江上博之議員の予算案への反対討論(2018年3月19日)
安倍政権の悪政からの防波堤として、ムダな事業をやめ市民の暮らしを守る市政に
江上博之議員
安倍政権の悪政からの防波堤にならず
「景気がよくなったというけれど、実感がない」これが市民の声のではないでしょうか。働く人の実質賃金が減り、各家庭の実質消費支出も減りました。ところが、安倍内閣は、新年度予算で、生活保護基準をさらに下げるとしています。
こうした国の悪政の防波堤となり、人口減少に歯止めをかける予算編成が求められているにもかかわらず、逆に、さらに暮らしを厳しくする予算案になっており、以下、予算案の反対理由を具体的に述べます。
介護保険料を値上げ
第1に、介護保険料の年間6000円弱の値上げが提案されています。65歳以上の年金生活者にとって、年金が下がる一方で、年6000円近い値上げは堪えます。負担増を止めるために、私たちは、一般会計から負担金をもとめていますが、「考えていない」という回答です。制度としてできないわけでなく、負担増を止めて高齢者の生活を守るべきです。
子どもと親総合支援に逆行
保育園や幼稚園を廃止、図書館民営化
第2に、市長が「目下最大の行政課題ととらえるのは子どもと親への総合支援です。」と言いながら、待機児童がいるのに公立保育園は廃止を続ける理由はありません。若宮商業廃止の見直しのように、子ども、親、地域から存続の声がある公立幼稚園の廃止は見直すべきです。知の拠点の一層の充実が求められているのに図書館機能の縮小というなごやアクティブライブラリー構想も見直すべきです。少子化を克服して子どもたちが喜ぶ施策にすべきです。
人件費削減のために保育園や 学校給食などを民間移管
第3に、公立保育園の廃止とともに保育園を確保するため民間移管といいますが、運営費削減=人件費削減を行うのが目的となっています。小学校給食民間委託について、食の安全、食育から5校への委託化に批判があったのにさらに7校拡大です。これも人件費削減です。生涯学習センター5館の指定管理者制度導入で16館すべての生涯学習センターの制度導入となります。地域の社会教育の拠点として大切な施設を民間に委託するのも人件費削減です。それぞれの施設の目的を発揮するための行政責任を放棄するのみならず、低賃金労働者、非正規労働を増やすものであり、人口減少をさらに進めるものです。
金持ち優遇減税に121億円
第4に、大企業や大金持ち優遇の市民税減税を進めていることです。新年度約121億円の税収不足をつくって、市職員削減や費用削減で市民サービスはますます後退です。今回、再来年度以降法人市民税減税は廃止する提案がなされました。この提案は評価します。が、廃止による税金の増収分は、市民生活向上に使うべきです。さらに個人市民税も廃止することを求めます。市民合意もなく大型事業を推進
第5に、このように市民サービスをさらに削減する一方で、大型開発推進です。公共施設の目的、市民にとっての必要性、財政のあり方など市民に説明をすべきであるにもかかわらず、市民合意もなく、強引に大型開発を進めようとしています。
天守閣木造復元は急ぐな
「本物」にバリアフリーはない
一つは、2022年名古屋城天守閣木造化です。一般会計の貸付金も使っています。1点目が、重度の障がい者の方のバリアフリー実現のための調査を進めるという点です。しかし、利用する重量のある車いすを昇降できるのはエレベーターしかありません。建築基準法上、「原形を再現する建築物」しか木造復元は認められません。河村市長が「史実に忠実な木造化」にこだわり、「エレベーター」という語を発言しないのはこの点にあるのでしょう。ですから、復元天守の内部に求められるエレベーターを設置するのは不可能です。では、外部にエレベーター棟を建設し、復元天守とつなぐのか、これも景観も含めてあり得ない話です。であるなら、「バリアフリー検討調査」を行う必要はありません。方針をはっきり宣言すればいいのです。
特別史跡の本物の石垣の保全を優先せよ
2点目に石垣です。特別史跡の「本物」である石垣の調査を慎重に進め、いかに保存するか、補修が必要であればどうするか、が問われています。有識者が、天守周辺の石垣調査を問題にしています。さらに、天守内部の調査となればさらに問題点が出てくる可能性が大きくある、と言われています。「あわてるな」、しっかりと石垣調査を学芸員体制充実の中で行うべきなのに、木造復元計画を急ぐ実施設計予算を提案しています。
収蔵品の行先も決められない
3点目に、木造化を急ぎ、現天守閣の収蔵品をどうするのか最終的な見通しもないまま進めている点です。天守閣の5月7日の閉鎖を決め、今回、木造化のための木材調達予算まで提案しました。しかし、現在収蔵されているものを今後どう陳列するのか、検討がされるというだけです。金シャチ横丁の一角に収蔵庫を検討するという案もあるようですが、文化財保存、陳列に対する姿勢に疑問があります。学芸員など専門家の意見をよく聞くべきです。
50年間346万人の入場者があっても入場料値上げや民営化が必要
4点目に、建設費を入場料で賄うという点です。河村市長は、「木造化は、入場料で賄い、税金投入はしない」と断言して事業が始まりました。昨年、基本協定が結ばれた後で遅ればせながら民間コンサルタントに入場者調査を委託し、審議の中で、結果を明らかにしました。50年間、346万人は続くという数字です。昨年度192万人の入場者で、7億46百万円の入場料収入です。これを346万人で計算すると建設費などを入場料で賄うことはできません。市は、入場料を変更するから、赤字にならない入場者数だと回答しました。さらに、入場者数が予定に行かない場合でも指定管理者制度等を導入して、収支が図られるといいます。内容は、職員人件費を削減する案です。どちらも、河村市長発言を前提にしているから無理をしている数字としか思えません。税金投入となれば、市民サービス削減です。市民に負担をかけないという公約違反となります。税金投入をしないとしても、人件費削減で施設運営での行政責任を果たせません。誤った発言を前提に進めるのでなく、無理な計画はしっかりと見直し50年、100年先の見通しを持った施設にすることです。
耐震改修と機能充実で魅力ある城に
急いで木造化でなく、現天守閣の耐震補強、老朽化補強を行い、内部エレベーターを7階展望室まで昇るように改修する。学芸員の充実で内部の博物館機能を充実し、名古屋城へ行けば、名古屋の歴史、未来、名所がわかる情報発信施設にすれば、障がい者の方の声も満たし、市民サービス削減もなく、魅力ある名古屋城は実現可能ではないでしょうか。
リニアを口実にした名駅開発
リニア談合の真相解明まで、まちづくり公社での支援をやめよ
二つは、リニアを見据えたまちづくり推進についてです。リニア建設を巡って大手ゼネコンによる談合事件、JR東海自身の問題も報道されています。名古屋市は、全国新幹線鉄道整備法に基づいてJR東海に協力し、外郭団体のまちづくり公社が用地買収しています。名古屋市として、談合事件の全容が明らかになるまで工事を中止するよう、JR東海に求めることが先決です。
ターミナル機能強化では鉄道事業者に 応分な負担を求めよ
リニア開業を前提に推進されている名古屋駅ターミナル機能の強化は、乗り換えをわかりやすくし、バリアフリー化を図ることは必要です。問題は想定される巨額の事業費について、関係事業者に応分の負担を求める姿勢が弱く、本市の過大な財政負担が懸念されます。
地下通路より歩道の拡幅を
駅周辺開発では、笹島交差点南からささしまライブ地区への巨大地下通路整備も問題です。名古屋は、地下街が多く、地上の賑わいが見えません。賑わいは、地上の人がいてこそ意味があります。日本共産党は、歩道を拡幅し、地下通路の必要性はないと指摘してきました。今、出入り口協議は難航しており、着工のめどが立たない事態になっています。ここまで遅れたのですから地下通路の整備は凍結し、歩行者アクセスの改善は、歩道の拡幅などによって図るべきです。河村市長も、「地下道に人を歩かせるより地上を歩いたほうがいい」とここでは私の意見と同じ報道がされています。 新たなる国際展示場は必要ない
三つは、国際展示場のさらなる建設のための検討です。中止すべきです。空見地区への国際展示場建設について、私たちは、全国的に国際展示場建設ラッシュで、何のために必要なのかを考えればもう建設の必要はないと主張してきました。ところが、予算案で、河村市長はさらなる国際展示場の場所を求めて検討するための予算を計上しました。しかし、昨年3月15日経済水道委員会で表明された「愛知県の認識」で、「県としては、空見地区での展示場構想は、事業可能性がなく、具体化できないと考えている。したがって、賛同することはできない。」として愛知県は反対を表明しています。日本共産党はこのことも反対理由にしました。しかし、予算は採択され、事務方の折衝要請が始まりました。が、昨年9月までの段階でも折衝困難でした。もう、この段階で市長の姿勢が問われているのに、その後話し合いがないまま、今年1月河村市長が知事に電話を掛けたようです。その結果は、愛知県知事から市長に昨年と同一内容の回答があったと市は答弁しました。できないと言っていることを進めると言うのですから、相当の熱意で事に当たらなければならないのに、これはどういうことでしょう。わたしは、昨年この論議に参加してきましたが、何のために長時間論議をしたのでしょうか。1年間全くことは進んでいないではありませんか。ここには河村市長の熱意も、展示場の必要も見えてきません。はっきりとこれ以上の国際展示場建設は断念、とすべきです。
以上、主な反対理由を述べてきました。
敬老パスの利用拡大は評価したい さらなる拡大を求める
一方、予算案では、敬老パスの上飯田連絡線利用拡大が前進しました。市営交通以外への利用の第一歩です。高齢者の社会参加を進めるため、さらなる拡充を求めます。今回、敬老パス利用で、年100万円に値する使い方が問題になっていますが、月にすると8万3千円。一日平均13回の利用とは異例の人ではないでしょうか。これを例に敬老パスの利用限度額を抑えるのでなく、健康増進に寄与していることを呼びかけるべきです。
組み替え案の方向で市政運営の転換を
先ほど私たちは、予算の組み替え案を提案し、国の悪政の下でも市民の暮らしを守り、少子化に歯止めをかけるための提案を行いました。市民税減税を廃止、不要不急の大型開発事業を見直せば暮らしの財源は確保することができます。組み替え案のうち、特にその一つは、介護保険料の値上げを抑えるために一般会計からの負担を提案(34億円)しています。制度として、一般会計から補てんすることは禁止されていません。市民生活を守るために市として「考えて」介護保険料の値上げを抑えます。二つは、学校給食の無償化(42億円)で子どもたちの食を守ります。三つは、18歳までの医療費無料化(15億円)です。子どもたちの成長、そして、貧困と格差を解消する大切な施策です。
10年、20年、50年先をにらんだ予算編成を
国の悪政で市民生活が直接痛みつけられるだけでなく、名古屋市への財源などを使っての圧力で間接的に市民の痛みも出てきます。少子高齢化、人口減少はボディブローで影響します。名古屋市自ら目標をもって10年、20年、50年先をにらんで、新年度予算を編成することを求めて討論を終わります。
キーワード:大型開発・ムダ遣い見直し、税、地方自治体と住民参加、江上ひろゆき