名港議会 山口清明議員の一般質問②伊勢湾の港湾運営会社(2017年6月8日)

上屋の老朽化や安全対策について
                        山口きよあき議員

築58年の上屋も通常料金で活用
【山口議員】港湾における上屋とは、埠頭で船舶が接岸係留する場所に近いところに設けられ,船と倉庫の間の荷さばきの中継作業が行われる施設、貨物の一時的な保管場所です。運営形態は公営や民営、第三セクターなどさまざまです。
 名古屋港において名古屋港管理組合が運営するのは40棟。港営部が所管し、収支は施設運営事業会計に計上されています。今年度の予算実施計画では上屋40棟で8億9700万円の収益、営業費用は3億円です。
 一見、利益をあげているように見えますが、セグメントごとの営業収益等の報告をみるとこの上屋事業は費用がかさみ7600万円の赤字が見込まれるとなっています。施設の老朽化や耐震化への対応が大きな課題です。
 今年度は上屋の整備費用として3億2500万円が計上され、金城ふ頭にある上屋4棟の耐震改修が予定されています。
 上屋についてはこれまでも委員会審議で取り上げられてきました。耐震化が進まないのはお金がないからか、と思ったら、さにあらず、施設運営事業会計では41億円の現金・預金があります。
 上屋を利用している貨物の代替保管場所の確保などの問題があり、毎年、数棟ずつしか改修できない、との説明でした。しかしそれでは改修が終わるまでにいったい何年かかるのか、耐震改修を急ぐべき、との要望が出されています。
 ところが耐震改修以前の問題として、老朽化した上屋の安全性そのものが問われる深刻な事態が生じています。港湾関係の労働組合からの指摘もあり、先日、稲永ふ頭北地区の上屋を現地調査してきました。(パネル参照)
 二つの上屋の周辺にはロープが張られ、立入りが規制されています。コンクリートの壁に亀裂が入り、コンクリ片が剥がれ落ちてくるので近づくのが危険だというのです。割れたままの窓ガラスもあり、かつてのクレーンの残骸もそのまま。いつ何が落ちてきても不思議でない状態です。出入り口の建付けが歪み、ドアが開閉できない場所がいくつもあり、使える出入り口は限られています。なかには雨が漏るのか、内側からブルーシートを張った扉もありました。
 それでも1959年に建てられたこの上屋は築58年になる現在も使用されており、通常の料金をいただいています。
 耐震診断すらされていない上屋ですが、このままではいつ事故が起きても不思議ではありません。アセットマネージメントは機能しているのか、悠長なことをいっていられない事態です。そこで以下、数点、質問します。

耐震診断が実施されていない状況をどう改善するか
【山口議員】本組合が所有する上屋40棟のうち、いまだに耐震診断すら行われていない上屋はどこに何棟残されているのか。対応が遅れている原因は何か。いつまでに耐震診断を行う計画ですか。

40棟中7棟が耐震あり、13棟は補強予定、未診断13棟
【港営部長】名古屋港には本組合が運営する上屋が40棟あり、そのうち7棟は耐震性を備えており、耐震診断の結果により補強工事を実施する予定の上屋が13棟、利用転換を進める予定の上屋が7棟、耐震診断未実施の上屋が13棟ある。
 耐震診断未実施の13棟のうち、稲永ふ頭の4棟、大手ふ頭の1棟及び作倉地区の3棟の計8棟は、2階又は3階建で民間事業者と区分所有する形態となっているので、耐震診断の実施について、現在、各所有者と調整を図っている。
 残る昭和ふ頭の5棟は、今年度の耐震診断を予定している。

緊急の安全確保が必要な建物はあるのか
【山口議員】指摘した稲永ふ頭の上屋のように、耐震診断以前に緊急の安全確保が必要な建物は他にはありませんか。

稲永ふ頭の2棟はロープ規制で安全確保。他にはない
【港営部長】上屋を始めとする主な建物は、維持管理計画に基づく年に1度の定期点検、建築基準法に基づく3年に1度の法定点検に加え、日常の点検を実施している。
 稲永ふ頭の上屋2棟は、緊急の安全確保のため、上屋周囲の一部にロープを張り、立ち入りを規制している。他に現在使用されている上屋は、日常点検の結果、緊急の安全確保の必要性は確認されていない。

稲永ふ頭の上屋の早急な安全対策を どうするか
【山口議員】稲永ふ頭の上屋については、耐震改修の前に、早急に改修計画を立て、安全対策をとる必要があると考えます。現状についてどう認識しているか。今後どう取り組むのか。お答えいただきたい。

稲永ふ頭は民間事業者と協議中
【港営部長】一部にロープを張り、立ち入りを規制している稲永ふ頭の2棟は、民間事業者と建物を区分所有する形態となっており、本組合のみで修繕計画を立てることができないため、区分所有者と対応について協議中です。

上屋使用料のを見直す気はないか
【山口議員】このような状態で、通常の料金を徴収していて心苦しくはないですか。
 施設運営事業会計には活用可能な41億円の資金があります。企業会計という仕組みを考えても、料金をいただいている利用者の安全確保のために還元するのは企業会計の最低限の仕事です。料金徴収について見直す考えはありませんか。

一部規制の稲永ふ頭の使用料は、利用に支障がないので規定料金を徴収
【港営部長】一部を規制している稲永ふ頭の2棟は、区画単位で利用するもので、現在利用しているところは、利用に支障がないため規定料金をいただいている。

金城ふ頭と稲永ふ頭での耐震対策の 取組の違いはどうしてか
【山口議員】金城ふ頭の上屋については今年度に耐震改修を行う予定ですが、金城の上屋は、稲永の上屋よりも約10年も新しい建物です。なぜ稲永ふ頭の上屋が金城よりも耐震診断、改修が後回しになっているのか。
 コンテナの時代となり、一般貨物を扱う上屋に対する需要は将来減少すると見込んだからですか。稲永ふ頭エリアの将来構想に上屋は必要とされず新たな投資の対象にならない、と考えたからですか。稲永の上屋のうち問題の建物をふくむ4棟は区分所有建築物とのことですがその影響もあるのですか。
 名古屋港の将来構想の中で、上屋の必要性、需要をどのように位置づけているのか。金城と稲永の二つのエリアについて上屋が必要とされる現状と今後の方向性についての見解もうかがいます。
 名古屋港を国際産業戦略港湾として総合的に貨物を扱う港湾として位置づけるのならば、コンテナと自動車、バルクだけでなく上屋を必要とするその他の貨物の荷役現場とそこで働く人たちの安全確保にも力を注いでいただきたい。

金城ふ頭の整備を優先し、現有規模を維持。稲永ふ頭は利用者の意見を聞いて検討
【港営部長】稲永ふ頭の上屋は、 区分所有の形態となっているものもあり、区分所有者との調整が必要となるため、金城ふ頭の上屋の耐震対策を先行して取り組んでいる。
 金城ふ頭では現在、港湾計画に基づき完成自動車取扱機能の集約 ・拠点化に向けたふ頭再編事業が進められており、在来船の岸壁を多数備え、アクセス環境も非常によいことから利用者のニーズが高く、上屋も、当面現有規模を維持していく。
 稲永ふ頭は、市街地に近いという地理的利便性が高いことから、一定の利用者ニーズがあり、利用者の意見を問きながら、適切な施設提供を行っていきたい。

耐震改修の遅れの説明が今までと異なっている。稲永ふ頭の改修目標はないのか(再質問)
【山口議員】稲永ふ頭の上屋について、パネルで示した立ち入り禁止のロープが張られた2階建ての上屋は、民間事業者と区分所有する建物だから、耐震診断も修繕計画もなかなか進まない、との答弁でした。
 いままでの委員会審議では、耐震診断や改修が進まない理由に、区分所有の建物だから、という説明はいっさいなかった。労働組合からの指摘に対しては財政的に苦しいから、という答え方だとも聞きました。
 現状に対する認識を正確に共有することは、事業の基本です。いままでの説明は正確さに欠けていたのではありませんか。
 稲永ふ頭も利便性が高く一定のニーズがある、との認識は大切だ。だから立入り禁止のロープが張られた建物でも利用されている。でもね、利用に支障がないため規定の料金をいただいています。これでいいのですか。
 上屋周囲の一部にロープを張り、立ち入りを規制していると言いますが、建物の一部じゃない、半分以上が立ち入り禁止。もっと広く規制したいが利用者がいるからロープの幅も狭くしてある。
 荷主からは、こんな場所で大事な荷物が扱われるのは信用にかかわる、と地理的には便利だけど使わない、との声も出始めています。
 決算委員会の審議では、施設運営事業会計の保有資金は潤沢にあるのに必要な設備投資がされていないのではないか、との私の質問に、「平成27年度末の保有資金は約40億2200万円であり、主に上屋の耐震補強に投資をしていきたいと考えている」との答弁もいただいている。
 結局、いまの答弁では、対応について、協議中、調整中、というだけだ。でも事態は切迫しています。再度、うかがいます。
 耐震診断、改修の遅れの原因について、これまでの説明とのちがうのはなぜか。これまでの議会答弁は正確さにかけていたのではないか。
 稲永ふ頭の上屋について、区分所有の物件管理の大変さはわかりますが、いつまでに改修するのか。目標とする期限ぐらいは示していただきたい。

利用者調整の中で区分所有者との調整に 時間がかかる。稲永の改修目標は今年度中にたてたい(港営部長)
【港営部長】上屋の耐震対策は、区分所有者との調整に時間を要している。立ち入りを規制している稲永ふ頭の2棟は、緊急性の高い老朽化対策について今年度を目途に協議を行っていく。

安全性が問われる緊急性の高い老朽化対策はすぐにでも着手を(要望)
【山口議員】稲永ふ頭の上屋について、今年度と答えていただいた。将来構想はじっくり検討いただくとしても、安全性が問われる緊急性の高い老朽化対策はすぐにでも着手していただくよう要望しておきます。

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