柴田民雄議員の個人質問 ①核兵器廃絶を(2017年9月15日)
ヒバクシャ国際署名に署名し、核兵器廃絶の世論啓発を
柴田民雄 議員
核兵器禁止譲与悪を無視する姿勢をどう考えるか
【柴田議員】今朝、北朝鮮が通告なしに日本上空を通過するミサイルを発射しました。これは累次の国連安保理決議などに違反する暴挙であり、強く抗議します。また、先般の核実験の強行は、7月7日に、国連で核兵器禁止条約が採択されたことに見られる、世界の核兵器廃絶への流れに逆らうものであります。
さて、国連加盟国193カ国の6割を超える122カ国の賛成で、採択された核兵器禁止条約は、核兵器の使用を禁ずることはもちろん、その開発・実験・製造・取得・保有・貯蔵・移転などに加えて、使用をほのめかすことによる威嚇も含めて全面的に禁止するという、まさに核兵器に「悪の烙印」を押す画期的な条約であります。
この歴史的な条約の採択を後押ししたのは、河村市長も参加している平和首長会議、そして何といっても被爆者の皆さんの運動の力です。
この条約は、核保有国にも門戸を開いており、核保有国と日本などの非核保有国のすべての国々に対して批准を呼びかけています。
被爆者の皆さんが呼びかけ、平和首長会議も賛同・協力するとの総括文書を採択している「ヒバクシャ国際署名」は、条約の採択にも大きな力を発揮しましたが、今後はこの条約に批准する国を増やす運動としてさらに取り組みを広げています。
しかし日本政府は、あろうことか、核兵器禁止条約の策定会議をボイコットし、条約に批准するどころか、無視するという態度を取り続けています。
今年の8月9日長崎市で行われた平和祈念式典で、田上長崎市長は、平和宣言の冒頭からこの条約に触れ、日本政府に対し「唯一の戦争被爆国として、核兵器禁止条約への一日も早い参加を目指し、核の傘に依存する政策の見直しを進めてください。日本の参加を国際社会は待っています。」と、この条約への批准と、あわせて核抑止力論に基づく安全保障政策の見直しを求めました。地方自治体の長として、堂々と政府に意見を言う姿は、実に素晴らしい態度だと感動を覚えました。
そこで河村市長に伺います。まず、河村市長は、この8月7日~10日に長崎で行われた平和首長会議総会に、本市職員を自らの代理として派遣し、この平和祈念式典にも出席させています。核兵器廃絶を求める平和首長会議の一員として、日本政府・安倍政権の、この核兵器禁止条約を無視し続ける姿勢について、どうお考えでしょうか。
アメリカとよう話あうという立場でやるのが国益を守る(市長)
【河村市長】前も言いましたが、京丹後市の市長とご縁がありまして、京丹後市は日本海に突き出たとこですけど一番先っぽにレーダー基地がありまして、北朝鮮の動向をみるレーダー基地があるんですけど、それなんと、アメリカ陸軍ですから。ホテルに泊まりましたけど、アメリカ人がものすごくおりますわ、ホテルの中に。京丹後のですよ。今日の事態でも日本の上空を飛んできますからね、日本は一体何ができるのか。レーダー基地、アメリカがやってますので、よっぽどアメリカとはよう話し合ってことをすすめるよりしょうがない、やってかないかんということですので、この条約につきましても、そういう立場でやるのが日本の国益を守ることに一番なると思います。
今こそヒバクシャ国際署名に署名を
【柴田議員】そして、平和首長会議も呼び掛けているように、河村市長がヒバクシャ国際署名に署名することは、日本政府の態度を変えさせ、核兵器禁止条約に批准させる大きな力になります。今こそ、ヒバクシャ国際署名に署名をされませんか。答弁を求めます。
署名は、よう考えてはみる(市長)
【河村市長】よう考えてはみますが、ほとんど日本で唯一ですが、空襲被害者の皆さんに、戦争の苦しみについて補償している都市でして、そういう精神で僕は考えていきたいと思っております。
「高校生の描く原爆の絵」――市主催で展示会を
【柴田議員】今年の8月20日に、愛知県原水爆被災者の会の皆さんが企画され、金山駅コンコースで行われた「原爆と人間」パネル展を見ました。
そこで今年初めて企画された、「高校生の描く原爆の絵」という企画がありました。
広島平和記念資料館が主催し、原爆被害者の実相を後世に伝えてゆくためにとりくんでいる「次世代と描く原爆の絵」プロジェクトで、広島市立基町高等学校の創造表現コースの生徒さんが、被爆者の方から被爆体験の聞き取りを行って描いた原爆の絵の複製がパネル展示されていたものでした。
今年、そのとりくみが10年の節目を迎え、蓄積された作品は119点に達したそうです。広島市の市民ギャラリーで行われた絵画展のチラシがこのパネルです。
NHK広島放送局が、このとりくみの実話に基づくドラマを制作し、ヒロシマ8・6ドラマ「ふたりのキャンバス」というタイトルで今年の8月5日に全国放映して、大きな反響を呼びました。ご覧になった方もお見えかもしれません。
こちらのパネルは、そのドラマの舞台裏をドキュメンタリー番組にした「高校生が描く“原爆の絵”~ヒロシマ8・6ドラマ「ふたりのキャンバス」の舞台裏」の一部です。
高校生にとって、日常からあまりにもかけ離れ、想像することすら困難な原爆の実相を、被爆者から何度も何度も話を聞き、描いては「違う」と言われ、何度も何度も、描き直し描き直しして、1年をかけて一つの作品を作り上げます。
高校生の「わからないけど、わかりたい」という思いと、被爆者の「伝わらないかも、でも伝えたい」という思いが、この取り組みを通じて重なりあい成長と伝承が積み上げられている様子が、作品から伝わってきます。
作品の一部の写真をお示しします。
とくに若い世代を対象にこうした取り組みを続けられ、戦争体験を継承し平和の守り手を育成し続けている広島市の姿勢は素晴らしいものがありますし、また、これらの作品群の持つ若い感性ならではの、若い世代に伝える訴求力に大きな期待を感じます。
そこで総務局長に伺います。本市の平和事業の一つとして、この「次世代と描く原爆の絵」プロジェクトの作品群をお借りして、名古屋市で原爆の絵画展を行えないでしょうか。総務局長の見解を伺います。 「戦争に関する資料館」で被爆体験が視聴可能に(総務局長)
【総務局長】戦争の悲惨さや平和の大切さについて考え、平和を希求する市民意識を醸成することは意義深いものと考えています。愛知県と共同で2015年7月より「愛知・名古屋 戦争に関する資料館」を開設しています。
原爆の絵画展という形ではないが、8月に資料館で通常の戦争体験談の放映に代えて、愛知県民で当時の広島・長崎での被爆した方の体験談を放映しました。9月からは希望される方が館内に設置したパソコンで閲覧できるようにしています。
核兵器廃絶の世論啓発に踏み出せ
【柴田議員】今差し迫っている危機は偶発的な要因など膨大な犠牲をもたらす破局的な結末に至る危険性が高まっていることです。一日も早くこの危機を回避する方法は、米国・北朝鮮両政府がただちに直接対話に踏み切ることです。日本とアメリカがよく話し合うということではなく、米国・北朝鮮の直接対話に踏み切ってくれと、日本政府がはたらきかけるように、河村市長からも日本政府にはたらきかけると、これが一番私たちの、市民の命を守る重要な課題ではないかということを申し上げておきたいと思います。
そしてこのヒバクシャ国際署名は日本政府に核兵器禁止条約の枠組みに参加し、そのことをもって、最も強い態度で米国・北朝鮮両政府に直接対話に踏み切るよう迫ることができるようにする、大きな力を持っています。
8月10日の平和首長会議総会で採択された長崎アピールでも、核兵器禁止条約への批准を、特に核保有国と核の傘の下にいる国々の政府に強くはたらきかけていくと明言しているんですから、河村市長もその一員として頑張るべきではありませんか。
もちろん市長に一人で頑張れと言っているのではありません。この高校生が描く原爆絵画のとりくみで、原爆の絵を制作した生徒からは、「今回の経験から、原爆が投下された事実を改めて身近に感じた」「今までの平和教育がいかにうわべだけだったかを知った」「自分のできることで、原爆を伝えていくことが大切なことだと思う」などの感想が寄せられたそうです。
つまり、この取り組みは、被爆者の方の「描いて伝えたいが描き切れないもどかしい思い」を、絵の形にしてくれる才能との結びつきで新しい伝達手段ができたということと同時に、体験もしておらず想像すらできなかった高校生の皆さんが、繰り返しの聞き取りや描き直しの作業を通じて、心を通じさせ、追体験をし、わがこととして実感し、二度と繰り返さないため自分に何ができるのか、と新たな模索を始める力強い動機付けになっているのです。
市長、この平和啓発事業として、大いに学ぶべき高校生の描く原画展示を名古屋市の主催事業として取り組み、核兵器廃絶の世論啓発に踏み出すこと、それを通じた市民世論の高まりを背景に、市長がヒバクシャ国際署名に署名をする、こういう私の提案、どのようにお感じになられたでしょうか。
河村市長も平和のシンボルとイチ押しの天守閣を絵画展に使用するというのも、話題性があっていいと思います。
この原爆絵画展の取り組みについての感想も含めてお聞きします。
高校生が描くのは大変ええこと(市長)
【河村市長】高校生の絵ですけど、日本史も世界史も勉強すればするほど、かくも人類は悲しいものかということで、戦争の歴史ですね、一言でいえば。自分たちがたどってきた道を高校生が描くということは大変ええことだと思います。
広島の悲しみはすごいですよ、名古屋の悲しみもすごいわけです。お城を失ってほぼ8千人から1万人の人が亡くなっている。そういうお城をまた前のように戻してですね、もう一回平和のシンボルにしようということに何で反対されるのか、共産党は。さっぱりわからんの。どういうことなんだという風につくづく感じております。
良いと思うのなら前へすすめよ
【柴田議員】天守閣についての議論は通告からはずれますのでここまでにしておきますが、ヒバクシャ国際署名と高校生が描く原爆絵画展、市長にとっても世界にアピールできる良い機会だと思うんですが、残念な答弁です。良いことだと思われるのならぜひ前へ進め、署名にも前向きに取り組んでいただきたいと、重ねて申し上げておきます。
ヒバクシャ国際署名連絡会ではこの9月20日、この核兵器禁止条約の署名が公開され、世界から批准が始まるこの日から、「核兵器の全面廃絶のための国際デー」として定めた9月26日までの一週間を、キャンペーン週間「PEACE WAVE 2017」(vol,2)として行動強化週間とすることを提案しています。この期間にぜひ署名をしていただけるといいなと思いますが、あるいは10月24日の国連設立記念日、ここにあわせていくこともよいことではないかと思います。
高校生が描く原爆絵画展も含めてぜひ実施してほしいと強く求めてこの件については終わります。
キーワード:平和と人権、市民生活、柴田たみお