名港議会 山口清明議員の一般質問①港湾運営会社について(2016年11月10日)

国際戦略港湾と港湾運営会社について
            山口清明 議員

東京港が京浜港の港湾運営会社に参画しない理由はなにか、不利益は?%e5%b1%b1%e5%8f%a3%e3%80%80%e6%bc%94%e5%a3%87%ef%bc%92
【山口議員】港湾運営会社制度は2011年度の港湾法改正で、国際戦略港湾の京浜港と阪神港及び名古屋港など18港の国際拠点港湾に導入できるとされました。実際には義務づけられたようなものです。国際戦略港湾では、複数港湾にまたがるコンテナターミナルなどの一元的管理を、国際拠点港湾では同一港湾内のコンテナターミナルなどの一元的管理を、この港湾運営会社が担えることになりました。
 名古屋港は、国際戦略港湾に準ずる国際拠点港湾に位置づけられましたが、港湾運営会社制度においては国際戦略港湾と同様に扱われています。京浜港、阪神港に準じて、伊勢湾で一つの港湾運営会社となることが想定され、2017年9月11日がその期限とされています。
 この間、当局からは、国の方針に沿って東西両港湾では、それぞれ湾に一つの港湾運営会社になるという説明が繰り返されてきました。
 ところが昨年、東京都は、東京港の特例港湾運営会社は横浜港と川崎港が先行して設立する港湾運営会社に現時点では参画しない、と判断しました。港湾運営会社への国の出資など国の関与が強まることへの反発や、東京港は輸入港としての機能強化こそ重要であり、港湾を取りまく課題が横浜・川崎とは異なること等がその要因と言われています。
 この東京港の判断について、議員総会等では何一つ説明がありませんでした。港湾運営をめぐる重要な動向であるにも関わらず、議会に対して何の報告も説明もなかったこと自体がまず大きな問題だと指摘しておきます。
 湾で一つの港湾運営会社が国の方針ですが、わが国最大のコンテナ取扱港である東京港が現時点で参加を見送るとはいったいどういうことか。なぜ東京港は京浜港の港湾運営会社に参画しなかったのか。その理由と経過、参画しないことによる不利益やペナルティはないのか。
 東京港のこの選択について、国は容認しているようです。港湾運営会社制度による優遇措置はなくなるが、国際戦略港湾としての優遇措置は引き続き東京港に与えられるのです。ちょっと待ってください、おかしいと思いませんか。国際コンテナ戦略港湾の選定時には、横浜港、川崎港、東京港の三港で一体的に港湾を運営するとして応募し、選定されたのではなかったのか。

利用者ニーズに対応した使いやすい港づくりのために参加を見送り。無利子貸付割合などが減る
【企画調整室長】港湾法によれば、港湾運営会社を国が指定する場合、大阪港と神戸港では、両港併せて一つの会社とすることが必要ですが、京浜港では、京浜港で一つの会社となっており、「横浜川崎国際港湾株式会社」が設立されています。東京港は、輸入港として首都圏や東日本の実需に的確に対応するため、港湾施設の機能強化を図ることが喫緊の課題であり、利用者ニーズに対応した使いやすい港づくりを進める必要があるとして、現時点では京浜港の港湾運営会社である「横浜川崎国際港湾株式会社」に参画していません。
 港湾運営会社への参画を見送ったことで東京港埠頭株式会社の特例港湾運営会社としての指定は失効し、ガントリークレーン等の整備に伴う無利子貸付割合が最大8割から6割に、固定資産税と都市計画税が10年間2分の1に軽減される税制優遇措置が受けられない。

コンテナ取扱数はどうなるのか
【山口議員】京浜港のコンテナ取扱数は、%e6%b8%af%e6%b9%be%e5%88%a5%e3%82%b3%e3%83%b3%e3%83%86%e3%83%8a%e8%b2%a8%e7%89%a9東京港が参画を見送ることでどうなるのか。コンテナ取扱数の比較を、京浜港のうち港湾運営会社が担う横浜港と川崎港の合計、名古屋港と四日市港の合計、及び神戸港と大阪港の合計で示して下さい。

横浜港と川崎港で290万TEU、名古屋港と四日市港で284万TEUなど
【企画調整室長】横浜港と川崎港、名古屋港と四日市港及び神%e6%b8%af%e6%b9%be%e5%88%a5%e8%b2%bf%e6%98%93%e9%a1%8d戸港と大阪港の全体コンテナ取扱個数は、平成27年港湾統計で、一部速報値を含みますが、横浜港と川崎港の両港合わせて約290万TEU、名古屋港と四日市港では両港合わせて約284万TEU、神戸港と大阪港では両港合わせて約493万TEUとなり、そのうち、外貿コンテナ取扱個数は、横浜港と川崎港の両港合わせて約259万TEU、名古屋港と四日市港では両港合わせて約264方TEU、神戸港と大阪港では両港合わせて約409万TEUとなっている。%e5%90%84%e6%b8%af%e3%81%ae%e3%82%b3%e3%83%b3%e3%83%86%e3%83%8a%e6%8e%a8%e7%a7%bb

名古屋港と四日市港で一つの港湾運営会社となるメリット等は何か%e5%90%84%e6%b8%af%e3%81%ae%e3%82%b3%e3%83%b3%e3%83%86%e3%83%8a
 【山口議員】さて、伊勢湾はどうか。四日市港との連携、統合を進めるといいますが、名古屋港と四日市港は、地域のものづくり産業を支えるという港湾機能では共通する性格を持っていますが、一方では貨物を奪いあうライバルでもあります。また港湾の規模も港湾運営会社の資本金も桁がちがいます。伊勢湾で一つの会社になれというのなら、名古屋港と四日市港の港格を拠点港湾から戦略港湾にあげることが先ではないのか。港湾の戦略的な位置づけが定まらないまま、会社の統合ばかりすすめても仕方がない。一つの会社になった%e5%90%8d%e5%8f%a4%e5%b1%8b%e3%81%a8%e5%9b%9b%e6%97%a5%e5%b8%82からといって国直轄事業が増えるものでもありません。かえって国からは伊勢湾という単位でみて、名古屋か四日市かどちらかしか事業採択しませんよ、となりはしないでしょうか。そこで、あらためてうかがいます。%e5%90%8d%e5%8f%a4%e5%b1%8b%e3%81%a8%e5%9b%9b%e6%97%a5%e5%b8%82%e3%81%ae%e4%bc%9a%e7%a4%be
 名古屋港と四日市港で一つの運営会社になることで、それぞれの港にどんなメリットがあるのか、デメリットや統合するうえでの課題は何か。規模が全然違いますが、対等平等の合併か、吸収合併となるのか、どうですか。また東京のように一つにならないことも選択肢として認められるのか。その場合にはどんなメリット、デメリットがあるのか。

無利子貸付金や税制優遇等が受けられる。2017年9月までにならなければ指定は失効する
【企画調整室長】名古屋港と四日市港は、背後の「ものづくり産業を支える港湾であり、名古屋港においては、ターミナルの借受者自らが上物施設整備を行うといった先駆的な取組を導入し、効率的なターミナル運営を進めてきた。これまでの民間の取組を維持・発展させ、コンテナターミナルの一体的な運営によるさらなる効率化の実現等を図るため、関係者の意見もふまえ、公共性を確保しつつ、民の取組を最大限に活かしながら、無利子貸付金や税制優遇等の制度メリットを享受できる港湾運営会社制度を導入しました。
 現在、伊勢湾で一つの港湾運営会社の実現に向けて、名古屋港埠頭株式会社と四日市港埠頭株式会社が主体となって検討していますが、重要な施策であり、国との調整など、適切に進めています。名古屋港と四日市港は、港湾の規模など異なる点もあり、実情を勘案しつつ、両港にとって最適なものを目指して検討を進めたい。
 また、名古屋港と四日市港は、両港併せて一つの港湾運営会社を指定することとなっており、平成29年9月までに、一つの港湾運営会社にならなければ特例港湾運営会社の指定は失効する。

国際戦略港湾は事実上の港湾国営化が狙い。国際戦略港湾ではない名古屋港がこの路線に乗る必要はない
【山口議員】名古屋港と四日市港は国際拠点港湾です。港湾運営会社の制度上だけ、国際戦略港湾案なみに湾で一つの会社とされています。そもそも国際戦略港湾と国際拠点港湾と、港の格がちがうのに同じ港湾運営会社制度を機械的に適用することに無理があります。この場合、格の違いとはなにか。全国的・広域的な集荷を国から要請され、国が集中的に資金を投入する戦略港湾か、その地域の産業を支えることが役割の拠点港湾か、という違いです。名古屋港が地域の産業を支えているように、それぞれの地域で産業を発展させ、貨物を増やす努力をすることこそ本来の姿です。そこへ国策で基幹航路維持のためとの名目で、特定港湾に貨物を集めろ、というのが戦略港湾政策です。
国際戦略港湾では湾に一つの港湾運営会社にせよ、というのは、民の力を活かすためというより、特定の港湾(京浜・阪神)に国の出資を強化し、優遇して貨物を集める、事実上の港湾国営化が狙いではありませんか。国際戦略港湾ではない名古屋港が、この路線にあえて乗る必要はないと考えますが、いかがですか。%e6%88%a6%e7%95%a5%e6%b8%af%e6%b9%be%e3%81%ae%e8%a3%9c%e5%8a%a9%e5%88%b6%e5%ba%a6名古屋港と四日市港の港湾運営会社は国の出資の対象外。効率化やサービス向上で国際競争力強化に努める
【企画調整室長】国際戦略港湾である京浜港及び大阪港・神戸港の港湾運営会社に対しては、港湾法上、国の出資が可能だが、名古屋港と四日市港の港湾運営会社は、国の出資の対象となっていない。
 伊勢湾の背後には、「ものづくり産業」が集積しており、四日市港とともにその背後圏産業を物流面で支えるため,引き続き、港湾運営会社制度のメリットを活かし、さらなる効率化やサービス向上に取り組み、国際競争力強化に努めます。

無理やり湾で一つの会社を強制する港湾会社制度や国際戦略港湾政策は再検討を国に求めよ(再質問)
【山口議員】複数の港湾を一体的に運営するというのは国際コンテナ戦略港湾を選定する際の基本だったはずです。東京港が参画せず京浜港では港湾運営会社は湾で一つという基本的な枠組みが崩れています。そして東京港をのぞく京浜港(横浜・川崎)の外貿コンテナ取扱量は、名古屋港と四日市港の合計より少ないことも答弁で確認しました。現時点では、名古屋港こそ国際戦略港湾にふさわしいのでは、と管理者から国に言ってもいいくらいだと思います。
 港湾運営会社制度は、この国際戦略港湾政策と一体で計画されたものです。国が無理やり、湾で一つの会社を強制する港湾会社制度について、国際戦略港湾政策とあわせて再検討するよう国に求めるべきではありませんか。専任副管理者の答弁を求めます。

名古屋港の港湾機能の強化を国に要請する
【専任副管理者】名古屋港は、日本一の産業集積を誇る世界でも屈指の産業圏域を背後に抱え、ものづくり産業を物流面から支えていく必要があり、名古屋港の港湾機能の強化を国に要請してきた。平成28年度には、港湾運営会社制度メリットを活かした、飛島ふ頭地区ふ頭再編改良事業が新規事業として採択され、飛島ふ頭東側のNCBコンテナターミナルR1、R2岸壁の増深・耐震化や上物施設整備を進めていく。引き続き、当地域の産業の国際競争力強化のため、港湾運営会社制度のメリットを活かして、本港の機能強化に取り組んでいく。
使える制度は活用しつつ、使い勝手が悪いなら国にモノを言え(意見)
【山口議員】港湾運営会社制度と国際コンテナ戦略港湾について、なかなか国の政策や制度についてはモノを言いにくいようですね。でも「ものづくり産業を物流面から支えていく名古屋港の港湾機能の強化を国に要請してきた」との答弁でしたが、それが基本です。産業の規模や業種はちがっても地域の産業を支える各地の港湾を、それぞれに見合った形で支援するのが国の役割です。自ら作った戦略港湾や運営会社の枠組みに縛られていては、情勢の変化に柔軟に対応できなくなりかねない。使える制度は活用しつつ、使い勝手が悪いようなら国にしっかりモノを言うという姿勢で、名古屋港の運営に当たっていただくよう、要望しておきます。

キーワード: