後期高齢者医療広域連合議会 8月定例会 一般質問(岡田ゆき子・2018年8月23日)

保険料軽減判定の誤り/患者の窓口負担増/市町村は葬祭費分の支援を/高額療養費の請求漏れ/熱中症対策について

保険料軽減判定の誤りについて

対象者数や金額はどうか

【岡田議員】昨年問題となった、国による保険料軽減判定の誤りによる問題についてお聞きします。
 国の保険料計算システムの設定ミスにより、一部の加入者に対し、誤徴収をしていたことが判明したわけですが、県広域連合の対象者で、明らかとなった、対象者数、金額、還付と徴収の実績、死亡等で還付徴収ともできかった件数と金額をお開きします。

増額515件 878万円、減額2,672件 6,117万円、時効には特別返還金を支給(課長)

【管理課長】保険料は年度ごとに変更決定するため、実の対象者数ではなく、延べ件数で報告します。
 2018年3月末時点で、増額更正は515件8,789,700円、減額更正は2,672件 61,179,900円でした。
 保険料の「還付と徴収に関する実績」と「死亡等で還付徴収ともできなかった件数・金額」は、保険料の徴収事務が市町村の役割なので、進捗状況などの詳細を広域連合として把握することは困難な状況で、市町村と連携して、適切に対応がなされるよう努めます。
 時効により減額更正とならなかった保険料は、広域連合において還付金及び還付加算金に相当する「特別返還金」を支給しています。
 2017年度末に判明した件数は110件ですが、現在までに106件の支給を終えています。残る4件は、今後、市町村にも協力をいただき、丁寧な働きかけを行う予定です。

市町村の事務負担費用を国に求めよ

【岡田議員】市町村では抽出された対象者の過去の所得調査を行っており、名古屋市では還付が必要な件数が651件、不足のために改めて徴収が必要な件数が135件ありました。特に徴収に関しては理解を得るために、戸別訪問を行って丁寧に説明する必要があり、通常の業務に支障が出るなどの問題があったと聞いています。そうした事務の実態はどうだったのか、業務過大に対し国へ人件費相当の費用負担を求めるなど必要性があるのではないかと考えますが、認識を聞きます。

人件費は国庫補助対象外(課長)

【管理課長】保険料軽減判定誤りへの対応では、徴収事務を担う市町村の果たす役割が大きく、当広域連合が抽出した候補者の中から対象となる方を確定させるための所得調査や、保険料に変更のあった方に丁寧な説明を行うための戸別訪問など、きめ細やかに対応いただいている。広域連合として、市町村に対応をお願いしたことで市町村の事務量が増大したことは理解している。
 しかし、従前から人件費相当分は国庫補助対象外とされ、本件も、国に費用負担を求めることは困難と考えています。

誤りのまま放置した国の責任は重い。費用負担を求めるべきだ(意見)

【岡田議員】保険料軽減の判定誤りについて、保険料の徴収事務は市町村が行うということで、広域連合としては、今回の保険料の判定誤りにより、影響のあった3187件の最終的な還付、徴収の結果を把握していないという答弁でしたが、ことは後期高齢者医療に関わることであり、広域連合として掌握はすべきではありませんか。事業の責任者として求めておきます。
 保険料軽減の判定誤りは、そもそも制度開始当時から、国の後期高齢者医療システムの設定ミスが原因で、自営業者などの一部の加入者の保険料の軽減額に誤りを生じていたもので、制度発足以来生じていたミスを、10年近く放置したことに問題の発端があります。特別返還金は平成27年度分の保険料相当と聞いていますが、この期間だけ見ても、答弁のように4件の未支給が発生しており、まして、10年前の加入者に遡っても死亡や不明などで払い過ぎていた保険料が返せないという事態がより多く発生していると推察されます。ちなみに、名古屋市では、本年6月末時点で、返還が必要な件数651件のうち、死亡や不明などで、54件が返還できない事態を生んでいます。この点で、国の、判定誤りのまま放置した責任は重い。この事務に関わって、市町村では過去にさかのぼり対象者の所得調査を行い、一軒一軒訪問し説明するということを、人員削減の中で、行っているわけで、広域連合協議会でもその事務負担は国が持てと要請しているのですから、費用負担を国に求めることは困難との回答は問題です。市町村に代わって、改めて広域連合として国に要望していただきたいと思います。

患者の窓口負担増について

窓口負担の1割から2割への引き上げに対する姿勢を問う

【岡田議員】愛知県の広域連合も加わる、全国後期高齢者医療広域連合協議会は毎年、国に対し、制度改善などを求めて要望書を提出しています。特に、今、後期高齢者の医療機関窓口での1割負担を2割負担に引き上げる議論がされております。本年6月6日に全国後期高齢者医療広域連合協議会が厚生労働省に対して行った要望はこの点についてどのような要望をしていますか、また、要望に至った経緯を改めて聞きます。

現状維持に努め、やむを得ず変更する場合は十分な周知期間と丁寧な説明を要望(課長)

【総務課長】2015年12月24日に国の経済財政諮問会議で決定された経済・財政再生アクション・プログラムにおいて、世代間・世代内での負担の公平を図り、負担能力に応じた負担を求める観点から、後期高齢者の窓口負担の在り方について、関係審議会等において検討し、2018年度末までに結論を得ることとされています。
 当広域連合を含めて全ての都道府県の広域連合で構成する全国後期高齢者医療広域連合協議会では、厚生労働省に対して、後期高齢者の窓口負担の在り方について、制度の根幹である高齢者が必要な医療を受ける機会の確保という観点から現状維持に努めること及びやむを得ず窓口負担の変更を実施する場合は、被保険者に対し、十分な周知期間を設け、国による丁寧な説明を行うことを要望しています。

後期高齢者医療制度に関する要望書
                       平成30年6月6日
               全国後期高齢者医療広域連合協議会
(中略)
 後期高齢者の窓口負担の在り方について、関係審議会等において平成3 0年度を目途に検討されているところであるが、制度の根幹である高齢者が必要な医療を受ける機会の確保という観点から現状維持に努めること。
 しかしながら、やむを得ず窓口負担の変更を実施する場合は、被保険者に対し、十分な周知期間を設け、国による丁寧な説明を行うこと。

現行窓口1割負担を継続するよう独自に要請を(再質問)

【岡田議員】後期高齢者の窓口負担のあり方について今年度中に結論を出すということでしたが、現行の1割負担を2割に引き上げる案について、当事者である高齢者や医師会からは懸念の声が上がっています。今年行われた社会保障審議会でも、日本医師会や全国老人クラブ連合会から反対の声が上がりました。老人クラブ連合の委員は「経済的に苦しい人ほど医療にかかるのが遅くなる実態があり、患者の孤立化・重症化につながる」と主張され、医師会の委員からも「2割負担には反対」との意見が出されていました。
 国の保険料軽減特例見直し方針に対して、2015年2月に当議会が国に提出した意見書でも、「年金の段階的引き下げや生活必需品の値上がりなど後期高齢者の環境が極めて厳しい」と指摘してきましたが、その状況は今も変わりありません。
 また、負担増となる場合に対しては周知期間を設けることは必要ですが、2017年度からの保険料の軽減特例の見直しの際も、広域連合や市町村に問い合わせが大変多く届いていると聞いていますので、負担増に対し高齢者の納得が得られていないのは明らかです。窓口負担増で危険なのは、受診が抑制され重症化することであり、結果、医療費が増大するなら本末転倒です。
 愛知県広域連合として、現行窓口1割負担を継続するよう独自に要請するべきだと考えますが、再度答弁をもとめます。

全国後期高齢者医療広域連合協議会として要望することが適当(課長)

【総務課長】後期高齢者医療制度における全国共通の課題は、全都道府県の広域連合の意見・ 要望を集約し、全国後期高齢者医療広域連合協議会を通じて、国に対して要望を行っている。
 後期高齢者の窓口負担割合も、愛知県のみならず、全国の被保険者に関わる課題であることから、全国後期高齢者医療広域連合協議会において、他の広域連合と連携して要望を行うことが適当と考えています。

市町村に葬祭費分の支援を求める

国保が負担してきた葬祭費の多くを引き受けてきた

【岡田議員】県と市町村に葬祭費分の支援を求めることについて、自主財源を持たない広域連合が事業のための財源の一部を市町村から支援してもらうことも改めて必要と考えお聞きするものです。
 後期高齢者医療制度は、国・県・市からの公費と各医療保険者の支援金、後期高齢者の保険料で賄っていますが、後期高齢者の特徴として、低所得世帯が被保険者の34%を占め、また年齢的特徴からも一人当たり医療費は現役世代の3倍という実態があります。今後の医療費の増加分を高齢者の負担で賄うのは限界です。国庫支出金の増額を求めることはもとより、葬祭費などは、市町村に求めている広域連合もあり、2月議会でも市町村の負担のあり方について求めたところでありますが、特に、葬祭費に関しては、後期高齢者医療制度が開始した際、国民健康保険が負担してきた葬祭費の多くを後期高齢者医療が引き受けてきたことを考慮すれば、市町村に葬祭費分の支援を求めることには正当性があると考えます。見解をお聞きします。

全国一律の制度なので市町村には負担を求めない(課長)

【総務課長】後期高齢者医療制度は、国民健康保険を始め他の医療保険から移ってくることから、他の医療保険に比べて葬祭費の支出が多いことは事実ですが、こうした面も勘案の上、後期高齢者医療制度の費用全体は、被保険者の保険料のほか、国庫支出金、県支出金及び現役世代からの支援金、更には国民健康保険の保険者でもある市町村の公費負担、即ち市町村の住民の皆様の税金による負担の均衡の下で賄われるよう、全国一律の制度として設計されている。
 したがって、市町村に対し、国の制度を上回る負担を求めるのは適当ではないと考えます。

後期高齢者医療制度の開始で、国保の葬祭費が大きく減ったので市町村に負担を求めるべき(意見)

【岡田議員】国は後期高齢者の医療費が増大することに対して、世代間・世代内の負担の公平を繰り返し主張し、高齢者に負担増を求めていますが、そもそも、後期高齢という年齢から、病気を多く抱えやすく、現役世代と比べて医療費が3倍近くなってしまうという身体的特徴を無視し、75歳以上だけを集めて医療制度を作ってきたことに問題の根源があります。国に財源を強く求めることを広域連合として行いながら、質問したように、葬祭費については、後期高齢者医療制度の開始で、国保の葬祭費が大きく減 ったことも事実ですから、市町村にその負担を求めること を再度要望します。

高額療養費の請求漏れについて

請求漏れは何人で総額はいくらか

【岡田議員】高額療養費が請求できるにもかかわらず、2017年度に請求漏れだった対象者は何人あり、総額いくらになりますか。それは市町村により差はありますか。

未申請者は延べ1万8,842人、1億円余、申請率は97.27%(課長)

【給付課長】2017年度の実績は、被保険者への償還給付分として、愛知県全体で延べ69万1,093人、総額46億7,800万4,375円の高額療養費がありました。そのうち未申請だった対象者は、延べ1万8,842人で金額は1億132万7,070円、申請率は97.27%になっています。
 いずれの市町村も申請率が95%を超えており、大きな差は生じておりません。

申請勧奨はどうしているか

【岡田議員】高額療養費の請求漏れの世帯に対する申請勧奨はどのように行っていますか。

「支給申請のお知らせ」ハガキを送付(課長)

【給付課長】高額療養費に該当した際には、その都度本人宛に「支給申請のお知らせ」ハガキを送付し、申請の勧奨を行っています。2回目以降は、初回の申請時に登録された口座に自動的に口座に振り込むこととしており、一度申請すれば毎回申請する必要はありません。
 「支給申請のお知らせ」ハガキを送付しても申請のない方には、翌年に再度「支給申請のお知らせ」ハガキを送付し、申請の再勧奨を行っています。

認定証の交付を確実にするための勧奨を

【岡田議員】限度額適用・標準負担額減額認定証、以下認定証と言います、認定証の交付を受けることで、高額療養費の支給申請をしなくとも限度額での支払いが可能ですが、認定証の交付を確実にするための勧奨をどのように行っていますか。

「後期高齢者医療制度のご案内」で周知(課長)

【給付課長】過去に「減額認定証」の交付を受け、2018年度も該当する場合には、新たな申請の必要はなく、新しい「減額認定証」を7月に発送した。 
 「減額認定証」を持っていない人には、1か月の窓口支払いを自己負担限度額までにするためには「減額認定証」の交付を受ける必要がある旨を記載した「後期高齢者医療制度のご案内」という小冊子を年次更新時及び後期高齢者医療への新規加入時に送る 被保険者証に同封して被保険者全員に対し周知を図っている。
 その他、愛知県内の主要な病院、愛知県医師会および愛知県病院協会に対し、小冊子と同様の文章を記載した「周知チラシ」を配布して、入院等により高額療養費に該当する被保険者への周知を依頼しています。

未申請となってしまった理由はなにか(再質問)

【岡田議員】高額療養費の対象であるにもかかわらず、支給されなかった人が1万8842人、1億132万円あったということですが、未申請となってしまった理由はなんでしょうか。

本人死亡で相続人が未定、遠隔地への転居、入院中などを想定(課長)

【給付課長】高額療養費は医療機関からの診療報酬の請求等を集計する作業が必要であり、診療を受けた月の概ね4か月後に「支給申請のお知らせ」ハガキを送付しています。
 未申請となった理由は、①「被保険者が死亡した場合、相続人が申請することになるが、相続人がいない、またはまだ決ま っていない等により申請が遅れている」②「遠隔地に転出したため、なかなか手続きに来ることができない」③「一人暮らしで入院中のため申請にくることができない」等ではないかと考えています。

認定証の交付申請についてわかりやすい「周知チラシ」を(再質問)

【岡田議員】高額療養費が確実に支給されるためには、あらかじめ限度額適用・標準負担額減額認定証の交付を受けておくことは重要です。入院となった場合などは医療費が高額となることから、病床を持つ県内の医療機関は、有床診療所も含めて648カ所存在しますが、その全ての医療機関に認定証の交付申請についてわかりやすい「周知チラシ」を配布し、周知を徹底すべきだと考えますが、見解をお聞きします。

主要な病院に配布、十分に周知されている(課長)

【給付課長】減額認定証の周知チラシを愛知県内の主要な病院に配布しており、愛知県内の病床数200以上の病院109機関が該当しています。
 また、愛知県医師会および愛知県病院協会に対しても周知チラシを配布していることから、十分な周知がされていると考えます。

熱中症に関する保健指導について

予防するために適切な保健指導、啓発を

【岡田議員】今夏の猛暑を気象庁は災害と認識するほどの異常気象が、8月中続くと言われています。そのような猛暑の下で、熱中症発症も異常に多く発生しており、中でも高齢者に多く発症し、死亡者もでている状況です。名古屋市では7月中の救急搬送が13,616件でした。うち、熱中症による搬送は1,301と過去最高となりました。
 冷房器具の未設置や設置していても使用していないなど、環境の変化に対し、対応が鈍くなりやすい点で、高齢者への熱中症への注意喚起は重要です。熱中症が悪化すれば入院治療など適切に行われなければなりませんが、一方、適切な環境整備と水分補給などで予防することも可能であり、熱中症で入院という事態にならないよう、予防するために適切な保健指導、啓発は広域連合としても行うべきだと考えます。例えば、来年夏に向けて7月の保険料通知を送付する機会に、注意を促す広報などは検討できると考えますが、認識をお開きします。
 また、市民税非課税世帯が3割を超える後期高齢者であれば、エアコン購入のための社会福祉協議会の資金貸付制度の案内などの広報も、啓発として可能と考えますが、見解をお聞きします。

ポスター、リーフレットのほか、地域会合や訪問等で指導、啓発(課長)

【給付課長】熱中症予防は、政府各省からの周知、広報の他、市町村においても、ポスター掲示、リーフレット配布や、地域会合や訪問等により指導、啓発を行っており、エアコン設置等の熱中症予防に関する具体的な事業、補助等については、市町村ごとで様々に対応しています。
 保健指導は広域連合では自主財源ではなく国等の補助に基づく事業として実施しており、現在、重複・頻回受診の方等を対象に訪問指導などをしています。事業を補助対象とするため、事業の内容はあくまで、補助の基準に沿ったものにしており、当該事業に熱中症予防を含めることは難しいと考えます。
 熱中症予防に係る事業等は引き続き、市町村において実施していただく方が有効であると考えます。

高齢者の負担増をどう思うか(再々質問)

【岡田議員】制度開始から10年が経過し、75歳以上の後期高齢者を対象とした医療制度は、世代間・世代内での負担の公平性を図るとして、後期高齢当事者の負担は増え続けていると質問してきました。しかし、高齢者の実態は、繰り返しますが、年齢的には現役世代に比べて医療依存度が高いことは当然であり、医療の必要度から考えれば、経済的負担だけを見て現役世代と公平を図るという前提には無理があります。
 こうしたことを踏まえ、2点、広域連合長に考えを伺います。
 第1に、特に、後期高齢者の経済的状況は、介護保険の負担増と年金の削減で、ますます出費を切り詰めた生活となっています。こうした低所得者が比較的多く、ほとんどの場合、収入が増えることのない高齢者に対するさらなる負担について、どう認識していますか。

高齢者の方の負担が過重なものとならないよう配慮することが重要(広域連合長)

【連合長】現役世代を含めまして、それぞれの負担能力に応じた公平な負担であること、また、低所得者の負担軽減を図ることなど、高齢者の方の負担が過重なものとならないよう配慮することが重要と考えている。

制度の存続は必要か(再々質問)

【岡田議員】第2に、愛知県の広域連合も加わる広域連合協議会が国に対して、「高齢者だけが負担増とならないよう、国庫負担の増加や国の財政支援の拡充」ということ等を求めているわけですが、後期高齢者の健康増進と適正な医療を推進すべき愛知県の広域連合として、後期高齢者医療制度は今後どうあるべきだと考えますか、最後にお聞きして質問を終わります。

適正な医療給付や保健事業等の現行制度の運営をしっかりと取り組む(広域連合長)

【連合長】本制度を通じて、高齢者の方に必要なときに適切な医療を受けていただけることが最も重要であり、そのためには、本制度が安定して持続可能であるべきと考えます。
 こうしたことから、現段階においては、広域連合といたしましては、適正な医療給付や保健事業等の現行制度の運営をしっかりと取り組んでいきたいと考えております。
 また、今後の制度改革については、国における議論を注視し、必要な要望等を行っていきます。

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