江上博之 議員の個人質問②安心して結婚、子育てができる名古屋市に(2017年11月30日)
非正規雇用でなく、安心して結婚、子育てができる魅力ある名古屋市に
名古屋市まち・ひと・しごと創生総合戦略における2060年228万市民実現への施策
江上博之 議員
人口を維持する戦略があるのに、人口減少を理由に市民施設を廃止・縮小するのは矛盾する
【江上議員】名古屋市が行ったアンケートから、「未婚化・晩婚化の理由や理想の子ども数を持てない理由として経済的に余裕がないことが多く上げられており、本市の低出生率を改善するためには、子育て施策の充実に加え、若い世代の経済的な安定を図ることが重要な課題」(戦略p62)となっていることを示しております。
名古屋市は、『名古屋市まち・ひと・しごと創生総合戦略』で、本市人口の将来展望「本市の若い世代の結婚・出産に関する希望が実現し、東京圏への転出超過が解消され、人口減少に歯止めがかかると、2060年に228万人程度の人口が確保される。」という目標を持っています。人口減少社会に抗して施策を打ち、現状の人口を維持するという目標を名古屋市は持っているわけです。
2060年に、現在の人口とほとんど変わらない人口を維持する戦略を持っていながら、その方針に反して「少子高齢化、人口減少を理由にして市民施設を廃止・縮小する」、こういうことは矛盾した施策ではありませんか。
なぜ、創生総合戦略を打ち出しておきながら、このような矛盾した施策が行われているのか。このことに対して、総合戦略の所管である総務局長はどのような見解をお持ちか回答を求めます。
「現在と同水準の人口推計もあるが、人口構造の変化に対応する必要がある」(総務局長)
【総務局長】平成28年3月に策定した「名古屋市まち・ひと・しごと創生総合戦略」では、出生率や社会移動が現状程度で推移すると仮定した場合、平成72 年の本市の人口は184万人程度になると推計。また、将来にわたって人口が増減しない水準まで出生率が段階的に向上した上で、東京圏への転出超過が解消されると仮定した場合には、平成72年の本市の人口は228万人程度と現在と同水準を維持できると推計しています。
現在、本市の人口は、転入者が転出者を上回る社会増により増加してますが、将来的には人口構造が大きく変化するものと見込んでおります。
こうした少子化・高齢化の進行による児童・生徒数の減少や後期高齢者の大幅な増加などの人口構造の変化に対応するため、各施設も将来需要の適切な見通しのもと、施設機能を確保していく必要がある。
出生率減少への効果ある施策を打てなかった市に責任がある。市民施設の削減は市民への責任転嫁だ
【江上議員】創生総合戦略での2060年に228万人口目標実現について質問します。
「少子高齢化」「人口減少」という事態が、現在の施策のままでは、2060年に現在より2割減、184万人となる推計があることは事実です。名古屋市は、これに対して、2060年に228万人を確保するとしていますが、どのような施策で進めるのか明らでなければ、施設の廃止や縮小という問題がでてまいります。
どうしたら、2割減少に歯止めをかけるのか。そのためには、184万人となる原因を明らかにする必要があります。まず、その作業を行う責任はどこにあるのかについて、質問をいたします。
名古屋市の合計特殊出生率。つまり、女性が一生のうちに何人のお子さんを産むかという数字は、名古屋市において1975年に、2.0から1.8に落ちて以来42年間1.8を上回ったことがありません。当然40年前から今の事態は予測できたのではないでしょうか。その事態に対する効果ある施策を打ってこなかった名古屋市に責任があることは明らかで、そのつけを市民施設の廃止・縮小など市民に押し付けることは無責任であります。そのような認識をお持ちですか。
「子育てなど必要な施策にとりくんできた」(総務局長)
【総務局長】本市の合計特殊出生率は、昭和50年に1.81になって以降、平成17年には最少の1.21となり、それから上昇傾向に転じ平成28年には1.44となるなど、2万人程度の出生数を維持しています。総合計画などの策定の際には、人口や世帯数の見通しについて推計を行うなど、名古屋の将来のまちの姿を展望し、「子ども」や「子育て」を始めとした必要な施策に取り組んできました。
効果ある人口対策として、若い未婚者や既婚者の希望をかなえる施策が必要だ
【江上議員】では、結果的に、効果ある施策を打てなかったのはなぜか。名古屋市人口の将来展望を2060年に228万人程度という目標を持っていることを示しましたが、ここでの歯止め策が出てくる原因を明らかにすることで、施策が出てくるのではないでしょうか。
第1に、「若い世代の結婚」に関する希望をどう実現するのか。第2に、「出産に関する希望」をどう実現するのか。第3に、「東京圏への転出超過をどう解消するのか」を明らかにすることではないでしょうか。名古屋市の発表や、厚生労働省の2015年版『厚生労働白書』を参考にしてみます。
第1です。男女のパートナーを持つこと、具体的には結婚についてみますと、未婚の人で「いずれ結婚するつもり」が87%あるにもかかわらず、結婚しないのは、「経済的に余裕がないから」が多くなっています。
「契約社員や派遣社員など非正規雇用の被雇用者の比率は、平成24年では被雇用者全体の4割弱を占め」ていると市の調査にあります。非正規労働者の年間収入は、男性で200万円未満が5割もいます。そして、30代前半の男性では正規雇用労働者の60.1%に配偶者がいるのに対し、非正規雇用労働者では配偶者のいる割合が27.1%と半分以下になっています。非正規労働者であることが結婚をためらう大きな理由になっています。
「名古屋市まち・ひと・しごと創生総合戦略(案)」に対する市民意見でも「妊娠からの支援では、未婚者が増加する中では無力。長時間労働、不安定雇用、低所得では結婚できないではないか」という意見が寄せられています。
非正規労働者が増えているのが大きな原因であり、長時間労働で低所得であることが男女の結びつきを減らしているのが大きな原因であり、その改善こそ必要です。
ところが今名古屋市は、民間委託や、指定管理者制度によって、運営費を引き下げ、結果的に人件費削減で、非正規労働者、低賃金労働者をつくり、ここでも少子化対策と矛盾する施策を進めているのではありませんか。そこで質問をいたします。
1点目に、正規労働者を増やし、非正規労働者、低賃金労働者をつくらないようにすることが施策としてなければ、人口減少を止めることはできないのではないかと考えますが、総合戦略には、その点での具体的な施策がないのではありませんか。
2点目に、逆に施策がないどころか、民間委託や、指定管理制度によって、事実上非正規低所得労働者を作っているのではありませんか。
3点目に、少なくとも、民間委託や指定管理にあたって、正規労働者を雇うとか、雇用の安定を求める契約条件を付ける必要があるのではないですか。答弁を求めます。
第2に、家庭を持ったとして出産に関する状況では、理想とする子どもの人数2.24人でありながら、理想の数より少ない理由は、名古屋市のアンケート調査では、やはり、「経済的に余裕がないから」「子育ての身体的・精神的な負担が大きいから」、具体的には、教育費や子育てに費用や精神的負担が大きいとことです。そこで質問します。
子育て世帯への手当の増額、待機児童の解消など保育園や幼稚園の充実、学校給食の無償化など子育てや教育費の負担軽減、悩み相談窓口の充実などがもっともっと必要ではないでしょうか。子育て、教育、雇用など総合的な施策が必要と考えますが見解を求めます。
「次世代産業の育成などで雇用創出を図ってきた」(総務局長)
【総務局長】「名古屋市まち・ひと・しごと創生総合戦略」では、「しごと」を創出し、「しごと」が「ひと」を呼び、「ひと」が「しごと」を呼び込む好循環の確立による雇用全体の拡大を図るため、取り組みを進めている。
具体的には、「成長力を確保」するため、次世代産業の育成や交流人口増加の取り組みによって雇用創出や就労機会の確保を図るとともに、「人口減少問題を克服」するため、安心して子どもを生み育てることができる環境づくりや、若者が活躍できる環境づくりに取り組んできた。
民間委託や指定管理者制度は、民間の能力を活用しつつ、市民サービスの維持、向上や経費の節減等を図るために導入している。指定管理者の選定では、労働契約法をはじめとした労働関係法等の法令順守を義務付け、業務に従事する者の職種、人数、職務内容等を定めており、また、業務委託契約でも、 法令順守を前提として適切な契約を行っている。
民間でできることは民間に任せることを基本として、引き続き法令順守のもと、適切に行ってまいりたいと考えております。
東京一極集中を止めるため、若者への家貨補助など総合的な施策必要だ
【江上議員】社会動態で、東京圏への転出超過をどう解消するか。そのためには東京圏への一極集中をいかに止めるかではないでしょうか。リニア建設が東京一極集中を進める問題で国に意見を言うとともに、名古屋の魅力をもっと打ち出すことです。「大都市でありながら住みやすい」というのが名古屋の売りです。若者への家賃補助、名古屋市内の中小企業に就職したら、奨学金の返済について助成するなど若者、雇用施策の充実など必要です。
そこで質問します。市としては、東京一極集中を止め、今あげたような魅力ある名古屋を総合的に打ち出すことが必要ではないでしょうか。総務局長の見解を求めます。
「産業競争力の強化や国交付金の活用で雇用創出、就労環境整備をすすめる」(総務局長)
【総務局長】転入者が転出者を上回る社会増を背景に人口は增加している状況ですが、地域別では関東に対してのみ転出超過となっています。
平成27年の「転入出に関するインターネットアンケート」では、本市から東京圏への転出理由の約7割は就職や転職、転勤といった「仕事の都合」であり、そのうちの約5割が辞令などの「会社都合」、約2割が「就きたい職種、入りたい会社があったから」という理由でした。
世界レベルの産業技術の集積による強い経済力の向上や、広域交通ネットワークの結節点としての特性を活かした産業競争力の強化を図るとともに、国の地方創生推進交付金も活用しながら、展用創出や就労環境の整備などの取り組みを推進しています。
人口減少間題の克服は、国全体の課題であり、短期間で出生率が改善しても出生数は容易には増加せず、人口減少に歯止めがかかるまでに長期間を要するので、全庁を挙げ、地方創生の取り組みを持続的に実施し、着実な推進を図っていくことが重要である。
「結婚したい87%」「理想の子どもは2.24人」。市民の希望を叶えるために目標を示すべきだ
【江上議員】名古屋市の総合計画2018を推進する「名古屋市まち・ひと・しごと創生総合戦略」を見ますと、第1章で策定の考え方、第2章が人口ビジョンで、今のままでの施策では184万人口となり、その課題整理をしています。それに基づいて今の答弁が出ております。このなかに同じような文言が出てまいります。
その答弁のあとに、シミュレーションで「本市人口の将来展望で、228万人が確保される」と記述し、そして、第3章で総合戦略を示しています。今のままではいけないから、施策を施して228万人を実現するという数字が出てくる論建てとしか見えません。
228万人がただの推計と逃げてはいけません。未婚の人でも「いずれ結婚するつもり」が87%、理想とする子どもの人数2.24人という数字を示しました。この希望を叶えるのが行政の役割です。その役割を果たすには、目標数字が必要です。228万人というのは、国の2060年1億人人口に沿って出てきた数字と考えられます。市民生活を守り、市民の希望に沿った目標を示すのが名古屋市の計画です。この目標数字を示すことが施策を進めるためにも必要になってまいります。そのような認識はないのですか。総務局長に聞きます。
「人口維持は大変ハードルが高い。結婚や出産は個人の意思が尊重されるべき」(総務局長)
【総務局長】人口動向は自然増減と社会増減による結果です。また、人口の増減に与える結婚や出産、居住地の選択は、あくまでも個人の自由な決定にもとづくもので、個人の意思が尊重されるべきものと認識しています。
「名古屋市まち・ひと・しごと創生総合戦略」に具体的な人口目標は掲げていませんが、現状の出生率や社会移動の改善に向けた対応は必要であると考えており、子どもを産み育てたいという市民の方の希望がかなうとともに、名古屋大都市圏の中心都市として住み、働き、学ぶ場所として選ばれるまちとなるよう、とりくみを推進します。
228万人の人口推計は、現在の合計特殊出生率が1.44であり、東京圏への転出超過が約3600人であることを踏まえると、大変ハードルが高いものと認識している。
目標がなければ施策もあいまいになる
【江上議員】論建てまでは行っても目標とする腹がないから、施策もあいまいになるのではありませんか。少子高齢化で人口減少社会となると、働き手が減り市の財政が厳しくなり、名古屋市の役割である「住民福祉の増進」を維持発展できなくなるから施策を進めるのではありませんか。それでは、名古屋市の2060年における人口目標は何人ですか。
「具体的な人口目標は掲げていないが、改善に向けた対応は必要」(総務局長)
【総務局長】結婚や出産、居住地の選択は個人の意思が尊重されるべきものと認識しています。市としての具体的な人口目標は掲げていないが、現状の出生率や社会移動の改善に向けた対応は必要と考えていますので、引き続き取り組んみたい。
若者の希望を叶えるために、228万人の目標をもって対策をすすめる必要がある
【江上議員】「具体的な人口目標は掲げて」いないと答弁されました。いったい何のために、2060年に228万人人口を掲げたのでしょうか。「大変ハードルが高い」から目標とするには躊躇するならとんでもないことです。若い人たちの希望をかなえる2060年めざして、市長としてこの目標を突破する勢いを示すときです。
そこで、河村市長にお聞きします。2060年に228万人人口とする目標を持って、国の施策だけでなく、市の独自策ももっともっとすすめる必要があると認識していますか。
「産業を強くし、名古屋城天守閣木造化などで人に来てもらうのが一番」(市長)
【市長】もっと自由競争をすすめて、公務員ばっか守っとらんように民営化もすすめて、名古屋城なんかもええもんつくって、ようけの人が来ていただくのが人口増の一番の中心だと思う。
だけど社会増は、わしは目標をつくってもええでにゃあかと言ったことがあります。内部でね。市として意思決定するには及んでないですけど。
名古屋城天守閣の木造に反対して人口増をやろうなんていうのは、スターリンかなんかが聞いてもびっくりするんでないかしらんと思いますけど。
産業を強くしないと。とにかく。ようけの人が来て。それがやっぱり中心ですわ。名古屋の場合は特にどえらい貧富の差が激しいですけど、名古屋港で貿易黒字が7兆円になるのではないかという声もある位ですけれど、産業の力、半分自動車ですけど、そういう産業をもっともっと栄えさせる。
名古屋のシンボルというものがいります。ニューヨークだったら自由の女神とかあるわけです。そういう精神的な支柱の名古屋城の木造化に反対しておきながら何を考えておるのか。計画経済でそんなうまいこといくんですかね。
腹をくくって若者対策を。その一歩は市民施設の廃止・縮小を中止することだ
【江上議員】困るとスターリンとかなんか別な話にもっていく。そんなことでごまかしても、市民は騙されません。
今言われたように自然減が問題なんです。非正規労働で、低賃金で長時間労働。雇用の拡大、産業の発展は当然必要ですが、そういう点でもその部分をどうするのか、そこが求められていることを改めて申し上げるし、市長も自然減を心配していることが改めてわかりました。
2060年の名古屋が安心して住みやすい名古屋になるために、腹をくくって施策実現にまい進すること、その一歩は、はとり幼稚園など、市民施設の廃止・縮小を中止することです。その実現に私も全力を尽くすことを申し上げて質問を終わります。
キーワード:福祉・介護・医療、税、地方自治体と住民参加、江上ひろゆき