名港議会 山口清明議員の一般質問②浮きやネ式タンクの震災対策(2018年6月7日)

石油コンビナート災害対策について

浮き屋根式巨大タンクの防災対策を
山口きよあき議員

特別防災区域に指定されている名古屋港臨港地区
【山口議員】愛知県石油コンビナート等防災計画では、名古屋港臨港地区が特別防災区域に指定されています。コンビナート防災は県の所管事項ではありますが、港の安全を守る立場から名古屋港管理組合も当然、積極的に関与すべき課題です。

長周期地震動による浮き屋根式危険物タンクの災害対策の進行状況は
 様々な危険物群と様々な災害想定が計画には盛り込まれていますが、私がずっと気になって仕方がないものの一つが、浮き屋根式の危険物タンクの長周期地震動による災害です。
 防災計画には「平成15年の十勝沖地震では、長周期地震動によって危険物タンクの浮き屋根損傷や沈降に伴うタンク火災・・・浮屋根上に流出した油がドレン配管を通って外に流出した事例が見られた・・・東日本大震災においても火災には至っていないが、浮屋根の損傷(沈降を含む)や内部浮き蓋の損傷が発生している。一般的に大容量のタンクの方が長周期の固有周期になる傾向があり、スロッシングが発生する可能性が高い。」「貯蔵量が1万キロリットル以上の危険物タンクが名古屋港臨港地区(名古屋市、知多市、飛島村)及び渥美地区(田原市)に所在し、災害が発生する可能性がある。」としています。そして危険物タンクの安全性の課題として、タンクの使い方(液高管理上限値の見直し)、泡消火薬剤の備蓄増強、耐震化の促進指導の三点が指摘されています。そのほかにも、地盤改良、側方流動対策、地盤液状化対策も重要との指摘があります。
 耐震化については、特定屋外貯蔵タンクの耐震改修期限は2017年3月でしたが、とりあえず稼働中のタンクについて100%耐震改修は済んだとお聞きしました。タンクの液高管理は各企業でも検討されています。そこで今回は主に消火体制について質問します。

空見ふ頭タンク火災時の金城ふ頭の避難誘導計画はどうなっているのか
 気になるのは、金城ふ頭のすぐ北、空見ふ頭の南側に立地する中川物産名古屋第二油槽所の4基の大型タンクです。防災計画では、長周期地震動によるタンク全面・防油堤内火災の放射熱影響距離が約290mとなっています。
 いま金城ふ頭は名古屋における人々の交流拠点として、多くの滞在者が訪れる場所となってきました。
 空見ふ頭のタンクヤードが火災になると、風向きによっては金城ふ頭と市街地をつなぐ道路もあおなみ線も使用できなくなるのではありませんか。
 タンク火災時の金城ふ頭からの避難誘導計画はどうなっているのか。避難計画は各自治体の所管ですが、港湾管理者として、どう認識していますか。

浮き屋根の損傷・沈降でタンク全面・防油堤火災が発生するが、放射熱の影響は防災区域内にとどまる見込み。拡大の恐れがある場合は市、県警、海上保安部が連携して避難誘導
【危機管理監】愛知県石油コンビナート等防災計画で、本組合は、関係機関と連携し、海上における流出油等の防除活動や災害拡大の防止活動を行う役割を担っており、毎年開催される石油コンビナート等防災訓練に参加し、協力体制の確立や防災体制の強化を図っています。
 愛知県が平成25、26年度に実施した「愛知県石油コンビナート等防災アセスメント調査」によると、空見ふ頭では、浮き屋根の損傷・沈降によりタンク全面・防油堤火災が発生するが、放射熱の影響は防災区域内にとどまるものとなっており、周辺道路やあおなみ線への影響はないと考えています。
 しかし、災害が拡大する恐れがある場合は、周辺道路やあおなみ線の規制も想定されており、その際は、愛知県石油コンビナート等防災計画に基づき、名古屋市、愛知県警察、名古屋海上保安部が連携して避難誘導を実施することとなっています。

空見ふ頭にも泡消火剤を備えておくべきでは?
【山口議員】火災に備える切り札は泡消火システムです。各事業所には所定の消火体制が備えられてはいます。防災計画を見ると、空見ふ頭にも、潮見ふ頭(9号地)にも県の泡消火薬剤貯蔵施設がありません。
 金城ふ頭の安全性を担保するうえで、少なくとも空見ふ頭にも一定規模の泡消火剤を備えておくべきではありませんか。答えてください。

特定事業者が泡消火薬剤を備蓄することになっている。名古屋市も金城ふ頭などに分散備蓄している(危機管理監)
【危機管理監】特別防災区域内の特定事業者は、石油コンビナート等災害防止法及び愛知県石油コンビナート等防災計画に基づき、貯蔵量等の規模に応じ必要な消火用薬剤等の防災資機材を備蓄することが定められており、泡消火薬剤を備蓄していると聞いています。
 市町村は消防庁の指針に基づいて泡消火薬剤を備蓄することとなっており、愛知県.石油コンビナート等防災計画には表記がされないが、名古屋市は金城ふ頭及び潮見ふ頭に分散し備蓄していると聞いています。
 泡消火薬剤貯蔵施設は、愛知県が消防力を補完するために設置しており、空見ふ頭及び潮見ふ頭で火災が発生した場合は、昭和ふ頭の泡消火薬剤貯蔵施設に備蓄している薬剤で補完すると聞いています。

大容量泡放射システムを四日市だけでなく、名古屋港にも配備すべきでは
【山口議員】泡消火システムについては、さらに大規模な火災に備えて、全国12地区に大容量泡放射システムの配備が義務付けられています。
 伊勢湾では四日市にある中京地区広域共同防災センターに配備されていますが、愛知県下には全くありません。そこでうかがいます。四日市に備えてある大容量泡放射システムは、大規模災害時に名古屋港で迅速に稼働できるのでしょうか。
 南海トラフ巨大地震では四日市港と名古屋港で同時に大規模な火災が発生することを想定すべきです。同じ地震と津波が伊勢湾を襲います。同時多発的な被害発生は想定していないのですか。大容量泡放射システムを名古屋港エリアにも配備する必要はありませんか。

中部電力渥美火力発電所と尾鷲三田火力発電所の中間である四日市市に配備
【危機管理監】大容量泡放射システムは、大容量泡放射砲、ポンプ車、泡消火薬剤等を備え、通常の大型化学消防車の10倍程度の放水能力を有するもので、石油コンビナート等災害防止法及び同施行令に基づき、直径34m以上の浮き屋根式屋外貯蔵タンクを保有する事業者に配備が義務付けられています。
 1つの事業所で維持管理するには多額の費用が必要となるため、全国を12のブロックに分け、複数の事業所が共同で防災組織を設置しています。
 当該システムは、タンク火災の約20時間後に発生するとされる爆発的な拡大燃焼を防ぐことを目的とし、愛知県、三重県の事業所が所属するブロックでは、中部電力株式会社の渥美火力発電所と尾鷲三田火力発電所の中間に位置する四日市市の

大容量泡放水砲

中京地区広域共同防災センターに当該システムを配備し、資機材の輸送計画を含めて災害に備えていると聞いています。
 愛知県石油コンビナート等防災計画によると、名古屋港への輸送時間は、空見ふ頭まで約l時間、最も遠い南浜ふ頭でも約1時間30分とされています。
 万一、中京地区広域共同防災センターから名古屋港への輸送が困難な場合は、近隣ブロックへ協力要請を行い、同様の泡放射システムを輸送し、消火活動を行うものと聞いています。災書時には実際、どれだけの船舶が災害対策に動員できるのか
【山口議員】最後に、コンビナート防災計画における管理組合の役割についてです。名古屋港管理組合の役割は水門管理と海上災害対策など非常に限定的です。実際にはもっとやること、やれることがあるのではないか、と思います。
 さて計画をみると、海上災害対策では、流出油関係協議会や災害時における曳き船による応急対策業務に関する協力協定などにより、組合所有船舶と協定に基づく船舶の協力で対応する、となっています。そこで簡潔にうかがいます。
 想定される海上災害対策とは具体的には何ですか。そして災害時には実際、どれだけの船舶が災害対策に動員できるのですか。民間所有の船舶頼みになってはいませんか。

組合所有船舶8隻、流出油関係業務委託の受注者所有の船舶及び名古屋港タグ事業協同組合との協定による夕グボート23隻が出動
【危機管理監】愛知県石油コンビナート等防災計画に基づき、港湾機能に支障を来たす恐れがある場合、又は名古屋海上保安部若しくは市町村から本組合に協カを求められた場合、本組合所有船舶8隻、流出油関係業務委託の受注者所有の船舶及び名古屋港タグ事業協同組合との協定による夕グボート23隻が出動に備える体制をとっています。

操業実態と開発による変化をふまえて対策を。名古屋港に関する防災情報は、わかりやすい一元的な情報に加工して、関係者が共有を(意見)
【山口議員】空見ふ頭での備えですが、金城の開発が進めば進むほど気になります。いちばん東のタンクと金城ふ頭線、あおなみ線とは至近距離です。現場で距離感を感じてください 。
 心配するのは道路と鉄道だけではない。隣接エリアにはモータープールも広がっています。火災の影響をまともにかぶります。ここへの立地は企業にもリスクが高いのではないか。幸い、いまタンク4基すべてがフル稼働はしていません。操業実態と開発による変化をふまえて対策を立ててください。
 ちなみに名古屋港臨港地区では、潮見ふ頭だけが、爆発物その他の危険物を取り扱わせることを目的とする保安港区です。ところが現在、潮見ふ頭では危険物タンクはかなり減りました。空見ふ頭のタンク群が市内唯一の大容量危険物タンクです。都市計画、臨港地区の分区の課題としてもよく検討していただきたい。
 空見ふ頭の南側、橋を渡ってすぐ西に、名古屋市消防局の特別消防隊第5方面隊が置かれています。消防艇が配備されています。名古屋市消防局が備蓄している泡消火剤の多くがここにあります。しかし県の防災計画にはこの情報がありません。たいへんわかりにくい。
 名古屋港に関する防災情報については、県や市とも調整したうえで、港の防災マップのような形でわかりやすい一元的な情報に加工して、関係者が共有できるようにしていただきたい。このことも要望しておきます。

伊勢湾全体で予想される同時多発的な被害想定を共有し、取り組みを
【山口議員】爆発を防ぐために10時間で消す計画の中で、大容量泡放射システム、輸送時間は1時間から1時間半とのことですが、東日本大震災の際には、千葉県のタンク火災でシステムの輸送が計画では4時間だったが到着まで10時間を要した、と報告されています。
 先日、四日市の中京地区広域共同防災センターで大規模泡放射システムを見てきました。運搬には10tトラック27台が必要で、トラック協会との協定し運んでもらう仕組み。稼働にも時間がかる。資機材をトラックに積み込むのに2時間30分、到着後のシステム組み立てにも2時間かかります。
 単発の火災ならともかく、大規模災害時にはこの巨大システムを名古屋港まで輸送し稼働させるのはたいへんだと感じました。
 問題は、南海トラフ巨大地震など伊勢湾全体が同時に被害にあう災害への備えです。名古屋港も四日市港も地震と津波に襲われます。
 泡消火システムを例に質問しましたが、伊勢湾を一つの港湾と見立てるのなら、コンビナート防災についても、県を超えて、伊勢湾全体で予想される同時多発的な被害想定を共有し、取り組む必要がありませんか。再度答弁を求めます。

都道府県が石油コンビナート等防災計画を作成し、特別防災区域の防災を実施。中京地区広域共同防災組織を設置して、大容量泡放射システムを配備している
【危機管理監】石油コンビナート等特別防災区域に係る災害の防止は、当該都道府県が石油コンビナート等防災計画を作成し、特別防災区域に係る防災を実施していく。
 伊勢湾では、浮き屋根式屋外貯蔵タンク全面火災の発生及び拡大を防止するために、愛知県及び三重県の事業者が連携して、中京地区広域共同防災組織を設置して、大容量泡放射システムを配備している。
 本組合としても、港湾管理者として、愛知県をはじめとした関係団体と連携し、港の防災にしっかりと取り組む。

大規模泡放射システムの訓練には管理組合も積極的に関わるように(意見)
【山口議員】十勝沖地震による苫小牧の浮き屋根式タンク火災から15年。コンビナート防災のうち浮き屋根式タンクの火災への備えは一定程度整えられてきたと思います。
 大規模泡放射システムの訓練は名古屋港エリアでも行われていると聞いています。民間ベースの訓練ですが、ぜひ管理組合も積極的に関わっていただきたい。

名古屋港としての課題と対策を整理し、民間も役所も、市民・県民も共有できるように、防災マップなり対策マニュアルなり目に見える形に(意見)
【山口議員】二つの課題に共通しているのは、ヒアリもコンビナート防災も、名古屋港の大きな課題なのに、管理組合単独で対応できることは非常に限られているということです。
 民間事業者から、関連業界団体、市や県、国との連携でしか問題が解決できません。それぞれ一生懸命取り組んでいると思いますが、名古屋港ではどうなっているのか対策の全体像が見えにくいことが共通する課題です。
 名古屋港としての課題と対策を整理して、民間でも役所でも、市民県民も共有できるように、防災マップなり対策マニュアルなり目に見える形にまとめてください。
 管理組合としての存在感を示していただくよう重ねて要望して、質問をおわります。

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