柴田民雄議員の個人質問②都市計画について(3月9日)
高層マンション建設に係る都市計画の用途地域指定について
柴田民雄議員
都市計画にともない近隣商業地域(絶対高45m)に指定されて問題化
【柴田議員】つづいて、高層マンション建設に係る都市計画の用途地域指定について住宅都市局長に伺います。
瑞穂区白龍町では、15階建45mの高層マンション建設に対して激しい反対運動が起こっています。
そもそも住宅建設などは、地域の住民との関係をなるべく良好に保ちながら行い、その建築工事中も完成後も、入居者も地域住民もともに健全で快適な生活環境を持続できるようにすることが大切であり、それを破壊するような行為を未然に防ぐことは、本市の都市計画の目的でもあるはずです。
この紛争現場を地図で表したパネルをご覧ください。この白龍町の紛争現場は、髙田町線の沿線上に位置し、周辺は住宅地域、高度規制は15m、20m、31mのエリアに囲まれています。
現場を見に行きましたが、周辺には高くてせいぜい6階建てのマンションがある程度。ほとんどは2階建て程度の建物ばかりです。このような地域に、突然15階建45mの高層マンションが建設されることになれば、住民が驚き反対するのは当然です。このような地域には45mのビルは「建てられない」と考えるのが普通の感覚ではないでしょうか。
ではなぜこの建築が行えることになってしまったのか。それは、この髙田町線の道路端から20mが絶対高45m高度地区、すなわち、北側の隣地の建物の有無に関係なく45mまでの建物を建てることができる近隣商業地域に指定されているからです。
住宅都市局長に伺います。この指定は、戦後すぐに策定された都市計画で、髙田町線が、片側2車線両側4車線の「幹線道路」として計画され、その幹線道路の周囲ということで、2008年の建物の高さのルール整理が行われたとき、絶対高45m高度地区の近隣商業地域の位置付けが行われたものと思われますが、間違い無いですか。確認いたします。都市計画(1946年)→都市計画法制定により近隣商業地域指定(1972年)→45mの高度地域指定(2008年)(局長)
【住宅都市局長】高田町線は、かつては千種街道と呼ばれ、地域の主要な交通路となっており、1946年に、幅員30m、片側2車線の幹線街路として都市計画決定された。用途地域は、都市計画法が制定された1972年当時、道路沿線に店舗等が立地していた状況を勘案し、近隣商業地域に指定された。その際には高度地区の指定はありませんでした。2008年に全市的な高度地区の見直しの中で、近隣商業地域で容積率300%の建物が建築できる絶対高45mの高度地区の指定を行った。
道路計画の終了時(2009年)に、近隣商業地域指定(絶対高45m)も解除すべきだった
【柴田議員】この道路計画は、2009年3月、まだ一方通行の細い生活道路の状態がほとんどの、田光町2以北、八熊通りまでの部分は、片側1車線の道路として整備する方針に変更され、そして、すでに片側1車線の道路として整備済みの田光町2以南の部分は、そのまま片側1車線の道路で整備完了とすることが、都市計画の変更で決定されました。そして、この整備方針が決定されても、絶対高45m高度地区の近隣商業地域という指定が外されないまま、都市計画の建築規制だけ解除になったのです。
2009年の道路計画の終了時点で、この片側1車線の道路幹線道路としての位置づけは解除されなかったのですか?絶対高45m高度地区の近隣商業地域指定を「外さない」という措置を取ったのはなぜでしょうか。答弁を求めます。
近隣商業地域の指定は継続する(局長)
【住宅都市局長】都市計画道路のうち「幹線街路」は、特に高い走行機能と交通処理機能を有する「主要幹線街路」、都市の骨格を形成する「都市幹線街路」、それらを補完する「補助幹線街路」の3つに分類され、いずれも、都市計画上の区分は「幹線街路」として決定しています。その配置計画は、概ね1km四方を標準に「主要幹線街路」や「都市幹線街路」を配置し、さらに、これらに囲まれた区域内に「補助幹線街路」を配置し、良好な市街地環境の形成や円滑な交通処理等を図ることとしている。
高田町腺は、名古屋環状線と東郊線という6車線の道路に挟まれた区域内の「補助幹線街路」として必要であり、交通円滑化や都市防災機能を有する道路として、2009年に、車線数を4車線から2車線に、幅員を30mから現況幅員の14.54mに変更しています。
「幹線街路」としての位置づけは変わらなかったこと、土地利用状況に大きな変化がみられなかったこと、高さ及び容積率を下げた場合には既存不適格となる建物が発生するため、「用途地域指定基準」等に従って、絶対高45m高度地区の近隣商業地域の指定を継続しています。
地域住民の意向にそって、高度地区の指定を変更すべき
【柴田議員】高田町線の昭和区部分は、2015年、廃止が決定されました。
髙田町線の昭和区部分は、もともと住宅を立ち退かせなければならない住宅地域でしたから、計画廃止後も住宅地域になっています。
一方、高度地区区域図を見ると、高田町線の、昭和区広見町3丁目から、南に下って南区松池町3丁目19の笠寺病院前の信号交差点まで、およそ5kmに渡る道路沿線が、すべて絶対高45m高度地区の近隣商業地域に指定されたままになっています。
地域の住民の皆さんがそれを望んでいるのであればともかく、この指定を今後も残しておくことは、閑静な住宅街に45mの高層ビルが建つ紛争の火種を5kmに渡る区間に残し続けることになりませんか。
住宅都市局長に伺います。この高田町線5km区間について、地域住民の意向を確認し、残してほしいという希望がないなら、絶対高45m高度地区の指定を周囲に合わせて31mなどに変更すべきではありませんか。絶対高45mを残しておく理由は何かあるのですか。「地区計画」や「建築協定」で対応する(局長)
【住宅都市局長】幹線道路の位置づけや土地利用の状況から、指定の位置づけは変わらないため、高度地区等の変更の必要性はない。仮に地域から変更の希望がある場合には、不適格となる建築物等に留意しながら、地元住民等の合意形成に基づき、高さ制限を加える「地区計画」や「建築協定」の手法を活用することも考えられる。
紛争を未然に防がなかった、当局の不作為(再質問)
【柴田議員】名古屋市の資料によれば、「絶対高45m高度地区」の指定区域は「住宅と店舗や工場などが混在する地域の幹線道路沿いの地域など」とされています。北側に斜線規制のある「45m高度地区」であったとしても「一般住宅地の幹線道路沿いの地域など」とされています。いずれも「幹線道路」に沿っていることが条件であり、もし高田町線が幹線道路から格下げされたのであれば、絶対高45m高度地区の指定をかぶせる合理性はありません。
ところが、高田町線は片側一車線だが、補助幹線街路という「幹線街路」であると、さらに、商業施設等の立地を誘導するために近隣商業地域に指定したと、それで45mの高度地区になるという説明でした。
髙田町線は、東は瑞穂通に、西は国道41号(空港線)・南区にいたっては国道1号という大幹線道路に挟まれており、髙田町線を「幹線道路」に位置付ける必要性はないと思えます。とりわけ、今回紛争になっている白龍町の周囲は、北に牛巻から瑞穂運動場へ抜ける「山手グリーンロード」が、南に堀田から新瑞橋へ抜ける「妙音通」に囲まれています。このように主要幹線道路に囲まれた地域になっておりますから、「幹線道路」である必要性も薄い。さらに、冒頭指摘したように、周囲は15m、20m、31mの高度地区に囲まれており、45mの高度地区に指定する合理性はないように思われます。
高田町線の片側2車線幅員30mの道路計画が無くなった、つまり現状の片側1車線の幅員14.54mのままで整備済みと確定した時に、住民の皆さんは、これでこの道路は住宅街のなかの商店が点在する生活道路になったと感じたと思います。ところがその生活感覚とは違って、「幹線道路」としての位置づけは外されていなかった。絶対高45m高度地区が指定されたままになっていた。用途地域指定を、住民の感覚と食い違いがあることが明らかであるにもかかわらず、漫然と残してしまったこの不作為が、突然の45mの高層マンションの建築を許し、今回のこのような悲劇的な紛争を引き起こした原因となっているのではありませんか。このような紛争を未然に防ぐことが、都市計画というものの役割なのではありませんか。この不作為について当局の責任は重大であると考えますが、見解を求めます。
パブリックコメント、説明会などをおこなった(局長局)
【住宅都市局】2009年に現況幅員への都市計画変更を行っているが、幹線街路としての位置付けは変えていません。2008年の高度地区の指定にあたっては、パブリックコメント、説明会、縦覧手続きを行うなど、広く意見を聞く機会を設けたが、高度地区等についての意見はなく、最終的には都市計画審議会の議を経て決定した。都市計画の決定にあたっては、現況を調査し法令及び本市の基準に従って判断している。
都市計画の見直しや、地区計画・建築協定の広報を(意見)
【柴田議員】住宅都市局長からご答弁をいただきました。
結局「幹線道路」沿いで商業施設を誘導する地域は、条件さえ合えば45mの高層マンションがたてられてしまってもしかたないという答弁でした。
私が聞いているのはそんなルールの説明ではないんです。ルールだから仕方ないというんだったら、そもそも、主要幹線街路も都市幹線街路も補助幹線街路もみんな同じ「幹線街路」だから自動的に45mになってしまうなどというルールそのものが本当に妥当なのかという問題も指摘しなければなりません。
また、商業施設を誘導するなと言っているのではないんです。高さ制限が絶対高45mというのが住民の感覚とずれているのではないかという問題を提起しているんです。道路の両側が、高さ15m、20m、31mの高さ規制の住居地域に囲まれていて、2階建ての木造家屋がほとんどで、ところどころ6階建てのマンションがある程度という地域に、商業施設を誘導するからといってどうして15階建て45mのビルの建築をさせる必要があるのか。うどん屋さんやドラッグストアなど道路沿いに商店が点在している状況なのは事実ですし、街の賑わいを作っていくことはもちろん大いに進めるべきです。しかし、住宅地の中の商店街を振興するために45mのビルが必要なのですか。むしろ高さを制限して快適な居住環境を保った中で、いかにして周辺の住民の皆さんの生活と文化に深く結びついた豊かな商業施設を誘導するか、そこに知恵を絞ることが街づくりなのではないですか。
そもそも、「高田町線は引き続き幹線道路ですよ」と、「近隣商業地域で幹線道路に面したところは、絶対高45mの高度地区になってますよ」と、こういうことを地域住民の皆さんに十分周知したのか、あるいは、紛争防止に有効な建築協定の案内を十分行ったのか。そこにも不作為は無かったのかが問われます。
実際この件で、都市計画審議会の審議の中で、特にこの件で住民の皆さんへの絶対高など内容まで積極的に再説明をした形跡は無かったということが分かっています。
そのような対応を取っておいて、ルールだから仕方ないなどという無責任な態度は許されません。
この白龍町の紛争については、住民の立場に立って、マンション業者側に譲歩を求める仲裁を行うなど、何らかのコミットを行うことを強く求めます。
そして、全市的にも、このような一見幹線道路とは見えない片側1車線の道路が実は「幹線道路」と位置付けられていて、しかも近隣商業地域に指定されていて絶対高45mの高度地域に自動的になっているという道路が、ほかにもあるという答弁でした。いわば「隠れ幹線街路問題」とでもいうべきかもしれません。
そのような地域で、この白龍町のような悲劇的な紛争を二度と起こさせない決意で、都市計画のルール変更も含めた見直しや、地区計画あるいは建築協定の広報啓発を特に重点的に行うなど、しっかりとした施策を推進していただきたいと強く求めて、私の質問を終わります。
キーワード:環境と防災、まちづくり、柴田たみお