山口清明議員の議案外質問②(2018年9月20日)
地震・豪雨・台風など、この夏の災害を踏まえ、防災において強化すべき課題を提案
高潮浸水想定をハザードマップで周知させる考えは?
【山口議員】第二に、高潮による浸水被害への対策です。私は今年2の月定例会で、市街地で浸水が続く長期湛水域について質問しました。これは津波による想定でしたが、高潮による浸水被害が現実の脅威となってきました。
高潮による浸水想定は2014年に愛知県から公表され、2年前には本議会でも取り上げられています。私も名古屋港管理組合議会において9年前の2009年に、台風18号により三河湾でコンテナが流された被害について質問したのをはじめ、スーパー伊勢湾台風への備えと高潮対策、地震と台風の複合災害について何度か取り上げてきました。
59年前の伊勢湾台風では名古屋港で海抜(TP)3m89㎝(NP5m31㎝)の潮位を記録しました。この高潮を踏まえて現在、名古屋港では高潮防波堤と防潮堤を整備し、護岸の高さも海抜(TP)4.6mです。
県の想定では港区の大部分は約5mも浸水するとされましたが正直、実感がわきませんでした。ところが台風21号では防潮壁5mの関空があの惨状です。神戸港をはじめ大阪湾一帯で浸水被害が発生しました。台風の進路が少しそれたら伊勢湾を直撃しています。5mを超える高潮浸水は現実問題です。
では名古屋市の対応はどうか?いま防災危機管理局は高潮など大規模風水害時の避難行動のアンケートを行っています。台風による高潮は、地震による津波と違い事前予測が可能で、広域避難のあり方を検討するといいます。
台風21号では、名古屋市で最多82カ所の避難所に203人が避難しました。一番多かったのが港区で、避難所が16カ所開設され、64人が避難しました。防潮堤の海側の地域336世帯709人には避難準備情報が出されましたが、その方々は開設された避難所には一人も来ませんでした。情報は届いたのか、避難したのか、どこへ避難したのか、自宅にいたのか、検証が必要です。
港区では、津波避難ビルの充足率を学区ごとに調べ、浸水が想定される区域の住民全員が避難できる津波避難ビル(指定緊急避難所)の確保に取り組み、ようやく20学区中15学区で充足できました。
この経験が広がり、いま市内で津波浸水が想定される7区でも津波避難ビルの充足率を把握するようになりました。広域的な水平避難だけでなく、身近な垂直避難の避難先を確保すべきです。
そこで防災危機管理局長にうかがいます。
愛知県が作成した高潮浸水想定マップは県のホームページでは見れますが、市が作成した地震や洪水のハザードマップのようには市民に配布されてはいません。ハザードマップとして位置づけ周知を図る考えはありますか。
県の指定の後にハザードマップを作成する(局長)
【防災危機管理局長】愛知県高潮浸水想定は2014年11月に公表されたものですが、平成27年の水防法改正を受け、愛知県が2020年度末までを目途に、想定しうる最大規模の高潮浸水想定区域の指定に向けた検討を行っているところです。
市としては、愛知県が想定最大規模の高潮浸水想定区域を指定した後に、高潮のハザードマップを作成し、市民への周知を行っていく予定です。
県の想定は2年後。現実の災害対応をしっかり検証して対策を積み上げるべき(意見)
【山口議員】高潮浸水想定ですが、新たな県の想定、最大規模の浸水想定がでるのは2年後。それからハザードマップをつくっていく。遅いんじゃありませんか。そして出てきた浸水想定で港区をはじめゼロメートル地帯は一面浸水します、こういうハザードマップを配られても、じゃどうするの?ということになりかねません。避難の参考になるのか。大規模な災害予測と広域避難だけでなく、現実に発生した災害での対応はどうだったのか、これをしっかり検証して、こつこつ具体的な対策を積み上げてくのが大事だと思います。
高潮浸水想定区域でも、避難先の確保を検討すべきでは
【山口議員】津波避難ビルの充足率を紹介しましたが、高潮の浸水想定区域全体でも避難が必要な人数をきめ細かく把握し、地域ごとで身近な避難先の確保を検討すべきではありませんか?
台風21号の検証を踏まえ、避難先の拡充を図りたい(局長)
【防災危機管理局長】2017年度に愛知県高潮浸水想定区域内において避難が必要とされる人数の調査を行った。台風21号で避難準備・高齢者等避難開始を発表した際に対象となった方々の避難行動の検証などを踏まえ、さらなる啓発や、現在の津波避難ビルを高潮の際にも活用するなど避難先の拡充を図ります。
台風の避難行動の検証は市民参加で進めよ(意見)
【山口議員】検証すると答えていただきましたが、まずは先の台風での、避難行動の検証を市民参加で進めていただきたい。情報は適切に出せたか。住民に届いたか、区役所は機能したか、避難先は適切だったか、しっかり考えていただきたいと思います。
高潮による長期湛水を想定した対策を講じるべきでは
【山口議員】県の高潮浸水想定の湛水域は津波による湛水域の想定と整合していますか。高潮の場合でも水がなかなか引かないという想定で対策を講じる必要はありませんか。
避難行動のさらなる検討をすすめる(局長)
【防災危機管理局長】湛水が発生した地域では、避難生活が長期に及ぶことも懸念させる一方、すべての方に浸水想定区域外へ避難していただくためには、その移動手段や避難先の確保など多くの課題があります。そのため、命を守ることを第一に、皆様に混乱なく安全に避難していただけるよう、垂直避難と、浸水想定区域外への避難を組み合わせた避難行動についてさらなる検討を進めます。
キーワード:環境と防災、まちづくり、山口清明