名港議会 山口清明議員の一般質問①伊勢湾の港湾運営会社(2017年6月8日)
伊勢港における港湾運営会社と名古屋港の課題
山口きよあき議員
国の制度にあわせて仕方なくつくった会社にしかみえない
【山口議員】名古屋港は港湾法上、「国際戦略港湾」としては国から認定されず、国際拠点港湾の一つとして、位置づけられています。国の位置づけがどうであれ名古屋港は、この地域の「ものづくり産業」を強力に支援する「国際産業戦略港湾」として自らを位置づけ、港湾機能の強化に取り組んでいます。
国は港湾の国際競争力の強化をはかるために、国が集中的に支援する国際コンテナ戦略港湾を京浜港と阪神港の二つに絞り込むとともに、港湾管理者の運営する公共コンテナターミナルを株式会社によって一元的に運営できる港湾運営会社制度を創設しました。
名古屋港は国際戦略港湾ではありませんが、民間の能力の活用により国際コンテナふ頭の運営の効率化を図ることが国際競争力の強化を図るために特に重要な港湾だとして、港湾運営会社に関する規定については、四日市港とともに国際戦略港湾とみなして適用されることとなりました。
現在、名古屋港では名古屋港埠頭株式会社が国からの無利子貸付等の制度メリットを活用できる特例港湾運営会社として国から指定を受け、コンテナターミナルの一体的な運営を推進しているところです。
ところが、国はこの特例港湾運営会社について、港ごとの会社に関しては今年9月11日からは適用しない、国から引き続き無利子貸付等を受けるためには伊勢湾で一つの港湾運営会社をつくり、国からあらためて指定を受ける必要がある、と定めていました。
そこで今年5月に名古屋港管理組合と四日市港管理組合が新たに出資をして「名古屋四日市国際港湾株式会社」が設立されました。伊勢湾で一つの会社を新たに立ち上げなければ、国からの優遇措置が受けられなくなる。それが新会社設立の唯一最大の目的です。
新会社によって、一体的で一層効率的なコンテナターミナル運営が図られるよう取り組んでいく、との説明ですが、いまのところ新しい事業は何もありません。国の制度にあわせて仕方なく会社をつくっただけではないでしょうか。
以下、いくつかうかがいます。
新会社の代表者が2人になるのはなぜか
【山口議員】名古屋港埠頭㈱が特例港湾運営会社になったとき、社長は民間出身の生田氏だと華々しく発表されました。今度の会社はどうか。代表権を持つ会長には元四日市港管理組合副管理者、元三重県副知事の石垣英一氏、同じく社長には名古屋港埠頭株式会社社長、商船三井元会長の生田正治氏が就任します。
それぞれの港の代表が並立するのなら伊勢湾で一つの会社というのは形ばかりではありませんか。なぜ会社の代表は二人なのか。いわゆる会社のトップは誰ですか。
より安定的な経営を図るため、代表者は取締役会長、取締役社長の2名
【企画調整室長】新会社の代表取締役は、より安定的な経営を図るため、取締役会の決議により2名が選任されており、取締役会長、取締役社長となっている。
新会社の民間出資はどこにつのるのか
【山口議員】港湾運営会社制度は、民間の能力の活用により運営の効率化を図ることを意図した制度ですが、新会社は二つの管理組合が出資する資金的には公的、公共的な色彩が強い会社となります。私はこの運営会社は公共財産の管理運営に当たる公共的会社だと考えています。そのなかで、わずかですが民間からも出資を募るということですが、どこから募るのでしょうか。
国際的または全国的に、メガバンクもふくめて出資を募るのですか。それとも名古屋と四日市の管理組合からの出資比率は65対35ですが、民間出資もそれぞれの地元に限定して同じ割合で募るのですか。
民間出資は200万円を予定し、名古屋65%、四日市35%で調整中
【企画調整室長】新会社は、民間出資者による第三者割当増資200万円を予定し、民間出資者及びその出資比率は、港湾管理者の出資比率である名古屋港管理組合65%、四日市港管理組合35%と同様とすることを前提に調整中と聞いている。
新会社の社員は旧会社から移籍するのか。構成はどうなるのか
【山口議員】新会社はどこにできるのかというと名古屋港管理組合があるこの建物の住所です。ではそこで働く社員のみなさんはどういう構成になるのでしょうか。出資比率と同様にそれぞれの管理組合から出向するのですか。いまあるそれぞれの港の特例港湾運営会社の社員が移籍するのですか。二つの会社に加えてさらに新たな社員を増やすのですか。
社員は当面最小限で、指定後に両港で検討する
【企画調整室長】9月11日に向け、6月下旬頃、国土交通大臣への港湾運営会社の指定申請等の手続きを行っていく。当面、これに必要な最小限の人員で業務を行っていく。指定を受けた後は、四日市港とも調整を図りながら、検討を進めていく。
旧会社は残りつつ、新たな会社ができる。何が効率化するのか
【山口議員】二つの特例港湾運営会社は当面存続すると聞いています。社員のこともうかがいましたが、会社が増えるだけです。国からの新たな優遇措置が増えるわけではありません。無利子貸し付けの受け皿会社という役割しかありません。
これではコンテナターミナルの運営に複数の会社が関与することになり、かえって業務が複雑になるのではありませんか。新会社の設立で効率化される業務は何か。名古屋港と四日市港で一体的に取り組まれる業務は何か。具体的に示してください。
コンテナターミナルの経営計画作成や、施設の一元的な借受けや提供、無利子貸付金の活用など港湾利用者サービスの向上を図る
【企画調整室長】名古屋港埠頭株式会社は、既存施設の管理などのため、存続させる。
名古屋四日市国際港湾株式会社は、両港のコンテナターミナルにおける経営計画の作成や、国や港湾管理者等からコンテターミナル施設の一元的な借受け、提供を行うとともに、無利子貸付金を活用したガントリークレーン等の上物施設整備を進めるなど、伊勢湾へのコンテナ貨物の集貨拡大に伴うさらなる港湾利用者サービスの向上を図ることで、伊勢湾背後における「ものづくり産業」の国際競争力の強化につなげていく。
新たな外郭団体に対する議会の関与はどうなるのか
【山口議員】新会社は、民間会社であると同時に、地方自治法にもとづき各自治体が関与しなければならない外郭団体となります。
しかも県を超えた二つの管理組合、設立母体をみると四つの自治体の外郭団体となります。コントロールが難しいのでは、と三月議会で質問しましたが、背後圏の産業を物流面で支えるための課題は共通しているから大丈夫だ、との答弁でした。
しかしそうなら司令塔は一人でいいはず。そんなに単純なものでないから、代表や出資をみると一つになっても二つの会社のような形態になっているのではありませんか。
外郭団体となる新会社の業務について、四日市港に関する事でも名古屋港管理組合議会で調査したり要望したり、必要な時には関係者と意見交換したりできるのですか。新会社の業務にどこまで関与できるのか、お示しください。
法入の経営状況を議会に報告する
【企画調整室長】新会社は、本組合が50%以上の出資をしており、地方自治法の規定により、他の外郭団体と同様に、法人の経営状況について議会に報告する。
トップが誰かも言えない港湾運営会社が、新たにできることはなにか(再質問)
【山口議員】トップは誰かときいても答えてもらえない。ツートップということもあるでしょうが、会社の名称も、代表も、出資も、伊勢湾は一つというよりも名古屋と四日市の二つの会社がしかたなく一つになった、という印象をますます強く持ちました。
それぞれの港の港湾運営会社は既存施設の管理などのために存続するとのことですが、新会社の業務としてあげられた、国や港湾管理者からのコンテナターミナルの一元的な借り受け、提供。無利子貸付金を活用したガントリークレーンなどの上物施設整備、どちらもいまの特例港湾運営会社が行っている機能です。
右から借りて左に貸す会社が一つ増えるだけで、又貸しの又貸しで稼ぐ会社を増やしてどうして合理的効率的な港湾運営になるのか、まったくわかりません。
新会社の業務で唯一、新たに言われたのは、両港のコンテナターミナルにおける経営計画の作成ですが、これもそれぞれの計画をくっつけるだけになるのではありませんか。
例えば、ガントリークレーンを両港まとめて同一規格で発注して整備するなど、伊勢湾で一つの運営会社をつくることによるスケールメリットが発揮できるのか。効率的なターミナル運営のためにそれぞれの貨物の取り扱い港を変更したり集約したりすることはできるのか。
伊勢湾で一つの港湾運営会社として新たに何ができるのか。再度うかがいます。
共同の資材調達や営業活動などが新たに可能になるが具体化は新会社が検討(室長)
【企画調整室長】名古屋四日市国際港湾株式会社が、国土交通大臣に港湾運営会社としての指定を受けた後、両港の特例港湾運営会社の業務を引き継ぐ。主な業務は、コンテナターミナルの運営、整備計画の策定、国・港湾管理者等が所有するコンテナターミナル施設の借受け及び貸付け、無利子貸付金を活用した新たな上物施設の整備、所有、管理等で、これまでそれぞれの港単位で行っていた業務を、一元的に行う。
貨物の取り扱い港を変更することや集約することは想定していないが、新会社が両港に関わることで、共同の資材調達や営業活動などが新たに可能になる。具体的に何を行うかは、港湾運営会社に指定された後に、伊勢湾としての視点から、新会社が経営計画の中で検討していく。
運営会社の業務は基本的にハードの整備。過大な期待は慎み、やれること、やれないことを見極めて、冷静に対応を(意見)
【山口議員】新しい運営会社の業務は基本的にハード整備です。過大な期待は慎み、やれること、やれないことを見極めて、冷静に対応することが必要です。
伊勢湾と名古屋港の課題と解決方向はなにか(再々質問)
【山口議員】近藤副管理者にうかがいます。
伊勢湾で一つとなってコンテナターミナルの運営を、といいますが、現実には、名古屋港と四日市港は貨物の取り扱いシェアを奪い合うライバル関係ではないですか。 競争よりも共同、港湾機能の住み分けは簡単ではありません。
港湾運営に民の力を、と言われるが、公と民がうまくミックスされてるのか。民の力を活かすための公の課題は何か。特例港湾運営会社の副社長として経営にもたずさわってきたわけですがいかがでしたか。
上屋の改修一つ、公と民との協議もなかなか進まない。ガーデンふ頭や金城ふ頭の開発問題でも、民の力を引き出す公の役割が重要です。港湾運営会社のあり方も一旦立ち止まって考えなおす時ではないでしょうか。
専任の副管理者として、伊勢湾と名古屋港の抱える課題と解決方向についてどうお考えか。そのなかでとくに管理組合として果たす役割は何か、これまでの経験も踏まえて、最後に総括的に答えてください。
「ものづくり産業」を物流で支えるため、利用者に選ばれる港を目指す(専任副管理者)
【専任副管理者】我が国経済を牽引している伊勢湾背後の「ものづくり産業」を物流で支え、国際競争力の強化を図ることは、名古屋港と四日市港に与えられた重要な使命であり、しっかりと取り組む必要がある。
港湾管理者としては、名古屋港と四日市港の背後圈産業の国際競争力強化を図る資務があるという認識のもと、名古屋四日市国際港湾株式会社とともに当地域の発展に貢献し、利用者に選ばれる港を目指す。
キーワード:大型開発・ムダ遣い見直し、山口清明