名港議会 山口清明議員の一般質問①ヒアリ対策(2018年6月7日)
ヒアリ等の特定外来種などの侵入対策について
山口きよあき議員
昨年5月以来、名古屋港など12都府県で特定外来生物のヒアリを確認
【山口議員】特定外来生物であるヒアリですが、昨年5月に兵庫県尼崎市で、中国広東省の南沙港から運ばれてきたコンテナから見つかって以来、現在までに12都府県でその存在が確認されています。愛知県では、名古屋港から輸入されたコンテナ等から弥富市、飛島村、名古屋市及び春日井市で合計1100匹以上が確認されています。
夏、気温が高まるとヒアリの活動が活発になるとも言われており、あらためて社会的関心も高まります。関連して、いくつか新たな動きも報じられています。
新たな外来アリが350mもの巨大な巣をつくる
一つは、名古屋港では特定外来生物のヒアリやアカカミアリとは別に、侵略性の高い外来アリ、「ブラウジングアント」(別名アリクイアリ、
日本ではハヤトゲフシアリというそうです)が発見されたことです。
昨年7月に飛島ふ頭のコンテナターミナル近くで長さ約350mもの巨大な巣をつくっているのが発見されました。どうも在来種を駆逐して繁殖していたようですが、いつから定着していたのかは不明です。その後、鍋田ふ頭でも見つかり愛知県は弥富市や飛島村とこの4月からあらためて駆除に乗り出しました。
個人取引の輸入品からもヒアリを発見
二つめに、5月10日新たにヒアリが確認されたことです。見つかった場所が問題です。大阪府八尾市の一般家庭内で、コンテナを使って輸入された中国製の家電製品の段ボール箱を開けたら、ヒアリの女王アリの死骸が出てきたのです。
インターネットを通じて海外の業者から商品を買う個人間取引が増加しています。様々な貨物が一つのコンテナに混載されて運ばれてきます。港を素通りするコンテナがブラックボックスと化してはいないでしょうか。
神戸市がヒアリ対策マニュアルを作成
三つ目に、この3月に神戸市が全国の自治体では初めてのヒアリ等対策マニュアルを作成したことです。その特徴は、コンテナヤードでの発見時の行政機関の対応だけでなく、コンテナからの荷出し中に見つけた場合の事業者の対応についてもマニュアル化していることです。
名古屋港での対策は今のままでいいのか
さて、名古屋港では今年度、「名古屋港ヒアリ調査等委託」として1943万7千円が予算化され、コンテナターミナルでは毎月、ターミナル周辺緑地では年4回の生息調査が予定されて
います。ヒアリが生息しにくいコンテナヤードの環境整備、地面での対策は既に取り組まれています。しかしそれで十分ですか。
ひとつはコンテナ内部の対策です。神戸市のマニュアルではコンテナからの積荷取り出し=業界ではデバンというそうですが、デバン時にヒアリ等を発見した場合の初動防除マニュアルがきめ細かく規定されています。デバン中に発見したら、積み出しを中止し、扉を閉めることとし、デバン関連事業者に、は殺虫剤やサンプルとしてのアリを捕獲するための道具を常備するよう求めています。
港湾管理者はいちいちコンテナを開閉して中身をチェックしません。コンテナ内部に紛れ込んでいたヒアリ等を国内に侵入させないためには、事業者との緊密な連携が求められています。そこで三点うかがいます。
コンテナからの積荷取り出し時のヒアリ等への対応はどうなっているか
名古屋港では、コンテナからの積荷取り出し時のヒアリ等への対応はどうしていますか。殺虫剤やサンプル用捕獲キットなどの確保、荷主や運送業者等との連携はどうなっていますか。
事業者等がすべての個体の殺虫処分しコンテナを燻蒸消毒。荷主や港湾運送事業者等とは講習会などで情報共有などで連携(部長)
【港営部長】コンテナからの積荷の取り出し時にヒアリが発見された場合には、事業者等がすべての個体の殺虫処分、コンテナの燻蒸消毒を行います。さらに、環境省、地方公共団体、港湾管理者、事業者、施設管理者等が連携して、発見された地点や輸送途中でコンテナが一時保管された地点において、トラップやべイト剤の設置、目視点検を実施しており、本組合からも必要に応じて、薬剤等の提供を行っています。
荷主や港湾運送事業者等との連携は、日頃から識習会等が実施されていますが、直近では本年1月に、環境省が実際の防除を行うための参考となる「ヒアリの防除に関する基本的考え方」を公表し、2月に名古屋市内で同省が主催した「ヒアリ講習会」において、地方公共団体、港湾管理者、港湾関係者等との情報共有が図られています。
個人輸入等の貨物混載コンテナの安全管理は?
【山口議員】新たに発見されたヒアリは混載コンテナを経由してやってきたとみられます。名古屋港では輸入コンテナが年間120万TEUに達しますが、個人輸入等の貨物混載コンテナはどれくらいあり、その安全管理は誰がどう責任を負っているのか、混載コンテナについての現状をどう把握しているか。あわせて答えてください。
ヒアリ等の侵入を防ぐための根本的な解決には輸出する国での防除対策、積出港での対策が不可欠です。このことは国へも要望してきたと思いますが、現在その対策はどこまで進んでいるのか。答えてください。
荷主を特定する情報が入手できず、混載コンテナの数量は把握できない。荷主等に注意喚起している(部長)
【港営部長】コンテナ輸送には、単体の荷主で一本のコンテナを満たしたものと、複数の荷主の貨物が混載されたものがあります。名古屋港の外貿輸入コンテナは年間約120万TEUある中、統計法に基づき、港湾関係者より、貨物の品目、仕出国等についての情報を得ていますが、荷主を特定する情報は入手できないため、混載コンテナの数量を把握することはできません。
物流が多様化し、様々な形でヒアリ等の混入が想定される中、コンテナの安全管理は、荷主や物流関係者に、本組合からも文書やホームページ等で注意喚起を行っている。
国への要望と国からの対策状況は
【山口議員】愛知県からも国へ要望していますが、侵略性が高い新たな外来種が発見された場合は、特定外来生物への指定を速やかに行うことが必要です。日本列島の環境と生態系を保全するためにも、特定外来生物等の侵入と定着を水際で防ぐことが大きな課題です。そこでうかがいます。
今回、ブラウジングアントの侵入を許し、かつ今回のヒアリ騒動までそれに気づけなかったのはなぜですか。の教訓をどう今後に生かしますか。
積出港での対策を含めた総合的な施策や財政的支援を要望(部長)
【港営部長】積出港での対策を含めた総合的な施策及び財政的な支援については、県・市・本組合それぞれの議会議長から環境大臣及び国土交通大臣へ緊急要望をはじめ、 愛知県知事から国土交通大臣への緊急要望、六大港湾協議会を通して行った国土交通大臣への緊急要望などを行っています。
積出港での対策は、環境省による「日中韓三カ国環境大臣会合」や「ヒアリ防除等に関する専門家会合」等において議論が進められている段階ですので、引き続きその動向を注視していきます。
それ以外の総合的な施策としては、国土交通省がヒアリの生息環境となり得るコンテナターミナルの舗装の亀裂を補修する緊急工事を昨年度実施したほか、環境省及び国土交通省においてヒアリ等の全国的な生息調査が今年度も引き続き実施されると聞いています。
財政面での支援では、ヒアリの定着防止を図るため国土交通省が創設した補助制度を活用し、コンテナヤードの舗装改良を進めていきます。
アリクイアリを特定外来生物に指定を。港の環境部門の強化を
【山口議員】まずはこのアリを特定外来生物に指定するよう、港湾管理者からも国に働きかけるべきではありませんか。
国境を越えた交易を担う国際港湾では常に新たな外来種が侵入する可能性があります。管理組合としても環境部門の強化を図るべきと考えますがいかがですか。答弁を求めます。
国に対して「特定外来生物への指定の検討」を要望。関係機関との連携を強化して水際での防除に取り組む(部長)
【港営部長】ブラウジングアントは、昨年、名古屋港において、国内で初めて生息が確認された外来種のアリです。ヨーロツパ原産で、オーストラリアのほか、マレーシア、インドでも確認されています。
ヒアリのように人への直接的な被書はありませんが、生態系に大きな影響を与える可能性が高いことから、水際を管理する港湾管理者として、愛知県及び生息が確認された弥富市、飛島村が行っているコンテナターミナルや臨港道路、臨港緑地における調査・駆除に協力をしています。
ブラウジングアントの確認を受け、昨年11月には、愛知県から国に対して「侵略性が高いと考えられる外来種が発見された場合は、特定外来生物への指定の検討を迅速に進めること」との要望がされました。
港湾を主な侵入経路とするこれらの特定外来生物等への対応は、国際港湾として膨大な貨物を取り扱う中、海外からの侵入を防ぐことは難しい課題ですが、名古屋港で働く方々や来訪される方々の安全・安心の確保に向け、今後も、コンテナターミナルや臨港道路、臨港緑地等の調査を引き続き行うとともに、環境省、国土交通省、愛知県、名古屋市をはじめとする関係機関との連携を一層強化することにより、水際での防除に取り組んでいきたい。
ヒアリ等の対策で、港湾管理者の資任と役割をどう果たすべきか、様々な連携をどう調整して進めていくのか(再質問)
【山口議員】コンテナには、誰の、どんな貨物が、どんな状態で入っているか、混載コンテナの実態が港湾管理者では把握しきれていない、との答弁でした。
物流をスムーズにするためにコンテナ輸送を軸にした効率的な港湾づくりが進められてきましたが、その負の側面として、外来生物の侵入が、従来の予想を超える規模で発生しかけています。
神戸市のマニュアルを紹介しました。市民県民にもっと見える形で共通対策を示すことが必要ではないでしょうか。この対策、管理組合ですべて請け負え、とは言いません。
しかし、港の大事な問題だ、しっかり取り組みましょう、と港湾運送業界や国や県などの行政機関を共通の方針でまとめていくには、やはり名古屋港管理組合がイニシアチィブをとるべきではないか。
環境面の体制強化を提案しましたが、連携に努める、だけでなくみなさんがたの誰かが全体の司令塔になってしかるべきだと私は思います。
ヒアリ等の対策について港湾管理者としての責任と役割をどう果たすか、様々な組織との連携をどう調整して進めていくのか。答弁を求めます。
環境省、国土交通省、愛知県、名古屋市、関係市村、港湾関係者等との連携を一層深め、水際での対策をより確実なものにしたい(部長)
【港営部長】港湾管理者の責任と役割としては、水際でのヒアリ定着防止及び港湾関係者や来港者の安全・安心を確保することと考えています。
そのための主な取り組みとしては、「侵入監視」 、「生息状況調査」、「侵入を確認した場合の確実な駆除」となりますが、本組合だけで全てについて対応することは困難です。このため、必要に応じて情報提供、意見交換の場を設けていただけるよう積極的に働きかけることで、ヒアリ対策を担う一員として、環境省、国土交通省、愛知県、名古屋市、関係市村、港湾関係者等との連携を一層深め、水際での対策をより確実なものとしていきたい。
緊急の課題でなく不断に取り組む業務として取り組みを(意見)
【山口議員】港の機能を維持し、信頼を高めるための重要な業務です。緊急の課題でなく不断に取り組む業務ということだと思います。しっかり取り組んでください。
キーワード:環境と防災、まちづくり、山口清明