、今後とも安定的に人材を確保していくため、必要に応じて様々な処遇改善を実施していくことは今後の検討課題の1つと認識している。
賃金単価の引き上げも含めて検討を
【西山議員】賃金単価の引き上げも含めて処遇改善を検討していただくように強く要望します。
総務局長の認識は実態に合わない
総務局長には再質問します。総務局長の認識がそもそも間違っているのではないでしょうか。総務局長が言っているのは建前の話であって、実態にはあっていません。臨時的任用職員は、長期では最長6カ月、その間に1回のみ契約の更新ができますので、さらに6カ月の計1年間は同じ所で働くことができます。その後、2カ月の再雇用禁止期間を経れば、もう一度同じ職場に戻ることもできます。ですから、実際には同じ市役所内で再雇用禁止期間を経ながら同じ部署に戻ったり、また別の部署に異動したりと転々としているケースもあるわけです。
たとえば保育園の臨時的任用職員の場合、これは時給1000円を超えていますが、臨時的任用職員ということには変わりがありません。
私がお話を聞かせていただきました保育園の臨時的任用職員の方は、同じ保育園で再雇用禁止期間を挟みながら10年以上働いているということでした。年収としては240万円前後ですが、なんとかやりくりして生活しているけれど本当に生活していけない、とのことでした。
ですから、臨時的任用職員であっても任用期間が短期であるとは限りませんし、その賃金で生活を維持している人もいるにも関わらず、実態を見ない非常に冷たい答弁です。
地方公務員法24条3項では、職員の給与は、生計費並びに国及び他の地方公共団体の職員並びに民間事業の従事者の給与その他の事情を考慮して定めなければならない、となっています。
時給850~885円は生計費が考慮された賃金とは到底思えませんが、再度見解をお聞かせください。
現行水準が妥当と考える(総務局長)
【総務局長】これまでも着実に臨時的任用職員の時給単価を引き上げており、臨時的任用職員の賃金は、その職の性質上、現行水準で妥当であると考える。
納得できない。今後も時給1000円以上引き上げを求めていく
【西山議員】再度答弁をいただきましけれども、とても納得できるものではありません。
本市が直接雇用する労働者の給与を時給1000円に引き上げることは、意見書が求めている「時給1000円に引き上げるための施策」として重要な意味を持つものです。引き続き、時給1000円以上に引き上げていくことを求めてまいります。
そして、指定管理者制度や業務委託についても例にあげたように、条件が定まっていないために働く貧困をつくりだしているどころか、名古屋市は今後もさらに拡大していこうとしています。
働く貧困を解消していくためには、最低賃金を1000円以上にするなど賃金の条件を定めること。そして、これ以上指定管理者制度や業務委託は行うべきではないという意見を申し上げて、質問を終わらせていただきます。
キーワード:雇用と地域経済・中小企業、西山あさみ