藤井ひろき議員の議案質疑(2018年2月23日)
市民の暮らしと宿泊者の安全を確保する「民泊」条例の制定を
藤井ひろき議員
利用が多い住居専用地域以外も制限を
【藤井議員】一般住宅に旅行者らを有料で泊める民泊を解禁する、住宅宿泊
事業法が昨年の6月の国会で成立しました。同法は都道府県知事に届け出さえすれば、年間180日を上限に民泊の営業を認めることを基本原則にしたものであり、施行日は今年6月15日です。
この法律の目的は、国内外からの観光旅客の宿泊需要に対応することとされています。
住宅宿泊事業法の実施に対して、自治体である本市が民泊事業者に厳格な規制を課す条例を制定し、民泊周辺の市民の生活環境を守り、民泊宿泊者の安全を確保する、この2つの責務を果たすことが強く求められます。今回の条例案はこの責務を果たしているでしょうか。
今回の条例案では、制限する区域を住居専用地域のみとしています。しかし、住居専用地域は主に本市東部の郊外市街地がほとんどです。
民泊は観光客にとって移動が便利な市内中心部や地下鉄沿線に多くつくられることが予想され、そこはほとんどが住居専用地域ではありません。
そこでお聞きします。住居専用地域に制限をかけても、民泊が多い場所は住居専用地域以外の地域であり、民泊周辺の市民の生活環境を守ることにつながらないのではないでしょうか。住居専用地域以外にも制限をかけるべきだと思いますが、見解を求めます。
①住宅宿泊事業:宿泊料を受けて住宅に人を宿泊させる ②住宅宿泊管理業:家主不在型の住宅宿泊事業者から委託を受けて事業の適正な遂行のための措置を行う ③住宅宿泊仲介業:事業者と宿泊者との間の宿泊契約の締結の仲介を行う *愛知県に代わって、名古屋市が届け出の受付・監督を行う |
*制限される住居専用区域
地域に関わらず、生活環境が悪化しないよう、関係局と連携して指導・監督できるような体制を構築したい
【健康福祉局長】住居専用地域などの地域に関わらず、生活環境が悪化しないよう、関係局と連携して指導・監督できるような体制を構築していきたい。
迷惑行為や緊急事態に対応できるのか。集合住宅や家主不在型「民泊」の規制を
【藤井議員】今月20日の日本経済新聞の報道によりますと、URが民間会社に売却した、港区にある団地で、「現在ある500戸の空き部屋のうち」、「民泊用として100戸を運営する」と報じられています。なお、この場所は、住居専用地域ではありません。
これでは一戸一戸の空き室に年間宿泊日数の上限180日を設けても、結果として周辺住民にとっては、365日無制限に民泊が営業される施設になってしまいます。
一般的に住民の民泊に対する不安の声として、「深夜・早朝の騒音」、「ゴミの出し方」などを心配する声が多いと聞いています。
そこでお聞きします。民泊周辺住民の不安に応えるためには、たとえば管理者や従業員の常駐、あるいは客室にすぐに駆けつけられる場所に常駐することを義務付けるなどの規制が必要かと思いますが、どのようにお考えですか。
管理の委託が定められており、苦情等への対応などが義務付けられているの。保健センターが監督する
【健康福祉局長】管理者が常駐しない場合には、住宅宿泊管理業者に管理を委託することが法で定められており、宿泊者の衛生や安全の確保、周辺の生活環境への悪影響の防止、苦情等への対応などが住宅宿泊管理業者に義務付けられている。適正な管理が行われるよう、保健センターが報告徴収や立入検査を実施し、指導・監督を行っていく。
管理人が不在で、苦情等に迅速に対応できるのか。住民説明会や苦情対応の記録の義務付けを
【藤井議員】住宅宿泊事業法の第十条では、(苦情等への対応)として、「住宅宿泊事業者は、届出住宅の周辺地域の住民からの苦情及び問い合わせについては、適切かつ迅速にこれに対応しなければならない」とあります。「適切かつ迅速」な「対応」とは具体的にどのようなものでしょうか。
新宿区住宅宿泊事業の適正な運営の確保に関する条例では、住居専用地域での規制に加え、民泊営業の届け出七日前までに近隣住民に対し書類で通知することなどを定めています。また、苦情の対応記録を作成し三年間保存するなどの規制をかけ、民泊周辺の住民の不安に応えようとしています。
そこでお聞きします。本市でも民泊周辺の住民の不安に応えるには、新宿区のように民泊営業前に周辺の町内や学区への説明や、苦情対応記録の保存などを義務付けるなどの規制がいると思いますが、どのようにお考えでしょうか。
届出前に説明するよう、行政指導の実施を検討している
【健康福祉局長】条例では規定しないが、届出をしようとする者に対し、届出前に周辺住民に対して民泊を行うことを説明するなどの行政指導の実施について検討している。
本来は旅館等で地域の文化を楽しんでもらうべきだが
【藤井議員】最後に、旅行者が安心して宿泊できるだけでなく、宿泊を通してその土地の生活と文化を味わうことができる施設がホテル、旅館です。なかでも旅館は地域に根ざし、地場産業とも密接につながっていますが、この間、旅館が減ってきたと聞いています。
そこでお聞きします。本市における旅館業法上の種別の一つである旅館営業の本市の施設数は、2007年度末と昨年12月末時点で、どれほどなのでしょうか。施設数の推移、この間の増減について、お聞きします。
旅館は2017年末で250と10年前より38減。2017年に限れば5増えている
【健康福祉局長】旅館業法上の種別のひとつである旅館営業の施設数は、2008年3月末時点で288施設、・2017年12月末現在で250施設です。施設数としては減少傾向にあるが、2017年3月末では245施設であり、2017年度は増加している。
苦情等への「適切かつ迅速」な「対応」へ、しっかり指導・監督できる体制の構築を(意見)
【藤井議員】本市東部の郊外市街地以外のほとんどが、住居専用地域外であり、民泊の急増が想定されます。
また、これから保健所を保健センターにし、機能を再編していくと聞いています。
住宅宿泊事業法の主旨に沿って、民泊事業者が苦情等に対し、「適切かつ迅速」な「対応」をするように、しっかり指導・監督できる体制を構築できるかどうかという点があります。
市民の生活環境が悪化すれば、観光地としての魅力も失われる
民泊事業者が町内会や学区の皆さん、周辺住民の皆さんに対して、しっかりした説明をしたのか、厳しくチェックしなくてはいけません。
観光の土台は、その地域の人々が楽しく住んでいることです。それがあって初めて、その地域が観光地として魅力的になるのです。民泊により市民の生活環境が悪化すれば、観光地としての魅力も失われてしまいます。このことを念頭に置いた対応が必要になります。
旅館をにぎわせていく検討を
今年度については、旅館の施設数は増加しているとの答弁でしたが、この10年間で大きく減少しています。国内外からの観光旅客の皆さんに名古屋の良さを安心して堪能してもらうためにも、旅館をどうにぎわせていくのかについても、関係局とも連携して検討すべきです。
キーワード:環境と防災、まちづくり、藤井ひろき