名港議会 山口清明議員の一般質問②伊勢湾の港湾運営会社(2017年3月27日)
伊勢湾における港湾運営会社について
新会社と現行会社の併存、新会社の業務内容、9月11日の期限の意味はなにか
【山口議員】伊勢湾で一つの港湾運営会社の指定に向けた新会社の設立に向けた動きについて質問します。
期限とされる今年9月までに、三千万円の出資で新会社を設立するということですが、両港それぞれの特例港湾運営会社は、特例ではなくなるのかもしれませんが会社として存続するようなお話のようです。まず三つうかがいます。
第一に、なぜ二つの会社の合併ではないのか、です。
伊勢湾で一つの港湾運営会社と言われてきたと思うのですが、伊勢湾には三つの会社が併存することになるのですか。二社が合併して湾で一つの会社にするのではなかったのですか。
第二に、新会社は何をする会社か、です。
それぞれの港湾運営会社を残したままで、三つ目のこの会社はいったい何をする会社ですか。そして、本社はどこに置くのか、どんな人が社長になるのか、お答えください。
特例港湾運営会社には業界の高い地位の方を社長に招きましたが、もっと偉い人を社長に据えるのですか。
港湾運営の効率化と言いながら、会社が増えれば、どんどん複雑になるのではなりませんか。
第三に、9月11日の期限とはなにか、です。
港湾法では9月11日が伊勢湾で一つの港湾運営会社となる期限と定められていますが、まず、この期限はいったい何のためにあるのですか。
この日をすぎると、どの会社の何ができなくなるのですか。たとえば現在の特例港湾運営会社への国からの優遇措置が受けられなくなるのでしょうか。この日を期限とされる港湾は他にもあるのですか。
9月11日で現行会社は制度のメリットを失うため無利子貸し付け等の機能を分割・移動して新しい運営会社で活用する
【企画調整室長】港湾法に基づき、平成29年9月11日をもって、現在の特例港湾運営会社はその地位を失うため、港湾運営会社制度を継続していくためには、新会社は、期限までに港湾運営会社の指定を受ける必要がある。
そのため、新会社は、港湾運営会社として指定されるために必要な機能を名古屋港埠頭株式会社から吸収分割により移行させる。具体的には名古屋港埠頭株式会社が特例港湾運営会社として行っていた、国や港湾管理者が所有する岸壁、荷さばき地、荷役機械等の借受け業務や、8割の無利子貸付金を活用した新たな施設の整備業務等を引き継いで行く。
名古屋港埠頭株式会社は、港湾運営会社制度のメリットを受けられなくなるが、京浜港や阪神港と同様に、既存施設の管理などのため、存続させることを想定している。
本年9月11日の期限は名古屋港と四日市港のみです。四日市港埠頭株式会社から新会社への機能の移行や同社の扱いは、現在、検討中と聞き、新会社の本社の位置及び社長人事は、現在、調整中です。
「伊勢湾で一つの港湾運営会社」の指定に向けた新会社の設立伊勢湾で一つの港湾運営会社による一体的なコンテナターミナル運営の実現に向けて、両港の特例港湾運営会社(名古屋港埠頭株式会社・四日市港埠頭株式会社)及び両港の港湾管理者(名古屋港管理組合・四日市港管理組合)による協議を進め、港湾運営会社の指定に向けた新会社の設立に取り組んでいる。1 新会社の概要(設立時)資本金:3,000万円名古屋港管理組合 1,950万円(65%)四日市港管理組合1,050万円(35%)設立時期 : 2017年5月頃※設立後、民間からの出資の受入れと、特例港湾運営会社の機能移行(名古屋港埠頭株式会社を吸収分割)などを想定2 スケジュール(予定)・2017年3月定例会に予算提出・5月頃新会社の設立・6月頃国土父通大臣へ港湾運営会社の指定申請(9月11日が伊勢湾で一つの港湾運営会社となる期限) |
京浜港、阪神港の港湾運営会社の概要と伊勢湾の新会社の特色、新会社における今後の民間及び国からの出資はどうなるか
【山口議員】東西の国際コンテナ戦略港湾に指定された港湾では、先行して湾で一つの港湾運営会社が設立されています。湾で一つの、といいましたが東京湾の港湾運営会社は我が道を行くが国は容認していることは、前の議会で紹介した通りです。そこでうかがいます。
先行して湾で一つの会社を設立した京浜、阪神の戦略港湾の港湾運営会社の概要を教えてください。その二つの会社との比較で、伊勢湾につくろうとする会社の特色はなにか、あわせてお答えください。
新会社の資本金は3000万円、名古屋港管理組合は1950万円(65%)、四日市港管理組合が1050万円(35%)とされています。設立後、民間からの出資を受け入れるとのことですが、公民の出資比率はどうするのですか。
ちなみに現在、名古屋港の特例港湾運営会社の民間出資は出資金額の0.45%です。民間会社とよべるのか、と以前にも質問したことを思い出しますが、新しい会社ではどうでしょうか。
また東西の港湾では導入された国からの出資はないのですか。そして筆頭株主の地位はずっと名古屋港管理組合が担うのですか。答えてください。
京浜港は国50%、横浜市45%、川崎市4.5%、民間0.5%。阪神港は国34.2%、大阪市と神戸市各30.8%、民間4.1%。伊勢湾は、国の出資ゼロ、地元の出資が基本(室長)
【企画調整室長】京浜港の港湾運営会社は、横浜港と川崎港のコンテナターミナルを一体的に運営する会社として、資本金は5億1000万円、株主構成は、国が50%、横浜市が45%、川崎市が4.5%、民間出資が0.5%となっています。阪神港の港湾運営会社は、大阪港と神戸港のコンテナターミナルを一体的に運営する会社として、資本金は7億3000万円、株主構成は、国が34.2%、大阪市と神戸市が同じ30.8%、民間出資が4.1%となっています。
港湾法により、国からの出資は京浜港と阪神港の港湾運営会社のみとなっており、伊勢湾の新会社の特色としては、新会社に対する国からの出資がなく、地元の出資を基本とした会社であることが挙げられる。今後、新会社は民間からの出資の受入れを想定し、詳細は、調整中ですが、本組合は民間出資後も、新会社の筆頭株主になる。
二つの組合(自治体)の外郭団体への関与ができるのか
【山口議員】新会社ができるということは名古屋港管理組合にとってはもう一つ外郭団体が増えることになります。二つの組合(自治体)の外郭団体ということになると、指導・監督はもちろん、自治体間の利害関係の調整や議会や行政からのコントロールが難しくなりませんか。
京浜港や阪神港も参考に、四日市港管理組合と連携して適切に関与する(室長)
【企画調整室長】港湾利用者に対する更なるサービス向上に取り組んでいく必要があり、新会社に対しては、先行して取り組んでいる京浜港や阪神港の状況も参考にしながら、四日市港管理組合と連携し、港湾管理者として適切に関与していく。
国際コンテナ戦略港湾の政策や捲湾法における名古屋港の位置付けが変わるのか
【山口議員】最後に、湾で一つの会社をつくると、国の国際コンテナ戦略港湾の政策上、また港湾法における名古屋港の位置づけは何か変わるのでしょうか。
位置づけは変わらない(室長)
【企画調整室長】港湾法により、港湾運営会社を国が指定する場合、京浜港で一つ、大阪港と神戸港では、両港併せて一つ、名古屋港と四日市港も、両港併せて一つの会社とすることとなっており、伊勢湾で一つの港湾運営会社の実現により国際コンテナ戦略港湾の政策上や港湾法における名古屋港の位置付けが変わるものではありません。
港湾運営会社制度を活用し、当地域の産業の国際競争力強化のため、引き続き、取り組んでいきます。
複数の自治体の共同出資でつくられる港湾運営会社をどう民主的にコントロールしていくのか(再質問)
【山口議員】伊勢湾における港湾運営会社について、「港湾管理者として適切に関与してまいります」との答弁がありましたが、適切な関与とは具体的にどういうことか、これは地方自治の問題としても重要だと思いますので、管理者に再度うかがいたい。
自治体が区域をまたいだ規模で別組織をつくり仕事をすることはよくあります。一部事務組合、広域連合、どちらも議会を作り、住民や自治体の意思を反映させる仕組みが整えられています。
京浜港や阪神港の状況を参考にして、とあるがどちらも国が筆頭株主で、自治体間の利害関係の調整ができるように見えます。
伊勢湾ではどうか。民間会社のはずだが、現状では民間の出資が多くは望めない。自治体の外郭団体としての性格が強いと思われます。公的な性格が強い株式会社です。出資に応じた発言権がすべてを決める株式会社の論理だけで運営するわけにはいかないのではないでしょうか。
名古屋港と四日市港と、二つの管理組合を構成する四つの自治体の意思をどう民主的に反映させるか、新たな課題だと考えます。
一方で、外郭団体の整理や合理化も自治体の課題とされてきました。民の力で効率的なターミナル運営を、という要請もあるでしょう。湾で一つの港湾運営会社の発足は、自治体の港湾運営にとって新たな課題をつきつけるものです。
管理者には、港湾運営への見識とリーダーシップ、そして調整能力がいままで以上に問われる。
そこでうかがいます。事実上、複数の自治体の共同出資でつくられる伊勢湾で一つの港湾運営会社について、効率性を維持し、各地域の意向を踏まえつつ、どう民主的にコントロールしていくのか。
県と市の調整にもたいへんな苦労をされている管理者に、ぜひ総括的に答えていただきたい。
伊勢湾の「ものづくり産業」を支援するという共通認識のもと、名古屋港と四日市港の実情を踏まえた港湾運営会社の運営を行う(管理者)
【管理者】港湾運営会社制度により、これまでの取組を、引き続き、維持・発展させると共に、伊勢湾への集荷拡大及び更なる利用者のサービス向上に取り組むことで、それらの相乗効果が背後圏産業の国際競争力強化につながるものと考えています。
引き続き、伊勢湾の「ものづくり産業」を支援するという共通認識のもと、名古屋港と四日市港の実情を踏まえた港湾運営会社の運営を行いながら、当地域の産業の発展につなげていきます。
なお、県としての調整に大変苦労されている管理者へと、 こういう質問をいただきましたが、別に全く苦労していると思っておりません。できるものはできる、できないものはできないということだけでございます。
複数の自治体が連携を図る仕組みが制度として盛り込まれていないなど未解決な課題が多い(意見)
【山口議員】管理者からは、ものづくり産業を支援するという共通認識のもとで、二つの管理組合がそれぞれの港湾管理者として、連携を図りながら、取り組んでいく、との答弁でした。そのとおりです。
問題は、複数の自治体が連携を図る仕組みが、この新会社の運営には制度として盛り込まれていないことです。
仕組み上、株式会社ですから、出資比率によって物事が決まっていく。それぞれの管理者の認識がくいちがう場面も出てくるでしょう。その場合にどう調整していくか、複数の自治体が一つの会社をどう民主的にコントロールしていくか、この点がまだ解決されていません。
だから東京のように湾で一つの会社には加わらない、といった選択も起こるのではないか。
まだまだ解決すべき課題も少なくない。現段階では、諸手を挙げて伊勢湾で一つの新会社の設立を歓迎するわけにはいかない、と申し上げ、質問を終わります。
(3月14日中部経済新聞)
キーワード:大型開発・ムダ遣い見直し、山口清明