さいとう愛子議員の個人質問 待機児ゼロへ(2017年6月22日)
公立保育所の民間移管計画を見直し、隠れ待機児童の解消を
さいとう愛子議員
隠れ待機児童をどのようにゼロにしていくのか
【さいとう議員】今年4月1日現在の「保育所等利用状況」の発表があり、保育所等に入れなかった児童が715人となり、昨年より、130人22.2%も増えました。名古屋市では、就学前児童数は、117,083人から116,380人と、703人減ったにもかかわらず、保育所等利用申し込み児童数が1,858人も増えました。国による定義では「待機児童4年連続ゼロ」といっていますが、昨年に比べ、大幅に隠れ待機児童がふえたことになります。
では、国が示した、「待機児童の定義」から除かれる「隠れ待機児童」とは、なにか。「地方単独事業を利用している者、特定の保育園のみを希望している者、求職活動を休止している者、育児休業中の者(市町村の判断)」とされ、本市の「隠れ待機児童」の中では、「特定の保育園のみを希望」している方が、714人。1人を除いて、全員です。
待機児童について、何人かのお母さんに聞きました。
「特定の保育所のみを希望すること」が、「そんなにいけないんでしょうか?」と、あるお母さんはいいます。「兄弟別々の保育所にはいって、両親が1人1人ずつ毎朝送って行っていく。車を買わざるを得なくなり、中古車買って、駐車場借りて、と何のために働いているかわからない。運動会も同じ日になってばらばらに見に行った」と話してくれました。
「特定の園を希望する」ことについて、厚労省は「立地条件が登園するのに無理がない、利用可能な保育所等があるにもかかわらず」、特定園を希望する、その基準は、「通常の交通手段により、自宅から20~30分未満で登園が可能など」といいますが、名古屋市は、「徒歩で約1㎞、自転車で約2㎞、車で約6㎞」と目安で言います。場所によっては、距離の感覚と実際通う道との感覚は、違います。例えば、市役所から栄まで、1.2㎞で平坦な道ですが、私の住んでいる名東区は、坂道が多くて、徒歩も、自転車も、たいへんです。歩いて通うお母さんが、朝の出勤時に、小さい子どもを抱っこするか手を引いて、着替えやおむつ、お昼寝布団など山のような荷物を持っていては、ゆるやかな坂道とはいえ1㎞も歩くことできません。登園したら、着替え服やタオルをセットして、それから、出勤します。距離だけではなく、時間もかかります。「近くの特定園しか通えない」という子どもも、あくまで国の基準で隠れ待機児童となっているだけで、保育の必要があり、本来なら、待機児童とすべきものです。
真の「待機児童」ゼロ、隠れ待機児童をどのようにゼロにしていくのか、その対策をお聞かせください。
一人でも多くの子どもたちが保育所等を利用できるよう、必要な地域における保有所等の整備を進める(局長)
【子ども青少年局長】保育所等は小学校区ごとの利用申込児童数の推計と定員数により対象地域を確定した上で、公募を行い、設置を進めている。今後とも、保育所の拡充に加え、認定こども園や小規模保育事業、公立及び民間保育所等における定員超過入所など、様々な手法により、一人でも多くの子どもたちが保育所等を利用できるよう、必要な地域における保有所等の整備を進める。
2歳児から3歳児への継続的な利用ができるよう、小規模保育事業等を卒園する子どもへの利用対策を
【さいとう議員】保育所にはいれても、まだまだ不安が続きます。小規模保育事業を利用することにした、0歳の乳児持つお母さんは、「子どもが保育所にはいれ、美容師としてまた働き始めることができました。第2希望までしか書かなかったのは、夫が朝早く出るので、子どもの送り迎えは自分がすべてやらなければなりません。絶対、近くでないと毎日通えない。やっと入れたけど、2年後にはまた保活。今度は近くの公立保育所に入れるよう早くから準備しなくては」と話してくれました。こんな思いを持つ保護者は彼女だけではありません。
待機児童対策としての0~2歳児が入れる小規模保育事業がふえれば、その子たちの成長に合わせて、3歳児の枠をふやさねばなりません。やっと保育所にはいれても、2歳児になれば、卒園して、次の預け先を探さねばならず、「心が折れそうになる」という人もいて精神的にもストレスとなっています。安心して働き続けることができないのです。小さい子どもたちにとって、保育士も周りの環境も変わることは非常に負担が大きいのですが、保護者にとっても大きなストレスとなっています。
0~2歳児を受け入れる小規模保育事業等に対しては、2019年度末までに、卒園後の受け皿の役割などを担う連携施設の設定を求めることとなっています。しかし、現在、必ずはいれるという保証がなく、子どもたちや保護者にとっては、次の保育所が見つかるか、毎日不安です。
小規模保育事業の連携施設の設定については、「小規模保育事業者等と教育・保育施設設置者との間で調整し、設定することを基本とする。ただし、その調整が難航し、連携施設の設定が困難である場合、小規模保育事業者等からの求めに応じて、市町村が役割を果たすことが望ましい。」となっています。
3歳児以降も引き続き保育の利用を希望する保護者に対し、“必ず利用できる”というしくみをつくるべきではないでしょうか。
連携保育所の設定を進め、利用調整基準表で優先度を高めており、国定義上の待機児童数は 0だ(局長)
【子ども青少年局長】保育所等利用保留児童には3歳未満児が多いので、本市では2歳児までの子どもを保育する小規模保育事業の整備を進めてきた。
子ども・子育て支援新制度では、平成31年度末までに小規模保育事業等卒園後の受け皿となる保育所等を連携施設として設定することが求められ、現在、保育所等の協力を得ながら設定を進めている。
さらに、小規模保育事業等の卒園児が、保育を継続できるよう、保育所等の利用調整における利用調整基準表の中で、優先度を高めている。
平成29年4月1日現在、3歳児も国定義上の待機児童数は0人でした。引き続き、受け皿となる保育所等への働きかけを行い、保育の継続性の確保に努める。
結果「ゼロ」になるのではなく、入所への親の不安を解消せよ(再質問)
【さいとう議員】国定義上の待機児童は、0人と言われましたが、3歳児は88人が、利用保留児童となっています。お聞きしますと、小規模事業を利用していた方のうち、5人は保育所に入所できなかった。絶対に入ることができるわけでないことが、保護者の不安につながっています。0歳児から子どもを預けて働くお母さんの立場にたつと、本来なら、5歳児まで継続しての保育を望んでいて、子どもが3歳児になり、保育所に預けられなかったら、仕事をあきらめざるをえません。
結果として、小規模保育事業等の2歳児については、ほぼ全員利用できました、というのではなく、やはり、親としては3歳児になって保育所に入所できるかどうかがわからない、それが不安です。そのような、不安を解消させる手立て方策はないのでしょうか。
保育案内人がニーズに即し、きめ細く丁寧な対応をしている(局長)
【子ども青少年局長】小規模保育事業等率園後の受け皿となる連携施設の設定をすすめ、利用調整基準表の中で優先することで対応している。保護者の不安な気持ちが少しでも解消されるよう、各区・支所に配置している保育案内人が、保護者の皆様のニーズに即し、きめ細く丁寧な対応をしている。
当然の対応。お母さんの不安や、必死な気持ちを受け止めて向き合え(意見)
【さいとう議員】優先度を高くすることや、保育案内人のていねいな対応は、当然であり、今でも行われていると思います。0、1、2歳という小さい子どもさんを預けて働き続けるお母さんたちの不安や、必死な気持ちを受け止めて、この問題に向き合っていただきますよう強く要望します。
公立保育所整備計画の見直しで公立園を減らすな
【さいとう議員】名古屋市は、厚労省基準で「待機児童ゼロ」と言っても、保育需要の増加に対応して、たいへん苦労をして保育所をつくっています。昨年度は、49か所1,730人分の保育所等を整備し、今年度は、61か所2,469人分の保育所等の増設を予定しています。
しかし、保育所をつくりながら、保育所利用申し込みが増え続けているのに、一方で、せっかくある公立保育所は、減らし続けているのが現状です。
すでに民間に移管された保育所は16か所、さらに名前があがっている保育所は16か所。2009年(H21年)には、公立保育所は123だったのに、今では、108か所に減ってしまい、民間保育所は、327か所と大幅にふえています。
名古屋では、公立と民間、ともに子どもたちの成長を保障するために協力し、保育の「質」が保てるようがんばってきました。公立が減ったら民間の負担が大きくなるのではないですか。今、子どもの6人に1人が貧困状態にあるといわれ、ますます保育所の役割が重要となり、これまでそのフォローも公立が中心となって担ってきたと考えますし、民間保育所からも、役割が期待されているところです。保育所利用がふえているのに、もっと減らしていくという計画は今の状況に逆行しているのではないでしょうか。計画自体を見直し、子どもたちの人格形成に大きく影響する幼児期の保育に対し、公立保育所が中心となって保育の責任を持つべきではないでしょうか。
増え続ける保育所利用希望に対して、行政として責任ある保育を実施するためにも、公立保育所整備計画はこのまま進めるのではなく、今、立ち止まって見直すべきではないでしょうか。
財源や人員を確保し、利用児童数の増や多様な保育需要に対応するために行っているので、遅滞なく進める(局長)
【子ども青少年局長】公立保育所の社会福祉法人への移管は、厳しい財政状況にあって、市として一定の財源や人員を確保し、利用児童数の増や多様な保育需要に対応するために行っている。今後も遅滞なく進める必要がある。
保育所利用者が増えている今、公立保育所を減らす計画は見直すべき(意見)
【さいとう議員】公立保育所について、保育所必要とする子どもが増える中、「エリア支援保育所」として機能強化するというなら、公立保育所の数を減らすべきではありません。
また、「公立保育所の社会福祉法人」への移管では、「利用児童数」は増やすことができません。「増」のためというなら、新たに保育所をつくらなければなりません。移管に際して手があがらない、賃貸型への応募が低調という中、公立保育所を減らすことに、市民の同意が得られるとは到底思えません。
保育所利用者が増えている今、公立保育所を減らす計画は見直すべきです。
今後需要がふえると見込まれる学童保育への支援を
【さいとう議員】次に、保育所卒園後の「待機児童」は大丈夫でしょうか。
保育所等を利用する5歳児クラスの子どもたちが、2015年度(H27年度)末は8,083人、2016年度(H28年度)末には8,320人と増え続けています。その子たちが小学校に入ると、放課後子どもを預けられる場所として、今度は学童保育が必要となります。このままでは、新たな待機児童が生まれかねないのではないでしょうか。2017年(H29年)4月1日現在、学童保育には164か所5,573人が登録しています。子育てしながら働き続けたい、また、女性の意識・生き方の選択としても仕事を続けていきたい、もちろん経済的な事情もあるでしょう。
学童保育は、2015年度(H27年度)からは児童1人当たり1.65㎡以上と専用区画の面積の確保が必要となり、今のところ経過措置とされていますが、今でも広さが不足している学童保育が81か所あります。本市独自の制度である学童保育の専用室は、建替えの中で、新基準への対応も行っていくと聞いていますが、今の場所での建替えができるところばかりではありません。子どもがふえて分割しようというときに、新たな場所が見つからない、土地探し、場所探しは学童保育にとって1番苦労するところです。
親が仕事を持って、安心して働き続けられること、子どもたちにとっては、放課後の居場所をつくり、夏休みのキャンプ、球技大会、異年齢のグループ活動など生活の場として、長期の休みにも対応できる居場所を提供するとされる、それが、保護者が子どもたちを学童へ預けている大きな理由です。
そこで、子ども青少年局長にお尋ねします。増えている、保育園卒園者に対応して、学童保育の受け入れ児童数を増やすため、どのように支援をしていくおつもりでしょうか。
トワイライトルームを拡充する。留守家庭児童育成会へは助成する(局長)
【子ども青少年局長】放課後児童クラブ・放課後子供教室の一体型として、平成25年度から、トワイライトスクールを基盤に、より生活に配慮した事業であるトワイライトルームを実施し、段階的にトワイライトスクールからトワイライトルームへの移行を進め、現在42か所で実施している。
地域で自主的に運営している留守家庭児童育成会は、トワイライトルームとは異なるニーズの受け皿であるとし、地域の自主性を尊重するとともに、保護者や子どものニーズに応じた選択肢を確保するため、今後とも、国の基準に合わせた補助を継続、支援し、留守家庭児童専用室の貸与や家賃補助等、本市独自の支援も実施している。
今後ともトワイライトルームを拡充し、留守家庭児童育成会への助成を実施し、放課後施策の充実を図る。
学童保育をもっと拡充できるよう、実態に即した家賃補助の増額や地代補助の創設など、支援の強化を(意見)
【さいとう議員】学童保育について、「トワイライトルームとは異なるニーズの受け皿である」といわれましたが、実態は、学童保育へのニーズの方が圧倒的に多数です。親は、子どもを預けるだけではなく、運営の主体者としてかかわり、子どもにとっても親にとっても、第2の家庭として安心の居場所となります。この学童保育をもっと拡充できるよう、実態に即した家賃補助の増額や地代補助の創設など、支援の強化を求めます。