2018年6月定例会

柴田民雄議員の議案外質問①(2018年6月25日)

介護認定事務の委託・集約化をやめよ
柴田民雄議員

委託化・集約化で大幅に遅延した認定事務は直ちに改善を
【柴田議員】要介護認定事務の委託化・集約化が引き起こした重大事態について、健康福祉局長に伺います。
 介護保険制度は、まずは介護認定を受けるところから始まり、要介護状態区分が確定してから、介護保険が利用できるようになります。また、介護認定の申請は基本的にケアマネージャーが代行しています。
 本市では、従来、要介護認定に係る事務業務は、受付から認定審査会まで、各区役所ですべて行っていました。しかし、今年の4月から、全市一括して、認定審査会以外の業務が委託され、申請の中で最も数の多い更新申請は、委託した事務センターへ郵送で行うことになりました。事務センターでは、受け付けた全ての申請書の内容確認、入力、認定調査依頼のみならず、調査結果のチェックと認定審査会の資料作成など認定の要である業務も全て、事務センターで行います。

 要介護認定の決定は、介護保険法において「申請のあった日から三十日以内にしなければならない。」とされています。
 この委託が開始された4月以降、「いつまで待っても認定結果が届かない」「申請を代行したケアマネがちゃんと仕事をしていないのではないかと利用者さんから責められる」「事務センターに問い合わせても電話がつながらない」「郵送なので申請書が届いたのかどうかもわからない」などの苦情や情報が党市議団に寄せられるようになりました。
 健康福祉局の説明によると、申請から認定決定までの平均日数は、2017年度34.7日でした。これは特別な理由で遅れたケースも含めた平均なので、一般的には30日以内に認定が下りていたことがうかがえます。ところが、4月以降の、更新申請分の介護認定決定までの平均日数は、4月39.9日、5月53.5日、6月は月前半の速報値で、54.9日と、ほとんど2か月近くかかっている状況がわかりました。新規・区分変更も40日~50日かかっている状況とのことです。これには驚きました。
 党市議団は、居宅介護事業所に緊急アンケート調査を行いました。100事業所から、発送後早々に次々と返信をいただき、自由記載欄には認定遅延による利用者への影響が数多く書かれており、この遅れが、単に「なかなか認定が下りないなぁ」という問題ではない、大変な事態が起こっていると、事業所の怒りが手に取るようにわかりました。

市民や事業者の声
○認定申請して2か月過ぎてもまだ結果が届かず業務が滞る。
○認定結果が届かず利用者に迷惑をかけている。ケアマネに苦情が来る。
○認定が3か月も遅れたため、利用者にまとめて3か月分として10万円も請求することになった。年金生活者には非常に多い負担。
○認定結果が出ない間は暫定プランでサービスを提供しているが、事業所は保険請求ができないため収入減で経営に影響が出ている。
○これまでは認定に伴う受付はすべて区役所窓口だったので、申請から認定調査まで数日で済ませていたが、4月からは事務センターへの郵送となったため、書類の到着が遅く、業務に大変支障が出ている。
○認定結果が遅れると、とりあえず暫定プランで担当者会議を開催し、認定が出ると再度担当者会議を開催することとなり、2度手間であり、利用者や事業所にも多大な迷惑をかけることとなる。
○センターに何度電話しても通じない。

 利用者にとっては、認定結果が無ければ正式に介護がスタートしてもらえない、必要な介護が受けられないことになり、2か月待っている間に亡くなられるケースもあります。区分変更の場合、申請直後から利用料請求が止まるため、認定が遅れると、その期間の2か月分、3か月分の利用料請求が一度にドンとくることになり、年金額を上回るような請求額が来て、とても支払えないという事態も見られます。
 また介護事業者にとっては、介護認定が暫定のままでは保険請求も利用者への利用料の請求もできず、2か月3か月と、サービス提供を行う支出だけが続くことになります。その間の収入が途絶えることになり、小規模な事業所では経営の危機を招きかねない事態を引き起こします。
 名古屋市の施策によって、「あってはならないこと」が引き起こされ、委託による市民サービスの低下が起きているのは明らかです。
 そこで伺います。この委託・集約化は、そもそも何を目的として行ったものだったのか。はつらつ長寿プランなごや2018にあるように、認定にかかる期間を短縮することが目的だったのではありませんか。
 そして、その目的に照らして、まったく正反対の認定期間の大幅な遅延という「あってはならない」事態が引き起こされていることに対して、その原因をどう分析しているのか。その対策として、どのような手を打ってきているのか、今後の改善の見通しはどうなっているのか。責任ある答弁を求めます。

事務処理の遅れは8月中に解消見込み(健康福祉局長)
【健康福祉局長】委託化・集約化の目的は、今後増加が見込まれる認定申請件数に対して、委託可能な事務を委託化・集約化して事務効率を上げることで、区役所・支所の窓口サービスを低下させないようにするもので、認定決定期間の短縮化や審査判定の平準化などの効果も見込んだ。
 事務処理の遅れの原因は、受付方法の変更等による委託事業者に対する問い合わせが集中したことや、事務処理に想定以上の時間を要したことによるもので、介護認定事務センターでの事務処理の遅れにより、市民や関係事業者には、大変迷惑をかけました。
 委託事業者が、介護認定事務センターの人員及び電話回線の数を大幅に増やすなど体制の強化を行い、現在は介護認定審査会における審査判定件数も順調に推移している。
 現在の取り組みを継続していくことで、事務処理の遅れは8月中には解消する見込みで、その結果、認定決定期間は、9月頃には従前の水準に戻る見込みです。今後も適正な体制を確保して、当初の目的が達成できるよう円滑に事務を進めたい。

事務処理の遅れによる損害は名古屋市の責任だ(再質問)
【柴田議員】これだけの混乱を引き起こし、謝罪の言葉もありません。
 そもそも遅延の原因は何だったのか。委託化・集約化に際して、従来区役所で行ってきた介護保険認定にかかる事務作業量とその重みを、十分に把握していなかったのではありませんか。
 私たちの調査でも、委託業者の介護認定審査に提出する書類が、不備であったり不明な点があるなど、調査書のチェックという業務に必要な水準に達していないためなのか、審査会の手前で事務センターに返戻=差し戻しとなる件数がかなりの量にのぼっているようです。そうなると、事務センターでは返戻された書類を、再度認定調査員に問い合わせて、資料を作り直し、再び区役所に送付する、直営だったらこんな手間は全く生じなかったわけですから、委託化・集約化したことによって、かえって余計な時間と手間がかかるようなワークフローになったわけです。
 市議団が行った、アンケート調査では、次のような事例がいくつもありました。
 5月31日までの認定期限であった、要介護2の方は、4月26日に更新申請をしました。5月末には結果が出ることを期待していたところ5月24日、「認定事務処理の遅延のため」という理由で、介護度の決定が6月19日になる見込みであるとの通知が届いた。やむなくケアマネージャーはこれまでよりも低い、要介護1度で暫定プランを立て、保険証の有効期限が過ぎた6月以降サービス提供することにしました。結局、申請から48日後、6月12日に遅れて届いた保険証は、暫定よりもさらに低い、要支援2となっていました。これでは認定期限切れになってからの12日間のサービス提供分およそ6,000単位、約6万円相当分が、保険適用外となってしまいます。
 この損失は誰が被ることになるのでしょうか。利用者に全額負担を求めるのでしょうか。事業者さんが被ることになるのでしょうか。この損害は、認定が遅延しさえしなければ起きなかったわけであり、損害の発生原因は、認定事務の遅延そのもの、その委託元である名古屋市に責任があることは、明らかなのではありませんか。

(お詫びはなく)迷惑をかけたと認識(健康福祉局長)
【健康福祉局長】市民ならびに関係事業者には、大変迷惑をかけたと認識している。個別の質問には、内容を詳細に確認する必要があるので、この場では答えることはできない。

責任を痛感し本気で短縮する気が感じられない。個別に確認をして対応を(再々質問)
【柴田議員】個別のケースについては、お答えできないことはわかっています。このような損害を引き起こしている責任を痛感して、本気で認定期間を短縮する気があるのかどうか、それが答弁からは感じられません。
 個別のケースについて、問い合わせがあれば、個別に確認をして対応をしてゆくということでよろしいですか。

窓口で問い合わせがあれば丁寧に聞きたい(局長)
【健康福祉局長】窓口において、個別の問い合わせがありましたら、内容について丁寧に聞きたい。

事業者も利用者も深刻な事態に陥っている。しっかりと対応を(意見)
【柴田議員】事業者も利用者も深刻な事態に陥っています。問い合わせにはしっかりと対応していただきたいと思います。

30日ルールの無視を、あと3カ月も放置するのか(再々再質問)
【柴田議員】さて、最初の答弁に戻りますが、この遅延、いつまでに改善する見込みか、という質問に対して、「9月頃には従前の水準に戻る見込み」とのご答弁でした。
 あと3か月も、法に定められた30日以内というルールを逸脱する状態が続くことを良しとしていていいのですか。どう考えているんですか。

窓口で問い合わせがあれば丁寧に聞きたい(局長)
【健康福祉局長】委託事業者が体制の強化を行い、現在は介護認定審査会における審査判定件数も順調に推移している。

申請書の受付、調査依頼書・暫定被保険者証の発行は区役所窓口で(再々再々質問)
【柴田議員】今回の緊急アンケート調査で、圧倒的多数の回答が寄せられているのが「せめて、申請書の受付と、調査依頼書・暫定被保険者証の発行は区役所窓口で」やってほしいという要望です。これはすぐにでもできるのではないですか。

一日も早く、遅延を解消するよう努める(健康福祉局長)
【健康福祉局長】更新申請の受付などを区役所窓口へ再度変更することは、今回の遅延をすぐに解消する有効な手段とは考えていない。
 区役所の人員は、事務量に見合った体制に変更をしており、新たな事務の追加は困難です。

業務量を見誤って職員を削減、認定事務まで委託したことが原因だ(再々再々再)
【柴田議員】つまり、業務量を見誤った上、早々に区役所の職員を削減し、介護保険の最も根幹の業務である認定事務まで委託業者に投げてしまった、このことが今回の問題の元であると認めますか。

委託時は、必要な体制を取ることを前提に委託した(局長)
【健康福祉局長】委託時には、本市の事務量を算定の上、必要な体制を取ることを前提として委託を行っているところでございます。

認定の遅延による損害は、市の責任で対応を(意見)
【柴田議員】介護認定の、一部の単純な事務的作業を業務委託して効率化するということは、あってもいいかもしれません。しかし、今回の遅延の主要な原因になっていたのは、認定調査のチェックや、認定審査会資料のチェックという、いわば、介護認定の根幹にかかわる部分です。名古屋市がこれまで、正確な認定結果を出すために、認定調査員に対し、いかに丁寧な聞き取りをしていたか、その過程があってこそ、30日を目途に結果を出せていたのではないですか。介護保険事業の根幹部分を、いきなり全市一度に委託に出したのが、大失敗だと言わざるを得ません。
 介護認定事業に対する市民の信頼を、大きく損ねてしまいました。
 名古屋市は、介護保険料が愛知県下で一番高い上、介護認定は、委託化・集約化で、法律に背いて大幅に遅延するという最悪の事態を半年間も引き起こしているということです。
 認定期間の短縮だけでなく、市民からの信頼を取り戻すため、認定調査のチェックと、審査会のための資料などの質が保たれていないなら、少なくとも認定決定にかかわる部分は市に戻すべきです。もしくは、委託業務の内容がいつでも精査できるように、一連の作業を行政区単位でもいいので、直営を残すことを検討すべきです。
 そして、現在すでに発生している、認定の遅延による損害は、市の責任で、対応することを求めます。
 この問題は、引き続き市議団として追っていきます。市の真摯な対応を強く求めて私の質問を終わります。

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