さはしあこ議員の個人質問②津波避難ビル(2018年3月7日)
津波避難対策について
さはしあこ議員
市有施設の津波避難ビルに地震自動解錠鍵ボックスの導入を
【さはし議員】市は、南海トラフ巨大地震に備え、津波対策をすすめてきています。緑区でも住民のみなさんからは、津波が海から川を通して遡上してくるのではないかという不安の声も聞かれます。内陸部においても、河川津波の発生など油断ができません。そこで、本市は津波対策として、2018年2月現在で、全市で892の津波避難ビルを指定しています。南区や港区においては、津波対策は進められてきましたが、被害想定が見直されたことにより、緑区も2011年11月、「津波避難ビル指定等推進事業の対象区域」となったため、津波避難ビルの指定を進め、29施設が指定されています。
津波避難ビルの指定は進んできてはいますが、一方で、課題もあります。市民の方から「避難所に行っても鍵が閉まっていて、入れなかったらどうしたらよいかわからなくて不安」という電話が、私のところによくかかってきます。緑区で29指定された津波避難ビルも夜間・休日は18箇所が施錠されています。地震は、いつ、どんな時に発生するかまったく予測ができません。その上、津波が発生した場合は、一分一秒でも早く高台や津波避難ビルに避難することが大切です。そのような時に、夜間や休日、あるいは、鍵を管理している方が被災されて、津波避難ビルに入ることができなくなったら、命を守る最後の砦であるにも関わらず、役に立ちません。
内閣府が2017年4月に取りまとめた「2016年度避難所における被災者支援に関する事例等報告書」では、「発災直後、避難所として指定されていた学校が施錠されたまま、避難所としての役割を果たさずに、避難してきた住民が行き場を失ったという意見があった」との報告も出されています。
また、総務省も同年5月に「津波避難対策に関する実態調査」を実施しており、夜間の津波避難対策については「十分でない」との回答が約64パーセントにのぼるため、夜間の避難を想定した施設整備や津波避難訓練が必要であるとしています。
私は、海抜ゼロメートル地帯にある愛知県蟹江町にある「蟹江町希望の丘広場」を視察しました。ここは、津波・浸水の緊急避難施設と生涯学習施設を兼ね備えた公園として整備されました。防災拠点としては、4階に災害時に備えた防災備蓄倉庫、津波や水害から一時避難するための高台にある希望の丘、3階のマルチスペース、屋上と、一度に750人が避難・滞在することができます。そして、施設が閉鎖・施錠されている夜間や休日に地震が発生した際に、避難してきた避難者が建物の屋上に避難することが出来るように、非常階段に、日常的な揺れでは作動しませんが、震度5弱以上の揺れで自動解錠する震度感知装置が内蔵された防災ボックスが設置されていました。その防災ボックスの中には、施設出入口扉の鍵が保管されています。
三重県津市でも、5年ほど前から、津波避難ビルとして指定した市有施設で、夜間、休日閉鎖されている施設を対象に、地震自動解錠ボックスを取り入れたそうです。このように、東日本大震災を教訓に、津波被害が想定されるいくつかの自治体では、震度5以上の地震が発生した場合、指定緊急避難所や津波避難ビルとして指定された施設に避難してきた住民が、鍵の管理者を待つことなく、すぐに避難することができるように津波避難ビルへの鍵の常備が進められています。
せっかく命からがら避難されてきた住民のみなさんの命を守るためにも、本市も、入口が解錠できない場合に備えて、まずは、市有施設の津波避難ビルに、地震自動解錠鍵ボックスの導入を検討してみてはいかがですか。
一定の効果が期待できるがセキュリティ面に課題(局長)
【防災危機管理局長】東日本大震災の教訓を踏まえ、2011年度から津波避難ビル指定等推進事業を実施し、さらなる指定の拡大に向けて、取り組みを進めている。
津波避難ビルでは、各施設における出入口の解錠など、安全な避難スペースまでの経路を確保することは重要です。
現状、施設で常時開放されているスペースを活用しているほか、施設付近の方が、施設管理者から出入口の鍵を借りるなどして対応している。市立小・中学校は、近隣協力員などにより施設を解錠する体制となっており、日頃から訓練を実施するなど、円滑な避難ができるよう努めている。
津波避難ビルへの自動解錠システムの導入は、発災時に誰でも出入口の解錠ができるようになる点において、一定の効果が期待できる一方で、津波避難ビルには学校教育など施設本来の用途があることから、平常時における施設利用者の安全や機密情報の管理など、セキュリティ面の課題があります。
今後、これらの状況を踏まえ、他都市の導入事例も参考にしながら、施設所管局とともに課題を整理していきます。
避難した方々が逃げ遅れ貴い命を失うことのないようにさらなる対策を(意見)
【さはし議員】今回、津波からの避難について、休日や夜間、鍵を管理されている方々が被災した場合などを想定した対応をあらゆる手段で講じていただきたいとの思いから、提案させていただきました。避難ビルへの自動解錠ボックスの導入については、セキュリティ面の課題があるとのご答弁でした。本市においては、津波が発生した場合、施設の解錠については、一定の体制が整えられているとのことではありますが、東日本大震災の教訓を踏まえ、せっかく避難した方々が逃げ遅れ、貴い命を失うことのないように、さらなる対策を進めていただきたいと思います。