さいとう愛子議員の個人質問①「温かい」スクールランチに(2017年11月29日)

自校方式の給食めざし、スクールランチの抜本改善を
さいとう愛子 議員

スクールランチ喫食率、市目標に達せず。理由は「冷たいから」
【さいとう議員】中学1年の息子さんから、あるお母さんは、こう言われたそうです。「2ヶ月、スクールランチを食べたけど、おいしくないから早くお弁当にしてほしい」と。私が聞いたある男子生徒は「ラーメンの時には食べる」と言っており、あたたかい麺類やカレーはスクールランチの中でも人気メニューになっています。
 スクールランチの制度は、1993年度から7校で試行が始まり、96年度から3年かけて民間調理場方式により全校に導入されました。中学校のスクールランチの喫食率は、昨年度平均で58.7%となっています。喫食率の目標は60%とのことですが、ほぼ50%台で推移しており、目標に達しておりません。また、スクールランチは、ランチルームで食べる場合と、ランチボックスを注文して教室で食べる場合がありますが、それぞれの喫食率はランチルームで67.7%、ランチボックスでは54.2%となっており、喫食率にかなりの差があります。この差は何が原因なのでしょうか。
 毎年教育委員会が、実施している生徒アンケートでは、スクールランチが「おいしくない」と回答した理由は、「冷たいから」が一番多くなっています。
 教室で食べるランチボックスでは、ご飯以外であたたかいのは、丼物やカレーの具など保温食器で提供できるメニューだけです。ランチルームでは、丼物やカレーの具などはあたため直して配膳され、それに加えて、最初の男子生徒の声にあった「ラーメン」などの麺類があたたかい状態で提供されます。しかし、ランチボックスもランチルームでも、こうしたもの以外の主菜は、あたたかくはありません。
 主菜が冷たいのは、共同調理場で大量調理され、衛生上の観点から、10℃以下に冷やして運搬されるためです。文科省が定める大量調理施設衛生管理マニュアルによると、「調理後ただちに提供される食品以外の食品は、食中毒菌の増殖を抑制するために、10℃以下または65℃以上で管理することが必要である」とされているので、スクールランチのメニューで出される肉や魚の主菜も10 ℃以下の状態に保たれ、各中学校に運ばれるのです。
 例えば、主菜だけでも、10℃以下ではなく、保温食缶に入れるなど65℃以上にして運び、冷たくないものを提供し、生徒たちに、少しでもおいしい給食を提供できないのでしょうか。
 7人に1人の子どもが貧困状態におかれているという現在の社会状況があり、さまざまな理由で食生活が不十分な状況におかれている中学生も含め、成長期にある中学生の体をつくっていくためにも、栄養バランスのとれたスクールランチは、重要です。また、名古屋の中学生は、朝食を毎日食べて登校する生徒が全国平均よりも少なく、中学2年生で、男子4.8ポイント、女子2.9ポイントも下回っています。朝食を食べていない生徒にとっては、余計、学校で食べるスクールランチは大事ですし、残してしまうようでは、栄養を十分取ることはできません。あたたかくておいしい昼のスクールランチが提供されてこそ喫食率も上がるのではないでしょうか。
 そこで、教育長にお聞きします。スクールランチについて、生徒たちがアンケートなどで答えているように、主菜が「冷たい」という現状を改善するために、65℃以上のあたたかい状態が保てる保温食缶で運搬したり、配膳室であたためなおすなど、できないのでしょうか。

学校への運搬や配膳の必要上、10℃以下で提供(教育長)
【教育長】スクールランチでは、毎年、学校を抽出して生徒に嗜好調査を実施し、2016年(平成28年)度の調査では、「おいしくない」と回答した生徒は、全体の約8%でした。「冷たい」ことを理由としたのは、そのうち約4分の1です。
 国の基準では、調理後直ちに提供される食品以外は、食中毒の予防のために10℃以下または65℃以上で管理する必要があるとされ、スクールランチは調理後、学校への運搬や学校での配膳が必要なことから、主菜を含めたおかずについて10℃以下での管理を原則としている。
 カレーや丼物の具などは、保温できる容器を利用して65℃以上の状態で運搬し、学校で温め直して提供しており、米飯も温かいまま保温コンテナで運搬し提供しています。
 少しでも温かい献立が提供できるよう努めているが、安全で、栄養バランスのとれた献立を提供することが重要と考えています。

政令市で自校、親子調理場方式の導入広がる。名古屋も検討すべきでは
【さいとう議員】名古屋では、中学校スクールランチが実施されて約20年たちました。名古屋のスクールランチは、「選択制メニュー、ランチルーム、弁当併用」の3条件で、民間調理場方式で行われています。
 他の政令市では、どうでしょうか。現在試行中で、今年度中に本格実施することが決まっている川崎市を含めると、現在、横浜市以外の19政令市で、中学校給食が実施されています。そのいずれも、パン又はご飯、麺類などの主食とおかず、及び牛乳である給食を提供する、完全給食ですが、提供する方式は、政令市によってさまざまです。小学校と同様の全員喫食の方式で行われていても、調理場が共同か単独か、調理が直営か委託か、などさまざまです。また、家庭弁当と業者委託弁当との併用などの給食が実施されているところもあります。
 政令市で19番目の実施となった川崎市は、今年1月から、まず4校で自校調理場方式が始まり、他の48校は、年度内に共同調理場方式で実施されます。20年来の中学校給食の実現を求める市民の運動が実り、ようやくスタートしたとのことです。わが党の川崎市議団の調査では、共同調理場方式で実施される48校のうち、10数校では自校調理場方式が可能という調査結果もあるので、今後、より改善される可能性もあります。
 業者委託弁当だった大阪市は、2015年度から20度までの6年間で、「学校調理方式」に移行するとのことです。この方法は、「自校調理方式」と「小中親子調理方式」を合わせたものです。「小中親子調理方式」は、小学校の調理場での余力をいかし、中学校分の給食も調理して運搬する方法であり、「1小学校から1中学校へ」の場合、「2小学校から1中学校へ」の場合もあります。
 札幌市と北九州市の大半の中学校では、この「親子調理場方式」が行われています。
 文科省が定めている学校給食実施基準では、「学校給食は、これを実施する学校においては、当該学校に在学するすべての児童又は生徒に対して実施されるもの」とされ、本来、学校給食は、在校生すべてに提供する全員喫食が基準とされています。食育指導、栄養教諭の配置、適温提供、衛生管理など考えると、小学校のような自校調理場方式が望ましいと考えますが、調理室や配膳室の整備、初期投資など、ハードルも高いのが現状です。
 名古屋市の中学校のうち、8つの中学校は、1つの小学校から1つの中学校に進学するので、「親子調理」の給食方式がとれる可能性があります。しかし、スクールランチは、「選択制メニュー、ランチルーム、弁当併用」の3つの特色があるので、方式を変えるのであれば、生徒や保護者、学校関係者の合意が必要です。
 そこで教育長にお聞きします。名古屋市においても、スクールランチの改善は行われてきましたが、生徒や保護者、学校関係者の意見を聞きながら、「自校調理場方式」や「親子調理場方式」など、抜本的検討を始める時ではありませんか。

現行方式は一定の評価を得ている(教育長)
【教育長】スクールランチの導入にあたり、1990年(平成2年)に生徒、保護者、一般市民などを対象とした1万人アンケートを実施し、その結果を踏まえて検討を行い、現在の方式を採用した。
 毎年実施している生徒や保護者へのアンケート調査でも、現在の方式を望む声が多く、スクールランチの特色である「栄養バランスの取れた複数メニューから選択できること」「楽しく食べれるランチルームが整備されていること」「家庭や生徒の希望に応じて弁当の持参も可能であること」などに一定の評価をいただいている。
 今後も、安全で栄養バランスのとれた中学校給食の提供に努めたい。

生徒や保護者らの声を直接聞き、抜本的改善を(意見)
【さいとう議員】現状の改善と実施方式の抜本的な検討を求めましたが、現状維持という回答で、現在の中学校のスクールランチ方式に対し、「一定の評価」はあると認識しておられます。
 しかし、喫食率は50%台から上がらず、学年を追うごとに下がっているように、現状で良い、とは思えません。先ほどの2016年度の生徒の嗜好調査によれば、ランチルームで「主菜を全部食べた」と答えた生徒が7割近くで、ランチボックスでは6割に届かず、前年度も同様でした。主菜を残している生徒が3割から4割もいるのです。
 試食会に参加した保護者はスクールランチの運営方法について、61.2%が「現状の運営方法で良い」と答えたものの、「小学校のような給食に」と30%が回答し、少なからぬ保護者が、全員喫食の自校調理方式を求めています。
 現状に満足するのではなく、あたたかい主菜の提供で、スクールランチそのものをおいしくする工夫とともに、生徒、保護者の声、栄養士などの専門家の意見を直接聞く場を設け、自校調理場方式、親子調理場方式など、新たな中学校スクールランチづくり、実施方式の抜本的な検討をしていただけるよう強く要望して、この件は終わります。

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