山口清明議員の個人質問②地震津波対策(2018年3月7日)

災害ガレキの発生と長期湛水域への対応について

山口清明議員

災害ガレキは市内に留まらず、広域的に発生するのではないか
【山口議員】災害ガレキと長期湛水域への対応について質問します。
 港横浜で、市民の憩いの場となっている山下公園、実はこの公園は関東大震災で発生したガレキを埋め立て造成された公園です。
 2016年10月、名古屋市環境局から南海トラフ巨大地震の発生に伴う災害ガレキの発生量を推計した災害廃棄物処理計画が公表されました(パネル掲げて)。
一目瞭然です。想定される最大クラスの地震で名古屋市では790万トンの災害ガレキが発生する。港区が227万トンで市内最多、ついで中川区、南区と続きます。津波堆積物も5区で144万トンの発生も想定されています。
 さらにガレキ処理のための仮置場が250ha必要。一次仮置場100ha、小学校校庭が333カ所分。仮設焼却炉を含む二次仮置場150ha、ナゴヤドーム6個分の仮置場が5カ所必要ですが、市有地ではまったく足りません。焼却や最終処分も問題で、仮設の焼却炉の建設や広域処理も必要と推計しています。
 私はこの推計を踏まえて、名古屋港管理組合議会で、臨港地区での震災ガレキの発生量や仮置場について質問しました。
 ガレキの発生量については、「発生量の推計は極めて困難だが、多くの災害ガレキが、河川から港湾区域内に流入することが想定される」「港湾機能を早期に回復させるため、港に流入した災害ガレキを揚収し、仮置き等必要な処理を行う必要がある」という回答でした。つまり市内で発生する以上のガレキが港に流れてくる、そのガレキも急いで陸に揚げなければならず、その仮置きのスペースも必要だ、というのです。
 災害ガレキ発生量の推計方法は国の指針には示されていません。名古屋市の推計はその点で先駆的ですが、災害ガレキについて市内からの発生量の予測だけでは災害への備えとしては不十分ではないでしょうか。
 南海トラフ巨大地震が発生した場合、災害ガレキは市内に留まらず、広域的に発生すると想定されます。発生する災害ガレキについて、あらためて統括局としての認識をうかがいます。大量の災害がれきに加え、河川などからの流入、市域外からの港湾区域内への流入が考えられるが、発生量の推計は極めて困難(局長)
【防災危機管理局長】2016年度に策定された名古屋市災害廃棄物処理計画で、市内の災害がれき発生量は、本市独自の南海トラフ巨大地震被害想定における建物被害等を基礎データとして、約789万トンと推計されている。
 しかし、南海トラフ巨大地震等大規模災害発生時には、大量の災害がれきが発生するのみに留まらず、河川などから港湾区域内に災害がれきが上流部から流入することも想定されるほか、名古屋港は広範囲であり市域外からも、海の流れによって、大量の災害がれきが港湾区域内に流入することも考えられる。しかし、その発生量を推計することは、港湾管理者から極めて困難であると聞いている。
 これらの処理方法は、広域的な相互協力が不可欠であるため、国、県及び港湾管理者と連携を図っていけるよう、関係局とともに検討していきます。

長期にわたる湛水域を想定した防災対策を
【山口議員】この計画書には、名古屋の地域特性として、南海トラフの巨大地震では地殻変動により地盤が沈下し、ポンプ所の被災とあわせて、浸水した海水を排水できず、長期湛水域の形成も予測され、清掃工場や環境事業所が一時的に機能できないことも想定する必要がある、としています。(パネルを掲げる)。ガレキを南陽工場に持っていこうと思っても、「水につかってて運べんよ」と、いうのが環境局の立場だと思います。
 愛知県の「東海地震・東南海地震・南海地震等被害予測調査報告書」によれば、名古屋港周辺の地殻変動による沈降量は、概ね20cmから60cmとされています。
 名古屋港の背後に広がる海抜ゼロメートル地帯では、津波による浸水だけでなく、津波が収まった後も、潮の干満による浸水が継続し、長期にわたる湛水が予想されます。
 名古屋港は、災害時に、大規模な広域防災拠点として支援物資等の受け入れ拠点になると想定されています。しかし、長期の湛水化で市街地との交通が遮断されたらどうでしょう。湛水地域では避難所の開設すらできません。
 ところが防災危機管理局から出されている浸水被害予測には、浸水までの時間や浸水の範囲や、どれだけ沈むのか、深さの想定はありますが、どれくらいの期間、水がたまった状態つまり湛水が続くのか、という視点からの対策が見受けられせん。
 防災対策の基本に、港区など海抜ゼロメートル地帯ではかなり長期にわたる湛水域の形成を想定する必要があると考えますが、いかがでしょうか。湛水排除は広域的な課題であり、応急復旧活動や排水作業は広域的な相互協力が不可欠。国や県、多くの団体と連携・協力を図りながら対応したい(局長)
【防災危機管理局長】名古屋市震災対策実施計画の基本方針に基づいて、津波避難ビルの確保や山崎川の堤防耐震補強工事などを進めている。
 名古屋港管理組合では、防潮壁の液状化対策や堀川口防潮水門の耐震補強などを進め、国では、高潮防波堤の改修工事がすでに行われたところです。
 一方で、名古屋港の背後地域には、海抜ゼロメートル地帯が広がっており、標高が低い地域で津波による浸水が発生した場合には、津波が収まった後にも自然排水ができず、長期にわたって湛水する可能性があります。
 発災後の湛水排除は、広域的な課題でもあり、現在、市も参加する国の会議で検討していますが、応急復旧活動や排水作業は、広域的な相互協力が不可欠であり、国、県など関係自治体や様々な団体と連携・協力を図りながらしっかりと対応していきたい。

国や関係自治体を引っ張り、イニシアチブを発揮し、対策を急げ(意見)
【山口議員】被災後の、まちと港の姿をリアルに想像してほしいんです。789万トンとのガレキはどんな量でしょう。東日本大震災、岩手県での災害ガレキ発生量が618万トン。その1.27倍です。
 2000年の東海豪雨のガレキは3万8千トン。その207倍です。量だけでなく、悪臭やアスベストの飛散への備えも考えなければなりません。
 湛水被害についても想像力を働かせていただきたい。「伊勢湾台風災害誌」には、こうあります。
 「南陽町のごときは湛水60日間に及び、富田町一帯は20日~40日、港区、南区は20日から30日間の湛水をみたところが大部分であった。その水位も南区道徳地区の3mを最高に、1.5mから1mのところが南・港区一帯に広く存在し、0.5mのところはその背後にはなはだ広く存在している」
 広域的な連携・対応というだけでなく、防災危機管理局には国や関係自治体を引っ張っていく積極的にイニシアチブを発揮し、対策を急いでいただきたい。
 私は、以前の質問で「臨海部のマスタープラン」が必要だと指摘しました。このエリアには、通常はスポーツ施設や緑地公園などで、そして災害時にはいろんな面で柔軟に活用できるオープンスペースを意識的に確保していただくことも要望しておきます。

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