名港議会 山口清明議員の一般質問②広域防災拠点(2018年3月27日)
大規模な広域防災拠点について
山口清明議員
東京や大阪の「基幹的広域防災拠点」と名古屋の「大規模な広域防災拠点」はどうちがうのか
【山口議員】南海トラフの巨大地震などを想定した防災関連計画が国でつくられています。首都圏直下型地震等を想定した東京湾には、川崎港の一角に基幹的広域防災拠点(東扇島)が整備されています。
南海トラフ巨大地震の想定に対しては大阪湾の堺泉北港の一角に基幹的広域防災拠点が整備されています。どちらも視察してきましたが、ヘリポートとなる広大なオープンスペースと耐震強化岸壁、そして臨海防災センターを備えています。
普段は臨海緑地として市民の憩いの場としても利用されていますが、いざというときには広域防災拠点となります。
さて、大阪湾同様、南海トラフ巨大地震による大規模な災害が予測される名古屋港で広域防災拠点の整備はどうなっているでしょうか。
名古屋港は、国の防災関連計画では、基幹的広域防災拠点ではなく「大規模な広域防災拠点」として位置づけられていますが、どうちがうのでしょうか。
東京湾と大阪湾の港に整備された基幹的広域防災拠点と、名古屋港が位置づけられた「大規模な広域防災拠点」とはどんなちがいがありますか。
それぞれに期待される役割と機能は何か、名古屋港は国の防災関連計画ではどう位置づけられているのか、うかがいます。
広域的な緊急物資や復旧資機材の輸送の拠点として「整備する」か「既存施設」の違い
【危機管理監】中央防災会議が定めた「南海トラフ地震防災対発推進基本計画」や「南海トラフ地震における具体的な応急対策活動に関する計画」、いわゆる「具体計画」において、「基幹的広域防災拠点」は、広域的な緊急物資や復旧資機材の輸送に当たり中心的役割を果たす防災拠点とされている。
「大規模な広域防災拠点」は、空港や港湾などの既存の施設を対象として、都道府県が全国から災害応急対策活動に係る応援を受ける中、救助・救急、消火活動等、医療活動、物資の受入れ・集積・分配を総合的かつ広域的に行う防災拠点とされており、静岡空港、名古屋飛行場、名古屋港、熊本空港、大分スポーツ公園が位置づけられている。
本港には、具体計画で、大規模な広域防災拠点として、被害が甚大な中部地方への人員、物資、燃料、資機材等を大量に受け入れ、災害応急対策を総合的かつ広域的に実施するための拠点としての役割が位置づけられている。災害がれきの接収に必要な、重機・人員・仮置きスペースなどの位置づけはどうか、訓練の実施はどうか
【山口議員】名古屋港港湾計画には、「安全・安心な港湾の構築」として次のように書かれています。
“地震・津波・高潮などの大規模災害に対して、背後住民の生命・財産や背後地域の産業活動を守るため、ハード・ソフト一体となった防災・減災対策を進めます。
そのため、平時から防災訓練の実施や関係機関との連携強化、港湾BCPの実効性の向上に取り組みます。
また、被災時において、緊急物資などの円滑な輸送を確保し、地域経済などへの影響を最小限にとどめ、早期に復旧・復興できるよう、耐震強化岸壁の適正配置など災害に強い港づくりを図ります。“
私はこの議会でも先日の名古屋市会でも、災害がれきの発生予測と対応について質問してきました。
被災時において、緊急物資などの円滑な輸送を確保するためにも、大量に発生するであろう災害ガレキへの対応が大きな課題です。名古屋港でも事業継続計画、港湾BCPには、災害ガレキについてもいくつか記述があります。
災害発生時の被害想定に絞って紹介すると、“水域(航 路・泊地)=津波に伴って背後地で発生した瓦礫や原木が港内に漂流、自動車等が海底に沈降。荷さばき地=ヤード上に瓦礫が散乱。臨港道路=道路上に瓦礫が散乱。
津波による浸水も予想されるため、倒壊した家屋等の瓦礫や港湾に蔵置された貨物等 が海域へ流出することが考えられる。“などとあります。
しかしガレキ発生量の推計はまだないと聞いています。ガレキを揚収する(ひきあげる)訓練はどうしているのか。そこでうかがいます。
名古屋港が広域防災拠点としての役割を果たすうえで災害ガレキへの対応が不可欠ですが、災害ガレキの揚収に必要な、重機・人員・仮置きスペースなどについて港湾BCPではどのように位置づけているのか、訓練は行われているのか、答弁を求めます。
災害がれきの量的推計は極めて困難。揚収に必要な重機・人員は、「協定書」に基づき確保する。仮置きに必要なスペースは候補地を検討する
【危機管理監】港湾区域内で発生する災害がれきの量的推計は、国の指針において推計方法が示されていないので、発生量の予測は極めて困難ですが、災害がれきの揚収に必要な重機・人員は、2015年6月に策定した名古屋港BCPにおいて、国、本組合を始めとする港湾管理者、一般社団法人日本埋立浚渫協会中部支部や中部港湾空港建設協会連合会などの港湾関係団体で、2016年3月に締結した「災害発生時における緊急的な応急対策業務に関する包括的協定書」に基づき、港湾管理者から港湾関係団体に要請し、確保することとしている。協定書では、港湾関係団体は災害がれきの揚収を含めた応急対策業務を迅速に実施できるよう、人員及び資機材の確保に努め、毎年その情報を港湾管理者等に連絡することとなっている。
港湾区域内で揚収した災害がれきの仮置きに必要なスペースは、名古屋港BCPにおいて、応急復旧を円滑に実施するため、予め、航路啓開を行っていくために必要となる、災害がれきや漂流物の仮置場の候補地を検討することとしている。
災害がれきの揚収範囲は、港内の広範囲に渡ると考えられること、海上からの緊急物資の円滑な受入れや、本港の物流機能の早期回復のための利用用途との調整が必要であることから、国、県、所在市村、港湾関係団体及び本組合が連携を図れるよう検討していく。
訓練は、これまでに中部地方の国、地方公共団体、各関係機関等による広域連携防災訓練の中で、作業船を使用したコンテナや木材を揚収する訓練を実施している。名古屋港BCP協議会の中で発災後から航路啓開を実施するまでの関係者間の行動についての図上訓練を実施している。引き続き、災啓対応力の向上に向け、関係者間で連携して訓練を実施する。
防災拠点として多面的に活用できる新たなスペースを確保する必要はないか
【山口議員】最後に、いまの名古屋港のままで大規模な広域防災拠点としての機能を十分に果たせるのでしょうか。私にはまだ不安があります。
防災拠点として多面的に活用できる新たなスペースを確保する必要はありませんか。
国、県、所在市村、本組合が防災機能の強化に向けた取り組みを進める中で、関係者が連携して検討していく
【危機管理監】中央防災会議が定めた具体計画は、南海トラフ地震がいつ発災しても対処できるよう、現時点において保有している人員、利用可能な資機材、施設、防災拠点等を前提とした活動内容とされており、本港における現時点の機能を前提として、大規模な広域防災拠点に位置づけされた。
具体計画では、南海トラフ地震を想定した各種訓練を通じて、実効性を高めていくことや、インフラ、施設、資機材等の整備の進捗に応じて、随時、必要な見直しを行うこととされている。そのため、防災拠点として多面的に活用できる新たなスペースの確保の必要性は、国、県、所在市村、本組合が防災機能の強化に向けた取り組みを進める中で、関係者が連携して検討していく必要がある。
名古屋港が「基幹的広域防災拠点」ではなく「大規模な広域防災拠点」とされたことについてどう考えているか(再質問)
【山口議員】東京湾にも大阪湾にも基幹的広域防災拠点が設けられました。名古屋港が事実上外された格好です。
どちらも機能としては、広域的な支援物資の受け入れが中心ですが、名古屋港では既存の施設で十分というのが国の認識です。これでいいのですか。
国際コンテナ戦略港湾の選定から漏れ、基幹的広域防災拠点の対象からもはずれて、大規模な広域防災拠点という位置づけにされたことについて、専任副管理者としてどのようにお考えでしょうか。率直な見解をうかがいます。
南海トラフ地雇などの大規模災害時において、本港が担う役割を果たすことができるよう、しっかり取り組んでいく(専任副管理者)
【専任副管理者】近い将来に高い確率で発生することが予想されている南海トラフ地震どの大規模災害時において、人々の生活を守るとともに、中部地域のものづくり産業が速やかに復旧・復興できるよう、本港は、現時点の機能を前提とした大規模な広域防災拠点としての役割にとどまることなく、関係者が一体となって、防災機能の更なる強化に取り組んでいくことが必要であると考えている。
現在、金城ふ頭では緊急物資輸送対応の耐震強化岸壁の整備に、飛島ふ頭ではコンテナ輸送対応の耐靂強化岸壁の整備に取り組んでいるところであり、これら施設の早期完成を目指すなど、南海トラフ地雇などの大規模災害時において、本港が担う役割を果たすことができるよう、しっかり取り組んでまいります。
積極的にこういう整備や準備が必要だと課題の提起を(意見)
【山口議員】防災については、現時点の機能を前提にした役割にとどまることなく、更なる防災機能の強化に取り組んでいくことが必要との答弁をいただきました。
防災は管理組合だけで取り組めるものではありませんが、現場から積極的にこういう整備や準備が必要だと課題を提起してください。
現在、金城ふ頭で、緊急物資輸送対応の耐震強化岸壁を整備中とのことですが、この岸壁を中心にした 一定のスペースを防災拠点として整備することもぜひ一緒に検討してください。強く要望しておきます。
キーワード:環境と防災、まちづくり、山口清明