名港議会 山口清明議員の一般質問③災害対策(2016年11月10日)
災害対策について
山口清明 議員
<震災がれきへの対応>
災害がれきの考え方と今後の取組及び名古屋港の役割はどうか
【山口議員】名古屋市は今年10月に災害廃棄物処理計画を公表し、南海トラフ巨大地震の発生に伴う災害ガレキの発生量を推計しています。それによると、最大クラスの地震で名古屋市では790万トンの災害ガレキの発生を予測しています。港区が227万トンで市内最多、ついで中川区149万トン、南区124万トンと続きます。またこれら3区に熱田区と緑区を加えた5区では津波堆積物144万トンの発生が想定されており、津波の影響が大きいことがわかります。
さらに、ガレキ処理のための仮置場が250ha必要となり、一次仮置場100ha(小学校校庭0.3ha×333カ所)、仮設焼却炉を含む二次仮置場150ha(ナゴヤドーム6個分30haの仮置場×5カ所)が必要としていますが、市有地ではまったく足りず、仮置場を確保することが大きな課題としています。
ガレキの焼却や最終処分も課題です。名古屋市の焼却炉の3年間の処理能力の2倍をこえる焼却量となり、仮設焼却炉が必要としています。焼却処理後の最終処分量は63万3千㌧と見込まれ、11万8000㌧の処分場が不足し、広域処理が必要になると推計しています。
長々と紹介しましたが、災害ガレキの問題は名古屋港管理組合にとっても他人ごとではなく、防災の一環として考えておく必要があります。少なくとも三つの角度からの検討が必要です。
第一に、津波堆積物の発生が予測されていますが、臨港地区での災害ガレキについても発生量の予測を立て処理計画をもつ必要があるのではないか、また発生そのものを抑制する手立てをどうするのか、考える必要があります。
第二に、仮置場の候補地としても臨海地区への期待も大きい。港区と南区だけで351万トンの災害ガレキが発生し、しかも港区と南区の広範な地域が長期湛水域になるなかで、住宅地に比べ比較的地盤が高いとされる臨海地区は、災害救援の拠点としてだけでなく、ガレキの仮置場としても注目されます。名古屋市はじめ名古屋港所在市村に対して仮置場としてどれだけ土地を提供できるか、期待されますが応えることができるかが問われます。
第三に、ガレキの処理です。東日本大震災の時には、震災ガレキの南五区での受け入れと焼却炉建設が問題になりました。南海トラフ巨大地震で発生するガレキの処分場、仮設焼却炉も備えた二次仮置場としても当てにされます。また最終処分場として、埋立処理を行う場所としても想定されます。横浜港の山下公園は関東大震災のガレキを埋め立てて造成されたのは有名な話です。使われていない貯木場などがその候補地となるのではないでしょうか。
災害ガレキの処理計画が各自治体で作成中です。名古屋港管理組合としてどのように取り組むのか。名古屋港での発生量の予測、仮置場及び最終処分場としての期待、などいくつか提起しましたが、災害ガレキについての考え方と今後の取り組み、名古屋港に期待される役割への認識について、答弁を求めます。
国や自治体、事業者等と連携し、適正な処理に努め、流入がれきは揚収、仮置き等の必要な協力を検討する
【危機管理監】臨港地区内の公共施設や事業所等から排出される災害がれきは、事業活動に伴って生じるものではないが、その処理は事業者自ら行うことを基本とし、発生量が著しく多量であることを踏まえ、国や所在市村、関係事業者等と連携を図り、適正な処理に努めていきます。
一方、南海トラフ地震による広域的大災害での発生量の推計は極めて困難だが、多くの災害がれきが、河川から港湾区域内へ流入することが想定される。背後地域へ緊急物資を円滑に輸送するため、また、名古屋港の港湾機能を早期に回復させるため、国、関係団体等との連携・協力のもとに港湾区域内に流入した災害がれきを揚収し、仮置き等必要な処理を行う必要がある。所在市村から災害がれきの仮置場や処分場の確保など臨海部への協力要請があった場会は、被災状況に応じて、緊急物資や災害応急対策活動に必要な資感材を受入れるための用地など、他の利用用途との調整も踏まえ、必要な協力について検討します。
<地盤沈降及び背後地の浸水被害への対応>
南海トラフ巨大地震による地盤沈降の想定と対策及び背後地が長期湛水する予測をどうみるか
【山口議員】またこの計画書には、名古屋市の地域特性として、南海トラフの巨大地震では地殻変動により地盤が沈下し、ポンプ所の被災とあわせて、浸水した海水を排水できず、長期湛水域の形成も予測され、清掃工場や環境事業所が一時的に機能できないことも想定する必要がある、としています。このことは災害時の名古屋港の役割を考えるうえで重要です。
たとえば耐震強化岸壁の整備は災害支援物資の陸揚げなどにもちろん重要ですが、長期湛水化によって背後地との交通が遮断されたらどうするのか、など様々な状態を想定した対応が求められます。
産業復興として、震災後も自動車やコンテナの積み出しが速やかに再開できるように、という観点が重視されがちですが、背後が浸水した状態で自動車の輸出が可能か、災害発生時に何を優先すべきか、よく考える必要があります。
そこでうかがいます。南海トラフ巨大地震が発生した場合の名古屋港における地盤沈降についての想定と対策、また名古屋港の背後地が長期湛水域になる予測についての認識、そして背後地が浸水状態にある時に名古屋港が果たすべき役割は何か。
標高が低い地域での津波による浸水が顕著な背後地域で、防潮壁の液状化対策や堀川口防潮水門の耐震補強などを進める。
【危機管理監】愛知県が平成26年3月に公表した「愛知県東海地震・東南海地震・南海地震等被害予測調査報告書」によれば、名古屋港周辺の地殻変動による沈降量は、概ね20cmから60cmとされ、津波高は地震による地殻変動の沈降量を加えた値としています。また、名古屋市が平成26年3月に公表した「東海・東南海・南海三連動地震等の被害想定及び防災・減災対策推進のための調査検討報告書」も、津波高は地震による地殻変動の沈降量を加えた値としています。
名古屋港の背後地域には、海抜ゼロメートル地帯が広がっており、同報告書も、標高が低い地域での津波による浸水が顕著な結果となっており、津波が収まった後も、潮汐による浸水が継続し、長期にわたって湛水することが予想されます。本組合は、海岸管理者として背後地域を津波による浸水から守るため、愛知県及び名古屋市が公表した津波高を踏まえ、防潮壁の液状化対策や堀川口防潮水門の耐震補強などを進めています。
南海トラフ地震による広域的な大災害が発生した場合、本組合は、災害対策基本法に基づく指定地方公共機関として、港湾施設等の応急復旧活動や緊急物資等の輸送機能の確保、航路啓開の実施など、求められる役割を果たすとともに、背後地域の長期湛水の解消に向け、国や愛知県、所在市村の要請に応じ、堤防の仮締切りに必要な重機・資機材や排水作業に必要となる排水ポンプ車などの災害対策車両の海上輸送に協力するなど、地域の復旧・復興に取り組んでいきます。
陸上発生分と水上発生分で想定外の大量のがれきが発生する問題点を共有し、必要な対策を(要望)
【山口議員】私は、名古屋市でも沿岸部を中心に大量の災害ガレキの発生が予測されると紹介しましたが、答弁では、そればかりでなく、名古屋港でも大量のガレキが河川からの流入分もふくめて発生する見込み、とのことでした。
陸上発生分と水上発生分をあわせたトータルのガレキ発生量はどれほどになるのか。名古屋港では市の想定以外にも大量のがれきが発生する、と名古屋市は把握しているのでしょうか。名古屋港からもしっかり情報を発信し、トータルのガレキ発生量の予測を県や市と共有し、関係自治体間の連携を強めて処理計画なり必要な対策を立てていただくよう要望します。
キーワード:環境と防災、まちづくり、山口清明